オークの心配事
次の日の朝、朝食を食べ終えた俺は準備を整えて外に行こうとしていた。
目的という目的は特になかったが、このままオーク達とここで過ごすよりも、外の空気を吸って少しでもリラックスをしたかったのである。
「空さん、どこへ行くんですか?」
「ちょっと外に出かけてくる」
「それならあたしも一緒に行っていいですか?」
「構わないけど、少し散歩に行ってくるだけだぞ」
「はい! それならあたしもぜひ行きたいです」
元気よく返事をする桜。ここまで嬉しそうい返事をされると、俺に桜の提案を断る理由はない。
「桜がそう言うなら別にいいけど、特に面白いことなんてないからな」
「別にいいですよ。久々に空さんと一緒にゆっくり過ごせればそれでいいです」
あぁ、なるほどな。今の言葉を聞いて納得した。。久々に桜は俺と一緒に過ごしたいのだろう。
よくよく考えれば、ここ最近俺は由姫とティナと特訓、桜はクルルと遊んでいた為2人の時間がろくに取れなかった。
桜が俺の散歩について来るって意図がようやくわかった。
「先輩! 私も一緒について行ってもいいか?」
「由姫!? まぁ、別に構わないけど」
「それなら私も行くわ」
「ティナもついて来るんじゃ、結局いつものメンバーになるじゃないか」
「別にいいじゃない。人数が多い方が楽しいでしょ?」
「確かにそうだな」
「そうだぞ、先輩。私達もオークの城に攻め込むのに緊張している。少しはリラックスをしたいのだ」
2人がそこまで言われると、俺は断ることができないので了承してしまう。
俺が了承すると2人は満足げにうなずき、出かける準備を始めた。
「空さん!」
「何だ、桜?」
「いえ、何でもありません。ティナさん達が言う通り、人数が多い方が楽しいですよね」
その問いかけに俺は何も答えることができない。
『ふふふふふ』と笑う桜から無言の圧力が来るけど、見なかったことにしよう。
「お前達、出かけるのか?」
「あぁ、ちょっと散歩してくる」
「わかった。その格好じゃ目立つから、これを着ていけ」
「これは‥‥‥」
「それを着ていれば、少しでもここにいる住民のように見えるだろう。まぁ、ないよりはましだ」
そう言われて渡されたのはどこにでもある薄汚れた皮の布である。
ポンチョのような作りになっており、被れば全身が布で隠れるようになっている。
「ありがとう」
「お前達の事が存在が外に知られて作戦が失敗したら、厄介なことになるから渡しただけだ。ただそれだけだからな」
俺達の事を見て布を渡したオークは恥ずかしそうにそう言った。
こういうことをいう奴のことを何て言ったっけ?
「そうだ、思い出した。確かツンデレって言うんだよな」
「ツンデレ? なんだ? その言葉は?」
「気にしないでくれ。俺達の世界の言葉だ」
「変な奴だな」
オークは俺の言葉を気に留めることはない。
ただその言葉を聞いた桜達が納得したような反応をしていた。
「ツンデレ‥‥‥確かに空さんの言う通りですね」
「そうだな」
「何がおかしい?」
「何でもありませんよ。オークさん達、ありがとうございます」
「別に礼を言われることはしていない。それよりも気をつけて行って来いよ」
「わかった。行ってくるわ」
オークの見送りの言葉を聞いて、俺達は外へ出て行く。
目的地を特に定めずに、俺達は奴隷地区を歩いて行った。
「あのオークさん、可愛かったですね」
「どこが?」
「あの恥ずかしがっている感じとか、絶対にこの中の誰かの事が好きなはずですよ」
「嘘!?」
あのオークがこの中の誰かのことが好きなんてことがあるのか?
確かに恥ずかしがっているように見えたが、さすがにあのオークがそこまで考えているようには見えなかった。
「確かにその可能性は否定できないな」
「由姫までそういうのかよ!?」
「一体誰のことが好きなのでしょうか? 謎は深まるばかりです」
そんなに謎は深まっていないように感じるが、桜と由姫は真剣に考えている。
俺にはそこまでオークが深く考えているようには思えない。
ただ自分達の計画が俺達のせいで頓挫するのが嫌だから、布をくれているようにしか見えなかったからだ。
「もしかして、あのオークが好きだったのは桜だったりして」
「縁起でもないことを言うなよ」
「冗談だって、空。だからそんなしかめっ面しないで」
「別にしかめっ面をしているわけではない」
それに桜は既に俺の彼女でもある。
その桜が俺の他の男の方になびくなんて、考えたくもない。
ただ等の桜だけはニコニコと笑っているのだった。
「どうしたんだ? 桜?」
「心配しないでください、空さん。あたしは空さん一筋ですから」
「余計なことは言わなくてもいい」
俺が恥ずかしくなるだろ。
俺の気持ちを知ってか知らずか、俺との距離を余計に縮める桜だった。
「それよりこれから空はどこに行こうとしているの?」
「特に決めてない」
外に出たのはちょっとした気分転換の為だ。
これから激しい戦いが俺達を待っているから、少しでもリラックスする為に体を動かしているにすぎない。
「それなら私、行きたい場所があるんだけどそこに行こうよ」
「ティナが行きたい場所?」
「そうよ。昨日の夜カロンさんに聞いたんだけど、この奴隷地区にも市場のようなものがあるらしいの。そこに行きましょう」
「市場か‥‥‥」
「いいですね、空さん! せっかくだからそこに行きましょう」
確かに市場のようなものがあるなら、そこでもしかしたら使えるものがあるかもしれない。
それにあそこで聞いた話の他にも、何か有力な情報が流れている可能性もある。
「行ってみる価値はありそうだな」
「それなら決定ね」
「楽しみです」
「場所はどこにあるのかわかるのか?」
「こっちの方角にあるらしいわ」
ティナが指差す方向、そこは昨日俺達が通ってきた道でもあった」
「また元来た道を戻るのか」
「別にいいじゃない。それより早く行きましょう、空」
「わかったって。そんなにせかさなくても、俺は普通に歩ける」
俺の手を引こうとするティナ。その手を反対側から握る手もある。
「桜!?」
「早く行きましょう、空さん」
「あぁ、そうだな」
こうして俺は桜とティナに手を引かれながら、市場へと向かう。
俺達の事を不満そうに見る由姫の事は見なかったことにしようと心に誓い、奴隷地区の市場へと向かうのだった。
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