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桜とjobとスキル

「それで、このゴブリンをその剣で刺すんですか?」


「うん、この剣でゴブリンを刺すんだよ。そうすればjobを取得できるから」



 日向レクチャーの元、桜が倒れているゴブリンの前に立つ。

 先程日向の家を出てすぐ、1匹のゴブリンと鉢合わせた。

 俺達が行動する前に襲ってきたため慌てたが、すぐさま日向が剣を出して応酬。見事に昏倒させることに成功した。

 それからは昏倒しているゴブリンの前に立ち、桜と日向で止めを刺そうとしているところだった。



「この剣、重いです」


「大丈夫、僕が両手で支えててあげるから」



 そういって優しく桜の手を支えている日向。

 日向の顔を見る桜は恋する乙女そのもの。俺から見れば、お姫様と王子様2人初めての共同作業。

 ケーキに入刀するがごとく、ゴブリンに剣を差し込もうとしていた。


「三村、不満か?」


「別に、私はそこまで」



 嘘付け。明らかに不満げな表情しているだろ? 現に桜を睨みつけてるし。

 その視線を俺の方に向けると、小さく舌打ちをした気がした。



「三村、それは本心で言ってないよな?」


「そうよ」


「やっぱりな」



 三村がここまではっきり言うとは思わなかった。いつもはそっけなく『別に』とか言うのに。

 だけど何故だ。三村のきつい視線は俺の方に向いている。



「確かに山村君の言う通り、不満といえば不満だけど‥‥‥」


「だけど?


「元はと言えば、どこかの誰かさんが銃を貸さないのが悪いんだからしょうがないでしょ?」



 それを言われると俺も強くは言えない。

 元々桜は日向の剣よりも、俺が持っている銃をご所望だったからだ。

 ただあいにく俺は銃に関してそこまで詳しいわけでなく、銃だと撃った後の反動も大きく的に当たりにくい。

 それなら剣の方がいいのではないかと提案したら、2つ返事の日向とは対照的に他の2人が不満そうな顔で俺のことを見てきたのだった。



「全く、どこかの誰かさんが優柔不断だからこうなるのよ」


「優柔不断で悪かったな」


「別に。桜ちゃんが日向君に気がない事はわかってるから、そこまで不満があるわけじゃないけど」


「けど‥‥‥‥」


「空せんぱーーい。ゴブリン倒せました」



 何かを三村が言う前に、ゴブリンを倒して嬉しそうに桜が俺の所に駆け寄って来た。

 いや、日向がいるんだから日向に聞けよとは言い辛い。

 日向は日向で満足そうに俺と桜を見ていた。いや、お前最後まで面倒を見ろよ。



「お疲れ、桜。頭の中に機械音の声が聞こえてこないか?」


「声ですが? 何も聞こえませんが‥‥‥‥」



 その瞬間、桜が固まったのがわかった。

 そしてあたりを見回す。たぶん、あの機械音が流れたのだろう。

 まるっきりあの時の俺と行動が同じだった。



「先輩先輩、今レベルアップしましたって。それにjobを選んでくださいって言ってます」


「それなら大丈夫だ」



 その音声が流れていれば大丈夫だろう。後は桜が変なjobを選ばないかだ。



「桜、このjobってのは今後俺達が生きていく中で重要な要素になってくる。絶対変なのは選ぶなよ」


「大丈夫です。その辺りはあたしもわかります」


「ちなみに聞くが、何のjobが出た?」


「えっと‥‥‥‥」



 その後桜の頭に浮かんだjobが、見習い剣士、見習い槍使い、見習い兵士、料理人の4つであることがわかった。

 というか料理人って生産職もあるんだな。それはたぶん桜が料理が得意だからだろう。



「う~~ん、この中からならどうしましょう?」


「料理人はやめたほうがいい」



 今戦闘員不足のこの状況で料理人の職業はやめた方がいい。いざとなった時、自分の身を守れない危険性があるから。



「わかりました。あたしも、それ以外を選ぼうと思ってます」


「それなら後は、桜の好きに選んだらいいんじゃないか?」


「そうですか。それならあたしはこれがいいです」



 そう言った瞬間、桜の目の前に1本の槍が出てきた。先の方だけ鉄でできていて棒の部分は木製の、どう見たってすぐ壊れそうな槍である。

 それを握って、俺に見せつけるように前に突き出した。



「先輩、あたしは見習い槍使いになりました」


「よかったな。他のスキルはどうなった?」


「スキルですか? え~~っとですね、数が多くて覚え切れません」


「それなら頭で念じてみろ」


「念じるんですか? そんなことで‥‥‥本当です。頭に浮かび上がってきました」



 どうやら桜も自分のスキルを把握したみたいだ。

 もしスキルの効果がわからなければ、日向達に頼んで確認すればいいだろう。



「ねぇ、空。ついでだから僕達のスキルも確認してみない?」


「確認? それはいいけど、話すなら三村の家でしないか? さすがに道端で話すと誰が聞いてるかわからないから得策じゃない」


「わかった。そうしたら後で三村さんの家で話そう」


「それなら早く悠里先輩の家に行きましょう」



 元気よく桜は叫ぶ。でも、あれ? なんか三村の呼び方がおかしいような?



「桜、いつの間に三村のことをしたの名前で呼んでるんだよ」


「えっ? 今さっき悠里先輩と話していた時そういう話になりました」



 あれ? いつの間に桜と三村が仲良くなってるの? いや、朝食の時も充分仲がよかったけどさ。もうちょっとこう、なんかあってもいいんじゃない?



「私が許可したから別にいいの。それよりも早く行きましょう。このままのペースで行くと日が暮れちゃうわ」


「そうです。早く行きましょう」



 三村の号令に続いて、俺達は三村家に向かって歩き出す。

 先陣を切って歩くのは三村。武器をろくに持っていない三村が先を行くのは正直不安であった。



「三村さん、危ないよ。僕から離れないで」


「ありがとう、日向君」



 笑顔で日向の手を取り歩く三村。

 その姿を見るとまるで2人はカップルのようだ。



「いいなぁ~~悠里先輩」


「桜、何かいった?」


「いいえ、別に何でもありません‥‥‥‥聞こえてたくせに」



 むすっとして怒った表情を見せる桜を見て、思わずため息をついてしまう。

 全く変に桜を刺激しないで欲しい。ただでさえ暴走すると手が付けられないのに。

 三村も三村だ。あそこまで露骨に日向に迫ると、もし次職業選択があった際、桜まで生産系のjobを選ぼうとしてしまうだろう。



「空先輩、あたし達も行きましょう」


「そうだな。とりあえず、その手を離せ」


「えぇ~~ダメなんですか?」


「当たり前だ。敵が出てきたらどうするんだよ? すぐ戦えるように臨戦態勢を取っておけ」


「わかりました」



 俺の手を離し頬を膨らませ、不満を述べる桜。

 そのまま俺の横を歩きながら槍を持ち、その間ずっと露骨に不満そうな顔をしていた。



「こんなことになるなら、悠里先輩と同じ生産職にしておくべきだった」


「何か言った?」


「なんでもないです。早く行きましょう」



 そういって俺と桜も日向達の後ろについていった。

 そしてこのままの陣形で三村の家へと向かうのだった。

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