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新しい仲間

いつもご覧いただきありがとうございます

「う~~~ん‥‥‥もう、朝‥‥‥か」



 ベッドから体を起こすと、窓から強い日差しが差し込んでくる。

 あのバタバタした黒龍討伐の騒動から数日が過ぎた。

 あれから何か事後処理があるかと思えば何もなく、全てディアボロさんがやってくれたらしい。

 そのおかげで俺達は何もすることがなく、平穏な日常を過ごしていた。



「痛ッ!? やっぱりまだ体にガタが来ているか」



 体を起こすと体の節々がやっぱり痛い。

 この怪我はイリスとの戦いで傷ついた怪我ではなく、由姫とティナから受けたものである。



「もう少し手加減をしてくれてもいいのに」



 イリスとの戦いの怪我が完治した後、あの2人から毎日特訓という名のしごきを由姫とティナから受けた。

 いや、しごきじゃないな。一種のリンチにも近い。

 下手をすればイリスと戦った時よりも傷ついているんじゃないかってぐらい、由姫とティナにボコボコにされていた。



「あの2人。新しい武器が手に入ったからって、容赦なく俺に攻撃してくるからな」



 幸い武器が木剣なので、死ぬことはないが痛いものは痛い。

 毎日体のどこかしらに痣を作り、桜に治療されるという日常を繰り返していた。

 これだけのことを考えると、あながち平穏な日常というものを過ごしていないのかもしれない。



「やばっ!? 朝食の時間だしそろそろ起きないと!? ‥‥‥そういえば、桜は‥‥‥」


「う~~ん」


「うん?」



 隣を見ると気持ちよさそうに寝ている桜がいた。

 寝る時用の枕を抱きしめ、口元を歪めただらしない表情を浮かべ幸せそうに寝ていた。



「どんな夢を見ているかわからないけど、相変わらず気持ちよさそうに寝てるな」



 エルフの町に来てから桜とは一緒のベッドで寝ている。

 最初こそ緊張してしまい、眠れない日々が続いたがこう長く一緒にいると慣れたものだ。



「それにあの夢も見なくなった」



 ここに来るまで毎晩見ていた、学校での出来事。そして死んでいった仲間達。

 俺はあの時の事を一瞬たりとも忘れたことはないけど、あの悪夢はなくなった。



「これも桜のおかげなのかもしれない」



 桜が天国にいったあの人達を説得してくれたから、もしかしたら俺はあの悪夢から解放されたのかもな。

 そこは桜に感謝しないと。



「起こしたくはないけど、時間は時間だ。いい加減に起きないとな」



 時間的にそろそろ朝食だ。桜の幸せそうな寝顔を見れないのは名残惜しいが、そろそろ起こさないと他の人達に迷惑がかかる。

 特に由姫なんか朝食を楽しみにしているので、少しでも遅れると何を言われるかわかったもんじゃない。



「桜!! 朝だぞ!! 起きろ!!」


「う~~ん、みうちゃんは食いしん坊ですね」


「みうちゃんなんていないぞ!! いいから起きろ!! 朝食の時間だ!!」


「ごはん‥‥‥ですか?」



 目をこすりながら、寝ぼけまなこで桜は上半身を起こす。

 どうやらまた寝ぼけているみたいで、右に左に視線をさまよわせている。



「桜、起きたか? 朝だぞ」


「う~~~ん‥‥‥あれ? 空さん?」


「やっと起きたか」



 めをぱちくりとしながら辺りを見回す桜。

 その様子はまるで誰かを探しているように見えた。



「あれ? 空さん。みうちゃんとこたくんはどこですか?」


「みうちゃんにこたくん? 何寝ぼけてるんだよ」



 俺の全く知らない人の名前を挙げられても、さすがに答えられないぞ。

 さっきから何を言ってるんだ? 桜は?



「あっ!? あれは夢でしたか」


「何の夢かわからないけど、いい夢を見ていたみたいだな」


「はい! すごくいい夢でした!」



 先程までとはうって変わり、元気に返事をする桜。

 みうちゃんとこたくんっていう子はきっと桜にとって大切な人なのだろう。

 何だろう。あんまり桜の交友関係を詮索したくないが、俺の他に特別な存在がいることを考えるとモヤモヤするな。



「そしたら早く支度をして下に行こう。そろそろ朝食の時間だ」


「はい!」



 俺と桜、それぞれ別の部屋で着替えを行い、途中の廊下で合流してリビングへと向かう。

 リビングは階段を下りたすぐ側にある。俺達は2人でリビングへと向かう。



「そういえば、今日の朝食の当番は桜じゃなかったっけ?」


「違いますよ。今日はカレンさんの番です」


「カレンさんか」



 カレンさんが食事を作ってくれるなら間違いはないだろう。

 ちゃんとおいしい食事を作ってくれるはずだ。



「あっ!? おはよう、空君、桜ちゃん」


「「おはようございます、カレンさん」」


「おはよう、2人共」



 カレンさんに挨拶を済ませるが、カレンさんは俺達から目を外さない。

 ニコニコと笑い、優しくて生暖かい視線を俺達に向けていた。



「あの、カレンさん。俺達に何かありましたか?」


「あらあら、うふふっ! 別に、なんでもないわよ」


「そうですか」


「しいて言えば、いつも2人は仲良しさんだなって思って」


「カレンさん!! こんな朝から桜を刺激するようなことは言わないでください!!」



 ただでさえ桜は人目をはばからずスキンシップが過激になるんだから。

 もしやるならそういうことはできるだけ人目が少ない所でやるべきだろ。

 こんな大勢の人前ですることではない。



「空さんはあたしと仲良しは嫌なんですか?」


「そういうわけじゃないけど‥‥‥」


「じゃあこういうことをしてもいいですよね?」


「さっ、桜!?」



 桜は俺の腕を取ると、そのまま自分の腕に絡めた。

 それだけではない。そのまま自分の体を俺の腕に押し付けて離れてくれない。



「別にあたしと空さんは仲良しだからいいですよね?」


「あっ、あぁ」



 いきなりこんなことをされて緊張してしまったせいか、声が上ずってしまった。

 桜の胸の柔らかい感触や俺の鼻腔をくすぐる柑橘系の甘い匂いのせいで、頭がくらくらしてしまう。



「空さん、大丈夫ですか?」


「あぁ、大丈夫だ」



 幸いテーブルまですぐそこだ。テーブルに着けば、桜もクルルの相手をするので俺から離れる。

 それまでの我慢だ。できるだけ頭の中に浮かんでくる、この煩悩を抑えこまなければならない。



「おはよう、桜、先輩」


「おはよう、桜」


「由姫ちゃんもティナさんも、おはようございます」


「おはよう」



 桜がティナと由姫にあいさつした。

 2人は既に席に座って朝食を待っている。



「ついでに空もおはよう」


「俺を桜のついでみたいに言わないでくれ」



 ティナにとって、俺は桜のついでなのか。

 それにしても今日のティナはおかしい。

 いつもはもっとテンションが高いのに、今日はどこかふてくされた顔をして、一体どうしたんだろう?



「ティナ、何かあったのか?」


「別に。何でもないわよ」


「変なティナだな」



 何でもないわりには俺の顔を見ようとしないし、いつにもまして様子がおかしい。

 まるで俺がティナの機嫌を損ねるようなことをした。そんな感じだ。



「まぁ、ティナの機嫌はその内直るだろう」


「なら、いいけど」


「だけど先輩は色々と反省した方がいいな」


「由姫!?」



 先程とは打って変わり白けた目を向けてくる由姫。まるで俺に今までの行いを反省しろと言わんばかりだ。。


「反省ってなんだよ。俺が何を反省するって言うんだ」


「そういう所だな」


「!?」


「先輩はもっと周りに敏感になった方がいい。もちろん私にもな」



 意味がわからない。俺はいつでも色々な人のことを考えながら接しているのに。

 何故こういう時だけ、批判を浴びないといけないんだ。理不尽だろ。



「クマ!」


「グマ!」


「あっ!? クマちゃん達が来ました!」



 階段を一段飛びをして、走ってくる子熊達。

 よほど朝食が楽しみなのかせわしなく走ってくる。



「相変わらず子熊達は騒がしいな」



 子熊達のせいで、さっき由姫に言われたことが頭から抜け落ちてしまった。

 ティナが機嫌悪いことに対しての反省の話だったが、子熊達が来たことで、由姫も何も言えなくなってしまったみたいだ。



「クマッ!」


「グマッ!」


「クマちゃん達もテーブルに座ったようですね」


「そうだな」



 子熊達が座ったテーブルは、俺達が座っている大きなテーブルとは違う小さいテーブル。

 いつもクルルと一緒にいる()()()()()()の為に作ったものだ。



「空さんが作ったテーブルと椅子、クマちゃん達は気に入っているようですね」


「そうみたいだな」



 気に入っているというよりは、朝食の為に座っているといってもいいだろう。

 今も机を軽くトントンと叩きながら、今か今かとご飯の時間を待ちわびている。



「クマ!」


「グマ!」


「クマちゃん達、すごくお腹がすいているようですね」


「いつものことだろう」



 この時間、子熊達がお腹を空かせていないこと自体が珍しい。

 むしろご飯が食べられないと言われたら、俺達全員が病気ではないかと疑ってしまう。



「新しいテーブルもできたし仲間も増えたしでいいことづくめです」


「確かにな。そういえば、クルルと()()()()はまだ来てないみたいだな」


「そうみたいですね。一体どうしたんでしょうか」



 俺達が心配していると、2階の方からドタバタと足音が聞こえてくる。

 1人ではない。複数の足音が2階から聞こえてきた。



「急ごう!! 早くしないと朝ご飯が食べられなくなるよ!!」


「クゥーー!」


「グゥーー!」



 クルルに引き続き、白と黒の色をした2匹の龍が降りてくる。

 龍のサイズは子熊達と同じぐらいで、クルルよりも少し小さいサイズになっていた。



「相変わらずこの龍達が持つスキルはおかしいな」


「でも、凄いですよね。自分達の体の大きさを自在に変えられるなんて」



 ティナやクルルの説明では、これは変形というスキルらしい。

 このスキルを身に着けた術者は自分の体の大きさを意のままに変えられるみたいだ。



「まさかあんな巨大な体が、こんな可愛らしいミニチュアサイズになるとはな」


「はい、私も思いませんでした」



 草原で出会った黒龍達は俺達の何十倍の大きさをしていた。

 それが気づいたら俺達の何倍も小さくなれるなんて思いもしない。



「初めからこのサイズだったら、あんな戦いなんて起きなかったのに」


「それではきっと、黒龍さん達は殺されていましたよね?」


「たぶんな」



 たぶんと言ったが、確実に殺されていただろう。

 イリスの事だ。黒龍達が成長するのを恐れて、先に殺してしまったに違いない。



「ちゃんとそっちの席でいい子に座ってないとダメだからね」


「クゥーー!」


「グゥ」



 子熊達だけでなく、龍達の席ももちろんある。

 合計で4つの椅子が並べられたテーブル。そこに2匹の龍と2匹の子熊が一緒に座った。



「全員揃ったことだし、そろそろ朝ごはんにしましょうか」


「それなら食器を持って行くのを手伝います」


「あたしもやります」


「2人共、ありがとう。そしたら手伝ってくれるかしら?」


「わかりました」



 俺達は台所へ行くとカレンさんから料理ののった皿を受け取り、テーブルへ運んでいく。

 もちろんそれは俺達が座るテーブルだけじゃない。

 子熊達がいるテーブルにも置いていった。



「クゥーー!」


「どういたしまして」


「グゥ」


「お前はなんか生意気だな」



 白龍はうれしそうに笑い頭を下げるのに対して、黒龍の方はぶっちょうずらで俺の事を見ている。

 そのふてぶてしい態度を見て思う。こいつ、俺のことを嫌ってるんじゃないかって。



「こら!! クロ!! ご飯を運んでくれたんだから、ちゃんと空お兄ちゃんにお礼を言わないとだめだよ!!」


「グゥ」


「ちょっと待て、クルル。クロって誰のことを指してるんだ?」


「もちろん、この黒龍さんのことだよ」


「いつの間に名前を‥‥‥」



 確かに黒龍達が俺達の家に来て数日が経つ。そろそろ名前を付けた方がいいんじゃないかって思った。

 名前を付けるのはクルルに一任していたが、さすがに安直すぎやしないか?



「ちなみに白龍の方の名前は‥‥」


「シロだよ!」


「それってもしかして」


「そうだよ。黒龍さんは黒いからクロで白龍さんは白いからシロってつけたの」



 本人は自信満々のようだが、やっぱり安直のような気がした。

 だけど子熊達に名前をつけた時よりはましに思える。

 さすがにあれは酷かったからな。



「空」


「わかった」



 もう何も言わない。子熊達につけたベア男とベア子よりはましだ。



「ちなみに昨日の夜、クルルが私にシロとクロの名前を報告したんだけど、第一案は聞く?」


「一応聞いておこう」


「ドラとゴンよ」


「さらに酷いな」



 クルルのことだ。きっとそんな激ダサな名前を反対されても押し通そうとしたのだろう。

 結果ティナと喧嘩してしまい、折衷案としてあの名前にしたんだ。

 そのことを聞かなくてもティナの態度で想像できてしまう自分が怖い。



「ティナ、お疲れ様」


「ありがとう、そう言ってもらえるだけでうれしいわ」



 道理で朝は機嫌が悪いはずだ。昨日姉妹喧嘩した後なら、なおさらだ。



「なんか空さんがいい感じに勘違いをしているような気がします」


「あれは確実にティナが悪いな」



 桜と由姫が何かを話しているが、聞かないでおこう。

 今は朝食を食べるのが先決だ。



「はい、皆。おしゃべりはそこまでにして! 準備ができた所で朝食を食べましょう!」


「はい」


「では全員一緒に、いただきます」


「「「「「「いただきます」」」」」」



 こうして俺達は朝食を食べ始める。

 皆が楽しむ騒々しい朝食が幕を開けるのだった。

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