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結界に囲まれた街

 街へと向かう道中は特に何もなかった。

 キマイラの仲間が襲ってくるわけもなく、先程の喧騒はどこへやら道中は静かだった。



「そういえば春斗さん」


「どうしたんだい空君?」


「街の中にはどうやって入るんですか? 俺達も街に行ったことがありますけど、結界の中には入れませんよ」


「そうです。あたし達街の周りを一周しても入れる場所が見つかりませんでした」



 桜のいう通り俺達はこの数ヶ月、街の周りを隈なく探索をした。

 それだけ時間をかけたけれども入口らしき所は見つからなかった。どうやって春斗さん達が結界の中を出入りしていたかが気になる。



「あの結界は前の学校にいた時とは少し性質が違うんだ」


「どういうことですか?」


「今までは許可された人はどこからでも中に自由に入ることが出来たが、今は中に入る場所も限定されているんだ」


「春斗さんがいう、結界の中に入れる場所は何処ですか?」


「そこに今向かってる。山を降りてから少し遠い場所にあるんだ」



 車を走らせる春斗さんはそのように話す。山を降りてからも結界の周りを走っていたのにはそういう理由があったのか。



「この周りの結界も色々とルールがあったのね」


「エルフの町の結界と同じですね」


「いや、もしかしてエルフが作った霧の結界よりも条件が厳しいんじゃないか?」


「空のいう通りよ。私達の町の結界は指定した人ならどこからでも入れる仕組みだから、この結界の方が複雑な仕組みになってるわ」



 ティナが認めるという事は、よっぽど精巧な作りになっているのだろう。

 結界を成長させたというのはどうやら本当だったみたいだ。



「ここだ」


「ここ? 見た所何もないですけど?」


「この場所を触れば自動的に結界が開く」



 自動車を降りた春斗さんは結界のとある部分に触れた。

 結界に触れるとその部分を中心に結界が開いた。



「凄い」


「こんなギミックになっていたんですね」


「そう。こうやって結界の外側を触ることで中に入ることが出来るようになるんだ」


「こういう仕組みになっていたのか」



 それなら俺達が中に入るのは無理だったな。

 結界も新しく張り直した以上、中に入る為の許可を俺達はもらっていないので入ることが出来ない。



「お父さん」


「桜? どうしたんだ?」


「この結界の中にモンスターは入れないんですよね?」


「あぁ。モンスターの類は中には入れないようになっている」


「ってことはライト君達は‥‥‥」


「あっ!?」



 そこで気づいた。クルル達の事を。

 正確にはクルルが連れている動物達。元はモンスターなので普通なら入ることが出来ない。



「心配しなくても大丈夫だよ!」


「クルル?」


「ライト達はみんな入れるから大丈夫」


「クルル、そんなに自信があるなら何か根拠はあるんでしょうね?」


「だってライト達はあたしの友達だよ。だから入ることができるよ」


「クルルらしい根拠だな」


「その自信がどこから来るのか知りたいわ」


「入れるか入れないかはおいておいて、とりあえず試してみませんか?」


「そうだな。やらないよりはやった方がいい」



 そもそもモンスターはこの結界の中に入ったことがないのだから、試してみる価値はあるだろう。



「春斗さん、もしこの結界にモンスターが入ろうとした場合どうなるんですか?」


「以前三葉校長の言っていた話では、見えない壁に阻まれて中に入れないはずだ」


「それなら結界の中に入る前にぶつかるんですね」


「そうらしい。僕も実際結界の中にモンスターを入れたことはないから、どうなるかわからないけど‥‥‥」



 春斗さんは戸惑っているが試してみるしかない。

 正直リスクしかないことだが、クルルがライト達を結界の中に入れたいならやって見るしかない。



「問題は誰が先陣を切ってこの中に入るかだけど‥‥‥」


「ライト君達に質問しますが、誰か1番先にこの中に入りたい人はいませんか?」


「グマ!」


「クマ!」


「グゥ!」


「クゥー!」


「全員かよ」



 勇気があるのはいいけど逆に困ったことになった。

 誰を中に入れていいのか悩む。



「クルルは誰がいいと思う?」


「う~~ん、そうだな。ライトとかどう?」


「その理由は?」


「ライトが1番勇気があるから。何があってもライトなら絶対何とかなるって思う」


「そうだな」



 そういえば最初にティナと出会った時、オーク達と戦っていたのがライトだ。

 ムーンを逃がしたりティナを守る為に戦った所とか意外と度胸もある。



「そしたらライト、こっちに来てくれ」


「グマ!」


「ムーン達も不満があるかもしれないけど、今はそこで待っていてくれ」



 俺はライトを抱きかかえるとそのまま結界の前まで来た。

 そして結界の前まで足を運ぶ。



「一つ確認をしますが、俺達は結界の中に入れるんですか?」


「あぁ、君達は全員結界の中に入れるようにしてある」


「わかりました。そしたら由姫、結界の中でライトが入るのを待っていてくれないか?」


「わかった。先輩の頼みなら快く引き受けよう」


「ありがとう」



 由姫は結界の中へと入っていく。由姫が結界の中に入ったことを確認した後ライトを地面に降ろした。



「それじゃあライト、結界の中に入ってくれ」


「グマ」


「中に由姫がいるから、入ったら由姫と一緒に待ってほしい」


「グマ!」



 返事をしたライトは結界の方へと歩いていく。

 結界の前まで行くとライトは問題なく中へと入れた。



「予想以上にすんなり入れたな」


「こんなに簡単に入れるなんて、ちょっと拍子抜けしちゃうわね」


「春斗さん、本当にこの結界の中にモンスターは入れないんですか?」


「もちろんだ。そうじゃなければ、今頃この街はモンスターの巣窟になっているだろう」


「確かにそうですね」


「ならライト君が特別って事でしょうか?」


「そんなことないだろう。ライトはティナが山で拾ったんだぞ。特殊な能力はないはずだ」


「じゃあどうして入れたんでしょうか?」


「それは俺もわからない」



 ライトが中に入れたのは謎のままだ。どうして俺も結界の中に入れたかわからない。



「空おにいちゃん。あたし達も中に入っていい?」


「あっ、あぁ。いいよ」


「みんな! 空おにいちゃんから許可が出たから中に入ろう!」


「ちょっと待てクルル。そんな走らなくても‥‥‥」



 結界に向かって走り出すクルル軍団。先頭にいるクルルを筆頭にどんどん結界の中へと入っていく。



「ライト君が通れたからムーンちゃんが通れたのもわかりますが、クロ君とシロちゃんも中に入れましたね」


「どういう理論かわからないけど、モンスターも結界の中に入れるみたいだな」


「まずいな。モンスターも入れるとなると三葉校長に報告をして対策を立てないといけない」



 春斗さんの額から一筋の汗が滴っている。

 どうやらライト達が中に入れたのは春斗さんからしても予想外だったらしい。



「一旦この事は置いておきませんか? きっと中で日向先輩達が待っています」


「桜のいう通りだな。早めにキマイラ達の事についても話したい」



 日向達が何者かに狙われてるってことも話さないといけない。

 出来れば早急に人のいない所で信頼できる人間だけを集めて話がしたい。



「そしたら車ごと中に入れるから、結界の中で待っていてくれ」


「わかりました。桜、ティナ、行こう」


「はい」


「わかったわ」



 桜とティナを連れて結界の中に俺達は入る。

 結界の中では由姫とクルル達が待っていた。



「先輩。何を話していたんだ?」


「別に大したことは話してないよ」


「街に着いたら日向先輩達と合流してさっきまでの事を報告しようって話してました」


「なるほどな。先輩はその事をいつ話そうと思っているんだ?」


「出来るだけ早く。人のいない所で話そうと思ってる」


「それは私達も同席してもいいのだな?」


「もちろんだ。出来れば桜と由姫とティナにも同席してほしい」



 俺1人よりもみんながいた方がいいだろう。色々な意見が出た方が対策も立てやすい。



「空おにいちゃん。あたしは?」


「クルルは‥‥‥そうだな‥‥‥」


「もちろんクルルちゃんも一緒ですよ」


「やったぁ」


「ちょっと待て、桜。さすがにクルルは‥‥‥」


「いいじゃないですか。もしかするとあたし達よりもいい意見を言ってくれるかもしれませんよ」


「でも‥‥‥」


「それにライト君達の事も考えないといけません。だからクルルちゃんもいた方がいいと思います」


「そうだな。桜のいう通りだ」


「じゃあクルルちゃんも参加でいいですね?」


「あぁ、そうだな」


「それじゃあ決定です」



 何故だろう。桜に丸め込まれた気がする。

 当の桜はニコニコと俺の隣で笑うばかりだ。



「みんな、どうしたんだい? 日向君達がいる本部に連れて行くから早く乗ってくれ」


「わかりました。今乗ります」



 結局キマイラやライト達の事については後で話すことを決め車に乗り込んだ。

 そして日向達がいると言われている場所へと車を走らせたのだった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


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