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懐かしい声

「凄いね! 魔力を込めなくても、つまみをひねるだけで炎が出るんだ!」


「はい。ガスコンロの事ですね?」


「うん! 桜おねえちゃん達ってすごいんだね」


「別に俺達が凄い訳じゃないけどな」



 俺達がすごいわけじゃない。この建物を作った人達が凄いんだ。

 だからクルルから褒めらることは嬉しいけど正直複雑である。



「それにボタンを押すだけで部屋の温度を変えられるものもあるなんて画期的だよ」


「エルフの町ではそういう物はないですからね」


「うん!」



 一通り部屋の紹介が終わり、玄関の外でみんなを待つクルルは興奮気味に話す。

 何でも魔力を込めたりして物を動かしていたエルフの町とは違い、ボタン一つで何でも出来るこの世界の電子機器に感動しているみたいだった。



「魔力を込めて物を動かすのか」


「うん! あたし達の町ではそうやって火をおこしたりしてたんだ」


「それだったら魔力がない空君達は向こうの町ではどうしていたんだい? 何も出来なかっただろう」


「俺達は魔力石というものに魔力を注ぎ込んでもらって、それを使って動かしていました」


「なるほど。そんな便利なものがあるのか」


「はい。俺達は魔法が使えないので、それを使って火を起こしたりしていました」



 こんなことが出来たのも後日ラックスさんからもらった家を改装してくれたからだ。

 魔力石を使えば動くように必要な家財道具を改造してくれたのである。

 そのおかげで俺達は快適にエルフの町で暮らせていた。



「先輩」


「由姫、そっちも終わったか?」


「あぁ、ミアさんに電化製品類の操作方法を全て教えた」


「ありがとう。ミアさん、電化製品の使い方はわかりましたか?」


「前野さんの説明でわかりました。ここでも問題なく生活が出来そうです」


「それならよかった」


「それにしても貴方達の世界の技術は凄いですね。ボタンを押すだけで光が灯ったりして。前野さんから一通り説明は受けましたが、我々では思いつきません」


「まぁ、そうだよな」



 俺達の世界の技術が凄いというのは俺も同意だ。

 エルフの町にしばらくいて、強く思った。



「ミアさんがこの様子じゃ、きっとティナも‥‥‥」


「空!!」


「やっぱりな」



 あれだけミアさんが驚いていたんだ。俺達の世界の物に興味深々だったティナのテンションが上がらないはずがない。

 目がキラキラと輝くティナは興奮気味に俺達の前に現れた。



「あの機械凄いわよ!! 筒みたいなものに服を入れてボタンを押せば勝手に洗濯をしてくれるの!! その上何もしなくても自動で乾かしてくれるの!! こんな凄いもの初めて見たわ!!」


「ティナが熱弁してくれてる機械って、洗濯機の事だろ?」


「そうそう!! それに壁についているボタンを押すと自動的に家が光るなんて活気的だわ!!」



 俺の予想通りティナの話は止まらない。興奮した様子で電化製品類の事を話す。

 その様子は本当に俺達の世界の物に感動しているように思えた。



「おねえちゃん、おとなげな~~い」


「まだ幼いあんたにはわからないわよ!! この世界の技術がどれぐらいすごいかって!!」


「まぁまぁまぁ。ティナも興奮する理由はわかるけど、そろそろ落ち着こう。クルルもな」


「「はい」」



 ティナやイリス、ミアさんにクルル。この中でやはり最年少のクルルだけは1番冷静だ。

 普段から家事をあまりやらないからというのもあるけど、1番小さい子供が1番冷静なのが少しだけ面白かった。



「全員揃いましたけどこれからどうしますか? 春斗さん?」


「とりあえずうちに来ないか? 今日は君達の歓迎会をしよう」


「この人数が家の中に入るんですか?」


「たぶん‥‥‥おそらくギリギリ大丈夫なはずだ。たぶん」



 ギリギリといっても俺が借りた部屋の間取りを考えたら、廊下まで人が溢れないか心配になる。

 俺やティナ達だけなら大丈夫だとは思うけど、クルルが連れて来たライト達も含めれば確実に入りきらないだろう。



「それにそろそろ良子も帰ってくると思う」


「お母さんが帰ってくるんですか!?」


「あぁ。もしかしたらもう家に帰ってる可能性すらある」


「そういえばなんだかんだもう夕方だな」



 エルフの町を出発したことも含め、キマイラと戦っていたせいで忘れていた。

 マンションの外をみると、ちょうど地平線に沈む夕日が見えた。



「それじゃあ5階に案内するよ。みんなエレベーターに乗って」


「わかりました」



 春斗さんに連れられてエレベーターに乗り5階へと行く。

 5階と表示されていたエレベーターが3階に降りて行き、そのエレベーターに乗って5階へと来た。



「もしかしたら既に良子が帰ってるかもしれないな」


「その可能性はありますね」


「何で空達はその良子って人が戻って来たと思ってるの?」


「エレベーターの表示だよ。あのエレベーターはさっきまで俺達しか使ってなかったのに5階に止まっていたからそう思ったんだ」


「通常エレベーターは降りた階でとどまる。そのエレベーターが5階で止まっていたということは、誰かがエレベーターを使用したってことだ」


「なるほど。そういうことね」


「5階に住んでいるのは僕以外だと良子しかいない。だから帰ってきていると思ったんだ」



 少し考えればわかるすごく簡単なロジックだ。

 春斗さんがこういう以上、5階にいるのは良子さんの可能性が非常に高い。



「まずは僕達が住んでいる家に行こう。そこに行けば良子が帰ってきているかわかる」



 5階に着くと春斗さんがエレベーターを降りて家のドアの前に立つ。

 着ていた服のポケットから鍵を取り出すと、それを差し込みドアを開けた。



「ただいま」


「おかえり~~」



 部屋の奥から懐かしいけだるい声が聞こえる。

 その声は学校で俺達が聞いた声そのままだ。



「お母さん」


「桜」



 後ろにいた桜の背中を軽く押してやる。

 俺の前に出た桜は春斗さんの隣、玄関の前に立った。



「春斗~~、湊君や桜乃ちゃんは見つかった? たぶん日向君がいるから大丈夫だと思うけど‥‥‥えっ!?」



 部屋のドアを開けて俺達を見る良子さんが固まった。

 その様子はまるで幽霊を見ているようである。



「お母さん」


「桜‥‥‥桜なの?」


「うん」


「本当の本当に桜なんだよね? 私は夢をみているんじゃないよね?」


「うん。あたし‥‥‥桜だよ」



 俺達の姿を見て呆然とする良子さん。

 その手はわなわなと震えている。手だけじゃない。体全体が震えていた。



「桜!!」


「ただいま、お母さん」



 ドアから勢いよく出て飛び出した良子さんに桜も抱き着く。

 泣き叫びながら再開を喜ぶ桜と良子さんを俺達は黙って見守るのだった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。

明日も更新する予定なので、よろしくお願いします。


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