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少女の訴え

「黒龍に対しての被害はどうなっている?」


「はい。黒龍を調査したエルフ達は総勢10名。大小差はありますが、全員怪我をして帰ってきています。幸い死亡者はいません」


「そうか、ありがとう」



 イリスは安堵したように胸を撫でおろした。

 きっと今回の調査で死人が出なかったことに安堵しているのだろう。



「イリス、これからどうするつもりだ」


「全く、こうなっては仕方がない。我々で討伐隊を出して、黒龍を倒そう」


「黒龍を倒す?」


「何でそんなことをするの!?」


「黒龍が我々エルフを襲うことがわかったんだ。やられる前にやるしかないだろう」



 確かにイリスの判断は妥当かもしれない。

 あの黒龍が自分達を襲うとわかった以上、いつこの町が襲われるかわからないからだ。



「それに黒龍は調査隊をわざと逃がしたのかもしれない」


「どういうことだ?」


「つまりわざと調査隊を逃がして、、我々の町を特定したかもしれないってことだ」


「ちょっと待て、イリス。その判断は早計なんじゃないか?」


「人間風情が。少し黙っててくれ」


「いや、黙らないぞ。敵を逃がして敵のアジトを特定することはわかるけど、それをモンスターがするのか?」



 モンスターがそこまで物事を考えているのか俺には疑問だ。

 今まで出会ったモンスターもそうだが、そんな高度な知能を持っているように思えなかったからだ。



「人間、お前は何もわかっていないようだな」


「何がだ?」


「古代から龍種は高い知能を有していることは常識だぞ」


「そうなの!?」


「そうよ。中でも白龍と黒龍は人間と同等、もしくはそれ以上の知能を有していると言われてるわ」



 そんな話は初めて知った。今まで戦ってきたモンスターで戦略的に戦ってきたのがゴブリンだけだったから、皆そうなのかと思っていた。



「全く、無知な状態で話さないでくれ」


「くっ!!」



 くそ、なんでイリスが話すとこんなににむかつくんだ。

 あの余裕しゃくしゃくな態度が非常に鼻につく。その顔を1発ぶん殴ってやりたい。



「空さん、落ち着きましょう」


「あぁ、そうだな」



 軽く深呼吸して息を整える。

 よし、これで落ち着いた。とりあえず今は情報を収集しよう。



「イリス。悪いが俺はお前の案に反対だ」


「ディアボロさんは口を出さないでくれ。これは族長代理の私の意志で行うことだ」


「駄目だ。黒龍は龍種の中でも最上位クラスのモンスターだ。そんなモンスター相手に勝算はあるのか?」


「‥‥‥それはうちの精鋭部隊が相手にすれば簡単に倒すこともできるはず」


「その回答は0点だ」


「何でですか!?」


「お前の考えている通り、確かにうちの精鋭を送り込めば倒せるかもしれない」


「そうですよね。なら戦うべきです」


「だがそれは犠牲者が出る前提の話だろ? たとえ黒龍を倒すことができても、犠牲者が出ても意味がない」


「でも、そうしないと我々の町が」


「まだわからないのか? たとえ黒龍を倒せたとしても、犠牲者の家族はどうなる? 一生の悲しみを背負ったまま過ごすことになるんだぞ。お前はその悲しみを背負う覚悟はできているのか?」



 ディアボロさんの言葉は重い。確かにそうだ。あの黒龍を倒せたとしても、犠牲者が出ては意味がない。

 確かに戦いによっては犠牲者が出る可能性もあるだろう。だけどディアボロさんはこの戦いで犠牲者を出したくないと思っているみたいだ。



「じゃあどうすればいいんだ!! あの黒龍に対してこのままでいいわけがない!!」


「とりあえずしばらくは様子見だ。当番制で黒龍が何かしないか見張りを置くのがいいだろう」


「ディアボロさん、血迷ったか!? さすがにこれは町の存亡をかけた戦いになるのだぞ」


「そうですよ。戦わなきゃ自分達の大事なものは守れません。その為なら俺は死ぬ覚悟もあります」


「そうだそうだ」


「いつからディアボロさんはそんな弱虫になったんだ!!」



 会議場はディアボロさんの考えを非難するようなことを言い始める。

 殆どの人達がイリスの考えに賛同している。ここにいる殆どの人が黒龍を退治しようとする強硬派だ。



「空さん」


「まずいな。明らかにこっちが不利だ」



 全員が全員黒龍を倒すべきという考えになっている。

 このままだと黒龍は倒せたとしても、俺達の方からも甚大な被害が出ることになるぞ。



「ちょっと待って!! 皆、落ち着いて!!」



 ティナが叫ぶが、周りのエルフ達は止まらない。

 全員が全員黒龍と戦う道を選んでいる。



「先輩、どうする?」


「どうもこうもないだろう」


「このままじゃ、犠牲者が出てしまいます」



 今の俺達にこの流れを止めるすべはない。

 それぐらいエルフ達の声援が凄すぎた。



「一体どうすればいいの?」



 ティナも考えているがどうすることもできない。

 何も手が浮かばない時、1人の少女が声をあげた。



「ちょっとまってーーーーーー!!」


「クルル!?」



 会議場に聞こえる大きな声。クルルがその場から身を乗り出していた。



「クルルちゃん!!」


「どうして?」


「なんでみんな黒龍さんのことばかり悪く言うの? もしかしたら調査した人達が問題あるかもしれないのに!!」


「クルル!! 調査隊の人達は黒龍に手を出していないんだ!! それは報告でも上がってる」


「本当にそうなの? もしかしたらその人達が知らないで黒龍さんの気に触ることをしていたのかもしれないじゃん!!」



 確かにその可能性もある。調査隊の人達は何もないと言っていたが、何かしていた可能性もある。



「クルル!! 黙るんだ」


「何で黙るの!! 黙る必要なんてないじゃん!!」



 クルルの思いが痛いほど伝わってくる。

 もしかするとクルルは黒龍が悪いモンスターだと思っていないのだろう。

 だからいつもこういう場で話すことなんてないけど、勇気を振り絞って話してるんだ。



「みんなおかしいよ!! 何で黒龍さんが悪いって決めつけるの? もしかしたら私達が悪かったのかもしれないじゃん!!」


「だから言ってるだろう!! 私達に落ち度は一切ないんだ!!」


「何でそう言い切れるの!! そんなのわからないじゃん!!」


「うるさい!! とにかく黒龍討伐隊は編成する」


「待て、イリス。いきなり討伐隊を編成するのは早計だ!!」


「ディアボロさん。黒龍は我々と敵対する意思を見せたんだ。やらなければこちらがやられてしまう」



 確かにイリスの意見はもっともである。

 もし調査隊が逃げ帰れたのが黒龍の策略だとすれば、次に狙われるのはこの町だ。

 そうなるといつ黒龍が襲ってくるかわからない。いつ襲われるかわからないなら、こっちから仕掛けるしかない。

 だからイリスの考えは一概に間違っているとは言えない。



「確かにイリス、お前がいうことも一理ある。だが、ラッシュが帰ってきてから考えても遅くは‥‥‥」


「くどいぞ!! やらなければ私達がやられるのだ!! おい!! 隊の編成はいつできる?」


「2日後には編成できます」


「よし、編成出来次第向かうぞ!! これ以上議論の余地はない!! 今日は解散だ!!」



 そう言うと、イリスはどこかに行ってしまう。

 そして会議場にいた人達もこの場から去っていくのだった。



「すまんな、ティナちゃん達にまで来てもらったのに。こんな体たらくで」


「ディアボロさんのせいじゃないわ。もう、兄さんったら。相変わらず意地っ張りなんだから」


「意地っ張りというよりは頭が固いと言った方がいいかもな」



 あのかたくなな姿勢を見てればそう思ってしまうのも無理はない。

 どうしてそこまで周りに対して聞く耳をもたないのかわからない。



「それで、ティナはどうするんだ? 黒龍討伐の部隊に参加するの?」


「そうね。もし討伐隊が本当に組まれるとしたら、たぶん私も参加することになると思う」


「それは断れないのか?」


「難しいわね。他の人達が参加しているのに、身内の私が参加しないことは兄さんの面子にかかわるから、無理矢理にでも参加させられると思う」


「なるほどな」



 兄貴の面子の為に参加しないといけないのか。

 戦いたくもないのに無理やり参加させられるなんて、ティナが可哀想だ。



「黒龍さんを倒しちゃうの?」


「それはまだわからない」


「わからないの? 黒龍さんは悪くないかもしれないのに」


「クルルの話が本当かどうか、俺にも判断がつかない。だからここで答えを出すことができないんだ」



 イリスが言っていることは至極真っ当だ

 自分の町の人に怪我人が出たんだ。これ以上被害を増やさないためには、先に黒龍を討伐を計画した方がいい。

 もしここで黒龍が町を襲ってきたら、今以上の被害者が出てしまう。これ以上犠牲を増やさないための最善の一手だ。



「じゃあ‥‥‥このまま黒龍さんが死んじゃうのを見てるしかないの?」


「大丈夫だ。俺がそんなことはさせない」



 今にも涙の流しそうなクルルの頭を優しく撫でた。

 クルルは泣くのを顔をあげて泣くのを我慢している。



「空さん」


「ティナ、俺達もその討伐隊へ参加させてくれないか?」


「えっ!?」


「黒龍がエルフ達を襲うなら倒さないといけないが、もし戦わないで和解できる余地があるならその戦いを止める必要がある」



 正直黒龍がエルフ達を襲おうとしているのかわからない。

 だけどもし今回の戦いがお互いの不利益になるなら、止めるべきである。



「さすが空さんですね」


「あぁ。もし先輩が手をあげなければ、私達が先輩を置いて討伐隊に参加していた」


「2人も来てくれるのか?」


「当たり前です」


「先輩は私達のリーダーなんだ。リーダーの行く所に、仲間である私達が行くのも当然だろう」



 なんて頼りになる仲間だろう。いつの間にか桜や由姫も成長していたんだな。



「貴方達正気!? 今回の討伐で命を落とす可能性もあるのよ」


「それはティナも一緒だろ?」


「そうだけど‥‥‥」


「俺はティナも仲間だと思ってる。だから仲間を1人そんな危ない所に連れて行くなんてことはしたくない」


「そう言ってもらえると嬉しいけど‥‥‥」


「それに仲間が困っているなら、協力するのが筋ってものだろう。いいから黙って協力されとけ」



 ティナもなんだかんだ言って頭が固い。人に迷惑をかけるから協力をお願いできないと思ってるのかもしれない。

 だけどそれは間違いだ。仲間なのだから悩んでいる時は相談してほしい。

 それに桜や由姫の力になっているように、俺も出来ればティナの力になりたい。だからこそ何かあった時俺も協力したい。



「空、あんたね‥‥‥」


「何だよ? 悪いか?」


「悪くないわよ。全くもう」



 ティナは俺から目線を外してそっぽを向いてしまう。

 そっぽを向いた一瞬、ティナの顔が赤くなった気がした。



「桜が惚れた理由も今ならわかるわ」


「何か言った?」


「何でもないわ」



 それからティナは1人でボソボソと何かを呟いてる。

 あまりにも小声で俺には聞き取れないが、何かを唱えているように見えた。



「俺何かした?」


「先輩も罪作りな男だな」


「ティナさん、もしかして‥‥‥」


「別に何でもないわよ!! それよりも帰るわよ、空!!」


「ちょっ!? 待てよ!! ティナ!!」


「おねえちゃん。お顔真っ赤」


「クルルはうるさい!! いいから帰るわよ。これから黒龍に対しての対策も立てないといけないんだから」



 この後俺はティナ達と共に家に戻る。

 真っ赤な顔をして何かを呟くティナ、そして複雑な顔を浮かべる桜、2人の顔を見てニヤニヤ笑う由姫。

 そんな情緒不安定な3人を横目で見つつ、俺はティナの家に帰るのだった。

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