出発時期
本日はいつもより短めです
「どうにか昼ご飯にありつけたな」
「そうね。入れてよかったわ」
テラス席に座って、ほっと胸を撫でおろす。
初めから子熊達を連れてレストランに入れるのか疑問だったが、エミリアのおかげで何とかなったな。
「全く、一時はどうなることになるかと思ったわ」
「それをティナが言うの?」
元はといえば、ティナのせいでこうなったんじゃないのか?
あまり外食をしないとはいえ、まさかティナがペットを連れてレストランに来れると思っていたことに驚いた。
「でも、このお店って本当におしゃれですよね」
「そうよ。この町で1番人気のあるお店なの」
「どこにでもこういうお店はあるんだな」
内装や外装も小綺麗で、いかにも女性が好きそうなお店。
俺達の街にもこういうお店があったが、俺は殆ど行ったことがない。
「先輩はこういう店に来たことがないのか?」
「そういう由姫は来たことがあるような口ぶりだな」
「あぁ、昔桜と一緒に遊びに行った時こういったお店に連れて行ってもらった」
「だからそんなに落ち着いているのか」
俺みたいにこんなキョロキョロと辺りを見ていないのはそういった理由もあるからなのか。
由姫はこういったお店はあまり好きじゃないかと思っていたが、桜の影響でいつの間にか行くようになっていたんだな。
「そういえば先輩、私達はいつこの町を出ていくのだ?」
「この町を出ていく?」
「そうだ。鍛冶屋で武器も強化したし、もうこの町にいる理由がないように思えるのだが」
「確かにそうだな。早く日向達と合流もしないといけないし、早めにここを出よう」
日向達の事だから、俺達を学校に置いて逃げたことに罪悪感を感じていないとも限らない。
そうなるとできる限り早く合流し、俺達の無事を伝える必要がある。
「空、その話なんだけどもう少し遅らせることはできないかしら?」
「どうしてだ?」
「家を出る前にお父様にも一言言ってからこの町を去りたいの」
「ラックスさんに会ってからか」
確かにあの人にはお世話になった。ここを出る前に一言言ってから去るのが普通だろうな。
「そうだな。ラックスさん達にはお世話になったし、戻ってきてからでも遅くはないか」
「ありがとう、空」
「桜と由姫はそれでいいか?」
「あたしは別にいいですよ」
「私もだ」
「それなら決定だな」
もう少しだけエルフの町に残ろう。
正直俺も由姫やティナからもう少し鍛錬を受けたいからな。せっかく体が慣れて来たんだ。その間に1回ぐらいは勝ちたい。
「おねえちゃん達、どっか行っちゃうの?」
「あたし達はどこにもいかないですよ」
「そうだよね。桜おねえちゃん達はどこにも行かないよね」
そうだ。もし俺達がこの町を出るってことになったら、クルルを置いて行かないといけないんだ。
さすがにここを出てからの旅はかなり大きな危険がはらむ。だから絶対にクルルは連れていけない。
無邪気に笑うクルルを見ていて嘘をついているのが申し訳なく、心が苦しくなった。
「空さん」
「桜?」
「大丈夫ですよ。クルルちゃんなら、きっとわかってくれると思います」
「そうだといいんだけどな」
この1週間で俺が思っていたより、人との関係を作りすぎてしまった。
もしかしたらそのせいで別れを悲しむ人が出てくるかもしれない。
今のクルルみたいに。
「お待たせ。これが頼まれた料理‥‥‥って貴方達、どうしたの? そんなにしんみりして」
「何でもないわ」
「それよりも料理がおいしそうだな」
「あぁ」
結局この後俺達は別れの話をせずに、料理を食べ進める。
いつか来る別れのことは忘れ、俺達はおいしい昼ご飯に舌鼓をうつのだった。
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