エミリア・フォーデン
ディアボロさんの家を後にした後、俺達は昼食の為とあるお店に入っていた。
「ここなんてどう? 結構な人気店なんだけど?」
「凄いな」
「人がいっぱいです」
昼食時ということもあり、店内は大勢のエルフ達でにぎわっている。
店員がせわしなく動いており、見るからに忙しそうだ。
「この店は初めて入ったな」
「内装がおしゃれで活気があっていいお店ですね」
「そうでしょ、そうでしょ。今私が押す一押しの店なのよ」
ティナが一押しというだけある。
内装がきれいなのももちろんだが、テーブル客の席を見ると並べられている料理がどれもおいしそうだった。
「ティナ、本当にこんな所で昼食を食べられるのか?」
「大丈夫よ。少し並ぶけど、知り合いもいるから任せて」
「ならいいけど」
ティナは自信がある様子だけど、本当に大丈夫なのか?
中に入れるとか以前に俺の心配しているのはそこじゃないんだけど。
「楽しみだねーー。ライト、ムーン」
「グマグマ!」
「クマ!」
「まっ、いいか」
入れなかったらその時考えればいい。今は大人しく待ってよう。
「はい、次のお客様は‥‥‥あれ? ティナじゃない!!」
「久しぶり、エミリア」
ティナが挨拶したエルフは長い銀髪をポニーテールにした美少女だった。
元気いっぱいで笑顔が素敵な美少女。そうとしか感想が出てこない。
「空さん、何見とれているんですか!!」
「別に見とれてない」
確かに美人だなとは思ったが、別に見とれていたわけではない。
ティナといいカレンさんといいラックスさんといい、エルフ達は皆美男美女しかいないのかと真剣に考えていただけだ。
「先輩、もう少し女性関係はしっかりしてもらわないと困る」
「俺はいつでもしっかりしてる!!」
別に今まで他の女性に浮気したわけでもないのに、なんでこんなに言われないといけないんだ。
「空、紹介するわ。この子は私の友達でエミリア・フォーデンって言うの」
「ティナ、もしかしてこの人達が私達の町に来たっていう人間達?」
「そうよ。特に悪い人達じゃないから安心していいわ」
「わかってるわよ。ティナがこんな風に紹介している時点で怪しくないでしょ」
どうやらエミリアもティナのことを信頼しているみたいだ。
自分の友人だって言っているだけはある。2人の話す様子を見ているだけで、非常に仲がいいことがうかがえた。
「改めて、私はエミリア・フォーデンって言うの。よろしくね」
「俺は山村空だ。よろしく」
「あたしは木内桜って言います」
「私は前野由姫だ」
「よろしくね。えっと、空、桜、由姫って呼んでいい?」
「俺達はそう呼んでもらえれば大丈夫だ」
「わかったわ。貴方達のことはそう呼ぶわね」
ティナといいエミリアといいやけにフランクなエルフが多いな。
そう考えるとクルルの人見知りはとてもレアなケースだったのかもしれない。
「お姉ちゃん、早く入ろうよ」
「あれ? ティナ!! あんたの妹まで来てるの!?」
「そうよ。最近外に出始めたの」
「へぇ~~」
「はっ!?」
エミリアがのぞき込むとクルルはライトとムーンの後ろに隠れてしまう。
そのままライトとムーンの背中越しにエミリアのことを見る。
「大丈夫よ、クルル。別にエミリアはあんたのことを取って食ったりしないから」
「でも‥‥‥」
「それならあたしと一緒にいれば大丈夫ですよ」
「桜おねえちゃん?」
「こうして手をつないでますから、何かあったらあたしがクルルちゃんのことを助けてあげますよ」
「わかった。桜おねえちゃん強いもんね」
「はい、任せて下さい!」
そう言うと桜の手を握り、横に出てきたクルル。
エミリアの方が怖いのか、いまだ視線は上や下をさまよっている。
「ティナ、桜の方が貴方よりお姉ちゃんやってない?」
「しょうがないでしょ!! クルルは桜の方に懐いちゃったんだから!!」
「姉の面目丸つぶれだな」
「空まで!! そんなこと言わないでよ!!」
「空さん、これ以上言うとティナさんが泣いてしまいますからやめましょう」
「そうだよ。お姉ちゃん以外に泣き虫だからこれくらいにしておこう」
「誰のせいだと思ってるのよ!!」
いかん、いつの間にかティナがクルルにまで遊ばれている。
前のピクニックの時から思っていたが、もしかしたらこの中で1番子供っぽいのはティナ何じゃないか?
「そろそろティナをからかうのはよしましょう。それより何人で入るの?」
「えっと7人でお願いできる?」
「ちょっと待って。もしかしてそのモンスターも一緒に入れてない?」
「そうだけどなんか問題がある?」
「う~~ん、問題というかなんというか‥‥‥」
エミリアが額に指をトントンと叩いて悩んでいる。
どうやら俺が危惧していたことが当たったみたいだ。
「何よ、そんなに悩んで。別にいいじゃない」
「いいと言えばいいんだけど‥‥‥」
「ティナ、エミリアが言いたいことはきっと店内にペットは禁止だってことだと思う」
「そうなの!?」
「そうよ。そういえばティナって、あまり外食とかはしなかったよね?」
「しないけど、それが何?」
「だから知らなかったのね」
エミリアがあきれる気持ちもわかる。普通特別な飲食店以外はペットの入店は不可能だ。
「そこを何とか友人のよしみでお願いできない?」
「う~~ん、それはそれで無理よね」
「そこをなんとか」
ティナは必死にお願いしているが、エミリアは困り果てている。
このままじゃこっちがクレーマーになってしまうので何とかしなくてはならない。
「エミリア、外のテラス席はどうだ?」
「テラス?」
「テラスなら店内と違って外にペットがいても大丈夫だと思うんだ。もちろん無理なら俺達も別の店を探すけど」
「ちょっと店長と話してくるわね」
「頼む」
そう言ってエミリアは店の中に引っ込んでしまう。
何となくだがこれはしばらく戻ってこないと思った。
「空、ありがとね。フォローしてくれて」
「本当だよ。飲食店にペットは不可ってこと知らなかったのか?」
「初めて知ったわね」
こりゃだめだ。ティナも今まであまり外食をしていなかったのだろう。
それにティナは外部の世界の人達との交渉役をしていたと聞く。
だからこういう所で働いたこともなかったから知らなかったんだ。
「えっ!? ライトとムーンは一緒にご飯を食べられないの!?」
「グマ!?」
「クマクマ!?」
「大丈夫だ。今エミリアがその交渉をしているから」
「本当?」
「あぁ、心配するな。エミリアのことを信じよう」
それからしばらくするとエミリアが戻ってきた。
慌ててる様子から察するに急いで聞いてきたのだろう。
「今店長と交渉したけど、外なら特別にいいって許可が出たわ」
「ありがとう、エミリア!」
「ティナ抱き着くんじゃないわよ。それよりも、食器とかは提供できないからそこの子熊達の分は別の皿に入れるってことが条件ね」
「それなら大丈夫だ」
「それじゃあ席に案内するから。ティナは早く私から離れなさい!!」
それからティナとエミリアを引きはがし、俺達は席へとつく。
そこでそれぞれ昼ご飯を注文するのだった。
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