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悠里の面影

桜視点の話になります。

時系列は空と別れた後、空がエルフと戦っている間です。

「こっちだよ!! 桜おねえちゃん!!」



 クルルちゃんの道案内に従い、あたしは洞窟の中に来ていた。

 洞窟の中は奥の方に行くにつれてじめじめとして薄暗い。

 そして何より、奥に行くの連れて生暖かい風があたしの肌を撫で不気味な気配がするのだった。



「クルルちゃん、白龍さんの所まで後どれくらいかかりますか?」


「後ちょっとだよ。確かこの辺に白龍さんがいたと思うんだけど」


「クマ!」


「グマ!」


「クマちゃん達がこっちに来てって言ってますね。そっちに行きましょう」



 クルルちゃんからクマちゃん達に道案内が変わり、ライト君とムーンちゃんが鼻をヒクヒクさせながら歩き出す。

 4足歩行で地面の匂いを嗅ぎながら歩く姿は犬そのもの。

 クマちゃん達も白龍さんのことを心配していることが痛いほど伝わってきた。



「クマ!」


「グマ!」


「わかりました。もう少しですね」



 クマちゃん達を信じてその後ろをついて行く。途中険しい道もあったが関係ない。

 きっとこの先にクルルちゃん達が見た白龍さんがいる。そんな予感がした。



「クゥーーー」


「あそこだよ!!」


「わっ!?」



 あたしが見た白龍さんの傷は想像以上に酷かった。

 体中に傷や痣があり、真っ白いきれいな肌が赤黒く染まっている。



「酷い!!」



 しかも傷はそれだけじゃない。両翼には小さな穴が開けられている。これじゃあ空を飛ぶこともできない。



「誰がこんなことを‥‥‥」



 見るからに痛々しい白龍の姿に思わず目を覆いたくなる。

 特に右翼は酷い。翼の中央部には大きな穴が開き、白い翼が真っ赤に染まっていた。



「桜おねえちゃん!! 白龍さん大丈夫だよね!? まだ生きてるよね!?」


「大丈夫ですよ。まだ呼吸はあります」



 だけど白龍さんの呼吸は浅い。そして顔色も悪いように見える。



「この状態、まるで学校で倒れた日向先輩みたい」



 日向先輩だけではない。由姫ちゃんが空さんを運んで来た時と同じだ。

 まるで死神が今にも黄泉の世界に連れ去ろうとしている、そんな状態だ。



「傷は治せても、さすがにこの出血量じゃ‥‥‥」



 助からない。あたしの腕が未熟なせいもあるが、この白龍さんが元気になる姿が描けない。

 このまま優しい目で息絶える。そんな未来しか見えなかった。



「悠里先輩なら‥‥‥」



 こんな患者さんがいても平気で治してしまうだろう。それこそ必死に目を血眼にして、白龍さんに生きるように言葉を投げかけながら治療する姿が目に浮かぶ。



「あたしが助けます」


「桜おねえちゃん!!」


「安心してください。あたしが白龍さんを助けます」



 安心させるようにあたしはクルルちゃんの頭を撫でる。

 もし悠里先輩がここにいたら、きっとこんな風にクルルちゃんにしていたかもしれない。



「絶対大丈夫です」



 以前悠里先輩が日向先輩と空さんを必死になって助けてくれた。

 瀕死の重傷だった2人を、死の淵から救ってくれた。



「次はあたしの番です」



 悠里先輩より腕は劣るかもしれない。だけど、目の前の人を助けたいという思いは悠里先輩に負けていない。

 だから大丈夫。この白龍さんを絶対に救って見せる。



「クルルちゃん、手伝ってくれますか?」


「もちろんだよ」


「ありがとうございます。クマちゃん達も手伝ってくれるんですか?」


「クマ!」


「グマ!」


「ありがとうございます。そしたらクルルちゃんは、この回復薬を白龍さんに飲ませてください」



 アイテムボックスから緑の回復薬を5本出す。

 これはこの前あたしが何かあった時ように作ったものだ。

 悠里先輩の青い回復薬効果は劣ると思うけど、それでも充分効果はあると思う。。



「わかったよ」



 クルルちゃんはそれを受け取ると白龍さんの顔へと行く。

 彼女の前には弱弱しく目を開く白龍さんがいた。



「クゥーーー」


「もう大丈夫だからね。これを飲んで」


「クゥ」



 クルルちゃんは緑の液体が入った小瓶を白龍さんの口元に寄せる。

 白龍さんは小瓶の先端を口に含むと、その薬を飲ませ始めた。



「クゥ!? クゥ!?」


「我慢してね。きっとよくなるから」



 やはり相当まずいらしい。空さんがいつもあれを飲むたびに相当苦しんでいたので、きっと酷い味なのだろう。



「桜おねえちゃん、飲み終わったよ」


「そしたら残りの4本も飲ませてください」


「わかったよ!」


「クゥ!?」



 再び白龍さんの口に小瓶が入れられる。

 それを驚きながらも、白龍さんは頑張って飲んでいた。



「あれが飲めるなら大丈夫ですね」



 あの激マズの回復薬を飲んで反応があるなら一安心です。後はクルルちゃんに任せて、私は私のできることをしましょう。



「クマ!」


「グマ!」


「クマちゃん達はこの塗り薬を白龍さんの傷の所に塗り込んでください。


「クマ!」


「グマ!」


「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」



 薬を受け取るとクマちゃん達は器用に白龍さんの傷に塗っていく。

 丁寧かつ迅速に。クマちゃん達は頑張っているように見えた。



「ここまでは順調ですね」



 後はこの翼をどうするかだ。特に右翼。この中央に大きく穴が開いてしまった翼を修復しないといけない。



「桜!!」


「ティナさん!! 黒龍さんの怪我は大丈夫でしたか?」


「応急処置をしたから大丈夫‥‥‥って、何よこれ!? 酷い怪我じゃない!! 誰がこんなことを」



 ティナさんも白龍さんの惨状に嘆いているようだ。

 それもそうだろう。だって白龍さんはボロボロで今にも死んでしまいそうなのだから。



「この翼はどうするの?」


「これはあたしが塞ぎます」


「塞ぎますって、どうやって?」


「あたしには縫合スキルがあります。それに道具もここにあります」



 アイテムボックスから取りだしたのは針と2本の糸。

 これと悠里先輩から教えてもらったスキルがあればなんとかなるはずだ。



「針と糸でそんなことできるの?」


「大丈夫です」



 悠里先輩の真似になってしまうが、なんとかなるはずだ。

 ずっと悠里先輩の側で見ていたんだ。失敗するはずがない。



「そこまで言うなら桜を信じるわ」


「ありがとうございます。ただ1つ懸念事項がありまして」


「懸念事項?」


「はい。傷口からバイ菌が入るのを防ぎたいので、できれば清潔な所でやりたいです」



 悠里先輩が言うには傷口にばい菌が入ってしまうと傷口が化膿するので、そういうものが入らない場所でやった方がいいと言っていた。

 日向先輩の怪我を直す時も外ではなく中でやっていたのはその為だろう。



「何だ、そんなことを気にしていたのね」


「ティナさん、何かいい方法があるんですか?」


「そういうことなら私に任せて。それ!」



 ティナさんが白龍の方に手をかざすと大きい光の幕が周りを包む。

 その大きさは巨大な白龍を包んでしまうほど大きかった。



「何ですか、これは!?」


「私達包まれちゃってるよーー!!」


「クマ!?」


「グマ!?」



 クルルちゃんやクマちゃん達も驚いている。

 驚いてしまって手まで止まってしまった。



「ティナさん!? これは一体何ですか!?」


「簡易結界よ。霧の結界みたいな認識阻害はないけど、この結界の中なら外界の菌とか防げるはずよ」


「ありがとうございます」



 ティナさんにお礼を言って、私も光の結界の中に入る。

 光の中はほのかに暖かくとても快適だ。



「この中ならいけるかもしれません」



 ここまでティナさんにしてもらったんだ。

 もう後には引けない。



「まずは麻酔薬を使いましょう」



 これをしないと、白龍さんが痛くて暴れてしまう。

 悠里先輩のものより質は悪いけど、少しでも白龍さんの負担を減らすには使うしかない。



「少しちくっとしますね」


「クゥ」



 白龍さんの翼に麻酔を入れた。

 これで準備は完了だ。



「まずはこの糸を使って」



 最初に使用する糸は筋肉を縫合する用の糸。その糸で白龍さんの翼を縫合していく。



「クゥ!?」


「痛いとは思いますけど、じっとしていてください」



 少しでも動くとずれてしまう。ただでさえ繊細な作業なので、できるだけ動かないでほしい。



「桜? 糸で翼を縫ってるけど、問題はないの?」


「はい、この糸は筋肉に吸収される糸なので大丈夫です」



 悠里先輩から学校で教わっていた時、そんな話をしていた。

 医療用の糸には筋肉に吸収される糸があること、それを使えば抜糸しなくてもいいという情報も悠里先輩から聞いていた。



「これでよし。次は皮膚を縫いましょう」



 続いて皮膚を別の糸で縫合する。これは後で怪我の状況を見て抜糸しないといけないが、今はそんなこと言ってられない。

 もし抜糸するようなことがあれば、私がすればいい。その時は怪我の容態を見る為に白龍さんには定期的にエルフの町に来てもらおう。

 黒龍さんと白龍さんが仲良くエルフの町の近くの草原にいる姿が目に浮かんだ。



「これでよし。 次の傷です」



 その後も白龍さんの翼を丁寧に縫合していく。

 外で起こる大きな騒ぎは聞こえていたが、それも気にならないぐらいあたしは集中していた。



「桜、どう?」


「もう少しです」



 殆どの怪我は塞ぎ終わった。後はこの部分だけなんとかできれば大丈夫だ。



「クゥ!」


「大丈夫ですよ。絶対治りますからね」



 クルルちゃん達が見つめる中、最後の縫合が終わる。

 これで白龍さんは大丈夫だろう。後は包帯を巻くだけだ。



「クルルちゃん。包帯を巻くのを手伝ってください」


「わかったよ」


「クマ!」


「グマ!」


「ふふっ、クマちゃん達もお願いします」



 クマちゃん達の手伝いもあり、あたしとクルルちゃん2人とクマちゃん達2匹で包帯を巻いていく。

 皆ですると早く終わるというけど、本当にあっという間に終わりそうだ。



「桜、ティナ、どこにいるんだ?」



 それから包帯を巻いていると、奥から声が聞こえてきた。

 聞き覚えのある声。きっとこの声は空さんだ。



「こっちです!! 空さん!! こっちに来てください!!」



 あたしが空さんを呼ぶと、そこには空さんがエルフと黒龍を連れてあたし達の前に姿を現すのだった。

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