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空達の日常

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

 窓から差し込む日の光がまぶしくて目が覚めた。どうやら昨日桜と話した後、疲れもありすぐ眠ってしまったらしい。



「うん? もう朝か」



 軽く伸びをしながらベッドから上半身だけ起き上がる。

 体が重いと感じ、隣を見ると気持ちよさそうに桜は寝ている。口を開けて寝ている桜は幸せそうだった。



「こたくん‥‥‥みうちゃん‥‥‥そんなに走ったら駄目ですよ‥‥‥」


「一体どんな夢を見ているんだ?」



 桜が寝ている時にたまに寝言でいう、こたとみうという人物は一体誰なのだろうか。

 名前からして男女のペアだという事はわかるけど、俺はその名前に心当たりがない。



「桜の古い知り合いって所か」



 正直今の俺にはその2人が誰なのか、聞く勇気はない。たぶんその内桜が教えてくれるだろう。



「あれ? ‥‥‥もしかして夢?」


「起きたか、桜」


「あっ、空さんだ。おはようございます」


「まだ寝ぼけているようだな」



 屈託のない可愛らしい笑顔だが、まだ頭がまわっていないらしい。

 それは今の子供っぽい口調からしても明らかである。



「今日は朝食の準備をしなくてもいいのか?」


「はい! ティナさんが作ってくれるってことで話はついています」


「ティナが作るのか」


「そうですよ。エルフの町の伝統料理を作ってくれるみたいです」


「俺達がエルフの町に来た時、カレンさんが作ってくれたやつか」



 確かにあの料理は美味しかった。それをティナが再現できるかともかくとして、朝食が楽しみになってくる。



「とりあえず身支度を整えよう。準備が出来たら呼んでくれ」


「はい! わかりました」



 桜とは別の場所に移動し、身支度を整えて部屋を出る。

 廊下を歩いているとだらしなくあくびをした日向と鉢合わせた。



「空、桜ちゃん! おはよう」


「おはよう、日向」


「おはようございます、日向先輩」


「そんな眠そうな顔をして、よく眠れたみたいだな」


「うん。何故かわからないけど、いつもよりぐっすり寝れたよ」


「それならよかった」



 日向の顔は明らかに今起きましたって表情をしていた。

 寝ぐせもそのままだし、着替えだけして慌てて出てきたのだろう。



「それよりも朝食の時間に遅刻しない? 大丈夫?」


「この時間ならまだ準備している最中だろう」


「全然遅刻にはならないと思いますよ」


「よかったぁ。いつもよりゆっくり起きたから、寝坊したかと思ったよ」



 安心したのか日向は胸を撫でおろしていた。

 その様子を見るとよっぽど急いでいたみたいである。



「今日はティナが朝食をつくってくれているみたいだ」


「本当?」


「はい。エルフの町の伝統料理を作ってくれるみたいです」


「エルフの伝統料理。それは楽しみだね」


「そうだな。早く行こう。みんなが待っている」


「うん」



 それから日向を加え、一緒にリビングへと向かう。

 リビングではティナが朝食の準備をしていた。



「おはよう、3人共。日向は昨日よく眠れた?」


「うん。おかげさまで寝坊しそうになったよ」


「快適に過ごせたようでよかったわ。もうすぐ朝食が出来るから、テーブルに座っていて頂戴」


「ティナさん。手伝います」


「ありがとう、桜。だけど大丈夫よ。もうすでにアシスタントはいるから」


「アシスタントですか?」


「誰だ? それ?」



 当てはまるとすれば誰よりも早く朝食の席に着いている由姫だけど、由姫は絶対にこんなことはしないはずだし一体誰が手伝っているのだろう。

 テーブルの方を見ると既に由姫が座っていて、正面に生瀬とテーブルに朝食の皿を並べている女性がいた。



「日向さん達、おはようございます」


「生瀬君、早いですね」


「えぇ、昨日はよく眠れたので体も軽くて目覚めがいいです」


「それはよかった」



 生瀬もよく眠れたようでよかった。

 ニコニコと笑う生瀬の横で皿を配膳していた女性が俺達の方を振り向いた。



「おはようございます、日向さん」


「桜乃ちゃん、おはよう」


「もしかしてティナが言っていたアシスタントって、七村の事なのか?」


「そうよ。空達よりも早くリビングに来て、「何か手伝うことがありませんか?」って言ってくれたからお願いしちゃった」


「そうなのか」


「しかも先輩、この2人は私が来るよりも圧倒的に早かったのだ」


「由姫よりも早かったのか!?」


「そこは驚くところなのか?」


「驚くことだろう。いつも食事の時は1番早く準備をしている食い意地のはっている由姫よりも早く来る奴がいるなんて、普通は思わないだろう」


「なるほどな。私が先輩達にどう思われているかよくわかった」



 落ち込んでる由姫には悪いけど、このことはある種のセンセーショナルな出来事だろう。そのぐらい俺は驚いた。



「もう少しゆっくりしていてもいいのに。どうして今日に限ってみんな早いのよ」


「それだけティナの朝食が楽しみなんだろう」


「ありがとう、空。今日の朝食少しだけおまけしておくから」


「ラッキー」



 そんなことを思っていたら、隣から鋭い視線を感じる。

 視線のする方を見ると、何故か桜と由姫が俺の事を睨んでいた。



「空さんは私よりもティナさんの料理の方が好きなんですか?」


「いやいやいや!? 俺はティナの料理好きだけど、桜のも好きだぞ!!」


「先輩だけおまけするなんてずるい!!」


「それはティナにお願いしろよ!!」



 桜の言い分に関してはまだわかるけど、由姫に関してはただの言いがかりだろう。

 そういうことは俺ではなくて、ティナにお願いしてくれ。



「どう、日向? 驚いているようだけど、うちの朝食は毎日こんな感じなのよ」


「いつもこんなにバタバタしているの?」


「まぁ、これは序の口って所かな。本番はこれからよ」


「ちょっと、2人共。そんなにのんびりと話していないで、桜と由姫を何とかしてくれ!!」


「その2人は空の担当でしょ? 自分で蒔いた種なんだから、自分で何とかしなさい」


「そんな無茶を言うな」



 結局俺のおまけ分は由姫に渡ることになり、桜に対しては『今日の夕食は桜が作ったものが食べたい』といった所納得してくれた。



「空達は本当に仲がいいね」


「感想ばかり言わないで、早く座るぞ。もうすぐ朝食の時間だから」


「待って、空。何か聞こえない?」


「聞こえる? 何が?」


「凄い足音だよ。大勢の人達がこっちに近づいて来るよ」

 

「足音? あぁなるほどな。それは気にしなくていいぞ」


「気にしなくていいの!? ものすごい大きな音だよ!?」


「大丈夫だ。いつもの事だから」


「いつもの事?」


「まぁ、見てればわかる」



 首をかしげる日向だけど、時間が来ればわかる。

 しばらく待っていると、ドタドタとリビングに入ってくる大軍が現れた。



「みんな急いで!! ご飯の時間に遅れちゃうよ!!」


「こら!! クルル!! リビングに走ってくるんじゃないっていつも言ってるでしょ!!」


「ごめんなさい!!」



 いつものようにクルル達が駆け足でリビングに入ってくるが、ティナが注意したことで早歩きになる。

 面白い所はクルルが早歩きになると子熊達や龍、ついでにマリンも早歩きになる所だ。



「足音の正体ってこれだったんだね」


「あぁ、毎日こんな調子だから気にしないでくれ」



 この時間になるといつもリビングが騒がしくなる。

 特にクルルが来る時だけはすぐわかるので、俺達も一々反応しなくなった。



「これで全員ですかね?」


「待って、悠里ちゃんがまだ来てない」


「そういえば悠里がいないな。どうしたんだ?」



 リビングを見回すが、悠里の姿だけ見えない。

 こういう時は1番の早起きなはずなのに、どうしたのだろう。



「誰か今朝悠里を見た人はいないか?」


「私は見ていないな」


「私もよ」


「俺も桜乃と一緒に来ましたけど、悠里さんは見ていません」


「おかしいな。いつもならもう起きてるはずだけど‥‥‥」



 日向達とそんな話をしていると、廊下からバタバタと騒がしい音が聞こえ来る。

 その音が徐々に大きくなり、音の主がリビングに姿を現す。



「寝坊しちゃった!? みんなもう起きて‥‥‥」



 全員の視線が悠里に注がれている。

 いつもは大人しくご飯を待つクルルや子熊達でさえ、悠里の事を見ている。



「あっ‥‥‥」


「悠里ちゃん‥‥‥」



 全員からの注目を浴びる悠里は寝起き姿のままリビングに来ていた。慌ててきたせいか、髪にも寝ぐせがついている。



「あっ‥‥‥あっ‥‥‥」


「悠里、落ち着け。とりあえず深呼吸するんだ」



 悠里も恥ずかしかったのだろう。顔がどんどん赤くなっていく。

 ただ俺が深呼吸するのを進めたおかげか、間一髪の所でパニックになっていないようだ。



「日向君‥‥‥」


「悠里ちゃん‥‥‥その寝ぐせ、可愛いね」


「うんにゃ~~!!」



 声にはならない悠里の叫び声がリビングにこだまする。

 こうして俺達のいつもより騒がしい朝食が始まるのだった。

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神殺しの少年


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よろしければこちらの作品も宜しくお願いします。


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