謎の飛翔体
「全員シートベルトをつけたかな?」
「はい!」
「じゃあ出発するよ。しっかりつかまってね」
全員が車に乗り込んだのを確認すると春斗さんがエンジンを入れる。
『ブォンブォン』という音が鳴りエンジンが着いたのを確認すると、春斗さんがアクセルを踏み車が動き出した。
「わっ!? 本当に動いてるわ」
「ティナさんは車に乗るの初めてですよね」
「うん。桜達に話を聞いた時はそんな夢のような乗り物あるのかって思ってたけど、本当にこういう乗り物があるのね」
「驚きましたか?」
「うん。ものすごく驚いた。これが貴方達の世界でいう科学というものの結晶なのね」
「そうだよ。他にもバイクや自転車っていう乗り物もあるから、街に行った時に見せてあげるよ」
「ありがとうございます、桜のお父様。ぜひ見てみたいです」
ティナは初めて見る物に興味深々のようである。
目をキラキラ輝かせていて、まるで子供のようだ。
「でも、これでよかったんですか?」
「何が?」
「イリスさん達の事です。いくら日向先輩や悠里先輩がいるとはいえ、生瀬君が運転する車にイリスさんとミアさんだけ乗せて本当によかったんですか?」
「あの2人がいいって言うんだから、別に構わないだろう」
座席分けは生瀬が運転する車に日向、悠里、七村、イリス、ミアさんが乗っている。
そして春斗さんの所に他全員が乗り込む事になった。
「春斗さんの車を譲ってくれたのは、きっとイリス達なりの気遣いだろうな」
「えっ!? あの兄さんに気遣いなんて出来たの!?」
「実の兄の事を悪く言うのはやめろよ、ティナ」
「そういう空だって同じ事を思ってるでしょ?」
「まぁ、そうだな」
俺も内心はティナと同じ気持ちで、イリスも何も考えてないんじゃないかと思っている。
だけどミアさんと2人でコソコソと話していたところを見ると、わざと俺達をこの車両に集めたように思えた。
「わぁーー! 本当に動いてるよ!」
「クマ!」
「ニューーー!」
「クルルちゃん、車の乗り心地はどうですか?」
「凄くいいよ! こんなすごい乗り物、初めて乗った!」
「そうですか。それはよかったです」
どうやらクルルもお気にめしてくれたみたいだ。
桜の隣でマリンを抱きしめながら外の景色を見てはしゃいでいる。
「みんなはしゃいでるな」
「車に乗るのが初めてなら、こういう反応も仕方がないと思います」
「それにしてはやけに冷静な奴もいるけどな」
「グゥ」
俺の膝に鎮座するクロだけはやけに落ち着いている。
桜や由姫、ティナの膝の上に乗っているシロ達ははしゃいでいるので抱きしめている側は大変そうである。
「クマ!」
「ムーンちゃんはいい子ですね」
「グマ」
「ライトは驚いているな」
「クゥーー!」
「シロ見て!! 私達がさっきいた場所があんなに遠くにあるわ!!」
「1番はしゃいでるのはクルルだと思ったけど、もっとはしゃいでる奴がいたな」
ティナのはしゃぎようはクルル以上だ。わざと窓際の席に配置したけど正解だった。
「それにしても、空君とこうして車に乗ってると思い出すな」
「何をですか?」
「学校にいた時だよ。あの時もこうして空君と前野さんと八橋君を乗せて、山から学校へと戻っていたよね」
「そんなこともありましたね」
「先輩が私に熱烈なアプローチをしていた時の話か」
「由姫!! それは誤解を生む発言だからやめろ!!」
「空さん、由姫ちゃんに熱烈アプローチをしていたってどういうことですか?」
「頼むから桜、そんな怖い声を出さないでくれ。その誤解はもう解けたはずだろ」
由姫との件は学校にいる時に話をして、誤解は解けたはずだ。
なのになぜまた蒸し返す。笑顔で俺の事を見る桜が怖い。
「空、貴方また懲りずに浮気をしてるの?」
「懲りずにってなんだよ!! 俺は今も昔も浮気はしてない!!」
「今も昔もってことは未来はするんですか?」
「未来もしないに決まってるだろ!! 桜は上げ足を取らないでくれ」
ただでさえ街にいない間何をしていたかわからないのに、春斗さんから誤解されたらどうするんだよ。
桜達は冗談だと思って笑っているからいいけど、頼むからこれ以上俺の事をいじらないでくれ。
「桜おねえちゃん、浮気ってなに?」
「浮気は悪い事なので、クルルちゃんもやらないようにしてくださいね」
「悪い事なの!? それならあたしは絶対にやらないよ!!」
「空君」
「はっ、はい!!」
「君は街を離れていた間、ずっと浮気をしていたのかい?」
「するわけないでしょ!! 浮気なんて絶対にしませんから!!」
「それならいいんだけど‥‥‥」
俺の予想通り春斗さんにまで疑われ始めた。どうしてくれるんだよ、この状況。
「時に空君。君に1つ聞きたいことがある」
「何ですか?」
「桜の隣にいる女の子、確かクルルちゃんと言ったっけ?」
「はい。クルルがどうかしたんですか?」
「あの子なんだけど、ティナさんの妹さんってのは実は冗談で本当は桜との‥‥‥」
「それは違います」
「だけどその割には妙に桜に懐いている気がするんだけど?」
「あれはエルフの町にいた時、桜が面倒を見ていたからですよ。俺と桜の間に出来た子じゃありません」
「なら安心したよ。こんな大きい子供、一体いつから隠していたのか疑問だったからね」
「俺と桜が出会ったのは中学時代ですよ。こんな大きな子供なんて、出来るわけないですよ」
「そうだよね。空君の話を聞いて安心したよ」
「「ははははははは」」
春斗さんと一緒に笑ってはいるが、正直生きた心地がしない。
何となくこうなる気がしたけど、この後俺はどうなるのだろう。
「桜おねえちゃん」
「どうしたんですか、クルルちゃん?」
「お外で何か飛んでるけど、あれは鳥さんかな?」
「鳥ですか?」
「そんなものが外に飛んでたか?」
俺が助手席の窓から外を見るが何も見えない。
空は雲一つない青空が広がっていて、何も飛んでいる気配がない。
「クルル、本当に鳥なんているの?」
「うん。さっきまで空を飛んでたよ!」
「飛んでた? それは本当に鳥なのか?」
窓の外を見ていると、どこからか飛翔体が現れた。
その飛翔体はこちらに近づいてきているように見える。
「おいおい、ちょっと待て。あれは鳥なんかじゃないぞ!!」
「キマイラよ!! キマイラが空を飛んでるわ!!」
飛翔体の正体はキマイラ。そのキマイラが上空に現れた。
そして上空から俺達が乗っている車両に徐々に近づいてくるのだった。
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