桜の我儘
「着いたよ、ここが僕達が住んでいるアパートだ」
「アパート?」
「これはアパートと言うよりマンションですね」
市役所から10分ぐらい車で走った所に春斗さん達が現在住んでいるアパートがあった。
その見た目はアパートというよりはマンションと言った方がいいだろう。
鉄骨鉄筋造りの見た目の小綺麗な5階建ての建物が俺達の目の前にはあった。
「凄いわね。ここに来るまでの道を見てもそうだけど、貴方達の世界の建築技術は進んでるわ」
「そうだな。建物の建て方は知らないけど、作った人は凄いと思う」
「空はこの世界の住人なのに、建て方も知らないの!?」
「当たり前だろう。元々俺はただの高校生だったんだから。こういうのは専門の知識を持った人達がお金をもらって作るんだよ」
建築関係の仕事をしていればわかるのかもしれないが、あいにく俺にそんな知識もない。
唯一説明できるとすれば、建築専用のスキルを持つやつだけどそんな奴は俺の知り合いにはいない。
「う~~~」
「クルルちゃん、起きましたか?」
「うん? もう着いたの?」
「はい、着きましたよ。寝起きですが、動けますか?」
「大丈夫だよ」
う~~んと両手をあげ背伸びをして、クルルは起き上がった。
眠そうに目元をこすりながら降りる準備をしている。
「クロとシロは起きたか?」
「グゥ」
「クゥー」
「よし、そしたら降りるか」
近くの駐車場に車を置き、車を置いた俺達はアパートの入口の前まで歩く。
入り口には先に出発していた日向達がいた。
「空!! 遅いよ!! 何やってたの?」
「悪い悪い。ちょっと出発までに時間がかかって‥‥‥」
「時間? 何をしてたの?」
「ちょっと桜達と話し合いだよ。俺達の今後についてな」
間違っていない。俺は決して間違っていることは言ってないはずだ。
桜達への弁解。あれは今後の俺達の活動について重要な話のはずだ。
「ちょっと桜ちゃん、一体空と何を話してたの?」
「あたしと空さんの今後についてです」
「桜ちゃん、まさか空と別れたの!?」
「別れるわけないだろ。そんな話はしていない」
桜も桜で変な言い方をするなよ。誤解されるだろう。
案の定悠里は変な目で俺の事を見ている。
悠里だけでなく、七村までジトっと俺の目を見ていた。
「桜さん、何かあったら私に相談してくださいね。私はいつでも桜さんの味方ですから」
「ありがとうございます。何かあれば桜乃ちゃんにも相談させていただきます」
固い握手を交わす桜と七村。桜と七村の間にある絆がどんどん強固になっていく。
最初は俺達の事を敵視していた七村だが、桜には心を開いているように見える。
「クルルといい七村といい、桜は年下キラーなのかもな」
「空、何か言った?」
「何でもない。ただの独り言だ」
俺の知らない間に桜の仲間が増えていく。
そのうちクルル軍団ならぬ桜軍団もできるのかもしれない。
「それよりもここが日向達が住んでいる所か」
「うん、そうだよ」
「僕と良子が5階に住んでいて、日向君と悠里ちゃんが4階に住んでいる」
「なるほど。俺達はどこに行けばいいですか?」
「今なら3階のフロアーが空いているから、そこに案内しよう」
「お願いします」
春斗さんの後について行き、俺達はエレベーターホール前につく。
エレベーター脇にあるボタンを操作すると、エレベーターが降りて来た。
「まだこの街は電気が通っているんですね」
「電気だけじゃない。ガスや水道も使えるんだ」
「全てのインフラが使えるんですか!?」
「これも三葉校長の能力のおかげなんだ」
「結界のスキルですか?」
「そうだよ。このスキルを使用している際、結界の中にある建物のインフラは全て使えるみたいなんだ」
「相変わらずチート級のスキルですね」
エルフ達が作った霧の結界にはそういう能力はなかったはずだ。
今考えても三葉校長のスキルはとんでもない。フランシスが学校を襲った理由も今ならわかる。
「こんな転移道具まであるなんて」
「この世界の人間の技術水準は凄いな」
「私の町にもこんな便利なものが欲しい」
ティナ達異世界組はエレベーターを見て驚いている。
その中で一番冷静なのが最年少のクルルと言うのが、またなんとも言えない。
「一体どういう作りをしているのかしら? ぜひ製作者の話を聞きたいわ」
「ティナ、エレベーターが珍しい事はわかったけどいい加減乗ろう」
「わかったわ」
全員でエレベーターに乗り3階まで行く。3階で降りた所で部屋まで案内された。
「3階のフロアーはまだ誰も使ってないからどこでも使って欲しい」
「4階以降の部屋は使えないんですか?」
「使える場所もあるけど、4階と5階に別れてしまうので出来れば君達はひとまとめでいてほしい」
「わかりました。お引き受けします」
つまりティナ達異世界組の統括を俺がやってほしいと言っているのだろう。
エレベーターの使い方もわからないので無理もない。
「そしたら部屋割りはどうしましょう?」
「簡単だろ? 俺がイリスと一緒の部屋になるから、桜と由姫がティナとミアさんのどちらかと一緒になればいい」
「それはダメです!!」
「何でダメなんだよ、桜?」
「空さんはあたしと一緒の部屋じゃないと駄目です」
「この場合はしょうがないだろう」
異世界組であるティナやイリス、ミアさんをさすがに1人には出来ないだろう。
エレベーターで驚いていたんだ。きっと家には電化製品が置いてあるので、使い方を教えないといけない。
「でも、あたしは空さんと一緒がいいです」
「桜の気持ちは嬉しいけど、さすがに今回は難しいな」
「空、私は別に大丈夫よ。部屋も兄さんと同じ部屋に入ればいいし」
「でもなぁ」
「その代わりクルルの事を空達にお願いしてもいい?」
「クルル?」
「そうよ。クルルとライト達の面倒を見てくれれば、私達は大丈夫」
「う~~ん。クルル達の面倒か」
「あたしは別に大丈夫ですよ。クルルちゃん達はいい子なので、問題ないです」
「あたしもいいよ! むしろ桜おねえちゃん達と一緒にいたい!」
「2人はよくても‥‥‥春斗さん」
「わかった。みんなさえ良ければ、僕は大丈夫だ」
「ありがとうございます」
春斗さんの許可も出たなら、問題ないだろう。
最初は冷や冷やしたけど、どうやら許してくれたみたいだ。
「ちょっと、空」
「なんだよ、ティナ」
「クルルがいるにしろ、せっかく2人にしてあげたんだから感謝しなさいよ」
「もちろんだよ。気を使ってくれたティナ達には感謝してる」
「あとクルル達の事も宜しくね」
「よろしくしなくても、クルル達は大丈夫だろう」
エルフの町で一緒に暮らしていた時も特に問題はなかった。
ちゃんと朝は自分で降りて来たし、風呂等も桜と一緒に入っていたので特に問題はないはずだ。
「そしたら部屋に入って荷造りをしたらここに集合しようか」
「ティナさんやイリスさん達には電化製品の使い方を僕が教えるね」
「ミアさんには私が教えよう」
「私も行くわ」
「お願いします」
それから俺達は一旦解散して、それぞれの部屋へと入る。
部屋に入って俺達は荷造りをするのだった。
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