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騒がし過ぎる町

2021/5/7 ティナが猫族のことについて説明している部分を一部修正致しました。

 エルフの町に戻った俺達は屋台等が出ている大通りを歩いていく。

 いつもと同じような喧騒。だけど今日はその様相が少し違っていた。



「いつもよりなんだか騒がしいですね」


「そうだな」



 騒がしいというよりもこの町にいる全員が慌てているように見える。

 エルフの町の人達全員が荷物を持ちながら、大通りを右往左往していた。



「何か不穏ね。これから何が起きるのかしら?」


「そんなに身構えなくても大丈夫だろう」


「何で空はそう決めつけるのよ?」


「町にいる人達の表情を見てみろよ」


「表情?」


「みんな全く不安な顔をしてないだろ?」


「むしろ活き活きとしていますね」


「つまりこれからこの町で何か起きるけど、それはネガティブな事じゃないってことだ」



 むしろこれから町の人達が喜ぶような一大イベントが起きるのかもしれない。

 そうでなければ、こんなに必死に町の人達は動いていないだろう。



「でもこれは一体何の騒ぎなのかしらね」


「それは俺にもわからないよ」



 だがエルフの町の人々にとって悪い話ではないはずだ。

 きっとこの出来事をチャンスだと思って動いているに決まってる。



「そうなると誰かこの話を知っている人を探す必要があるわね」


「それなら商工会議場に‥‥‥あっ!? あそこ!! あそこにトールさんがいます!!」



 桜が指を指した先。大通りのとあるお店の前にトールが立っている。

 数枚の紙を手に取り、お店の人とトールは話していた。



「トールさん!!」


「あっ!? 山村さん!! それに木内さん達も!?」



 よっぽどここで俺達と出会ったのがびっくりしたのだろう。

 トールがお店の人に断りを入れ慌てて俺達の方へと歩いてきた。



「お疲れ様です!! 今日は買い物ですか?」


「買い物と言えば買い物だけど‥‥‥」


「それよりもトール!! こんな所で何をしているのよ!!」


「オラは商工会議場から買ってきて欲しいもののリストをもらったので、それの買い付けです」


「買い付け?」


「そうです。今はあそこにある段ボール分の買い付けまで済みました」



 大通りの露店の端の方に山積みになった箱がある。

 荷車に乗せているとはいえ、あの量の物を全部持って帰るのか。



「あんなにたくさんの物を買って、何をするんですか?」


「これはある人を迎える為の準備をしているんですよ」


「ある人?」


「そうですよ。山村さん達は聞いていませんか? オラは同席しないですけど、山村さん達はラックス様と一緒に参加する話になっていたはずですが?」


「参加?」


「ちょっと待て、トール!? その話って何の話だよ!? 俺達は何も聞いてないぞ!!」



 同席や参加って俺は一体ラックスさん達に何をさせられるんだろう。

 何の話も聞いていないのに参加させられるって、どんな罰ゲームだよ。



「空さんが参加するもの‥‥‥」


「例えば最後の1人になるまで行われる、バトルロワイヤルとか考えられるわね」


「銃を持つ先輩が血みどろになりながら必死に戦う姿‥‥‥」


「うん。そういうのもありね!」


「待て待て待て!? そんなのなしに決まってるだろ!! 物騒な考えはやめてくれ!!」



 よくわからないうちに俺を謎のバトルロワイヤルに巻き込まないでくれ。

 そして由姫にティナ、勝手に俺を参加させないでくれ。



「そんな物騒なことにオラは関わりたくないです」


「話を振ったのはトールだろ!?」



 何話を振っておいて引いてるんだよ!!

 元はと言えば、トールが話を振ったのが原因だろ!!



「あれ? でもまだ連絡が言ってないんですか? ラックス様が直接山村さん達に話を通しておくって言ってましたけど」


「ラックスさんが?」


「はい、そうです」



 どうやらこの話はラックスさんが一枚かんでるらしい。

 あの人の事だから、もしかすると話すタイミングをわざとずらしている可能性もある。



「トールさん、その話を今聞いてはいけないですか?」


「別に大丈夫だと思いますよ。隠すようなことでもないですから」



 何でもないようにトールは言う。その口ぶりは何も深刻なことが起きてないと言っているようだった。



「実は今度猫族(ケットシー)がこの町に来るんですよ」


「「「「猫族ケットシー!?」」」」


「はい、そうです」


「トール、確かにお父様達は他の魔族を探していたけど本当に見つかったの!?」


「はい。オラとイリス様の部隊の人達でこの辺りの山々を協力して探索した結果、猫族ケットシーの集落を見つけて接触したんです」



 どうやら俺達が足踏みしている間に、ラックスさん達はオーク以外の魔族を見つけていたらしい。

 元々ラックスさん達が、魔王に対抗する為に他の魔族と手を組もうとしているのは知っていた。

 だがこの世界に来ているかもわからない魔族を探すのは至難の業だと思っていたけど、この短期間に見つけるなんて思わなかった。



「他の魔族の集落を見つけるなんてすごいですね」


猫族ケットシーの集落にいきなり侵入して大丈夫だったの?」


「はい、イリス様が上手く話を通してくれましたので問題なく入れました」



 先程からティナが猫族ケットシーという単語に対して、過剰に反応しているような気がする。

 さっきも集落に入ったことを聞いたことといい、何か引っかかることでもあるのかな?



「おねえちゃん」


「どうしたのよ、クルル?」


「もしかしてこの町に猫さん達が来るの!?」


「まぁそうね。でも猫って言っても、見た目は私達と同じ感じで、頭に耳をはやしているだけよ」


「凄い!! あたし猫さんを見たことがないからすっごく楽しみ」



 ティナの言っている猫族ケットシーの図とクルルが考えている猫の図はおそらく違うだろう。

 クルルはもしかするとたくさんの猫が町に来ると思っているのかもしれない。



「それにしても、まるでファンタジー世界の話だな」


「ファンタジー世界の話じゃなくて、もうこの世界がファンタジー世界に取り込まれているんだぞ。先輩」


「確かにそうだな」



 最近エルフやオークを見て何も思わなくなってるけど、元々こういった魔族と呼ばれる人種は俺達の世界には存在していなかった。

 改めて猫族ケットシーと聞くと、この世界が変わってしまったんだなって思う。



「それで山村さんには猫族ケットシーとの会議にラックスさんと一緒に出席してほしいってことです」


「なるほどな」



 それがラックスさんが俺に隠していたことか。別に会議に参加するぐらいは別にいいだろう。



「なるほど‥‥‥猫族ケットシーがこの町にくるのね」


「ティナさん、どうしたんですか?」


「さっきから猫族ケットシーのことをぶつぶつとつぶやいているけど、猫族ケットシーが町に来ることに何か問題があるの?」


「問題‥‥‥それはもちろん、あるに決まってるでしょ!!」


「ティナさん!?」



 猫族ケットシーという単語を聞き、急に怒り始めたティナ。

 もしかすると俺が知らないだけで、ティナと猫族ケットシーの間に何か因縁があるように思えた。



「落ち着け、ティナ!! 猫族ケットシーが町に来ることの何が悪いんだよ?」


「悪いなんてもんじゃないわよ!! あの男たらし共が来るのよ!! 町が大変なことになるに決まってるわ」


「男たらし?」


「そうよ。猫族ケットシーは昔から色仕掛けをよく使う種族でね、その色香に惑わされた男達は少なくないっていうの」


「そうなんですか?」


「そうよ!! 猫族ケットシーはその色香で数々の種族の長を篭絡してきたって言われてるの。だから猫族ケットシーがいる会議の時には正常な判断をする為に、必ず女性の代表も一緒に出席していたって話をよく聞くわ」


「なるほどな」


「つまりティナさんが言いたいことは、もしかすると猫族ケットシーは会議中にハニートラップを仕掛けてくる可能性があるってことですね」


「そういうこと。でも今の族長はそういうことをしない人だと思うから、たぶん大丈夫だと思うけど」


「そこまで猫族ケットシーに怒り心頭ってことは、昔何かあったのか?」


「まぁ、そうね。色々と腹が立つことがあったわ」



 ティナがここまで激高するってことは、きっと何かあったのだろう。

 それが何かはわからないけど、ここまで怒るということなんてよっぽどのことだ。



「一体ティナさんと猫族ケットシーの間で何があったんですか?」


「昔の話なんだけど、私が人間の商人とやり取りしていた時、その場に猫族ケットシーもいたのよ」


「そうなんですか?」


「えぇ、そうよ。最初は物腰が低くて色々とこちらの提案も受け入れてくれる優しい商人だったんだけど、その人が猫族ケットシーを取引に連れて来てから無茶な要求を色々と言い始めたの。その事を不思議に思って後で他の商人に話を聞いて見たら、その猫族ケットシーが無茶な要求を色々としていたみたい」


「それは大変でしたね」


「結局その商人はどうなったんだ?」


「私もお父様と相談して、その商人との取引は打ち切りになったわ。その後の事はわからないわね」



 どうやらティナの猫族ケットシーに過剰に反応するのは、このことが原因だろう。



「でもでも、猫族ケットシー全員がそう言うわけではないですよね?」


「そうね。そういう猫族ケットシーは町を追放されたほんの一部。町にいる猫族ケットシー達は、基本おおらかな人が多いって聞くわ」


「そうなのか?」


「えぇ。猫族ケットシーの族長とは小さい時に何度か会ったことがあるけど、とてもいい人だったわね」


「それなら安心ですね」


「私も偏見だけで物を言って悪かったわ。猫族ケットシー全員が全員悪い人じゃないってわかってるけど、あまりにもその時の事が頭に来てつい‥‥‥」


「まぁ、自分の力をいいように使うも悪用するもその人次第だからな。そういう奴がいても仕方がないことだ」



 デパートの時も自分の富に固執するあまり、スーパーで金を抜き取ろうとした奴もいたんだ。

 自分の力を私利私欲の為に使う人がいたとしても不思議ではない。



「でもさっきティナが話した一部の猫族ケットシーの話が本当だとして、どうして男の俺が呼ばれることになったんだ?」



 ハニートラップの話が本当だとして、男の俺が呼ばれる理由がわからない。

 むしろ男2人で行くなんて自殺行為に違いない。



「ふ~~ん、なるほどなるほど」


「何かわかったんですか? ティナさん」


「お父様が空を呼んだのは、もしかしたら相手のハニートラップ潰しをする為かもしれないわ」


「ハニートラップ潰し?」


「ハニートラップなんて、そんなことしてくるんですか?」


「あくまで可能性よ。きっとお父様も何かあると困るから念には念を入れて、空を会議に招いたのよ」


「それなら俺じゃなくてカレンさんが適任だろ?」



 あえて男の俺を呼ぶ理由がわからない。俺までハニートラップに引っ掛かったらどうするつもりだ。



「わかってないわね。空は」


「何がわかってないんだよ」


「だってもし空が猫族ケットシーに浮気したら、桜が黙ってないじゃない」


「何!?」


「空も考えて見なさい。もし自分が猫族ケットシーのハニートラップに引っ掛かった後のことを」


「ハニートラップに引っ掛かった後‥‥‥」



 そんなことになったら、桜が怒るだろう。

 怒って殴られるぐらいならまだいいけど、もし桜に泣かれたとしたら取り返しがつかないな。

 そんな事態になることなんて、考えたくはない。



「空さんは猫さんに浮気するんですか?」


「悪いけど、俺はそんなことはしないぞ」


「本当ですか?」


「本当だ!!」



 悪いけど俺は桜以外の女性に見向きはしない。

 ティナは疑ってるようだけど、俺の決意は本物だ。



「大丈夫ですよ、山村さん。猫族ケットシーの族長は悪い人ではないので、ハニートラップなんてしてこないと思いますよ」


「それじゃあどうして俺を会議に呼んだんだ」


「これはオラの推測ですけど、たぶん山村さんのこともラックス様は紹介したいんだと思いますよ」


「俺を紹介? どうして?」


「う~~ん、オラにはそこまではわからないですね」



 どうやらラックスさんは俺のことも猫族ケットシーに紹介したいらしい。

 何故俺の事を紹介したいのかわからないけど、参加しないといけないならば参加しよう。



「とりあえず状況はわかった。それでこの騒ぎは一体何なんだ?」


「エルフの町全体で猫族ケットシーを歓迎する準備をしているんです。中には商売のチャンスだと息巻いている人達もいます」


「だからこんな騒いでいるんですね」


「情報が周るのが早いな」



 きっと猫族ケットシーが町に来るのも最近決まったのだろう。

 意図的に情報を流していたとしても、動くのが早いな。



「山村さん、何でもスピードが命ですよ」


「スピードね」



 そうなると自分達の街に戻れない俺達は致命的だな。

 何もできないでうだうだしている俺とは違い、ラックスさん達の方が圧倒的に手際がいい。



「あっ!? もうこんな時間だ。すいません、山村さん!! イリス様が待っているので帰ります」


「気をつけてな」


「はい!! 山村さん達もお気をつけて!!」



 荷台を引っ張り慌ててトールは帰っていく。

 トールが最初に来た時はどうなるかって思ったけど、元気そうでよかった。



「あたし達も帰りましょう」


「そうだな」


「晩御飯の材料も買っていきましょう」


「晩ご飯!! クルルあれが食べたいよ!! シチューってやつ!!」


「わかりました。そしたらお肉とお野菜をかわないといけませんね」


「うん!」



 結局俺達は喜ぶクルルと一緒に、晩ご飯の食材を買いに出店を周る。

 そのまま夕食の材料を買い、自宅へと帰るのだった。

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