感想戦
本日2話目になります。
前の話を読んでいない方がいましたら、前話を見てからこちらをご覧ください。
「ティナの剣は本当に凄いのだな」
「凄いのは由姫の方よ。剣を完璧に捌いたのに、私に向かってくることで木剣を避けるなんて」
「確かにあの由姫の踏み込みは凄かったな」
ティナの剣に向かう由姫の鬼気迫る表情。あれは由姫が本気でティナに勝つ為に起こした行動だ。
勝利に執着したからこそ、あの行動が取れたのだろう。
「私が由姫の攻撃を捌くのも、計算の内だったわけ?」
「いや、あの攻撃には私も驚いた。あの行動は私の咄嗟の判断だ」
咄嗟の判断であの行動ができるのが凄い。俺だったら間違いなく避けられなかった。
「やっぱり由姫は私と違って戦いの経験が違うのね」
「それを言うならティナこそ。あのぐらい完成度が高い2刀流は中々お目にかかれないぞ」
摸擬戦の感想を楽しそうに話す由姫とティナ。2人の剣のレベルは俺とは段違いだ。
「2人が住んでいる世界は、俺とは全く違うんだな」
自分に剣の技術がないとはいえ、正直あのレベルまで剣の腕が上がるにはどれぐらいの月日がかかるのだろう。
それこそ一生かけてもあのレベルに追いつくことができない気がする。
「先輩、私とティナの摸擬戦は参考になったか?」
「あぁ、非常に参考になった」
「それならまた摸擬戦ね。今度は私が相手をするわ」
「頼む」
先程はあんなに激しい戦いをしていたのに、今のティナはピンピンしている。
あれだけ激しく動いて息が殆ど乱れないなんて、どんな体力をしているんだ?
「ティナはあんなに動いて、よく息が切れないな」
「そりゃ平気に決まってるでしょ? 回復魔法を使ったんだから」
「回復魔法?」
「そうよ。由姫にも使ってあげるわ」
ティナは何か呪文のようなものを唱えると光が由姫を包みこむ。
光が消えた後、先程脇腹を抑えていた由姫が手を離して立ち上がった。
「凄い!! 先程まで痛かったのに、今は全く痛くない」
「当たり前でしょ。私の回復魔法は凄いんだから」
魔法には回復する為の魔法があるのか。これほどの効果があるのはエルフ族の力というよりは、ティナの努力のたまものだろうな。
「さぁ、やりましょう。空」
「そうだな」
2刀流のティナに対して、俺は剣を構える。
ティナと俺の間に、ピリピリとした緊張感が流れていた。
「行くわよ、空!! やっ‥‥‥「お姉ちゃんたちーーーー!! ご飯できたよーーーー!!」」 って、えぇっ!?」
俺達がいる草原に向かってくる小さな人物。
クルルがライトとムーンを連れて俺達の方へ向かってきた。
「クルル!? せっかくいい所なのに、邪魔しないでよ!!」
「だってご飯だから皆を呼んで来てって、桜お姉ちゃんが呼んでたよ」
「そうか、もうそんな時間か」
スマホの時計を見る。時計を見ると気づけばもうお昼の時間になっていた。
由姫とティナの戦闘に夢中になりすぎて、時間のこと等忘れてしまっていた。
「それじゃあ続きは午後に‥‥‥」
「ティナ、午後はクルル達と草原で遊ぶ予定だろ?」
「じゃあ草原で一戦‥‥‥」
「皆で四葉のクローバーを探すのだ。先輩と戦えないもどかしい気持ちはわかるが、また明日やろう」
「わかったわ」
肩をがっくりと落としたティナは悔しそうな顔をしているが、こればっかりはしょうがない。
この前お昼を食べた場所に行き、皆で四葉のクローバーを探す約束をクルルとしているのだから、ティナにはあきらめてもらうしかないだろう。
「クルル、今日のお昼のメニューは何だ?」
「今日はお蕎麦みたいだよ」
「蕎麦か」
スーパーに行った時手に入れていた乾麺の余りがあったのか。
めんつゆを作るのは大変だが、それさえ出来れば後は簡単に作ることができるだろう。
「まずい!! 急いで行かないと蕎麦が伸びてしまう!!」
「それじゃあ家に戻りましょう」
「そうだな」
「クマ!」
「グマ!」
「あっ!? ライトとムーン、そんなに走っちゃだめだよーー」
「クルルも走ってるじゃん」
ライトとムーンを追いかけて、クルルも走っていく。
その後ろを俺達はゆっくりと歩いて行った。
「あっ、空さん達。おかえりなさい」
「ただいま、桜」
「もうすぐお蕎麦を茹で終わるので、椅子に座って待っていてください」
テーブルの方を見ると既にクルル達がテーブルに座っていた。
子熊達も規則正しく自分達の場所に座り、今か今かと待ちわびていた。
「お姉ちゃん達、早く早く」
「クルルは席に着くのは早いわね」
フォークを持ったクルルは、蕎麦の出来上がりを今か今かと待ちわびている。
よっぽど昼ご飯が食べたかったみたいだな。
「出来ましたよ」
「桜、配膳を手伝うよ」
「ありがとうございます」
台所には蕎麦の他に天ぷらも用意してある。
揚げたての天ぷらからは湯気が立ち上り、見るからにおいしそうだ。
「天ぷらも作ったのか」
「そうですよ。てんぷら粉に似たものがありましたのでそれで代用して、この町で手に入った野菜を揚げてみました」
「さすが桜だな」
「いえいえ、それほどでも」
こんなに手際よく料理ができるなんて、さすが桜だ。俺なら絶対こんなに上手く作れないだろう。
「空さんに褒められると、あたし照れちゃいますよ」
「相変わらず貴方達は熱々なのね」
「はい。いつでも熱々ですよ」
「少しは謙遜してくれよ」
今の言葉、俺達に対する皮肉のようなものだぞ。
ティナと由姫が白けた目をしていることから、その様子が伝わってくる。
「クマちゃん達はフォークが使えないと思ったので、冷たいお蕎麦にしました」
「クマクマ!」
「グマグマ!」
子熊達も自分達の分の天ぷらと蕎麦を受け取って喜んでいた。
だが、桜。子熊達にこんなおいしいものの味を覚えさせていいのか?
この子熊達のことだ。その内いつもの食事だけじゃ、満足できないようになるぞ。
「それよりも早く食べようよ。お蕎麦が伸びちゃうよ」
「そうだな。クルルの言う通りだ」
「由姫達はぶれないな」
フォークと箸を持つクルルと由姫はお昼の時間を今か今かと待ちわびている。
おいしいものを食べようと待つその腹ペコ精神は、これかrまおぶれずにずっと持ち続けてほしい。
「ぶれないって何?」
「クルル達はそのままでいてくれってことだ」
「クマ!」
「グマ!」
「はいはい、それでは食べましょう。いただきます」
「いただきます」
それを合図に全員で一斉に食べ始めるのだった。
ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします!
評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】を押して頂ければ幸いです




