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三村祥子

「先輩、本当に大丈夫ですか? 顔色がすぐれないようですけど?」


「何でもない。気にするな」



 先程から桜は俺の事を心配そうに見つめている。

 体は問題ない。ちょっとここまで色々ありすぎて疲れているだけだ。



「桜に気を使われるなんて、俺もまだまだだな」


「あたし、本気で空先輩のこと心配してたんですけど」



 先ほどの表情から、うってかわりむすっとする桜。

 よかった。どうやらごまかせたようだ。



「空、僕達もそろそろ悠里ちゃんのお母さんの所に行かない?」


「日向先輩、せめてもう少し2人をそのままにしておきましょう。せっかくの家族の再会ですよ」


「そうだな。やっと出会えたんだ。もう少しそっとしておこう」



 三村親子が抱き合うシーンを俺達はしばらく見ることになる。

 そこには仲むつまじい親子の姿があった。



「空先輩、うらやましいですか?」


「別にうらやましくない」



 確かに俺には親はいない。でも、別にうらやましいとかそんなことは思っていない。

 それなのに桜、お前は何でそんな楽しそうにニヤニヤと俺のことを見ているんだよ。



「貴方達が悠里を助けてくれたんですか?」



 気づくといつの間にか、三村の母親は三村を連れ立って俺達の所に来た。

 よく見ると三村に面影がある美人である。とても高校生の娘がいるとは思えない美貌だ。

 20代と言っても充分通用する。三村が大人になると、この人みたいになるのかと思う。



「はい、そうです」


「ありがとう、悠里を守ってくれて」



 そういうと三村の母親は頭を下げた。



「いいえ、とんでもないです」



 相変わらずこいつはどんな時でもさわやかに笑うんだな。さすがは学園の王子様。俺には絶対できない芸当だ。



「もしかして、貴方が日向君?」


「はい、そうです。僕のこと知ってるんですか?」


「やっぱりそうなのね。家だとよく悠里が楽しそうに貴方の話をしているわ」


「ちょっと! お母さん!!」



 隣にいた三村が慌てて母親の口を塞ぐ。楽しそうに笑う母親と顔を真っ赤にして慌てる三村。

 このシーンだけ見ていると仲のいい親子の姿に見えた。



「空先輩もうらやましいですか?」


「何が?」


「いえ、何でもありません」



 俺の制服の裾を掴みながら、桜は俺のことを見上げてそう言う。

 だからなんだよ、さっきからそのにやにや笑いは? やめてくれ。



「そういえば、お母さんが先輩のこと心配してましたよ」


「桜の母親が!? 何で?」


「ちゃんとご飯を食べてるの? とか体調崩してないかとか色々聞かれたので、ちゃんと元気にやってるって答えました」



 そうか、桜の母親も俺のことを心配してくれていたのか。

 桜の母親は俺と日向が通っていた中学の養護教諭だったから、俺もよく知っている。

 性格は適当な人だが、娘思いのいい人だった。保健室に行くたびに、娘の桜の話をされたのをよく覚えている。



「余計なことを言わなくてもいいのに」


「余計じゃないですよ。お母さんは先輩の家にお泊りにいくのも快諾してくれたんですから。感謝してください」


「感謝ねぇ」



 あの人のことだから、心配というより面白半分で外泊許可を出してるだけだろ?

 しかも相手は男の家だというのに、よく許可をしたよな父親も。



「あっ、その目は信じてないですね」


「別に信じるも信じないもない。桜の両親が許可してるなら別にいい」


「先輩って物事を淡白に考える時ありますよね?」



 別に淡白に考えてるわけではない。考えることを放棄しているだけだ。

 余計なことを考えると、俺に被害が来るから。



「もしかして、日向君の後ろにいるのは山村君?」


「俺のことも知ってるんですか?」



 先程迄日向と話していた三村の母親が俺の方を見て驚いていた。

 まさか俺のことを知ってるとは思わなかったな。三村は日向以外の人のことも話していたのか。



「はい、娘からよく話を聞いてます。こわもて豪面だけど、気の小さい人がいるって」


「三村!!」



 三村は全力で俺から目をそらしている。

 おい、こら。自分の母親になんて事を吹き込んでるんだよ。



「だって、本当のことだからしょうがないじゃない」



 確かに言っていることに間違いはないけど‥‥‥。

 三村のやつめ。いつも家で俺のことをどんな風に言ってるんだよ。

 絶対日向の腰ぎんちゃく的な扱いをしてるだろ。間違いない。



「でもね、悠里はこんなことも言ってたわ。山村君は誰よりも優しくてお節介焼きで、いつも自分を犠牲にして周りのことを考えてくれるおひとよしだって」



 おう、話はそこまでにしよう。途中までいい話だと思ったが、最後の一言で台無しだ。



「三村、後でちょっといいか?」


「お母さん、話はそれまでにして自己紹介しましょう」


「あら、そうだったわ」


「俺のこと無視!?」



 まぁいいけど、どうせ取り繕ったって俺の評価は変わらないし。

 改めて、俺達は三村の母親の方を見た。



「初めまして。悠里の母親の三村祥子といいます。いつも娘の悠里がお世話になっています」


「こちらこそ。」


「日向、自己紹介」


「そうだった。僕は柴山日向っていいます。悠里ちゃんとはクラスメイトです」


「俺は山村空です。同じく三村のクラスメイトだ」


「あたしは木内桜って言います。日向先輩と空先輩の中学の後輩です」


「あら、最後の子は可愛いわね」


「ありがとうございます」



 可愛いって言われた桜は笑顔だった。

 桜はそういわれるのが好きだからな悪い気はしないんだろう。



「そういえばせっかくだから空も悠里ちゃんのこと名前で呼ぼうよ」


「何で?」


「だって三村呼びじゃ、どっちがどっちかわからないじゃん」



 そりゃそうだ。確かに言ってることに間違いはない。

 俺は別にいい。だが問題は三村だ。三村が俺がそう呼ぶのを許してくれるかどうかなんだけど?

 三村のことだから絶対に嫌がりそう。現に嫌そうな顔を今もしてるし。



「俺は構わないけど‥‥‥三村はどうなんだ?」


「すっごく不服だけど、仕方がないわね」


「よし、それじゃあ2人でお互いの名前を呼んでみよう」



 日向、お前この状況楽しんでるだろ? お前の為を思って俺は下の名前を呼んでなかったのに、何を考えてるんだよ。

 そして桜。お前はそんな不満そうな顔をするな。後の俺の脛を蹴らないでくれ。地味に痛い。



「それじゃあ‥‥‥悠里って呼ぶな」


「そうねそしたら私も‥‥‥空って呼ぶわ」


「俺だけ呼び捨て!?」



 桜と日向には君付けやちゃん付けしてるのに、何で俺だけ呼び捨てなの?

 絶対不公平だ。こいつそんなに俺のことを下の名前で呼ぶのが嫌なのかよ。



「別にいいでしょ。貴方のことを何て呼ぼうと私の勝手だから」


「確かにそうだけど‥‥‥」



 なんだ、この俺が雑に扱われている感じ?

 桜や日向の方がよっぽど特別扱いされている気がする。



「これで大丈夫だね。そうしたら、さっき教えてもらった部屋に移動しない?」


「そうだな。そこで少し休もう」


「そんな場所があるんですか?」


「さっき須田さんに教えてもらった所です。そこで少し休みましょう」


「でも、あの場所って他の人を入れても大丈夫ですか?」


「別に大丈夫だろ」



 あのおっさんから他の人を入れてはいけないって言われてないし、さすがにこれぐらいは許してくれるだろう。


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