マジックアイテム
「空さん!! 大丈夫ですか!?」
「あぁ、傷は一つもない」
心配そうに俺の所へ駆け寄る桜に対して、俺は何でもないように答える。
正直傷は全くないが、精神は今までの戦いで1番すり減った。
「いつも日向はこんなギリギリの戦いをしていたのか」
剣を使う近接戦をしていてわかったが、想像以上に緊張した。
確かにゴブリンキングやフランシスと戦っている時も近接戦闘はあったが、ハンドガンで攻撃していたので簡単に相手が離れてくれていた。。
それが今日は剣をメインに戦っていたせいで、いつも以上に近接戦闘をする時間が長くなった為、想像以上に神経をすり減らしているようである。
「空おにいちゃんは大丈夫? 疲れてない?」
「それは大丈夫だ。クルルは無事だったか?」
「うん。私は元気だよ」
両腕を横に開いてくるくる回り、どこも怪我をしていないとアピールするクルル。
その姿が面白くて、つい笑ってしまった。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
あまりにもやっている行動が突拍子もなくて、面白かったとはいえない。
下手をすれば、クルルが拗ねてしまう。
「先輩!!」
「由姫、怪我はないか?」
「私は大丈夫だ。それよりもこのオークはどうする?」
由姫が指差した先には先程俺が昏倒させたオークがいる。
そのオークの側でライトとムーンが何かをしていた。
「あの子熊達は何をしているんだ?」
「オークが逃げられないように、体と足をロープで結んでいる」
どこからロープを持ってきたかわからないが、確かにそのロープを使ってオークを縛っている。
器用に両手を使い、逃げられないようにきつくきつくロープを結ぶ子熊達。
いつからそんな芸当までできるようになったのだろう。
「クマ!」
「グマ!」
「ありがとう、ライトとムーン。それで、先輩はこいつをどうするつもりだ」
「どうするってやることは1つだろう」
「というと?」
「事の事情を洗いざらい全部聞き出す」
何であの霧の結界を抜けられたのか、そして誰の指示でこの町を襲おうとしたのか、こいつには色々と聞くことがある。
それは俺達だけじゃなくて、ティナ達もその話が聞きたいはずだ。
「うっ‥‥‥あっ‥‥‥」
「起きたか」
「俺は‥‥‥くそ!!」
目を覚ましたオークは辺りを見回し状況を把握したのか、暴れだす。
だが体をロープで結ばれてしまっているため、身動きが取れない。
「お前には聞きたいことが山ほどあるんだ」
「お前達に話すことなんて何もない」
それっきりオークは口を噤んでしまう。
俺達が何を言っても完全無視。これでは重要な情報を知ることができない。
「困ったな。このままだと何も聞けないぞ」
「商工会議場にいる奴等に引き渡すしかないな」
「そうするしかないか」
「そしたら俺がオークを連れて行こう」
「お願いします」
必要な情報が入らなかったが、これで満足をするしかない。
後はきっと他のエルフ達が尋問をして、色々と情報が出てくるだろう。
その時をゆっくりと待つか。
「そういえば、空さん。このオーク達が気になるものを持っていたんですけど?」
「それはどんなものだ?」
「これです」
桜が手渡したのは透明な水晶玉。中が透き通る程きれいな水晶玉を持っていた。
「これはなんだろう?」
「もしかしたら何かのマジックアイテムの可能性もあるわね」
「マジックアイテム?」
「そうよ。人為的に作られたものか、それとも自然現象で出てきたものかわからないけど、たまに出てくるのよ」
「ちなみにマジックアイテムって持っているとどんな効果があるんだ?」
「それは私もわからないわね」
「ティナさんでもわからないんですか?」
「えぇ。マジックアイテムにはその術者の魔法が詰め込まれているから、どんな魔法を使えるのかまでは判断できないの」
「なるほどな」
つまりこの水晶玉を使って何か魔法を使おうとしていたのだろう。
だとしたら一体どんな魔法を使ったんだ?
「先輩、もしかしてこの水晶玉を使ってあの霧を抜けて来たとは考えられないか?」
「確かにその可能性はある」
由姫の言っていることはもっともだ。だが肝心なことを由姫は忘れている。
「それじゃあこの水晶玉には霧を抜ける為の魔法阻害をしていたんですね」
「でもそんなの無理よ。それこそ魔王軍の四天王クラスじゃないと抜けられないわ」
「魔王軍の四天王クラスしか抜けられない結界」
そこで俺はある人物を思いだした。
それは俺達の学校を襲ったフランシスだ。
「四天王はいる」
「えっ!?」
「空さん!! それってフランシスのことを言っているんですか?」
「違う。フランシスは大前提として、魔力がなかった」
もし魔力があったら、もっと遠距離から攻撃をしてきただろう。
それがなかったってことはフランシスの仕業ではない。
「じゃ誰なんだ!? こんなことをした人物は!?」
「魔王軍四天王。フランシス以外に誰かが暗躍しているのかもしれない」
もしかすると俺達が思っていた以上に状況が深刻なのかもしれない。
これは早急にオークから何かを聞き出す必要があるな。
「やっぱりあのオークに状況を聞く必要があるな」
「いずれにせよ、商工会の連中にオークを引き渡せば済む話だし大丈夫よ」
「坊主、今商工会議場の連中と連絡を取っているから待っていてくれ」
「ちょっと待ってください。その前にそのオークから話を‥‥‥」
「ぐぅ!!」
「何!? この悲鳴!?」
「おい、お前!! 大丈夫か!?」
ディアボロさんの側にいたオークが急に苦しみ始めた。
首を下に下げじたばたと体を動かしている。
「何が起こっているのだ?」
「由姫ちゃん、オークさんの背中を見てください」
「背中?」
オークの背中には紫の宝石ののようなものが埋め込まれてある。
その宝石が紫に光輝き、名kが煙のようにうごめいている。
「あの宝石は!?」
「昔この山で見たウォールベアーについていたものに似ているな」
似ているなんてものじゃない。色は違うが形は全く一緒だ。
あの光が鈍色に輝くにつれ、オークはもがき苦しんでいるように見えた。
「ウォールベアーの胸の宝石が光る時は、氷を生成していた時だったな
「じゃあこの宝石の光はなんですか!?」
「これはたぶん簡易的な自決装置だろう」
「自決装置!?」
「きっと捕まった時の口封じのためにこの宝石を埋め込んだに違いない」
敵に捕まることも想定して、そういうものをオークにつけたのか。
どうやら敵はかなりの力があるものだろう。
「桜、由姫、あの宝石を壊すのを手伝ってくれ」
「はい」
「ティナはディアボロさんと協力して、商工会議場にいるラックスさんを呼んできてくれ」
「わかったわ」
「くそ!!」
俺達は宝石を壊そうとするが、全く壊れない。
光っていた宝石はやがて輝きが消えていく。
「光が‥‥‥なくなっていく」
「桜、由姫。もういい」
「でも、早く助けないと!!」
「助ける必要はない。そのオークはもう死んでいる」
オークはよだれを垂らしたまま、体を硬直させたまま動かない。
開いた眼を両手を使って優しく閉じた。
「空さん」
「あぁ」
どうやらこれは誰かが仕組んだことだろう。
オークの亡骸を見ながら、想定外の事態に俺達は困惑するのだった。
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