クルルの冒険 後編
引き続きクルル視点の話になります
「ここまでくれば大丈夫だね」
「クマ」
「グマ」
息を切らしながら洞窟に逃げ込んだ私達は、そのままその場に座り込む。
あの激しい戦いの中、その横を必死になって走ってきたのだ。
ここまで来る時の疲れと相まって、体が全く動かなかった。
「どうしてあんなことになったんだろう」
表で起こっている争いを見てそう思う。
今洞窟の外では7黒龍さんとイリスおにいちゃん達が戦っている。
洞窟の中からでも聞こえるぐらいの叫び声が、私の耳にも聞こえてきた。
「なんとかしないと」
でもどうやってなんとかしよう。
普通に飛び出した所で誰にも気づいてもらえないかもしれないし、どうすればこの戦いを止めることができるのだろう。
「クマ!」
「グマ!」
「ライトとムーンも一緒に考えてくれるの?」
「クマクマ」
「グマグマ」
「ありがとう。そしたら一緒に考えよう」
そうだ。あきらめちゃだめだ。
ライトとムーンでさえ知恵を絞ってくれているんだ。
私があきらめてどうする。
「グマ!?」
「どうしたの、ライト? 何かいい案でも浮かんだ?」
「グマグマ!?」
「洞窟の奥? 奥の方には何にもないよ」
慌てた様子で洞窟の奥を指すライト。
奥には何もないのに、なんでこんなに焦っているのだろう。
「グマグマグマ!!」
「うん? 奥の方から何か聞こえるの?」
「グマ!!」
「でも何も聞こえないよ」
洞窟の奥で耳を澄ませても何も聞こえない。
聞こえるのは風の音だけだ。人やモンスターの鳴き声は一切聞こえない。
「クマ?」
「ムーンも首をかしげてるよ」
「グマグマ!! グマ!!」
「クマ?」
「クゥーーー」
「!?」
「今何か聞こえたよね!?」
確かにそれは聞こえた。
風の音に交じって聞こえてきた甲高い鳴き声。
あまりにも弱弱しい鳴き声だったので、風の音にかき消されていたけど確かに今私の耳に届いた。
「クマ!?」
「ムーンも聞こえた?」
「クマクマ」
ムーンも頷いているので、間違いないだろう。
洞窟の奥に何かいる。きっと助けを求めているだ。
「ライト、ムーン。洞窟の奥にいる子に会いに行ってみよう」
「クマ!?」
「グマ!?」
「きっと洞窟の奥で苦しんでいるに違いないんだよ。行くよ」
私が歩き出すと慌ててその後ろをライトとムーンがついて行く。
相変わらず2匹は慌てた様子で私のことを見ていた。
「クマクマクマ!!」
「グマグマ!!」
「大丈夫だよ。心配しないで」
奥にいる子もきっと優しい子に違いない。
だってあの黒龍さんが隠していた子なのだから、きっと私達のことも温かく迎えてくれるだろう。
「もしかして、黒龍さんはこの洞窟の奥にいる子を守っていたのかな?」
そう考えると辻褄があう。黒龍さんが無理に私達を追いかけてこなかったのも、この洞窟から離れたくなかったんだ。
エルフの人達が襲われたのももしかすると、洞窟の近くにいたからかもしれない。
私達エルフがここに現れたのが2回目だったので、きっとここには来ないように脅かす目的でここにいたのだろう。
「そうだとしたら急がないと」
「グマ!?」
「クマ!?」
私が走る速度を速めると、ライトとムーンも私の歩調に合わせて追ってくる。
まるで置いてかないでと言わんばかりに、私の隣をついてきていた。
「クゥーーー」
「やっぱり何かいる」
洞窟の奥に進めば進むほど、鳴き声が鮮明に聞こえてくる。
きっとこの奥に黒龍さんが守りたかった子がいるに違いない。
「クマ!!」
「グマ!?」
「いたよ!!」
洞窟の最奥にいた子。それは全身が透き通るぐらい真っ白な白い龍。
あまりのきれいさに私はその場で見とれてしまう。
「きれい」
なんて綺麗な龍なのだろう。もしあの黒龍さんが筋肉質の男の人だとしたら、こっちの白龍さんはすらっとした絶世の美女だろう。
「クマ!!」
「グマ!!」
「そうだ!! 見とれている場合じゃないんだよ!!」
確かに白龍さんはきれいな肌をしているが、よく見ると体中の至る所に傷がある。
特に片翼には大きな穴が開いており、そこからは血が出続けている。
「ひどい!! 誰が白龍さんにこんな怪我を負わせたの!!」
こんなきれいな見た目をしているのにこんな怪我をさせるなんて。
「一体誰がこんなことをしたんだろう」
こんなに大きい白龍さんを怪我させたということは、かなり強いモンスターに違いない。
でも今は白龍さんの怪我を何とかする方が先だ。
「白龍さん、大丈夫?」
「クゥーー」
「よかった。まだ呼吸をしてる」
生きていることに安堵するが、このままだと白龍さんが死んでしまう。
「クゥーー」
「どうしたの? お水が欲しいの?」
慌てて私はリュックサックから、お茶の入った瓶を出す。
それをコップに入れ、白龍さんに飲ませた。
「おいしい?」
「クゥーーーー」
「よかった」
心なしか白龍さんの声が弾んでおり、喜んでいるように見えた。
どうやら特性のお茶がお気に召してくれたみたいだ。
「私じゃこの怪我を直すのは無理。助けを呼ばないと」
だが、私が騒いだところで皆まともに話を聞いてくれるのだろうか。
子供の戯言だって言われて、まともに取り合ってくれない可能性の方が高い気がする。。
「私の話をまともに聞いてくれそうな人」
真っ先に頭の中に浮かんだのは桜おねえちゃんだ。
それと空おにいちゃんや由姫おねえちゃん。きっとあの人達に話せば、この白龍さんを助けてくれるはずだ。
「クマ」
「グマ」
「うん。このことを一刻も早く桜おねえちゃん達に伝えよう」
桜おねえちゃん達のことだ。きっとこんな問題簡単に解決してくれるはず。
「そうと決まれば行動あるのみ」
「クマ」
「グマ」
このことを伝えて戦いをやめてもらい、白龍さんを助けてもらう。
今の私達にできるのはそれだけだ。
「クゥーーー」
「待っててね、白龍さん。今助けを呼んでくるから」
怪我をしている白龍さんを置いていくのは忍びないが、このまま私達がここにいても状況は変わらない。
今は白龍さんを助けられる大人の人達を呼んでくるのが先決だ。
「絶対に戦いを止めて、あの龍さん達を救おう」
「クマ」
「グマ」
「行くよ!! ライト!! ムーン!!」
それから私達は洞窟の出口へと向かう。
向かう先は空おにいちゃん達がいる戦場。そこで桜おねえちゃん達に事の経緯を伝える為再び走り出すのだった。
次話から空視点の話に戻ります。
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