洞窟の声
「これは一体どういう事だ?」
俺達が商工会議場にはいると中には多くのエルフ達がせわしなく動いていた。
「この書類とこの書類はここから持ち出さなくては!!」
「だから言ってるだろ!! ドラゴンなんて戦って倒せばいいんだよ!!」
「そういうわけにもいかないだろ!! あの伝説の黒龍なんだぞ!!」
商工会議場の中にいたエルフ達は混乱している。
どの人も黒龍が本当にいたことで今後の対策をどうするのか悩んでいるように見えた。
「黒龍の影響がここまであるとはな」
「だから私は言ったでしょ? 黒龍は龍種の中でも最上位種だって」
「そうだな」
今ならティナの言葉を信じることができる。
エルフ達のこの慌てよう、どうやら俺達はとんでもない敵と戦わないといけないらしい。
「空おにいちゃん、あそこ!!」
「どうしたんだ、クルル?」
「あそこに由姫おねえちゃんがいるよ」
クルルが指をさした先に由姫がいた。
どこに行けばいいのかわからず、あちらこちら視線をさまよわせている。
「由姫!!」
「先輩!!」
「ここにいたのか」
「あぁ、どのエルフに聞いてもイリスのいる場所がわからなくてな。仕方がなくこの辺りをさまよっていたのだ」
「そうだったのか」
そういえば由姫は商工会議場に来たことがなかったっけ。
それなのにここまでたどり着くなんて、さすが由姫だ。
「でもそうなると皆さんどこにいるんですかね?」
「たぶん会議場じゃないかしら?」
「確かに。あそこで黒龍の対策会議をしていてもおかしくはないな」
何回かここに足を運んだことがあるけど、その度に会議が行われていたのはこの会議場だった。
「それならその会議場という所に行ってみよう」
「そうだな」
「私が案内するわ。ついてきて」
「わかりました」
俺達はティナの後に着いていき会議場を目指す。
そして会議場の扉の前に着くと、複数のエルフが俺達を足止めした。
「君達、何をしている!!」
「今は会議中だ!! 用があるなら後にしてくれ!!」
「そんな場合じゃないの!! 早く兄さんと合わせて」
「兄さん? そうかティナちゃんか」
「えっ!?」
「ディアボロさんが言っていたことが当たっていたようだな」
目の前に立つエルフはわざとらしくため息をつく。
まるで俺達がここに来ることを予期していたみたいだ。
「ディアボロさんがどうしたの?」
「イリス様はティナちゃん達をこの中に入れるなと言われていたが、ディアボロ様からは反対の意見が出てる」
「ディアボロさんもこの中にいるんですか?」
「あぁ。そうだ。今は町の重鎮達が集まって会議を開いている」
「その中でディアボロさんが君達の意見も聞きたいと言っていた。だから入ってくれ」
そう言って扉を開けようとするエルフ達。
さっきまでとは180度違う対応に驚いてしまう。
「でも、いいんですか? 族長代理はイリスさんなのに、その命令に背いてしまって」
「別に構わない。ラックス様の命令なら絶対だが、族長代理のイリス様だ。少しぐらい多めに見てもらってもばちは当たらない」
「それにラックス様の右腕と言われていたディアボロ様も君達を通す許可を出してるんだ。俺達が処分されることはないだろう」
前々からディアボロさんが凄い人なのかと思っていたが、やはり相当上の位の人らしい。
それはこの人達の対応を見ていてもわかる。
『コンコン』
「失礼します」
エルフ達がノックをして、中に入る。
会議場の中には大勢のエルフ達が椅子に座ってこちらを見ていた。
「ティナ様とそのご友人達を連れてきました」
「おい!! 私はティナをこの会議場に入れるなと命令したはずだぞ!!」
「イリス、それは俺が許可した」
「ディアボロさん!?」
「悪いな、お前達。俺の伝達不足が原因だ。何か非があれば俺に原因がある。だからお前達には処罰はないから気にしないでくれ」
「わかりました」
「それでは私達はこれで」
そう言って先程のエルフ達は商工会議場を出ていく。
あの堂々とした感じ、あのエルフ達もきっとこうなることがわかっていたんだろうな。
「ディアボロさん、こういう事はもっと早く言ってください」
「悪かったな。まぁ、俺の顔に免じて許してくれよ」
何でもないように言うディアボロさん。
イリスが自分に対して異議を唱えられないとわかっているからこその口調のように見えた。
「あぁ、ティナちゃん達はここに座ってくれ」
「俺達もいいんですか?」
「あぁ。坊主達もこの問題の関係者みたいなものだからな」
それはディアボロさんが、俺達が黒龍と会った時の状況を詳しく教えてくれって言っているようなものだ。
別に俺達は隠すようなこともないので、ディアボロさんの横に俺達は座るのだった。
「あの、話を続けてもいいでしょうか?」
「そうだな。そういえば話の途中だった。続けてくれ」
「話の途中からで俺達もわかるんですか?」
「大丈夫だ。ちょうどあいつが話し始めたばかりだったから、問題はない」
ディアボロさんが言うのならそうなのだろう。
ここは大人しく聞いてい方がいいな。
「私達はティナ様達が発見したという見晴らしのいい丘に行きました。そこには確かに黒龍がいたんです」
「それはわかった。だけどどうして黒龍が攻撃を仕掛けて来たんだ?」
「それはわかりません。私達は洞窟の側で黒龍の観測を続けて来たんですが、1人が声をあげてしまい見つかってしまいました」
「声をあげた? それは何故?」
「いや‥‥‥その‥‥‥」
先程まで流暢に話していたエルフが言いよどんでいる。
なんだ? 何か俺達に話せないことでもあるのか?
「どうした!! 何故言いよどんでいる?」
「だって、こんなこと話していても信じてもらえないと思って」
「信じるも信じないも我々の判断だ。臆せずに言ってみろ」
イリスの一言で目の前のエルフも決心がついたみたいだ。
ため息をつきながらその時のことを口にした。
「洞窟の中から声がしたんです」
「声?」
「そうです。冷たい冷気と共に『クゥーー』『クゥーー」という声が」
「そんなことあるはずないだろ!! 私達に嘘をついているのか!!」
「嘘なんてついてないです。だから言いたくなかったんですよ」
洞窟の中から聞こえる不気味な鳴き声。それは俺達ですら知らなかったことだ。
「坊主達はその鳴き声について心当たりはあるか?」
「俺達はないです」
「私達は森の中で黒龍を見つけたの。だから洞窟の近くには言ってないわ」
もしかすると洞窟の近くに行ってないから聞こえなかったのかもしれない。
その可能性は大いにある。
「でも、もしかしたら洞窟に風の吹き抜ける音だったのかもしれません」
「確かにその可能性もあるな」
「とにかくそれで俺達は黒龍に見つかって攻撃を受けました。その後は無我夢中で森を走って逃げていたので覚えていません。気づいたら町までついていました」
「わかった。ありがとう。下がっていいぞ」
「はっ!!」
それだけ言うと怪我をしたエルフが会議場を出ていく。
怪我をしたエルフ達が出て行った会議場。そこは静まり返っていた。
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