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再会

「千葉さん相手にたいしたもんだな、お前達は」


「そんな事ないですよ」


「そんな謙遜することは無い。当然の権利だ。むしろめちゃくちゃなことを言っている、あっちがおかしい」



 確かにそうだ。あの人達は自分達は戦わないのに、ここを守って欲しいとかおかしなことを言っている。

 それでデパートのものは俺達のものだから勝手に使うなって? ふざけるなといいたい。

 正直日向が何も言わず条件を飲もうとしたら、俺があいつ等のことをぶん殴っていた。

 これで少しはすっきりした。まだイライラは収まらないけど。



「あっ、そうだ! 部屋に向かう前に、行きたいところがあるんですけど?」


「いいだろう。どこに行きたい?」



 そこで俺達は須田という男に、ここに来た事情を伝えた。

 自分達の自己紹介も合わせて行い、その間須田はうんうんと頷いているだけであった。



「なるほど。事情はわかった。それでこんな危険なところまでわざわざ来たのか」


「はい」


「それで、誰の両親を探してるんだ?」



 日向や桜の目がすっと三村の方へ向いた。

 先程から三村は借りてきた猫のように一言も話していない。

 母親の安否が気になるのか、ずっと静かに俯いたままだ。



「私のママです」


「そうか。何か特徴を教えてくれ」



 三村は自分の母親の特徴を言う。須田は顎髭を擦りながら、何かを考えているようだった。



「悪いな。俺もわからない」


「そうですか」



 まぁそうだよな。こんな大勢の中から、ピンポイントに三村の母親なんかわかるわけがない。

 よっぽど特徴的な人物じゃない限りは。



「ここに避難してきた人達は、みんなさっきいたエントランスか2階の廊下にいる。人探しをするなら、そっちに行った方がいいだろう」


「ありがとうございます」


「部屋の場所がわかれば、後は好きに行動していいぞ」


「ありがとうございます」



 そして部屋の前まで着くと須田は何も言わずに立ち去った。

 今ここにいるのは俺達4人だけである。他には誰もいない。



「一体あの人達は何を考えてるの?」


「さぁな」


「でも、こんな部屋も用意してくれたし悪い人ではなさそうだね」



 確かに千葉と藤山はあまり信用できそうに無いが、須田のことは多少信用できそうだ。

 他の人が廊下で寝ていたのに俺達だけ、部屋を与えてくれた。

 だが、それも俺達が戦えるから少しでも待遇をよくして、ここにいてもらおうという須田の考えだろう。

 須田なりの精一杯の歓迎だと思った方がいい。



「それよりも早く悠里ちゃんのお母さんを探しに行こうよ」


「そうだな。当初の俺達の目的は三村の母親探しだ」



 それが目的で俺達はここに来ているんだ。

 まずは三村の母親を探すことだな」



「早く探しましょう。お母さんも心配してるはずです」


「でも、こんな広い所どう探せばいいの?」



 口々にそうは言うが、三村の母親がどこにいるかなんてわからない。

 それぐらいここは広い。探すのだって一苦労だ。



「とりあえず須田さんが言っていた所に行って見よう」


「そうだな。どうせだったら色々な所も周ってみよう」



 まずはこのデパート内に何があるか、見て回ったほうがいい。

 三村の親を探すのも必要なことだがデパート内の地理を覚えるのも重要だ。



「とりあえずエントランスに行って見ましょう」


「そうだね」



 桜と日向の号令にあわせて俺達は歩き出す。

 三村は最後尾にいて、俺達についてくる。



「みん‥‥‥、‥‥‥う」


「三村、なんか言ったか?」


「別に何も言ってないわ! 早く行きましょう」


 俺と日向の背中を押す三村と一緒にエントランスに向かったのだった。

 1Fのエントランスに行くと、そこは酷い有様だった。



「ねぇ、空‥‥‥‥」


「やっぱりこうなってたか」



 生気のない人達が床に座り込み、精魂尽き果てた様子でうなだれている。

 中にはボロボロのバリケードによりかかって、天を仰ぎ笑っている人までいた。



「狂ってるな」


「どうしてこうなっちゃったの?」



 ここにいる人全員が全員、あのモンスター達に襲われた人達だろう。

 あまりの恐怖に壊れてしまっている人もいるかもしれない。


「何よ、ここ‥‥‥‥」


「みんな目が死んでますね‥‥」



 日向と三村の2人は周りの人達を見て絶句している。

 それもそのはずだ。全員が全員死んだ魚のような目をして虚空を見上げている。



「それより三村、この中にお前の母親はいないのか?」


「ママっぽい人は‥‥‥‥いないと思う」


「そうか、それなら上の階に行くぞ」


「はい」


「ちょっと、待って」


「何だよ、三村?」



 後ろを振り向くと、その場で立ち尽くしている三村。

 彼女の顔色は悪い。まぁ、そうだろうな。こんな光景を見させられてるんだから。



「あの人達はそのままでいいの?」


「別にいいだろ? それよりも今はお前の母親を探すのが重要だ」


「ちょっと‥‥‥」



 三村は何かいいたそうにしていたが、俺に何も言ってこない。

 そんな三村の肩に手を置く人間がいた。



「三村さん、僕も空の言う通りだと思う。まずはお母さんを探そう」


「うん、わかった」



 三村も日向に連れられ歩き始める。だが、多少なり共ダメージを受けてるのだろう

 その歩みはゆっくりとしていた。



「空先輩」


「何だよ」


「先輩はこの状況を知ってたんですか? ここの人達が皆あんな風になってるって」


「予想だけどな。さっき桜が言ってたことが本当なら、皆モンスターに苦手意識を持ってるから」



 あれだけ派手に暴れまわって、人を殺し人間を恐怖のどん底に落としたのだ。

 それにここに避難して来た人がいるとも聞く。そうなるとこの状況は考え付いた。



「でも、千葉さんや藤山さんは怖がってなかったですよ」


「それはあの2人がモンスターに襲われなかったからだろう」



 あの2人の場合は、俺の予想通りならきっとこのデパートから外に出ていないはずだ。

 だからあんな平気に無茶な要求をしてくる。モンスターのことをわかっていないから。



「それなら須田さんは?」


「あの人はjobを持っているだろう。だからちゃんと戦えばモンスターは倒せるってわかっているはずだ」



 だから、そんなに苦手意識がない。あれだけ冷静なのも、そういった理由があるはずだ。



「それよりも2階についたぞ。三村、ここにはお前の母親はいるかわかるか?」


「う~~ん、人が多すぎてわからないわ」


「それなら少し歩くぞ」



 俺を先頭にして2Fの廊下を歩いていく。

 1階は男性が多かったが、2階にいるのは女性や子供達が多い。皆その場で座り込み一様に疲れきった様子だった。



「2階や女の人や子供が多いですね」


「下の人達はバリケードを抑えてたからな」



 だから力の強い男性が下の階にいたのだろう。そんなことするなら、外に出て戦った方がいいとは思うけどな。



「何かおかしくないですか?」


「何がだ?」


「あたし達のこと、皆ジロジロ見ている気がします」



 そりゃそうだろうな。怯えているやつが多い中で、こんな堂々と歩いていれば、奇異な目で見られる。



「気のせいじゃないな」


「じゃあ」


「今は無視して歩け」


「はい」



 こういう時は気にしないで歩くに限る。

 全員がまるでおかしなものを見ているような、そんな好奇な視線が俺達には注がれていた。



「空、何か僕達おかしいのかな?」


「別に俺達はおかしくない」


「悠里先輩、お母さんは見つかりましたか?」


「いないわ。やっぱりここじゃなかったのかしら」



 そういった時、三村がある方向を見たまま固まった。

 俺達も止まって、三村が見ている方角を見る。そこに俺達のことをみる1人の女性の姿があった。

 力なく座っていた女性は立ち上がり、よろよろと俺達の方へと近づいてきたのだった。



「もしかして‥‥‥‥悠里なの?」


「ママ!? 本当にママなの!?」



 悠里はその女性に近づき、思いっきり抱きしめる。

 女性の方も三村のことを抱きしめ、涙を流していた。



「よかった、本当に無事で。もう貴方に会えないかと思ってた」


「私も。ママが無事でよかった」



 しばらく2人で抱きしめあう三村の両親である。

 他にも何か話しているようだったが、俺達の所からはよく聞こえなかった。



「よかったね、悠里ちゃんのお母さんが見つかって」


「まぁな」


「やっぱりこういうシーンは感動しますね、先輩」



 桜の言葉に俺は素直にうんということができない。

 むしろ2人の姿を見て、イライラとしてしまう。それが何故だか俺にもわからない。



「空先輩?」


「あぁ、悪い」


「どうしたんですか? 顔色悪いですよ」


「なんでもない。でも、見つかってよかったな」



 心の中でうごめる暗い気持ち。それを押し殺す。

 仲むつまじく抱きしめる三村親子のことを俺は静かに見守るのだった。

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