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戦闘準備

「う~~~~ん」


「どうしたんですか? 空さん?」


「いや、何でもない。気にしないでくれ」



 黒龍討伐に向かう隊列の中で、俺は黒龍について考えていた。

 イリス達が言う通り、本当に黒龍が討伐しないといけない対象なのか。

 それともクルルが言っていることが正しいのか。そんなことばかり頭に浮かんでいた。



「先輩、またいつもの考え事か?」


「そうだ」


「また何か心配事があるの? せっかくなんだしよかったら私達に言ってみてよ」


「気にしないでくれ。ほんの些細な疑問なんだ」



 本当に気にかける程でもないような些細な疑問。

 このことを伝えても、余計な混乱を招くだけなので打ち明けようかどうか悩んでしまう。



「その疑問が気になるのだ」


「そうですよ、空さん。あたし達に悩みを話さないなんて水臭いです」


「せっかくだから言ってみればいいじゃない。1人じゃ解決できないことでも、4人もいるなら解決できるかもしれないし」


「そうだな」



 皆の言う通りだ。1人で考えても答えが出ないなら、他人の力を借りた方がいい。

 もしかしたら桜達が答えを出してくれるかもしれないし、たまには仲間を頼ろう。



「それで、何を空さんは悩んでいるんですか?」


「黒龍の事なんだけど、なんでエルフの町を襲ってこないのかなって思って」


「黒龍さんも忙しいんじゃないですか?」


「あんな洞窟の前で寝そべっているだけなのに忙しわけないだろう」


「だったら、お腹がいっぱいだからわざわざ私達の町を襲う必要がないとか」


「たとえお腹が一杯だったとしても、エルフ達を攻撃するぐらい警戒していたわけだろ? それなら普通何が何でも町を探し出して先に攻撃してくるはずだ」



 しかも調査隊が町まで逃げ帰ってきて3日も立っている。

 それだけ日にちが立っているのに、黒龍が町を攻撃してこない理由が知りたい。



「考えすぎよ。それはきっと黒龍が私達の町を見つけられなかったからよ」


「それならティナに質問するけど、この3日間町の近くで黒龍の目撃情報はあった?」


「確かにないわね」


「そうだよな。あんな大きいドラゴンがもし空を飛んでこの辺を散策していたとしたら、必ず誰かが見ているはずだ」



 もし俺達を襲うつもりで動いてるなら、ドラゴンの目撃情報があってもおかしくない。

 それなのに目撃情報が1つもないってことは、最初からエルフの町を探すつもりはなかったという事だ。



「だったら空を飛んでないのよ。歩いて私達の町を探しているとか」


「だったら余計におかしい。もしドラゴンが動いていたら、この辺にドラゴンの痕跡が残っているはずだ」



 それこそここに来るまでに足跡等の痕跡が残っていてもおかしくないはずだ。

 だがここに来るまでドラゴンがここまで来たという痕跡が一切ない。つまりドラゴンが町を探してはいなかったという事だろう。



「つまり先輩はあの黒龍が洞窟から全く移動をしていないと思っているのだな?」


「あぁ、そうだ」



 ここまで痕跡がないということは、黒龍はあの場所から1歩も動いていないということになる。

 となると黒龍が俺達のことを襲うこと等一切考えてないことになる。



「そうなるとあの黒龍さんがあたし達のことを襲う気はないってことですよね?」


「そういう事になる」


「でも、そしたら何であの黒龍は洞窟の所にずっといるのよ?」


「それも俺が疑問に思ってることの1つだ」



 一体ドラゴンが何故あの場所にいることにこだわっているのかも気になる所だ。

 もしかすると俺達が洞窟を発見した時に黒龍は俺達のことを認識していたのかもしれない。

 そうだとすると俺達を襲わずにあの洞窟から1歩も動かない理由が知りたかった。



「まるで黒龍さんが何かを守っているようにも見えますね」


「そうだろな。もしかしたらあそこで、黒龍は何かを守っているのかもしれない」


「空の考えすぎじゃない? もしかすると、あのドラゴンが私達のことなんて眼中にない可能性だってあるわよ」


「確かにな」



 もちろん、その可能性も否定できない。

 だが、あそこに黒龍がいることに俺は何か意味があるように思えた。



「まぁ、行ってみればわかることだ」


「そうですね。黒龍さんに合えば全てわかります」


「そうだ。桜、由姫。黒龍の所に行く前に共有スキルのことで相談があるんだ」


「共有スキルの相談ですか?」


「あぁ。実は俺の危険感知スキルを外して、由姫のこのスキルを‥‥‥」



 桜と由姫に件のスキルのことを相談してみた。

 元々由姫がよく使用しているあのスキルはかなり使えるスキルだと思った。

 だからこそ、全員が使えれば今までよりも強くなれるんではないかと前から考えていたのだ。



「それは賛成です」


「そうだな。このスキルは全員が使えた方がいい」


「ありがとう。それじゃあスキルの設定を変更するよ」



 由姫と桜に承諾をもらったことで、俺は共有スキルを再設定する。

 よし、これで今までよりも戦いの幅が広がるはずだ。



「終わったぞ」


「このスキルを使うのが楽しみです」


「そうだな」


「これで黒龍と戦う準備はばっちりね」


「あぁ」



 どんな展開になったとしても、このスキルがあれば戦局を変えることができることは間違いない。

 出来れば黒龍と戦いたくはないが、もし戦うことになったとしたら有利な展開になるだろう。



「そしたら改めて、皆で黒龍の元へと向かいましょう」


「はい」



 こうして俺達は黒龍と戦う準備をして洞窟へと向かう。

 どうして黒龍があの洞窟の側にずっといるのか、そして何を守っているのか答えが見つからないまま見晴らしのいい丘に向かうのだった。

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