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暴走

「由姫!! スキルを借りるぞ!!」



 ここに来る直前、共有スキルに入れたスキル。それを使う時が来た。



「グォ!?」



 先程まであった黒龍との距離を一瞬で詰める。

 黒龍にとっては俺が瞬間移動したように感じられるだろう。



「共有スキル、縮地」



 ティナや子熊達を助けた際、由姫が使ったスキル。

 ライトを助けたあのスキルはかなり有用だと思い、由姫に頼んで共有スキルに入れたのだった。



「ォォォォォォォォォォ」


「まずい!!」



 黒龍が息を吸い込んでいる。あの攻撃はさっき見た。



「あの攻撃は炎のブレスか!!」



 魔法攻撃を打ち破った炎のブレス。あれだけ隙だらけの攻撃なら、俺1人だけなら避けられる。

 だが今草原には多くのエルフ達が倒れている。このままだとあのエルフ達が炎のブレスに巻き込まれて焼け死んでしまう。



「くそ!! 間に合え!!」



 ブレスを吐く直前、顎に放ったデザートイーグルの一撃。

 その一撃でドラゴンの首を上に跳ね上げた。



「グォ!?」


「くらえ!!」



 首が跳ね上がった瞬間、その勢いで黒龍に体当たりをした。

 猛スピードで体当たりをしたせいか、黒龍がバランスを崩した。



「グォォォォォォォ!!」



 強制的に上を向かせたドラゴンは上空に向け炎のブレスを放った。

 その様子はまさに火山の噴火。空が真っ赤に燃え広がった。



「危なかった」



 あんな攻撃をされていたら、山火事になっていたぞ。

 この一帯で済めばいいが、下手をするとエルフの町まで火の海になったかもしれない。



「痛ててててて」


「空さん、大丈夫ですか?」


「俺は大丈夫だ」


「先輩、無理はするな。私達もいるんだからもっと頼ってくれ」


「わかった」



 幸い俺に怪我はない。体当たりしたせいで体は痛いが、動けない程ではない。



「黒龍さんが立ち上がります」


「グオォォォ」



 仰向けで倒れていた黒龍が起き上がる。

 そしてそのまま俺達のことを怒りの表情で見下ろしていた。



「おい、黒龍」


「グォ」


「そんなにストレス溜まっているなら、俺達が相手にしてやるよ」



 目の前で俺達を睨む黒龍を前に、俺は不敵に笑う。

 別に黒龍が怖いわけではない。強敵を前にして笑ってしまった。



「グォォォォォォォォ!!」



 地面が振動するぐらいの叫び声。その場で倒れないように踏ん張った。



「叫び声だけでこの衝撃か」


「どうやら黒龍も本気のようだな」



 先程よりも本気っぽいな。

 あの叫び声にあの目。本気で戦わないと俺達がやられてしまう。



「桜、由姫。作戦変更だ。全力であの黒龍と戦うぞ」


「いいんですか?」


「あの黒龍を倒すことになるぞ」


「あぁ、その気で戦ってくれ」



 手加減をしてしまうと逆にこっちが殺されてしまう。

 そうならない為にも、俺達が全力で戦う必要がある。



「わかりました」


「でも先輩、本当にいいのか? あの黒龍の頭を冷ますだけでいいんだろ?」


「あぁ、この黒龍の目を覚まさせないといけないからな」



 今の黒龍は怒りで完全に冷静さを失っている。

 頭を冷やす為にも、ここは黒龍を全力で叩かないといけない。



「覚悟しろよ!! 黒龍!! お前の力全部受け止めてやる!!」


「グォォォォォォォ!!」



 大気を震わす雄たけびと共に、黒龍が襲い掛かってくる。

 先程の動きとは全く違う。その巨体に似合わないスピードで俺達に迫ってくる。



「炎のブレスと爪の攻撃に気をつけろ!! あれに当たったらひとたまりもないぞ」



 普通に戦っても瀕死、下手をすれば死んでしまう。

 他にも何か攻撃方法を持ってそうだけど、今はこの攻撃だけを注意して戦おう。



「覚悟しろ!! 黒龍!!」


「グォ!?」



 いつのまにか黒龍の背後を取った由姫。あれは縮地を使ったのだろう。



「先輩の命令だ。悪く思わないでくれ」


「ぐぉっ!?」




 由姫は刀を縦に振るが、黒龍は爪で由姫の攻撃を受けた。



「中々やるな!!」


「グォォォォ!!」



 黒龍の攻撃に由姫は押し負けていない。

 爪と刀との戦況が互角。お互い全く引くことはない。



「まだまだ!!」



 俺は近づこうと走っていくが、ドラゴンが俺の存在に気付く。

 由姫を弾き飛ばすと、俺に対して蹴りを入れた。



「うわっ!?」



 その蹴りをもろにくらってしまい、吹き飛ばされる。

 草原に何度か転がり急いで立ち上がった。



「空さん!!」


「俺は大丈夫だ。桜はそのまま攻撃を加えてくれ!!」


「わかりました」



 俺が転がっている間、黒龍に桜が攻撃していた。

 由姫と桜が交互に攻撃しているおかげで、その場に立ち上がることができた。



「なんてパワーだ」



 パワーだけなら、今まで戦ってきた敵の中で1番強い。

 ゴブリンキングやフランシスも力強かったが、黒龍のパワーはそれとは比較にならない。



「よく由姫は平然と受けていたな」



 互角以上に渡り合っていた所を見ると、由姫の力は黒龍と同等かそれ以上だってことになる。

 あんな華奢な体からよくあんなパワーが出せるな。



「よくも‥‥‥よくも空先輩を!!」


「よせ!! 桜!!」



 勢いだけの攻撃だけじゃ黒龍には通用しない。

 せめて共有スキルである縮地を使うとかしないと黒龍の隙はつけないぞ。



「グォ」


「えっ!?」



 俺の予想通り案の定黒龍が桜の攻撃をかわした。

 そしてかわしたことえ無防備になった背中に黒龍の爪が襲う。



「桜!!」



 慌ててデザートイーグルとハンドガンを黒龍の爪めがけて連射する。

 その攻撃は黒龍が爪の方へと向かっていき、右手の爪に直撃した。



「グォォォォォォ!!」


「やった!」



 俺が撃った弾は黒龍の爪に命中し、苦悶の表情を黒龍は見せる。

 それと同時に何本もの爪が割れる音がした。



「これで大丈夫なはずだ。桜!!」


「空さん!」


「怪我はないか?」


「はい、私は大丈夫です」



 よかった。桜が無事で。着地した時に足をくじいてもないようだし、怪我がなくてよかった。



「これからどうしましょうか?」


「そうだな」



 俺がさっき打った銃弾のせいで、あいつの爪は割れてしまっている。

 これでむやみに切り裂き攻撃をしてくることはないだろう。



「でも黒龍さんは睨んでいますよ」


「まだやるのか?」



 どうやら黒龍はまだ戦うつもりらしい。

 もしかすると今の攻撃でさらに怒ってしまったかもしれない。



「いいぜ。お前の気が済むまで相手になってやるよ」


「ォォォォォォォ」



 ドラゴンが再び息を吸い込むしぐさを見せる。

 首を上に上げ、空気を吸い込んでいた。



「炎のブレス攻撃です」


「この攻撃はもう見切った」



 今までの攻撃を見ていてわかったことだが、この攻撃は横に良ければいい。

 炎のブレスを出している時は、身動きができないはずだ。



「弱点がわかっている以上、この攻撃は簡単に避けられる」


「先輩!! 桜!!」


「えっ!?」



 ドラゴンの攻撃が来ると思った時にはもう遅い。

 その攻撃は炎のブレスではない。雨のように降る炎の火球だった。



「空さん!!」


「桜!! 下がってろ!!」



 青空が真っ赤に染まる程の大量の火球が俺達に向かって降り注いでいく。

 正直逃げる場所がない。このままじゃまずい。



「くそ!!」



 今の俺にはあの火球を止めるような有効手段がない。

 どうする。このままじゃ俺達は丸こげになってしまう。



「もう駄目なのか」



 あれだけ威勢よく仲間を守ると言っていて、やっぱり俺は誰も守れないのか。

 俺は別に死んだっていい。だけど桜だけは何としても守る。



「あきらめちゃだめだ」



 火球に向かってデザートイーグルを構える。

 こんな銃であの火球を何とかできないとは思うが、何が何でも生き残ってやる。



「こんな所であきらめてたまるか!!」


「そうよ空!! あきらめちゃ駄目よ!!」


「ティナ!!」


「私を忘れないでよね!!」



 俺と桜の前に現れたティナ。

 何かを小さな声で唱えたかと思うと、ティナの周り半径1mぐらいが光の壁に包まれた。



「この光の壁は‥‥‥」


「これはあらゆる攻撃から身を守る光の壁よ。バリアのようなものね」



 目の前に大きな火球が迫るが、ティナが包まれる光の壁にはじかれていく。

 ティナも時に苦悶の表情を浮かべるが、体の方には問題がなさそうだった。



「そういえば体は大丈夫なのか? さっきは疲弊していたけど?」


「大丈夫よ。どこかの誰かさんにしっかり休むように言われたせいで、力が有り余ってしょうがないわ」



 ひとしきり攻撃を防ぐと、やがて火球の雨がやんだ。

 そして黒龍が一瞬動きを止める。



「チャンスだ!! 桜!!」


「黒龍さん、ごめんなさい!!」



 桜が気合を入れて紫の槍を投げた。そしてその一投は黒龍の右肩に刺さる。

 だが、その攻撃は鱗に刺さっただけ。皮膚は全く貫通しない。

 その証拠に黒龍は平然とした様子で右肩を見ている。



「ティナ!! 身体能力が向上する魔法は使えないか?」


「使えるけど、どうするつもり?」


「それを俺にかけてくれ」


「何で!?」


「いいから!! 早くかけてくれ!! 黒龍があの槍を抜き終わる前に早く!!」



 抜き終わったら最後、あの黒龍との戦いが始まる。

 そうなる前に少しでも、あの黒龍を弱らせておきたい。



「あぁ、もう!! わかったわよ。アメリオラシオン!!」



 ティナそう言うと、俺の周りを光が包む。

 心なしか先程より体が軽い。これならいけそうだ。



「ティナ。ありがとな。ちょっと行ってくる」


「ありがとって、ちょっと、空。どこに行くのよ!? 危ないわよ!?」



 そんなことはわかっている。だけど今はチャンスなんだ。

 あの黒龍を止める方法は1つ。少しでもダメージを与えて弱らせるしかない。



「悪いが、そろそろ冷静になってくれ」



 ここまで好き勝手暴れたんだ。少しはすっきりしただろ?

 だからそろそろ冷静になってくれ。



「少し痛い思いをするが、許してくれよ」



 黒龍の近くまで走ると、走り幅跳びの要領で全力で飛ぶ。

 ティナの補助魔法とスキルの影響で身体能力が大幅に向上しているせいか、予想以上に高く飛べた。



「グォ!?」


「くらえーーー!!」



 皮膚に刺さらないなら、刺し直せばいい。

 勢いをつけた俺はそのままの槍を黒龍の肩に押し込んだ。



「グォォォォォォォォォォォォォォォォ!!」


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 力強く肩に槍を押し込む。

 その勢いはすさまじく、右肩に槍が貫通した。



「グォォォォォォォォォォォォ!!」


「やった」



 勢いがなくなり、俺はその場から落ちた。

 地面に落ちた俺であったが、無事黒龍の肩に紫の槍が刺さっているのを見た。



「どうだ、黒龍」



 不格好な攻撃だが、少しは痛い思いをしたか。

 これで少しは冷静になってくれると嬉しいんだけど。



「痛たたたた。ちょっと体を打ったか」



 あれだけ高い所から落ちれば、そうなるだろう。

 しかも受け身も取らなかったんだ。体が痛んでもしょうがない。



「空さん!!」


「先輩!!」


「2人共、ここは私に任せて。ここは私に任せて。ハーステル!!」



 ティナがそういうと、光が俺を包み込む。

 先程かけてもらった身体能力向上の魔法とは違い、痛みが和らいでいく。



「全く、貴方は無茶しすぎよ」


「それはどうも」


「さんざん死にたくないだとか安全に事を進めるとか言ってて、真っ先に貴方は危険なことに首を突っ込むのね」


「うるさいな」



 こういう性分なんだから仕方がないだろう。



「空さん!! 無事ですか?」


「俺は大丈夫だ。それよりも黒龍はどうした?」


「それが‥‥‥」



 黒龍は暴れている。相当痛いのだろう。必死になって槍を抜こうとしている。



「あんなしっかり刺さっていて、簡単に抜けるのか?」



 そう思っていたが、意外と簡単に抜けたらしい。

 反対の手で槍を力いっぱい引き抜くと、槍を近くの草原に放り投げるのだった。



「グゥ!!」


「どうやら俺は嫌われたみたいだな」



 黒龍の目はギラギラしていて、俺のことを睨んでいた。

 先程よりも鋭い本気の目だ。。



「先輩」


「こうなったら仕方がない。徹底的に相手にしてやろう」


「グォォォォォォォォ!!」



 黒龍の雄たけびが辺りに響き渡る。

 どうやら向こうも俺と戦う気満々みたいだ。



「さぁ、かかってこいよ。第2ラウンドだ」


「グォォォォォォォォォォ!!」


「ダメーーーーーーーーーーー!!」


「何!?」



 洞窟の方から人影が見える。それはここにいてはいけない人物だ。



「ダメなの!! その黒龍さんをいじめないで!!」



 子供のような甲高い少女の声。草原一帯にその声が聞こえ、俺達も思わず手を止めてしまう。



「何で‥‥‥何でここにいるんだ!? クルル!!」



 俺達の前に現れた人物。それは家で待機していたはずのクルルと子熊達だった。


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