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不信感コンビ

「それじゃあ出発するよ! 山村君は後ろから俺達についてきてね」


「わか「わかりました!」」



 俺の声に被せるように後ろから元気な声を出す桜。

 相変わらず元気だな。これから面倒な所に行くってのに、むしろ楽しそうだ。



「桜、ヘルメットはかぶったよな?」


「はい、かぶりました」



 それなら大丈夫だ。俺はエンジンをかけると恐る恐るクラッチレバーを握り、チェンジペダルを押し下げる。

 恐る恐るゆっくりと失敗しないよう丁寧に作業を進めていった。



「空先輩。本当に運転出来るんですか? おっかなびっくり操作してるようですけど?」


「大丈夫だ。少しは俺を信じろ」



 正直小型バイクは公道で走ったことが無いから不安である。ただそんな不安な表情を桜に見せるわけにはいかない。

 桜に格好悪い所は見せられないからな。ここは絶対成功させないくてはいけない。



「たしかアクセルを少しひねって、クラッチレバーを離せば‥‥‥よし! 動いた」



 動いてしまえば、大抵のものは何とかなる。

 後はエンストさえしなければ乗りこなせるはずだ。



「おぉ~~、動きました」


「当たり前だ。こんなの余裕だよ」



 正直おっかなびっくり発進させたが、何とか大丈夫そうだ。

 これであのハイエースについていける。



「空先輩、もっとスピード上げてください。あのハイエースに置いていかれますよ」


「わかってる」



 そのままスピードを調整して、ハイエースを追いかけた。

 しばらくバイクを走らせ余裕が出てきた頃、ふと思ったことがある。

 バイクに乗る前桜に聞こうと思っていて、聞けなかったことだ。



「そういえば、桜は何で車の方に行かなかったんだよ?」


「車ですか?」


「そうだよ。あっちの方が絶対にバイクより快適だろ? 何でバイクに乗ろうと思った?」



 運転はできないから自分達でやらなくてもいいし、空調設備も揃っている。

 こんな暑さや寒さを肌で感じる乗り物よりもずっと快適に過ごせる。

 桜まで俺と一緒にバイクに乗る理由が無い。



「確かにあっちの方が快適に過ごせそうですよね」


「だろ?」


「そこは空先輩と一緒にいたかったってことでまとめるのはダメですか?」


「ダメだ」



 桜のことだから、それが理由の1つでもあるだろう。

 だけど、桜のことだからきっとそれだけが理由じゃない。

 きっと俺も考えつかないような理由が桜にもあるはずだ。



「それはたぶん‥‥‥先輩と同じ理由だと思います」


「同じ理由?」


「そうです。先輩こそ、何であの車に乗らなかったんですか? なんだかんだ文句つけてましたけど、あっちの車の方が絶対に快適ですよね?」


「それは‥‥‥」



 あの3人のことが信用できなかった。絶対後で裏切られ酷い目に合わされると思ったから。

 正直俺はあの3人のことを信用しているわけではない。だから何があっても対応できるように、俺はハイエースに乗らなかったのだ。



「言わないなら代わりに言いますけど。空先輩はきっと、あの3人が信用できなかったんですよね?」


「何でわかるんだよ?」


「中学までずっと先輩といたんですよ。それぐらいわかります」



 俺の後ろにしがみつきながら、自信満々の声でそう言う桜。

 まるで俺の考えていることなんて、全てお見通しだといっているみたいだ。



「先輩が信用できない人なんて、あたしだって信用しないですよ」


「でも、日向達は乗ってただろ?」


「日向先輩はお人よしですから」


「そうだな」



 確かにあいつは人を信用しすぎるところがある。世の中全員が全員いい人ってわけじゃないのに、よくやるよな。

 千葉って奴との話し合いの時もそうだ。自分達は何もしないけど、俺達を守ってほしいとかふざけた条件に対して、『僕が何とかするから』って一言で協力することを了承してしまった。

 本当によくやるよな。あいつも。



「ただ、空先輩は人を信用しなさすぎだとは思います。日向先輩と足して2で割れば丁度いいと思うんですけど」


「余計なお世話だ」



 全く桜は。俺と日向を足して2で割れば丁度いいんじゃないかって?

 俺とあいつを足して2で割っても日向の方がお人よしだから、丁度よくなることなんて絶対ないぞ。



「そういう桜も人のことを言えないだろ?」


「はい」



 その口調はやけにはっきりとしていた。もしかしたら桜も俺と同じなのかもしれない。

 いや、俺がそうなるようにしてしまったと言うべきか。もしそれが事実なら本当に申し訳ない事をしたと思う。



「だけどあたし、先輩のことは信用してますからね」


「はいはい。お世辞は結構だから」


「お世辞じゃないですよ」



 そう言うと桜のしがみつく力が強くなる。

 体全身を密着させるようにくっついてるからだろう。必然的に彼女の柔らかいものが俺の背中に当たる。

 確かに小さい桜の胸だけど、これだけ力強く押し付けられると、その感触が背中にダイレクトに伝わるのだ。



「ちょっと、桜‥‥‥お前何して‥‥‥」


「ふんだ、先輩も少しはドキドキすればいいんです」


「何のことだよ」



 しがみつく桜の体温を感じながら、俺はバイクを走らせハイエースを追う。

 後ろでしがみついている桜が、なんとなく安心しているように感じるのだった。

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