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だって、俺は‥‥‥

「来たか!! 少年!!」


「イリス!!」



 草原の中央までたどり着くと、そこにはイリスが立っていた。

 よほど余裕があるのか、懐に携えている剣を抜こうともしない。



「今がチャンスだ!!」



 イリスは人間相手だからといい油断している。

 このチャンスをついて、イリスを倒すしかない。



「ふっ」


「何がおかしい!!」


「いや、私の仕掛けた罠に引っ掛かった間抜けな猿が滑稽に思えてな」


「何!?」



 その発言の直後、イリスの後ろに複数の魔法陣が現れる。

 魔法陣はやがて赤い光を発し、青空を真っ赤に染めた。



「悪く思うなよ。これもエルフ族の繁栄の為。お前達にはその生贄になってもらう」



「行け!!」というイリスの合図と共に魔法陣から赤い光線が飛び出す。

 その数おおよそ20個。その光線1つ1つが俺に襲い掛かる。



「やばっ!?」



 慌てて俺はイリスが放った光の光線を避ける。

 幸いこの攻撃は縦には速い分、横の動きはない。

 だから右に左に動いて冷静に避ければ、怖い攻撃ではない。



「ほぅ、この攻撃は避けられたか」


「あんな一直線の攻撃じゃ、避けるのなんか楽勝だ」



 そう言いつつも内心はひやひやものだった。

 魔法陣から一直線上にしか来ないからといっても速度が以上に速いため、光線を打ち出してから動き出すのでは遅い。

 だからあらかじめ射線を予想して動いていたから避けられたが、もし射線を間違えていたらとあっという間にあの世行きだった。



「それならこれはどうだ?」



 今度は魔法陣から赤い光弾が俺を襲う。

 数は先程よりも多いが、スピードがない分こっちの攻撃の方が避けやすい。



「こんな遅い攻撃、避けるのなんて簡単だ!!」


「果たしてそうかな?」


「何!?」



 赤い光弾を右にかわそうとすると、その光弾が俺の方に向かっていく。

 気づいた時にはもう遅い。俺の左の脇腹に赤い光弾が命中し草原を転げまわる。



「くそ!! その攻撃、ホーミング機能までついているのかよ」



 脇腹がジンジンと痛む。ただでさえ強い威力のある攻撃なのに、俺のことを自動で追跡するなんて反則だろ?



「おいおい、そんな所で寝ていてもいいのか?」


「えっ!?」



 見ると俺の目の前まで光弾が迫っている。

 俺は慌てて立ち上がり右に左に襲い掛かる光弾を避け続ける。



「休む暇さえ与えてくれないのかよ!!」



 無数に襲う赤い光弾を避け続ける。

 先程の攻撃もしんどかったが、この攻撃も精神を削られる。



「果たして、いつまで避け続けられるかな?」



 イリスの言う通りだ。このまま避け続けていても、自動で俺の事を追跡してくるのでいずれは俺に被弾する。



「何か、何か対策を考えないと」



 避けながら考え続けている時、妙案が浮かぶ。

 上手く行くかはやってみないとわからないが、充分にやってみる価値はある。



「むっ!? 何でそっちの方向へと走っていく!?」



 草原を縦横無尽に走り回る俺。

 どうやらイリスは俺の狙いにまだ気づいていないようだ。



「悪いが、この光弾を攻略させてもらう」



 俺が走っていった先、そこには俺に向かってくる別の光弾があった。

 それをギリギリまで自分に引き寄せ、間一髪のタイミングで避けるとその光弾同士がぶつかり消えてなくなるのだった。



「何!?」


「悪いがその攻撃は見切ったぞ」



 光弾を誘導し、相撃ちさせる。

 さすがに光弾も同じ威力同士の衝撃が加われば、消えざる得ない。



「偶然だ!! さすがに同じ手は2度も‥‥‥」


「それはどうかな?」



 先程と同じ手法で光弾を打ち消していく。

 1度コツを掴んでしまえば、同じことをするのはたやすいことだ。

 気づくとホーミング機能付きの光弾が1つ残らず消えている。



「私の光弾が‥‥‥全て攻略されただと!?」



 イリスが俺が光弾を全てよけきったことに驚いているようだ。

 先程までの余裕な表情はどこへ行ったのか、額から汗を流し目を丸くして俺の事を見つめている。



「悪いが黒龍達には指一本触れさせない!!」


「させたくないなら、俺を止めてみせろ!!」



 直後、イリスの手から赤い光が見えた。

 違う!! あれは光なんかじゃない!! もっと恐ろしいものだ


「炎か!!」


「ご名答」


 どうやら俺の予想は当たっていたらしい。

 にやりと不敵に笑うイリスの右手から火柱が上がっている。



「殺さずに生かしてやろうとしたら調子に乗りやがって!! 紅蓮の炎に焼かれるがいい!!」


「やばっ!!」



 まずい!! あの攻撃に当たったらひとたまりもない。

 直感で横に飛びのくと、先程まで俺がいた場所に火柱が上がる。

 雲を突き抜け天まで上る火柱は、天国の階段ならぬ地獄への階段のように見えた。



「何だ!? 今の魔法は!?」


「私のオリジナル魔法まで破られるとは‥‥‥」


「オリジナル魔法??」



 なんだ、その魔法は!?

 ティナも魔法を使っていたが、そんな魔法なんて聞いたことがないぞ。



「おい、待て!! その魔法は一体‥‥‥!?」


「それなら、これでどうだ!!」



 今度はイリスが地面に手をつけたかと思うと、その場所が青く発光する。

 その発光している光は俺の足元まで続いていた。



「一体、何を‥‥‥?」


「これで終わりだ!!」


「うわっ!?」



 地面から湧き上がる氷のつらら。

 山のように高いつららが波のように押し寄せ、俺を襲う。



「ちっ!!」



 ギリギリの所で体をひねってつららの波を避けた。

 今回は何とかなったが、あの攻撃を連発されたらひとたまりもないぞ。



「どうした人間!! 逃げてばかりじゃ、私は倒せないぞ!!」


「そんなこと百も承知だ」



 魔法による遠距離攻撃で俺を倒そうとしてくるなら都合がいい。

 そっちがその気なら、俺だって考えがある。



「はん」


「何がおかしい!!」


「ありがとう、イリス。まさかお前自身が俺の土俵に乗ってくれるとはな」



 魔法による遠距離攻撃。すなわち自分に近づくことがないように戦うなんて俺とそっくりじゃないか。

 デザートイーグルとハンドガンを取り出しそれを両手で握った。



「イリス、見せてやるよ。俺の戦い方を!!」



『クリエートバレット ゴム弾』



 銃弾を非殺傷武器に変更。これでイリスが死ぬようなことはないだろう。



「悪いがイリス。お前には少し痛い目にあってもらうぞ」


「何!?」



 ティナのいう事を聞かずに俺を拘束して連れて行ったこと。

 そして何よりクルルや子熊達の言葉を聞かずに黒龍に攻撃をし続け、討伐隊の面々を無駄に疲弊させたこと。



「その傍若無人な振る舞いを後悔させてやる!!」



 俺が両方の銃から放った弾丸が、イリスの元へと向かう。

 油断していたからだろう。その銃弾がイリスの腹部に直撃し悶絶する。



「ぐふっ!!」


「まだまだ!!」



 両手を交互に使い、イリスを狙い撃ちする。

 その弾丸は全てイリスの元へと向かい、イリスはその場を転げまわりながら避けるしかなかった。



「人間め!! 小癪な真似を!!」


「まだ俺の攻撃は終わってないぞ!!」



 特別スキル 無限弾アルティメットバレットのおかげで俺の弾が尽きることはない。

 だから永遠と打ち続けられる。イリスが倒れるその時まで。



「形勢逆転だな」


「そんな攻撃‥‥‥俺には効かない!!」



 イリスは素早く立ち上がり自分の前に手をかざすと、弾が全てその手の前に落ちてしまう。



「一体何が起きた!?」



 遠目ではっきりと見えないが、イリスの前に落ちた弾丸が潰れている。

 まるで壁に当たったみたいに。



「壁‥‥‥そうか! 光の壁か!!」



 イリスの前にあるものはきっと光の壁だ。

 視覚では見えないが、その壁のせいで弾がイリスまで届いていないのだ。



「また厄介なものを出してくれたな」



 あの光の壁を突破するには、どうしても近づく必要がある。

 そして接近戦に持ち込んでイリスに引導を渡すしかない。



「甘いぞ、人間。この守りの凄い所は、攻撃が貫通しないことだけじゃない」


「何!?」



 かざしている左手の他に、右手で炎の弾を作るイリス。

 それを自慢げに掲げながら、不敵に笑った。



「もしかして、その防御壁の中から攻撃もできるのか!?」


「そうだ。これでもくらえ!!」



 放たれた炎の弾。いきなりの事に面食らってしまいその場から動けない。



「ぐっ!?」



 その弾を避けられなくて俺は肩に攻撃を受けてしまう。

 受けてしまった衝撃でその場でよろめいてしまった。



「まだまだ!!」



 次々に繰り出される炎の弾丸。その弾丸が俺の体の至る所に命中する。



「ぐはっ!!」



 肩、腹、胸、体中の至る所に攻撃を受けてしまう。

 気が付くと服の至る所が破け、肌が赤くなっているのだった。



「先輩!!」



 声が声にならないし、体全体が熱い。熱いだけならいいが熱い部分がジンジンして痛い。

 複数の炎の弾丸が当たった衝撃で、思わずデザートイーグルから手を離してしまった。



「先輩!! 今援護に行くぞ!!」



 由姫が俺の方に駆け寄ろうとしてくる。その映像がスローモーションのように見える。

 やはり俺1人じゃ自分より強いやつを倒すのは無理なんだろうか。

 日向や桜、由姫がいないと何もできない、ただのダメな人間なのか。俺は。



『あいつを‥‥‥倒してしまっても構わないんだろ?』


『‥‥‥うん。今回は空に手柄を譲るよ』


「っつ!?」



 違う。フランシスと戦っている時、日向だけは俺が勝つことを疑ってなかった。

 誰も倒せなかったフランシスを俺が倒すって言った時、あいつだけは俺のことを信じてくれた。



「何を弱気になってるんだ。俺は‥‥‥」



 日向は俺が勝つことを信じて疑わなかった。

 そして桜やティナも俺の事を信じて、白龍の治療へと行った。

 由姫や黒龍なんか、俺がイリスを倒すことを信じて体を張って洞窟の前で時間を稼いでくれている。



「他の皆が俺のことを信じてくれているのに、なんで俺は自分のことを信じられないんだよ!!」



 いつまでも日向達に頼っていてはいけない。ここは俺が乗り越えないといけない壁なんだ。

 信じてくれている人がいる以上、どんな高い壁だろうと超えてやる。

 もしも越えられない壁があるなら、その壁をぶち壊して先に進むだけだ。



「由姫!! 来るな!!」


「えっ!?」


「これは俺の戦いだ!! 由姫は洞窟にエルフ達がなだれ込まないようにしてくれ!!」



 由姫が洞窟から離れたらエルフ達が洞窟になだれ込んできてしまう。

 黒龍1匹で生かさず殺さずにあいつら全員を足止めするなんて無理だ。

 絶対に由姫の力は必要になる



「でも‥‥‥そんな傷で動けるわけが‥‥‥」


「大丈夫」



 考えろ、日向ならこんな時どうしてた?

 悠里や桜が心配そうに自分のことを見つめる時、あいつは何て言っていた?



『うん。何があっても絶対に僕が皆を守るよ。』


「何があっても‥‥‥絶対に俺がお前達を守る」


『だって僕は‥‥‥‥』


「だって俺は‥‥‥‥』


『勇者だから』


「お前達の‥‥‥リーダーだからな」



 俺は勇者じゃないし、日向みたいに強くはない。ラックスさんからは魔王の後継者とまで言われてしまった。

 日向のように強くなんかないし、あいつのような大勢の人達を守る力なんて持ってない。

 だけど、こんな俺にもできることはある。大勢の人は守れなくても自分を信じてついてきてくれる人だけは守る。

 自分を慕ってくれる人がいる限り、その人達だけはどんなことがあっても守ってやる。



「ほぅ? まだその足で立つのか」


「あぁ、ここからが本当の勝負だ!!」



 笑え。笑うんだ。辛い時程不敵に笑うんだ。

 体は満身創痍でところどころから出血している。正直全身が痛くて今にも気絶しそうだ。



「(だけど‥‥‥)」



 あいつが俺のことを不気味に思えば思うほど、それだけで俺の勝率が上がる。

 想像しろ。あいつが震えている顔を。想像しろ。あいつが怯えて腰を抜けしている姿を。

 あの見た目はフェイクだ。内心は俺のことを気味悪がっているに違いない。



「人間、その不屈の精神力だけは褒めてやろう」


「お褒めに預かり光栄だな」



 次期エルフ族の族長に褒められるなんて、こんな光栄なことはない。

 せっかくだからそのにやけ面を1発殴らせてもらうぜ。



「さぁ、第2ラウンドの始まりだ!! イリス!!」



 俺は体を投げ出し、勢いよくイリスの方へと走るのだった。

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