表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/316

木内桜(回想) 2

桜視点の話の続きです

 なんとか豚のオークをまいたあたしは、気づけば住宅街に迷い込んでいた。

 気づいたら空は真っ暗になっていて、アスファルトの壁に1人寄りかかっていた。



「はぁ、はぁ。もうくたくたです」



 走りすぎてがくがくになる足を必死に押さえつけ、あたしは先程まで起こった事を思い出す。

 地震が起きてオークに追われ、奇跡的にあたしだけが住宅街に逃げ込めた。

 住宅街に入ればこっちのもので、地の利を生かしてオークを撒くことに成功する。



「なんなの⁉︎ あれ?」



 それよりもあのオークだ。あの豚の様な顔をした二足歩行の生物は現実世界では見たことがない。

 本当にあたしがいるこの世界はモンスターがはびこるRPGの世界みたいだ。



「空先輩、会いたいよ」



 ついつい口から弱音が漏れてしまう。ただここで立ち止まってしまうと2度と先輩に会えない気がした。

 空先輩にもう1度会いたい。そうじゃないと私は死ねない。



「絶対会うんだから」



 気合を入れなおした瞬間、住宅街の影から大きな剣を持った骨の化け物が出てきた。

 スケルトン。アンデッド型の化け物。そいつは表情を変えないまま襲ってきた。



「近づかないで!!」



 捕まったら、あたしも町の人達みたいに連れ去られるか殺されてしまう。

 せっかくあのオークを巻くことが出来ても、これじゃ意味がない。



「やっぱりあたしって、運がないのかな」



 そういいながらも、あたしは逃げるしかなかった。

 正直もう足が棒のようになっており、今にもつりそうである。

 それでも逃げなくてはならない。空先輩に会うために。



「んっ、行き止まり」



 どうやらいつの間にか行き止まりの道に逃げ込んでいたらしい。

 慌てて後ろを振り向くが、2体のスケルトンが通路を塞いでいる。

 骨の姿だからだろう。表情はなく、無表情で剣を頭上に振り上げた。

 さっきのオークとは違い、感情がない分不気味である。



「もうだめか」



 すいません、空先輩。あたしはここまでのようです。

 覚悟を決めそっと目をつぶろうとしたその時、目の前で不思議なことが起こった。

 大きな破裂音と共に剣を振り上げたスケルトンがそのままよろけたのだった。



「えっ⁉︎」



 小さく声をあげると、2度目の銃声の発砲音が聞こえ、もう1体のスケルトンがよろけるのだった。



「チャンス」


 

 その光景はまるで神様が逃げろって言ってるかのようだった。

 ぼーっとしている暇はない。この千載一遇のチャンスは絶対に見逃せない。よろけるスケルトンの横を抜け、住宅街の道へと戻った。



「でも、2匹の骸骨が急によろけるなんて」



 こんな偶然絶対にない。誰かがあたしに力を貸してくれている。



「でも、一体誰が?」



 考えずにはいられない。こんな体がボロボロの女子中学生を助けてもいいことなどない。

 いるとすれば、よっぽど奇特な人だ。あと可能性があるとすれば、あたしとゆかりのある人。



「もしかして、空先輩?」



 空先輩のことを思い浮かべたと同時に、再び私の前にスケルトンが現れた。

 後ろに引き返そうとするが、先程のスケルトンが道を塞ぐようにあたしに向かってくる。



「挟まれた」



 今度こそもうダメだと思った瞬間、前にいたスケルトンに銃弾が当たり剣を手放した。

 それが私をどこかに誘導しているように見えて、その脇を抜けていく。



「あたしを助けてくれる人。それってもしかして‥‥‥」


 空先輩しかいない。あたしを助けてくれる人なんて、空先輩ぐらいしか思いつかない。

 そう思った瞬間、急にスケルトンも怖くなくなった。どんなにスケルトンに通せんぼされようとも、空先輩の銃弾があたしを救ってくれる。



「空先輩」



 きっと空先輩があたしのことを導いてくれているんだ。そう思いながら走り続ける。

 走り続けて数分後、必死にスケルトンから逃げていると、空先輩じゃない見知った先輩がこちらに来た。

 それは去年まで学校に在籍した学校の王子様、空先輩曰く目の上のたんこぶと言っていた人、柴山日向先輩だった。



「桜ちゃん見つけた! 大丈夫? 怪我は無い?」


「あたしは大丈夫です。それより日向先輩。これは一体何ですか?」


「空が桜ちゃんのことを見つけたから助けにきたんだよ」



 そういった後、日向先輩が胸のポケットに入ったスマホを取り出した。

 スピーカーモードになっているからか、電話口の声が駄々漏れだった。



「やったよ、空。桜ちゃんと合流できた」


『よくやった。こっちに戻ってきてくれ。道案内と援護は俺がする』


「わかった」



 そのスピーカーから出てきたのは空先輩の声。

 やっぱりさっきの銃弾は空先輩が撃ったものなんだ。



「日向先輩、空先輩は?」


「今は僕の家にいるから一緒にいこう」


「でも、もう足がガクガクして動けないんです」



 先程まで走っていたせいで、今は足が棒のようである。

 気力で走っていたが、日向先輩を見てほっとしてしまったせいか足が動かなくなってしまった。



「それならこうしよう」



 そういって手に持っていた大きな剣をどこかにしまうと、日向先輩はあたしのことをお姫様だっこした。

 今の日向先輩は王子様のように見えて、普通の人から見れば物語の主人公。その主人公がお姫様を助けに来てくれているみたいだった



「きゃっ」



 だが、そんな主人公に対して突然のことで思わず声をあげてしまう。だって日向先輩が右腕で触っている所はあたしのお尻なのだから。



「日向先輩⁉︎ そこはお尻です!!」


「嘘⁉︎ ごめんごめん。これならどう?」


「それならなんとか」



 私を持って走りながら手の位置を変える日向先輩。

 見た目は王子様の様なイケメンで天然のラッキースケベ。あたしも日向先輩のそういう所は何度も目撃してきた。

 普通なら顔を真っ赤にして叫んだり、頬を染めて気にしない人が殆どだがあたしは違う。

 たぶんあたしが好きな人は別にいるから。こんな時でも冷静に指摘できるのだろう。

 日向先輩に触られて文句を言う贅沢な人はあたしぐらいだ。



「これなら大丈夫でしょ?」



 申し訳なさそうに笑う日向先輩は他の人が見たら、卒倒してしまうようなイケメンフェイスである。

 本当に天然の人たらしなんだから。その笑顔で今まで何人の女の子を落としてきたんだろう。



「あれ?」


「どうしたの? 桜ちゃん?」


「なんでもないです」



 日向先輩には言わなかったが、この人こんなに力持ちだっけ?

 それに以前よりも足が速くなってる? 中学時代は確かにスポーツも出来る人だったけど、ここまで早くなかったような気がした。



「そういえば日向先輩? 空先輩は無事なんですか?」


「空も無事、怪我一つないよ」


「よかったです」


「今2階の窓で銃を撃ちながら、僕達に道案内をしてくれてる」



 日向先輩のスマホからは、確かに空先輩が何か言ってる声が聞こえる。

 そして目を凝らすと日向先輩の言う通り、あたし達の前に立ちふさがったアンデッドには必ず銃弾が命中していた。



「今のももしかして?」


「うん。空がやったんだよ。すごいよね、空って」


「はい、空先輩は本当にすごい人ですから」


「そこではっきり言うのは桜ちゃんらしいよね」



 この時のあたしは、空先輩が無事だったことがうれしかった。

 あたしの王子様。あたしだけの王子様が生きていたこと、それが知れただけでもよかった。



「よし、ついたよ。中に入ろう」



 日向先輩はそう言ったのと同時に大きな家の扉が開く。

 そこで待ち構えていたのは誰もがうらやむようなきれいな女性とあたしの王子様だった。

ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします!


評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】を押して頂ければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ