幸せのクローバー
引き続きクルル視点の話になります
「‥‥‥‥ゥーーー」
「うぅ‥‥‥」
風の吹き抜ける音が聞こえる。
空を見上げるとまだ日ので前。朝日が昇ろうとしている所だ。
「う‥‥‥ん? 少し早く起きちゃった。もう少し寝よう」
幸い周りは静かなので誰かが起きた気配もない。
私の隣でライトとムーンも気持ちよさそうに寝ているので、もう少し寝てよう。
「クゥーーーー!」
「う~~ん、もう少し寝かせて」
風の音の次は何かの鳴き声が聞こえる。どこかで聞いたことがある鳴き声だが、この鳴き声はどこで聞いたのだろう。
寝起きで頭がまわっていないので、思い出せない。
「まだ起きるには早い時間だよ。もうちょっとだけ寝かせて。あと5分だけ」
そう言って再びタオルケットの中に潜る。
おうちにいる時、由姫おねえちゃんが早起きは三文の徳だって言ってたけど、私はそうは思わない。
寝る時に寝ておかないと成長しない。ましてやおねえちゃんみたいな腰高で綺麗な体形になるには、十分な睡眠が必要だからだ。
「クゥーーー!」
「わっ!? 何!?」
私の頬にぬめぬめとしてざらざらとした感触のものがあたる。
生暖かいそれに触れた時、くすぐったくなって思わず毛布から飛び出してしまった。
「もう!! 私は眠いんだから、もう少し寝かせてって‥‥‥」
「クゥーーーー」
あたしが目を開けると、目の前には長い舌があった。
いや、舌だけじゃない。そこには昨日まで寝た切りで起きなかった白龍さんがいたのだった。
「白龍さん‥‥‥」
「クゥーーーー」
白龍さんはうれしいのか、何度も私の頬を舌でなめまわす。
よほどうれしいのか、白龍さんは笑顔で私の頬を舐め続けるのであった
「わっ!? くすぐったいよーー!」
「クゥーーーー!」
白龍さんになめられたところがくすぐったい。
こうして白龍さんがじゃれてくるのも嬉しいが、それよりも元気な姿が見れてよかった。
「どうしたの!? 白龍さん?」
「クゥーー!」
「もしかして、私にお礼を言ってるの?」
「クゥ!」
「うわっ!?」
「クゥーー」
私に聞こえるぐらいの声で白龍さんは答えた。
もしかすると白龍さんが起きたのも今さっきで、真っ先に私のことを見つけて、元気アピールをしたのかもしれない。
「そうだ!! 皆にも白龍さんが起きたことを伝えないと!!」
「クゥ?」
「皆!! 白龍さんが起きたよーーー!!」
私が叫ぶと隣にいたライトとムーンが反応する。
だが一回体を起こしたかと思うと、再び寝そべってしまう。
「ライト!! ムーン!! 起きてよ!! 白龍さんが!! 白龍さんが起きたんだよ!!」
「クマーー」
「グマーー」
「ダメだ。完全に寝てる」
こうなるとこの2匹を起こすことは難しいだろう。私と同じぐらいお寝坊さんだから。
「昨日私と一緒に寝たんだけどな」
私よりも疲れていたのだろうか。いつもは一緒に起きる2匹の反応が全くない。
「それよりもどうしよう。誰かにこのことを伝えないと」
「どうしたんですか? クルルちゃん!?」
「おねえさん!!」
向こうの草原の方から昨日のおねえさんが私の方へと慌てて駆け寄ってくる。
さっき叫んだ私の声はあの人には聞こえていたらしい。手を振ってこっちに来てとおねえさんを呼ぶ。
「はぁ、はぁ‥‥‥大丈夫ですか? クルルちゃん‥‥‥」
「私は大丈夫だよ」
「何かあったかと思って心配しました。でも、無事でよかったです」
「ありがとう、おねえさん」
どうやら昨日のおねえさんは、私が誰かに襲われていると思って駆けつけて来てくれたらしい。
その証拠に額から大粒の汗を流している。遠くから走ってきたに違いない。
そう考えると悪いことをしたなと思い、ちょっとだけ胸が痛くなった。
「いえ、気にしないでください。朝の結界の担当が私だったから、早起きした所クルルさんの叫び声が聞こえたので来ました」
「そうだったんだ」
「はい。それよりどうしたんですか? 一体ここで何が‥‥‥」
「クゥーー!」
「白龍!? 目覚めたんですね!?」
おねえさんは白龍を見ると驚いた表情をした。
だけど白龍の表情は変わらない。うれしそうに笑っている。
「クルルちゃん!! 白龍はいつ目覚めたの!?」
「私もわからないけど、さっき起きた時にはもう起きてたよ」
「こうしちゃいられないわ!! 私はディアボロ様に報告するから、クルルちゃんも一緒に来て!!」
「うん、わかったよ」
「クゥーーー」
「えっ!?」
私が動こうとすると白龍さんが寂しそうに鳴く。
その目と鳴き声から推測するに、まだ私の側から離れたくないように見えた。
「クゥーー」
「おねえさん、私はもう少し白龍さんの側にいるよ」
「何で!? 危険かもしれないのに!?」
「大丈夫だよ。黒龍さんも優しかったけど、白龍さんも優しいから」
私が側にいると言ったからか、うれしそうに鳴き声をあげる白龍。
そのまま舌で私の頬を撫でる。正直くすぐったい。
「くすぐったいよ。白龍さん!」
「クゥーーー!」
「‥‥‥‥‥わかったわ、クルルちゃん。報告は私がしてくるから、白龍の事をお願いできる?」
「うん。任せて」
私と白龍の様子を見て何かを感じたのか、おねえさんはあっさりと引き下がった。
昨日とは全然違う対応をされて、びっくりしてしまう。
「でも、いいの? 昨日は反対していたけど」
「貴方と白龍の様子を見れば、白龍が人を襲わないことはわかります」
「おねえさん」
おねえさんも白龍さんが人のことを襲わないと思ってくれているみたいだ。
白龍さんと一緒に入れることもうれしかったけど、おねえさんが私と白龍さんのことを信じてくれたのが、何よりもうれしかった。
「それでは私は行ってきます」
「うん、いってらっしゃい」
「あっ!? それとクルルちゃん」
「何?」
「私、昨日貴方に言っていたことを撤回するわ」
「昨日言っていたこと?」
おねえさんって何か言ってたっけ? 私の事を心配していたけど、それ以外は覚えていない。
「ふふっ、私昨日クルルちゃんのことを立派な魔獣使いになるって言ったよね?」
「あっ!? そう言えば言ってたかも!?」
「あの言葉、撤回させてもらうわ」
「えぇ~~」
おねえさん曰く、どうやら私は立派な魔獣使いにはなれないらしい。
その事にちょっと落ち込んでしまった。
「そんなに落ち込まないで。むしろ私は褒めてるの」
「褒める?」
「そうよ。立派な魔獣使いじゃなくて、歴史に名を残す偉大な魔獣使いになるわ」
「それって何か違いがあるの?」
どっちも意味は立派な魔獣使いになれることだと思っていたけど、それは違うの?
私はおねえさんを見上げると、私の頭をおねえさんはそっと優しく撫でてくれた。
「クルルちゃん、それは貴方が大人になればわかるわ」
「そうなの?」
「うん。だからクルルちゃん、頑張るのよ」
「わかった」
「それじゃあ行ってくるわね。また後でね」
「いってらっしゃーーい!」
そう言うとおねえさんはどこかへ行ってしまう。
さっきの言葉、言っている意味はわからないけど、きっと私のことを褒めてくれたんだよね。
「グゥ」
「あっ!? 黒龍さん、おはよう!」
「グゥ!」
「クゥーーー!」
「グゥ!?」
白龍さんが起きたことに気づき、黒龍さんは白龍さんの元へと行く。
そして黒龍さんと白龍さんは何かを話しているようだった。
「これで一見落着だ」
後は私もお姉ちゃん達にこのことを伝えに行かないと。
「でも、どうやって?」
今私は白龍さんの近くを離れられないし、ライトとムーンはまだ寝てる。
頼みのおねえさんもディアボロさんの所に報告しに行っちゃったし、伝える手段はない。
「どうすればいいんだろう」
「クゥーーーーー!」
「うん? どうしたの!? 白龍さん!! 何かあったの!?」
白龍さんの寝ている所に行くと、下の草原に顔を擦り付けている。
まるでその下に何か宝があるような仕草だ。
「ここ? ここに何かあるの?」
「クゥーー!」
まるでここの草むらに何かあると言っているようだ。
下を見るが特にめぼしいものは何もない。
「特に何もないなやっぱり穴を掘るしか‥‥‥」
そう思った時、ある草にめを奪われた。この草は見たことがないけど、これってもしかして‥‥‥。
「四葉のクローバー!」
四またにわかれているクローバーの葉っぱ。
これは前に桜おねえちゃん達と一緒に探して見つからなかったものだ。
「この草って、見つけると幸せを運んでくれるんだよね」
桜おねえちゃんが前にそう言っていた。
幸せを呼ぶと言われている四葉のクローバー。まさかこんな所で見つかるなんて思わなかった。
「白龍さんはこれのことを教えてくれたの?」
「クゥ!」
「グゥ!」
「ありがとう! 白龍さん! 黒龍さん!」
私は改めてお礼を言う。やっと探していた草が見つかったのだから、すごくうれしい。
「桜おねえちゃんが言ってたよね」
四葉のクローバーは幸せを運んでくると。
見つけたら幸運だから、何かいいことがあるって話していた。
「私‥‥‥今、凄く幸せな気分」
「クゥ!」
「グゥ!」
黒龍さんとの戦闘もなくなり、白龍さんも元気になった。
うれしそうにしている2匹を見ていると、私まで幸せな気分になる。
「グマ‥‥‥」
「クマ‥‥‥」
「ライトにムーン!? 今起きたの!?」
「クマ!」
「グマ!」
ライトとムーンもタオルケットから顔を出す。
ライトは大きなあくびをムーンは目をこすりながら、その場に立ち上がる。
「クゥーーーー!」
「グマ!?」
「クマ!?」
「そうだ! ライト、ムーン。さっきね!! 白龍さんが起きたんだよ!!」
「クゥーーーー!」
「クマ!」
「グマ!」
「クゥーー!」
「えへへ! やっぱりうれしいよね」
ライトとムーンも最初は驚いていたようだが、今は私と一緒になって喜んでくれているようだ。
「そうだ! せっかくライトとムーンが起きたんだから、桜お姉ちゃん達にもこのことを知らせないと‥‥‥」
「クルルちゃ~~ん!!」
「クルル~~!!」
遠くの方から叫び声が聞こえる。
あの声は間違いない。桜おねえちゃんと空おにいちゃんだ。
「こっち!! こっちだよ!!」
私は桜おねえちゃん達に向かって叫ぶ。
自分達はここへいるよとアピールするように。
「クゥーー」
「よかった。本当によかったね」
白龍さんが元気に笑ってくれてよかった。
幸せを運ぶ四葉のクローバーと白龍さんのことを交互に見ながら、私はそう思うのだった。
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