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気高き種族

「そうか。君達はキマイラに襲われたのか」


「はい」



 あれから神代さんの前で俺達はキマイラと戦った時の事を話した。

 エルフの町からここに向かうまでの間に日向達の車両がキマイラに襲われたこと。

 その囮として俺達がキマイラと戦った事、全てを神代さんに話した。



「そのキマイラはどうなったか聞いてもいいかな?」


「はい。襲って来たキマイラは俺達が倒しました」


「ほぅ、君達が倒したのか」


「そうです」



 神代さんが俺達の事を値踏みするように眺めている。

 その目は本当に俺達が倒したのか、疑っているように見えた。



「神代さん、僕も空君達がキマイラを倒した所に立ち会ったので間違いありません」


「春斗さん」


「そうか。木内君がそう言うなら間違いはなさそうだな」



 どうやら春斗さんの口添えのおかげで、俺達の話を信じてもらえたみたいだ。

 これで少しは神代さんの心象が良くなってるといいけど。



「だからさっきから僕達も言っていたじゃないですか。空達がまだ戦っているから応援を出してくれって」


「こうして無事にここまで来れたのだから問題はなかっただろう。今無事にこうして私と話しているのだから、何も問題はないはずだ」



 確かにそのように言われてしまうと反論できない。現に俺達は無事にここまで来れたのだから、神代さんの意見が正しいようにも思える。



「でもそれはあくまで結果論じゃないですか!! 一歩間違えれば、空達はキマイラにやられて‥‥‥」


「日向、もういい」


「でも!!」


「俺達がキマイラを倒して無事街にたどり着けた。だからこの問題は解決だ」


「空がそこまで言うならいいんだけど」



 神代さんに食ってかかろうとした日向も大人しく引いてくれたみたいだ。

 日向が感情的に怒ってくれるのは嬉しいけど、今はそういう事を話す時ではない。

 それよりもこの人には他に聞きたい事が山程ある。



「神代さんに聞きたいことがあります」


「私に聞きたいこと? それは何かな?」


「はい。今回も山にキマイラが出現しましたが、神代さんは以前にも山にキマイラが出たことはご存じですか?」


「報告は受けてある。今から数週間前に柴山達が襲われた話だろ?」


「そうです。その事については何か思う事はありますか?」


「そうだな‥‥‥人間を襲うモンスターが山に現れたとしか、思わなかったな」


「そうですか」



 神代さんの口ぶりをみているが、特に変な所はない。

 現状キマイラ襲撃に神代さんが絡んでいるという事はないと思ってもいいだろう。



「私の方からも君達に聞きたいことがある」


「何ですか?」


「今回のキマイラの件、この前あった山での襲撃の件も含めてどう考えている?」


「俺の予想では人間が嫌いな魔族が起こした事件だと思っています」


「なるほど。君達はそう思ってるのか」


「はい。そうです」


「そうか。君達はそうだとしても、我々はそう思えないんだよ」


「どういうことですか?」


「この前起こった山で起こった事や先程の件にしても、もしかするとエルフ達が仕組んだことじゃないかって思っているんだ」


「なっ!?」


「そんな事エルフ達がするわけがないじゃない!!」


「ティナ!!」


「エルフは貴方達とは違って正々堂々と戦うわよ!! こんな不意打ちのような姑息な真似なんてしないわ!!」


「落ち着けティナ!! お前が怒る理由もわかるけど、ここは堪えてくれ!!」


「でも‥‥‥」


「ここで暴れた所でどうなる? 余計に人間達からエルフは野蛮な種族だって思われるぞ!!」



 ティナの気持ちもわかる。初対面なのにいきなりお前達が悪いと言われたのだ。怒るのも仕方がない。

 それにいきなりそんな事を言う神代さんも問題だ。こんなことを言えばもめることもわかっているのに、何がしたかったのだろう。



「神代といったな」


「君は確か‥‥‥エルフの族長代理だったな」


「そうだ。今の発言は我々エルフを侮辱するという事に繋がるが、そう捕らえてもよいのだな?」


「とんでもない。侮辱なんてしてませんよ」


「先程の発言はそうとしか考えられなかったが?」


「よく考えて下さい。1度目の襲撃の時も、山に出現したキマイラが人間を襲っていたと日向達から報告を受けました。だがその報告ではその場にエルフがいたにも関わらず、エルフには目もくれずキマイラが人間を襲ったのだから、我々がそう思っても無理はないと思いませんか?」


「それなら今回の出来事はどう説明するんだ? 柴山達が乗っていた乗り物に、俺‥‥‥いや、私やミアも乗っていたんだ。別に人間だけを狙ったと言えないだろう」


「それはイリスさんやミアさんが乗っていた事を知らなかっただけでは?」


「そうとも言えるな」


「なら‥‥‥」


「だけどこういう考えも出来ないか? キマイラがエルフ族代表と猫族ケットシー代表が乗っていた乗り物を狙って襲撃したと」


「でしたら1回目の襲撃はどう説明するんですか? 柴山達が襲撃されたことは?」


「それもエルフを誘い出す口実の可能性は? エルフと人間を会わせて会談の場を作り、その道中代表の首を取る為に仕組まれた工作の可能性も否定できないはずだ」


「ばかばかしい。そんなに言うのなら、証拠はあるんですよね?」


「ないな。俺が言ったのはあくまで仮説だ。それを裏付ける証拠等1つもない」


「だろう。なら‥‥‥」


「だがそちら側だってさっきの話を裏付ける証拠はないだろう。お互いキマイラを使ったという決定的証拠がないのだから、これ以上この問題で言い争うのはお互いやめないか?」


「‥‥‥そうだな。貴方の言う通りだ」


「それではこの話は終わりにしよう」



 神代さんはそれ以上の事を言ってこない。どうやらこのキマイラについての話は一旦保留みたいだな。



「(何事もなく終わってよかった)」



 イリスが話し始めた時はティナ同様何を言うか心配したが、まともな事を言ってくれてよかった。

 昔だったら頭に血が上ってティナ見たいになっていただろう。

 なんだかんだいって、イリスも成長しているのだと思った。



「神代、最後に私から貴方に1つだけ忠告をしておく」


「何だ?」


「我々エルフ族は自分達は気高き種族だと思っている。今回の事は俺が族長代理という事で水に流すが、もし次にこのような事があれば容赦はしないぞ」


「肝に銘じておきます」



 どうやらイリスはイリスなりに思うことがあるようだ。

 普段は嫌な奴だけど、こいつにもエルフとしての教示があるのかもしれない。

 


「(イリスといいティナといい、エルフはみんなプライドの高い奴ばかりだ)」



 だからこういう時は頼りになる。普段は少し面倒だったりするけど。

 


「神代さん、この話し合いはこの辺にして続きは明日全員集合してからにしませんか? キマイラの襲撃もあってみんな疲れてますので」


「そうだな。彼等の宿泊場所はどうするつもりだ?」


「日向君達が住んでいるアパートに連れて行こうと思います。あそこならまだ空き部屋もありますので」


「そうだな。ではそのように進めてくれ」


「わかりました。では僕達はこれで。みんな行こう」



 春斗さんが話を打ち切り、俺達は部屋を出る。

 部屋を出た俺達はそのまま市役所の外へと足を運ぶのだった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


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