報告と相談
桜達と談笑していた家を出て、トールと向かうのはラックスさんの家。俺達の家からそんなに離れていないので、ゆっくりと歩いて向かう。
「トール、さっきは悪かったな。俺の友達がいきなり襲い掛かったりして」
「いえいえ、当然の報いですから。おら達オーク族が人間達にしてきたことを考えれば、柴山さん達が怒るのもしょうがないですよ」
「トール」
先程の一件のせいかトールは終始うつむき加減で元気がない。日向達の前では気丈に振る舞っていたけど、やはりさっきの出来事が尾を引いているようだった。
「それよりも山村さん、あの時はおらを庇ってくれてありがとうございます」
「お礼を言われることはしていない。あそこで日向がトールを切れば、今度こそ人間とオークの間には修復不可能な大きな溝が出来たから止めたまでだ」
それこそ人間とオークの全面戦争になっていたに違いない。
そうなると人間とオーク族の関係修復なんて不可能だ。だから俺は体を張って止めたんだ。
「山村さんは木内さんの言う通り優しいですね」
「どこがだよ!!」
「そういう所ですよ」
トールは意味深にクスクスと笑う。この笑いの元凶は十中八九桜だろう。
「桜の奴は一体トールに何を話したんだ?」
「色々ですよ。ただ山村さんには秘密にしていて下さいって言われています」
「桜の奴‥‥‥」
本当にトールに何を話したんだ? 秘密って言われると余計に気になる。
「そういえば山村さん」
「何だ?」
「山村さんは、おら達オークと人間達が共存できると思っていますか?」
「もちろんだ。何当たり前の事を聞いてるんだよ?」
「そうですか。ありがとうございます」
何故かトールにお礼を言われてしまった。それに俯いていて元気がなかった先程とは違い、明るくなったように見える。
「それにトールが頑張ってる所はこの町のみんなが知ってる。だからあの事は気にしないでくれ」
「はい! わかりました!」
よかった。どうやらトールに問題はなさそうである。あんな事があり落ち込んでいたみたいだけど、持ち直したみたいだ。
「着きましたよ。それでは開けますね」
「あぁ、頼む」
トールに案内され、ラックスさんの家に入る。
リビングに通されると、そこにはラックスさんとサラさんが座り後ろにはミアさんが静かに佇んでいる。
「山村君、急に呼び出してすまない」
「いえ、俺も呼び出されると思ってましたから」
「とりあえずトールと一緒にそこに座ってくれ」
「わかりました」
ラックスさんに促され、リビングの椅子に座る。
同時にトールも俺の隣に座った。
「ミアもせっかくだから座ったらどうだい?」
「いえ、サラ様の隣に座るなど恐れ多いです」
「相変わらず頑固だな。それでは命令だ。ミア・アルベルト。君は私の隣に座りなさい」
「‥‥‥‥‥サラ様は相変わらずずる過ぎます」
「それはお互い様だろう。今は私の隣に座ってゆっくりしてくれ」
「‥‥‥わかりました」
ミアさんはゆっくりとこちらに近づき、サラさんの隣に座った。
そしてマナー通りの綺麗な姿勢で、俺達の方を向く。こうして座ってみると意外と身長が高いのが印象的だった。
「そしたら本題に映うつろう。まずは山村君、今回の件はやってくれたね」
「申し訳ありません」
「大変だったんだよ。未確認の2人を結界の外に追い返そうとしたら、その側にいたのが山村君だったんだから」
「あははははは」
適当に笑ってごまかすことしかできない。どうやら俺の予想通り、エルフの町の中は混乱していたようであった。
「ディアボロ達とも相談したけど、一部の人達が大反発してね。それはそれは大変だったよ」
「重ね重ね申し訳ありません」
「でも、君は私達エルフの危機を救ってくれた恩人だ。だから無下にすることもできないし悩んだんだ」
「一体どうやって俺達を中に入れる許可を取ったんですか?」
「それはそこにいるトールとサラのおかげだ」
「トールとサラさんのおかげ?」
「そうだ。混乱する私達をよそに、トールがサラを連れて来てくれたおかげで一気に流れがこちらに傾いたんだ」
「サラ様に頼まれたからオラは連れてきただけですよ。それにしてもあの時のサラ様格好良かったな」
「格好良かったって、サラさんはどうやって話をまとめたんですか?」
「何、簡単な事だ。私が山村君達を町に入れなければ、同盟を打ち切ると言ったら簡単に許可が取れたよ」
「そんなことを言ったんですか!?」
「あぁ、今まで反発していた者達が静かになったから面白かったよ。実に愉快だった」
「私は肝を冷やしたけどな。サラがそんなことを言うとは思わなかったから」
「心中をお察しします」
豪快に笑うサラさんとは対照的にラックスさんは疲れた表情をしていた。
心なしかどこかやつれているようにも見える。よっぽど大変な思いをしたんだろうな。
その時の光景が容易に浮かぶ。
「それで山村君、何故私が許可を取っていないものまで連れて来たか、事情を説明してくれないか?」
「わかりました」
そこで俺はさっきまで起こった事を1つ1つ説明していった。
連れて来た生瀬と七村の事や突如現れたリザードマンの事を全て話した。
「なるほどな。リザードマンか」
「それでこのまま別れるのは危険だから、彼等の仲間を連れて来たってことか。なるほど、筋は通ってるな」
「はい。2人をあのままあそこに置いて行けば殺されてしまうと思ったので、2人も一緒に連れてきました」
「ふむ。彼等がしたことはあまりよくない行いだが、山村君のしたことは間違ってない」
「ありがとうございます」
「もしこのまま山で彼らが殺されていたら、エルフと人間の間で戦争が起こっていただろう」
「そうなると我等猫族としても、同盟を考え直さないといけなかった。人間との対立は我らが望むものじゃないからな」
真剣な口調からして、サラさんは本気で言っているように見える。
余計なことだと思っていたけど、連れてきてよかった。
「それよりも何故リザードマンが君の友人を襲ったんだい?」
「わかりません。だけどリザードマンと何か個人的な因縁があるように感じました」
「人間とリザードマンの対立か」
「あそこの首長、レノは頭が固いからな。何かしらのもめごとがあってもおかしくはない」
「リザードマンの長の事を知っているんですか?」
「あぁ。彼も私達魔王軍のメンバーだったからな。顔見知りなんだ」
「また魔王軍つながりですか」
「そういうな。今の種族の長は魔王軍として戦った経験があるから、みんな顔見知りなんだ」
「なるほど。そういう事ですか」
前にラックスさんも言っていたけど、それはサラさん達に限った話じゃなかったのか。
もしかするとこれから出会う他種族もみんなラックスさん達の知り合いなのかもしれない。
「でも、何でリザードマンが人間を襲ったのだろう?」
「そういえば、リザードマンの胸に魔力石が埋め込まれていました」
「魔力石だって!?」
「はい。固い皮膚の中に魔力石が埋め込まれていて、それが生命維持装置のような働きをしていたんです」
「嘘だ!? そんな事、魔力石を使って出来るはずがない!!」
「俺もそう思います。だけど言葉も片言で話していたし、そうとしか思えないんです」
あの様子を見れば誰だってそう思う。俺だって死者を蘇らせることが出来るとは思わない。
だけど実際その様子を見てしまったんだ。そう思うしかない。
「山村君、リザードマンに埋め込まれていた魔力石は持ってないのかい?」
「破片はティナが持っていますので、後で持ってきます」
「ありがとう。そしたら私は持って来た魔力石の鑑定を急ぐよ」
「私も手伝おう、ラックス」
「ありがとう、サラ」
「お願いします」
こうなると魔力石の事は2人に任せおこう。後は俺達の問題だけだ。
人間とリザードマンの因縁。きっとその事について日向達が深くかかわっているに違いない。
「そしたら俺は一旦戻ります」
「あぁ、もう大丈夫だ。後でティナに破片を持ってくるように言ってくれ」
「わかりました。ティナにはそう伝えます」
「君の友人達とは明日会おう。今日はゆっくりしていてくれ」
「はい。ありがとうございます」
お礼を言って俺は席を立つ。そしてそのまま自分達の家へと戻る。
「後は日向達だな」
いまだに重い口を開かない日向。その日向達から街での出来事を聞かないといけない。
この一連の出来事は日向達が関わっていることは確定だ。だからすぐに日向達から事情を聞こう。
「そうとなれば急いで戻ろう」
それから俺は急いで日向達の待つ家に向かうのだった。
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