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円卓会議

 ティナの家を後にした俺は複数のエルフ達と共に町を歩いていく。

 町ですれ違うエルフ達にはその異様な光景に対して奇異の目を向けられるせいで、気分はまるで犯罪者だ。



「商工会議場ってどういう所なんだ?」


「この町の重鎮達が集まって、エルフ族の今後の方針を決める場所だ」


「エルフ族の重鎮ね」



 重鎮ってそんなに凄い人達なのだろうか。

 全員が全員ラックスさんみたいな人だといいけど、そういうわけにもいかないだろう。



「着いたぞ。ここだ」


「ここが商工会議場か」



 外から見るだけでもわかる程の大きい建物。

 町の他の建物に比べても圧倒的に大きく、それでいてきらびやかな建物だった。



「さぁ、入れ」



 建物の中に入ると広い大広間に通される。そこから赤絨毯が引かれた階段を登り、ある部屋の前で立ち止った。



「この部屋だ」


「この部屋?」



 会議場と書かれた扉。他の扉よりも大きい扉の前に俺は立たされている。



「父さん、入ります」


「どうぞ」



 イリスに連れていかれて入った部屋。その中は圧巻の一言だった。



「すごい」



 中は広く色々な所に座る場所がある。

 その中でも一層きらびやかな装飾がされた円卓。その円卓に7人のエルフ達が座っていた。



「ラックスさん」


「山村君、久しぶりだな。ここまで来てくれてありがとう」


「一体俺に何の用ですか? こんな大掛かりなことまでして」


「こんな大掛かりなこと? まさか、イリス!! 山村君に何か粗相をしたのだな!!」


「いえ、私達は別に何も」



 イリスはうろたえているが、何もないわけがないだろう。

 あんな大勢でティナの家に押し寄せてきて、有無を言わせず説明もないまま強制的にここまで連れて来られた。

 まるで犯罪者のように扱われて気分がいいわけがない。



「わかった。その話はあとでティナに聞いてみればわかることだろう」


「っつ!?」


「その話は後にしよう。山村君はそこに座ってくれ」



 ラックスさんに案内された席に座る。

 席に座った際、見知ったエルフの顔があった。



「ディアボロさん!!」


「よう、坊主。昨日ぶりだな」



 こんな所でディアボロさんに会うなんて。ただの鍛冶職人だと思っていたけど、その正体は議会の重鎮の1人だったみたいだ。



「何だ。ディアボロは山村君と知り合いなのか」


「知り合いって程の仲じゃないよ。たまたまティナちゃんから紹介されてな」


「ティナの紹介か。あの子も今は山村君達とずっと一緒にいるようだけど、まさかディアボロの店にまで顔を出してるとはな」


「そうだぜ。いつも来ないティナちゃんが昨日うちの工房を訪ねてきて驚いたものだ」



 感慨深くディアボロさんは話すが、ティナが店を訪ねた理由はティナが俺達のお世話係をしているからだろう。

 ティナには悪いがおかげで色々な所に案内してもらえるので、俺達としては助かっているけど少々申し訳ない気持ちになった。



「ティナちゃんだけじゃないだろ? お前の所の末っ子も一緒に来てたぞ」


「クルルが外に出た!? それは本当か!? 山村君!?」


「はい、それは本当ですよ。今日もこれから桜達と一緒に草原に遊びに行くって言ってました」


「あのクルルが、草原に遊びに行くのか」


「やっぱり意外ですか?」


「あぁ、我々もクルルが部屋から出てこないことには頭を悩ませていたからな」



 どうやらクルルの引きこもりは筋金入りだったらしい。

 そうなると桜が外に連れ出したのはファインプレーだったみたいだな。



「それでは俺も座ろう」


「イリス、申し訳ないが君は下がっていてくれ」


「何でですか!!」


「申し訳ないが、私達だけで山村君と話がしたい」


「でもその人間が何をするかわからないじゃないですか!!」


「山村君は大丈夫だ。私達の世界の人達とは違って信用できる」


「でも‥‥‥」


「お前の心配はわかるが、たとえ山村君が暴れたとして、我々が彼より劣ると思っているのか?」


「そんなことはないです」


「お前が心配する理由もわかる。だが後は私達に任せてくれ」


「‥‥‥わかりました」


「いい子だ。話し合いが終わったら呼ぶから、外で待っていてくれ」


「はい!!」



 悔しそうな顔をしながらティナの兄、イリスは部屋を去っていく。

 ドアが閉まったところで、ラックスさんが大きなため息をつくのだった。



「山村君、イリスの数々の非礼すまなかったな」


「いえ、そんなことないです」


「彼はまだエルフの中でも若くて血の気があるんだ。私からイリスに強く言っておくから、今回は私の顔に免じて許してくれ」


「わかりました」


「ありがとう」



 ラックスさんにここまで謝られてしまうと、俺も何も言えなくなる。

 イリスにもきつく言うと話してるし、ここは許すしかなさそうだ。



「それで俺に何の用ですか?」


「君に聞きたいことは1つだ。何が目的でエルフの町に来たんだ?」


「ティナ達の世界の情報が欲しくてこの町に来ました。正直俺達の世界とかけ離れた出来事が多すぎたので、そのことを知りたかったからティナに頼んで連れてきてもらいました」


「なるほどな」


「もちろん必要とあれば俺達の世界の情報も提供します。そこはギブアンドテイクで」



 それ以上ラックスさん達に俺が言うことはない。

 俺達は俺達の目的があってこの町に来たのだ。別に理由を隠す必要はない。



「なるほどな」


「ほら、ラックス。だから言ったじゃないか。坊主達は俺達とことを構えるつもりはないって」


「でもここにいる全員を納得させる為には、本人に直接聞いて見るしかないだろう」



 ラックスさんやディアボロさん達が笑顔で話している。

 それを俺はほうけた表情で見ることしかできなかった。



「1つ質問があるんですがいいですか?」


「あぁ、大丈夫だ」


「さっきからわけがわからないんですけど、貴方達は俺達と戦いたいんですか?」


「いや、そういうわけではない」


「俺達エルフは平和主義だからな。無用な争いを好まないんだ」



 好まないなら、なんで俺達に戦闘の意志があるか確認する必要があるんだ?

 意味がわからない。



「ディアボロから君達が鍛冶屋で武器の強化をしてほしいと頼まれたと聞いてな」


「ラックスも人が悪いぞ。さっきはわざと惚けて坊主に失礼だろ」


「しょうがないだろう。山村君に本音を話してもらうにはああするしかなかったんだ」



 どうやら先程の話は演技だったらしい。いくらエルフ達の為とは言え、ラックスさんも人が悪すぎる。



「悪かったな。君達がティナを罠にはめて自分達の言いなりにしているんじゃないかと疑っていたんだ」


「罠にはめられるわけないでしょ? たった3人だけで、ティナを抑えられるわけがない」



 それにエルフとことを構えるとなれば、数百人のエルフ全員を敵に回さないといけないことになる。

 そんな大勢のエルフを相手にして俺達が勝てるわけがない。



「そんなことはない」


「えっ!?」


「君の持っている力を使えば、戦力がたった3人でもこの町1つを滅ぼすこと等造作でもないことだろう」


「嘘だろ?」


「本当の話だ」


「現に先代の魔王の配下の四天王は1人で人間の町を滅ぼして来たんだ」


「その話は本当ですか?」


「あぁ、私達が生き証人だ」


「生き証人?」


「そうだ」



 一瞬渋るような顔をラックスさんは見せた。だが、今は腹をくくったのか真剣に俺の目を見ている。



「私達ここにいる全員、先代魔王に仕えていたエルフ達なんだ」



 静かな声色でラックスさんは俺にそう告げるのだった。

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