内通者
立ち上がったトールは無言で俺達の事を睨みつける。
トールの裏切りに関しては薄々その可能性も考慮はしてきたけど、実際に裏切られると中々きつい。
「いつ‥‥‥いつ、オラがあのお方の味方だってわかったんだ?」
「確信があったわけじゃないけど、この城に来てから何となくな」
俺の発言を聞いて、トールは驚いているように見える。
本人は俺達の味方のように振る舞って来たけど、俺の目はごまかせない。
カロンさんの手前何も言えなかったけど、ジャミラの匂わせ発言を聞いてそれが確信に変わった。
「トールが内通者だと思った理由が2つある」
「2つですか?」
「そうだ」
「嘘!? 私はトールさんが内通者なんて全然気づかなかったわ」
まぁ、普通はティナのような反応をするだろうな。
俺だってトールの事を疑っていたが、敵側だって完全に信じていたわけではなかった。
何よりもカロンさんが1番信頼を置いていたからこそ、信じたくはなかった。
「俺がトールのことを疑ったの1つ目は、桜が俺のことを後継者って言った時驚いていたことだ」
「それの何が不思議なんですか?」
「よく考えてみろ。他のオーク達が首をかしげている中で、トールだけはその話を聞いて驚いていた」
「でも、トールさんがカロンさんと魔王軍からの仲間って可能性もないの?」
「もちろんその可能性も考慮した。だからこの時点では深くは追及しなかったんだ」
カロンさんが何も言わなかったから、俺もあの時は口を閉ざしていた。
もしかすると昔からの旧知の中だって可能性もある。
だから余計にそのことを追求することができなかった。
「それじゃあ、空さんが疑問に思った2つ目は何ですか?」
「それはトールの言葉だよ」
「言葉ですか?」
「あぁ。トールが城に入った時、ジャミラの事を何て言っていたか覚えてるか?」
「トールさんがですか?」
「そうだ」
「私は覚えてないな」
「私もね」
「そうだろうな。俺も最初はあんまり気にしていなかったけど、トールはこう言ったんだよ。あのお方って」
俺達がジャミラという中で、トールだけはあのお方って言い方をしていた。
その時俺の頭には疑念が浮かんだ。もしかしたらトールが内通者なんじゃないかって。
「でも、それだけなんですか?」
「それだけでは判断できないと私も思うのだが‥‥‥」
「あのお方って言葉を使っていた奴を思い出さないか?」
「使っていた人ですか?」
「そんな奴いたかな?」
「私はわかったわ!! 地下牢にいたあのハイオークの兄弟ね!!」
「そうだ。あの兄弟がジャミラのことを話していた時に言っていたんだ。あのお方って」
「あっ?」
「確かに言っていたな」
「だからもしかしたらトールがジャミラと繋がってるんじゃないかって思ったんだよ」
あのトールの言い方が気になっていた。それが気になっていたことが、疑念に変わったのがあの兄弟の言葉を聞いたからだ。
「でも、トールさんもザカさんにやられてましたよね?」
「そうだ。だから俺もトールは味方だと思ったけど、ジャミラが内通者の話を出した時トールの事が浮かんだんだんだよ」
あれで全てが合点がいった。
もしかするとあの奴隷地区で俺達が出会ったのも偶然ではないのかもしれない。
「でもトールさんは普通のオークですよね?」
「そうだ。ジャミラの強化魔法を受けたオークは、全員ハイオークに進化してるじゃないか」
「確かに。トールさんが何でハイオークに進化していないか疑問が残るわ」
「その疑問も解決している」
「嘘!?」
桜達は驚いているが、そのカラクリも俺は全部掴んでいる。
俺の予想が正しければ、これが理由だろう。
「桜と由姫は初めてオーク達と出会った時のことを覚えてる?」
「もちろん覚えてますよ」
「あの時は町にいたオークさんと戦ったんですよね?」
「正解。じゃあ由姫、次にオークと戦った時のことを覚えているか?」
「あぁ。エルフの町で私達がクルルと遊んでいる時に襲われたんだ」
「そうだな。俺が商工会議場に行った時襲われたんだったよな?」
「空さん、それが何か関係してるんですか?」
「まだわからないのか? あの時戦ったのは普通のオークだ。今戦っているようなハイオークじゃない」
「あっ!?」
「確かにそうだな」
この城にいる殆どがハイオーク。それなのに俺達が序盤で会ったのは普通のオークだ。
だけどこの城にいるのは全てハイオーク。ハイオークがこんなにいるのに、それよりも弱いオークが町を襲う理由はない。
「もしかすると、魔力石を埋め込まれてから成長するのには時間がかかるのかもしれない」
「そんなことってあるの!?」
「そう考えると辻褄が合うんだよ。たぶんジャミラの魔法は体がなじむのに時間がかかるんだ。だからある程度時間が経たないと、成長を促すことができないはず」
そうなると何故エルフの町にオークが襲って来たのか説明がつく。
あそこに来たオークはちゃんとした装備をしたオーク達だ。
一般の市民を兵にして戦うなんてことするはずがない。
「だからトールはその姿のままなの?」
「あぁ、きっと魔力石を埋め込まれたばかりだからまだ普通のオークなんだ」
何も言ってこないのが肯定の証だろう。
トールは俺達に対して、何も言ってこない。
「聡明で気概がある人間がいると聞いていましたが、それは貴方達の事だったんですね」
「ってことは、全て認めるんだな?」
「はい、そうですよ。全部君の言っている通りです。まさかここまで的確に当てられるとは思いませんでした」
驚いていると言っている割には、そんな様子には見えない。
俺から見れば淡々とその場で話しているようにしか見えなかった。
「トール、1つ聞かせてくれ」
「カロンさん、しゃべっちゃダメです。まだ怪我が回復してないのに!!」
「いいのだ。それよりも何故‥‥‥何故お前はジャミラの元へ行ったんだ!? それを‥‥‥教えてくれ」
落ち着いた口調ではあるが、カロンさんはトールを見て話す
その声色はどこか悲しげに聞こえた。
「‥‥‥‥」
「答えてくれ、トール!! トール!!」
しかしトールは何も話そうとしない。
その場で立ち尽くしている。
「しょうがないですね。馬鹿な元王様に代わって、私が話してあげますよ」
「何!?」
「トール君はね、貴方の為に我等の方に寝返ったんですよ」
「どういうことだ?」
「言葉の通りです。お尋ね者の貴方を救ってほしい。それを条件に私はトール君を仲間にしました」
ジャミラは何でもないように言う。その言葉を聞いて、カロンさんが驚いている。
「でも、それだとおかしくないか? 何で助けてほしいと言っているのに、カロンさんとザカを戦わせた?」
「別に私はどっちが勝ってもよかったんですよ」
「よかった?」
「そうです。別にザカが勝ってもカロンが勝っても、オーク族が我らの軍門に下るなら、全てはそれでよかったんです」
「どういうことだ!! 説明しろ」
「その通りです。我が魔王軍復活の為に、オーク族が魔王軍に入ってもらえば我々は別によかった」
「何だと!?」
つまりオーク族を自分達の所に引き入れる為に、ジャミラはこの争いを起こしたってことだ。
ザカに手を貸したのもトールの裏切りを容認したのも、全部このジャミラのせいだということになる。
「それにもうすぐ我らの主が誕生します」
「主の誕生だと?」
「その話は嘘です!! だって後継者である空さんはここにいます!!」
「その考えが古いんです!! 勇者の従者を持つものが魔王? あんな弱い奴が魔王なんて言いません!! 魔王となるものは強く‥‥‥誰よりも強いものがなるべきなのです!!」
高らかにそう宣言するジャミラ。
今の話を総括すると、もうすぐ新たな魔王が生まれることを意味する。
「どうやら俺達はお前をここで止めないといけないみたいだな」
「おや、いいのですか? 私達に攻撃しても?」
「どういうことだ?」
「おい!! あいつを連れて来い」
「はい!!」
別のハイオークが部屋の奥から誰かを連れてくる。
その連れて来られた人を見て、俺達は驚いた。
「お父様!!」
部屋の奥から現れたのはハイオークに剣を突きつけられたエルフ。
ラックスさんが俺達の前に現れたのだった。
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