遭遇
「よし、これで終わり」
櫛引が最後の段ボール箱をハイエースに載せ、汗を拭う。
俺達は食料をひとまとめにした段ボール箱をハイエースにつめていた。
「これで最後ですね」
「ありがとね~~。やっぱり人数が多いと助かるわ」
そんな日向と櫛引さんのやり取りを俺は遠くで眺めている。
俺も始めは荷運びを手伝っていたが、殆どの荷物を運び終えたのでこうして端の方で休んでいたのだった。
「疲れたわ」
「お疲れ様」
俺は悠里と桜は一緒に並んで座っている。
俺達は既に戦力外になっており、こうして暇をもてあましていた。
「そういえば悠里は1人で行動してたって聞いたけど、何を探してたんだよ?」
「医薬品よ」
「医薬品?」
「そうよ。熱が出た時とかおなか壊した時に必要になるでしょ?」
「確かに」
医薬品はこれから生きていくうえでも、重要なものになる。
悠里の言う通りこれから不足しがちなものになるので、早めに物資を補給するに限る。
「それに、私の複製スキルでこれと同じものを作れる可能性もあるから探してたの」
「そうなの?」
「えぇ。回復薬も複製できたから、普通の薬も複製できるはずよ」
今までよくわからなかった悠里のスキルにはこういう効果があったのか。
「てか、そんな重要なこと誰にも言わなかったの?」
「日向君と桜ちゃんにはこの事話してるけど?」
「桜も!?」
「はい、悠里先輩のお家にいた時に話は聞いてました」
一体いつそんな時間あったんだよ。桜は俺と殆ど一緒にいたはずなのに。
そしてなんで俺にはこの事を話さなかったんだ?
「なんで俺に言わなかったの?」
「別に、空も知ってると思ったから言わなかっただけよ」
「サプライズってやつです」
いや、全くサプライズになってないよ、桜。
むしろこれは俺1人だけはぶられてるだけじゃないかな?
「俺1人仲間はずれかよ」
まぁ、いつものことだから別に気にしてないけどな。
悠里も楽しそうだし、そんなに気にする事ないだろうな。
「空先輩」
「どうしたんだよ、桜」
「敵の気配がします」
「敵?」
敵の気配は全く感じないが、危険感知スキルが頭の中で響いている。
ここにいてはいけない。今すぐ逃げるべきだ。そんな警報が頭の中で鳴り響いていた。
「空!!」
「日向!! ここにいるとまずいことになるから、すぐに出るぞ!!」
「うん。すごく強い敵がこっちに近づいてくるから、早く逃げよう!!」
「そうだな」
俺の頭にも過去最大級の警報が鳴り響いていた。
正直今すぐ逃げた方がいい。そう言っているようだった。
「おい、どうしたんだよ?」
「櫛引さん、早くここを出ましょう」
「出るって、まだ二階堂が来てないぞ」
「えっ!?」
物資を運び終えたのに、あの人は何をやってるんだよ。
そういえば、スーパーに入ったっきり全く姿を見てないな。一体どこで油を売ってるんだ。
「もしかして、まだスーパーの中にいるんじゃ‥‥‥」
「それなら俺がスーパーの中を探してくる。日向達はいつでも出れる準備をしていてくれ」
「空!! 1人じゃ危ないよ!!」
「大丈夫だ。桜、お前はバイクを動かせる準備を頼む」
「えっ!? 私バイクの操作なんてわからないんですけど?」
「お願いな」
鍵を桜に投げ渡して、俺はスーパーへと向かった。
スーパーの中は相変わらず雑然としていて、あの黒眼鏡のぼっちゃんの姿は無かった。
「あいつは一体どこをほっつき歩いてるんだよ」
他のやつらがダンボールを運び終えたのに、何をしてるんだ?
そういえば、俺達がダンボールに食料をつめてる時こいつはいなかったな。
「一体何をしてるんだよ?」
店内にはいない。後はいるとすれば、バックヤードだけど。そんな所にいるんだろうか?
でもここにいないなら可能性はそこしかない。裏に行こう。
「行くしかないか」
バッグヤードを抜け、スーパーのスタッフルームまで行くとそこに二階堂がいた。
金庫の前でダイヤルを回しているところを見ると、何かを探しているように見えるのだった。
「おい、何してんだよ」
「確か君は‥‥‥山村君ですか?」
「山村君ですか? じゃねぇよ!! 敵が迫ってるんだ。早く逃げるぞ」
「そうですか」
俺がこれだけ言ってもこいつはてこでも動かない。
金庫のダイヤルをいじり、かちゃっという音がなると喜びの声をあげ金庫を開いた。
「やっぱりここにありましたね」
「ここにあったって、お前なんでそんなものを?」
金庫の中から出てきたのは、お金だった。しかも1万円札の札束が大量に。
それをリュックに全部つめると、そのまま外に出ようとした。
「もう大丈夫ですよ。さぁ、外に行きましょう」
「『外に行きましょう」じゃない!! その金、どうするつもりだ?」
「どうするつもりって、これは使うんですよ」
「使う?」
使うって何に使うんだよ。今の世界でお金なんて持ってたって意味がないだろ?
「そうです。政府が機能している以上、このお金には価値があります」
「価値?」
「今は確かに使えません。でも、この後お金を使える時がきっと来るでしょう」
「だから、今貯めてるって?」
「はい、そうです」
「でも、こんなの持って行ったら櫛引達に追求されるだろ?」
「それなら大丈夫です」
二階堂がリュックを掴むと、そのリュックが消失する。
リュックが消失したということ、きっとこれはスキルだ。
もしかしてこいつが今使ったスキルは‥‥‥。
「お前、アイテムボックスのスキルを持ってるのかよ」
「よくわかりましたね。もしかして貴方も同じものを?」
不敵に笑う二階堂。こいつの顔をぶっ飛ばしてやりたいがそこをぐっと飲み込んだ。
言いたいことは山ほどあるが、とりあえず今は外に出よう。
「聞きたいことは色々あるけど、それは後だ。とりあえず外に出るぞ。ついてこい」
俺は二階堂を先導する形で外に出た。
正直、外に残している桜達が心配だ。こうしている間にも逃げていてくれればいいんだが。
「桜」
「空先輩」
俺が奥から出てくると、既に桜が待ち構えていた。
桜は俺達をせかすように呼んでいるようだった。
「日向先輩達には先に出てもらいました」
「その方がいいだろう。ありがとな、桜」
「そんなことより、敵が‥‥‥」
直後、ドシン、ドシンという大きな足音が響いてきた。
そしてその巨体が一瞬だが、建物の隙間から見えたのだった。
「あれは‥‥‥」
ゴブリンだが、他の固体よりもかなりでかい。
そして包丁の様なものではなく、大きな剣を持っている。
そして頭の上には王冠。 こいつは‥‥‥まさか‥‥‥。
「ゴブリンキング‥‥‥‥‥」
ゴブリンの最上位種でありゴブリンの王様、ゴブリンキング。その巨体が俺達の元へと近づいているのだった。
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