親心
「よがっだよ‥‥‥あんたが生きていて、本当に‥‥‥本当によがったよ!!」
「心配をかけてすいません」
「本当だよ!! 私達が、私と春斗がどれだけ心配したか‥‥‥」
桜の事を固く抱きしめる良子さん。俺もこの人とは長く付き合っているが、大人なのに子供のように泣くその姿は今まで1度も見たことがない。
「よっぽど桜の事を心配していたんだな」
良子さんの様子を見れば、今までどれだけ桜の事を心配していたかわかった。
もしかすると俺が考えていた以上に、この人は桜の事を心配していたのかもしれない。
「あれ? 春斗君。もしかして泣いてるの?」
「泣いてないよ」
「でも、目に手を当てて‥‥‥」
「クルル、あまり余計な事を言わないの」
「えぇ~~」
「えぇ~~じゃないの。ここは黙ってる所だから、静かにしなさい」
ティナがクルルを嗜めるとクルルも黙る。
黙って桜と良子さんの事を見守っていた。
「春斗さん」
「すまないね。最近色々ありすぎて、僕もちょっと涙もろくなっているんだ」
それは違う。春斗さんは強がっている。
たぶん俺達がいない間、春斗さん達も悩んでいたのかもしれない。
それはデパートにいる時、もしかすると学校で俺達と別れた時の事が原因だろう。
「すいません、春斗さん。俺のせいでみんなを苦しませてしまって」
「何を言ってるんだい? 空君があそこで甲冑騎士の足止めをしていたからこそ今があるんだ。君がいなかったら街もこんなに早く復興してなかっただろう。むしろ僕達が君にお礼を言わないといけない」
「別にお礼を言われる事はしてませんよ。俺は自分の大切な仲間を守っただけですから」
むしろあれは自分の都合だけを考えて行動したと言ってもいい。現実問題あの戦いでは大勢の人が殺され、俺は何も出来なかった。
「あの出来事は責められることはあっても褒められることはしていません。結局俺は自分の周りにいる人達しか助けられなかったから」
こんな時日向ならどうしていただろう。あいつが大怪我なんてしていなければ、学校にいる全ての人を救えたんじゃないかと思う。
俺が至らないばかりに大勢の人達が死んでしまった。その十字架は一生背負わなければいけないと思っている。
「‥‥‥」
「どうしたの、ミアさん? 黙って空達の事を見て?」
「いや、何でもない。私やサラ様が思っていた以上に、山村さんは凄いお人なんだと思ってびっくりした」
「俺はミアさんが思うような人じゃないですよ」
「そうよ、ミアさん。空の女癖が悪いのを差し引きすれば、プラマイゼロだって」
「むしろマイナスと言ってもいいだろうな」
「おい、由姫にティナ。余計な事を言うな」
せっかくのいい雰囲気が台無しだろう。少しはそっとしておいてくれ。
でも今ので良子さんも気づいたみたいだ。手のひらで涙を拭き、俺達の方を見ていた。
「この声は‥‥‥空君?」
「はい。お久しぶりです、良子さん」
桜ばかりに夢中になっていたようだが、ようやく俺の事にも気づいてくれたみたいだ。
「空君だけじゃない。前野さんまで。みんな生きていたんだね」
「当たり前だ。私達の事を勝手に殺さないでくれ」
「空君に前野さん、本当にありがとう。桜を守ってくれて、本当にありがとう」
「俺達の方こそ、あそこで桜が来てくれなかったら死んでいました。桜には本当に感謝しています」
「そんなことないよ。空君達がいたから、桜はこうして生きてる。それは私だけじゃなくて、春斗も思ってるはずだよ」
「あぁ。改めて君達にお礼を言わせてくれ。桜を助けてくれて本当にありがとう」
親子そろってそんなに深々と頭を下げられると本当に困る。
正直命を助けられたのは俺の方なのに。それは由姫もわかってるはずなので、俺達は揃って複雑な表情をしていた。
「この人、桜おねえちゃんのママ?」
「あら? 可愛い子だけど、この子は?」
「あっ!? あたしはクルルっていいます!」
「クルルちゃんはそこにいるティナさんの妹さんですよ」
「ティナ?」
「私です。桜のお母様」
俺達の間をかき分けて出て来たティナが、初めて改めて良子さんと対面する。
凛々しく立つティナよりも、涙でいまだにグスグス言っている良子さんの方が緊張しているように見えた。
「初めまして。私はエルフ族のティナ・ラインハルトと言います」
「ティナさんはエルフなのかい?」
「はい。桜さんが私達の町にいた際、彼女には数えきれないぐらい助けてもらいました。エルフ族を代表してお礼をさせてください。本当にありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそ桜と仲良くしてくれてありがとうございます」
ティナと良子さんが挨拶を行っている。堂々としているティナに対して、泣いているからか良子さんの対応が少しぎこちないように思えた。
「あの方が、木内さんのお母様ですか」
「あぁ。ミアさんには紹介するのは初めてでしたね」
「はい」
「空君、その後ろにいる猫耳をつけた人は誰だい?」
「良子さん、この人はサラさん。猫族の族長代理で来てもらっている人です」
「初めまして、私はミア・アルベルトと申します」
「エルフだけじゃなくて、猫族まで来てるのかい!?」
「その話は後でしよう。それよりも空君達が街に帰還した記念パーティーを開こうと思うのだが‥‥‥」
「わかったよ、春斗。腕によりをかけて料理を作るよ」
「そうしてくれると助かる」
桜の事を離した良子さんは、そのままキッチンの方へと向かってしまう。
先程泣いていたのが嘘のように、元気いっぱいである。
「お母さん、あたしも手伝います」
「あぁ、そしたら桜もキッチンに来て」
「わかりました」
桜も良子さんの後に続くようにキッチンへと向かう。
先程まで並んでいた親子が2人共、部屋の奥に行ってしまった。
「一旦自己紹介は後にして、空君達の歓迎会をしよう。みんな、中に入ってくれ」
「わかりました」
春斗さんに促され靴を脱ぎ、俺達も家に入る。
それからしばらくして、俺達の歓迎会が始まるのだった。
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