話し合い
「じゃあ俺達は部屋に戻るよ」
「わかったわ。鍛冶屋には明日一緒に行きましょう」
「了解」
「おやすみなさい、空」
「おやすみ、ティナ」
お互い挨拶をして、俺は自分の部屋に戻る。
「この部屋は広いな」
テーブルのような大きい机があり、ベッドはキングサイズ。
「もしかしたら、この部屋は2人ようなのかもな」
客室でも夫婦が一緒に暮らすような大きな部屋。
もしかするとティナの家に招かれた夫婦が使う寝室なのかもしれない。
「考えても仕方がないか」
ティナが何を考えて俺をこの部屋に案内したかわからないが、そんなことを考えても仕方がない。
「それにしても、今日は疲れたな」
今日1日だけでも色々ありすぎた。オークに襲われていたティナを助けたと思ったら、エルフの隠れ里にまで招待してもらった。
そこで勇者の従者のスキルについて教えてもらい、その後俺が魔王の後継者と言われてしまう。
「整理をするのに時間がかかりそうだな」
今日1日でここに来るまでに俺達が得た情報量以上のものがあっただろう。
正直これだけの情報量が手に入るとは思わなかった。
「早く日向達と共有しないとな」
日向達のことだ。きっと学校に残してきた俺達のことを心配しているに違いない。
今頃須田のおっさん達と一緒にフランシスに対しての対策を立ててることだろう。
「日向も悠里も無事だといいけど」
『トントン』
「どうぞ」
「失礼します」
「失礼する」
「桜、由姫!? どうしたんだよ?」
「空さんに話があってきました」
「俺に話?」
「はい。そうです」
一体何の話だろう。2人が俺の部屋までわざわざ話に来たってことは、よっぽどのようなのだろう。
「どうしたんだよ? いきなり入ってきて」
「今日1日で色々あったじゃないですか。だからそれぞれが思っていることを共有しようと思って」
「共有?」
「先輩も含めて私達の考えを共有した方がいいって思ってここに来た」
「そうか」
確かに今日1日を整理するという意味では、ティナを抜かしたこのメンバーで話すのがいいだろう。
特に桜と由姫は俺と違う意見を持っている可能性もある。その話を聞いておいた方がいいとは思う。
「私たちは空さんのパーティーなんですから。空さんも言いたいことは言ってくださいね」
「わかった」
「珍しく先輩が素直だな」
「俺はいつでも素直だぞ」
失礼な奴だ。由姫は俺のことをそんな風に今までも見ていたのか。
俺だって普通に自分の思いを伝えることもあるぞ。
「桜は先輩が素直に話す点についてはどう思う?」
「そうですね。空さんはいつでも素直だと思いますよ」
「そうなのか?」
「はい。屋上であたしと話している時は特に‥‥‥」
「悪い、俺が悪かった!! だからやめてくれ!!」
まさかこんな所で辱めを受けるとは。桜は桜で楽しそうだし、由姫はなぜかうらめしそうに見ている。
「先輩はやっぱり‥‥‥」
「話を戻そう!!」
このまま話が脱線しすぎるのはよくないし、そもそもこんな話をするために俺達はここにいるわけではない。
決して自分の都合が悪くなったから話を逸らしているわけではない。
「まずは単純にエルフ達を信用してもいいかってことだけど、桜と由姫はどう思う?」
「あたしはティナさんは信頼してもいいと思います」
「由姫はどう思う?」
「私も桜の意見に賛成だ。少なくともエルフ達の中でティナは信頼できる」
「俺もそう思う」
「空さんもですか?」
「あぁ。俺はエルフの中でもティナだけは信用してもいいと思う」
他のエルフのことを信用するのは時期尚早だが、ティナだけは信用してもいいだろう。
それだけティナは俺達のことを考えて行動してくれているように見えた。
「あたしもそう思います」
「私もだ」
「それにあのクマちゃん達も何かあった時、きっと助けてくれると思います」
「確かにあの可愛らしい子熊達が私達を裏切ることなんて考えられない」
「まぁな」
あの子熊達がどう活躍するか、全く思いつかないけど。
少なくとも俺達と一緒には行動してくれるだろう。
「ティナさんのお父さんはどう思いますか?」
「あの人には要注意だな」
正直何を考えているかわからない。
もしかすると、俺達の敵に周る可能性があるので油断はできない。。
「やっぱり先輩もあの人のことは読めないか?」
「読めないな。あの人はエルフ族のトップだ。何をしてくるかわからない」
それこそ、エルフ族の利益を考えて行動するだろう。
そうなると俺達を助けるより、倒すことを優先するはずだ。
「この後あたし達ははどうするつもりですか?」
「できればここに少し滞在したいな」
「滞在ですか?」
「そうだ。俺達はこの世界のこと何もわかってないだろう?」
「だからここで情報収集をするってことか」
「そうだ」
もっと色々なことを俺達は知る必要がある。だから、ここのエルフ達に色々と聞いた方がいいと思う。
そしてそれを日向達と共有して対策を立てる。
桜達と話していて、そうした方がいいと思った。
「私も賛成だ」
「由姫ちゃんも?」
「あぁ。ここでしか手に入れられないスキルもあるだろう。それも教えてもらった方がいいのかもしれない」
「それは魔法のこと?」
「そうだな。魔法もそうだが、武器の強化もある」
「ティナが言っていた鍛冶屋の件だな」
「あぁ。特に先輩の武器は火力が弱いだろう。もし強化に成功すれば、1人で戦える力を得ることができる」
「1人で戦う力か」
今まで他人だよりだった俺にはなかった力だ。
誰にも頼らないで戦える力。もしそんな力が手に入るなら絶対に欲しい。
「そしたらエルフ達のことは様子見で、今は情報収集とあたし達の力を強くすることに集中しましょう」
「そうだな」
それが1番いい。日向達には悪いが、今後のことを考えるとこれが1番いい方法だろう。
「それじゃあそろそろ私は部屋に戻る」
「わかりました」
「桜は部屋に戻らなくていいのか?」
「はい」
「えっ!? 桜はここで寝るの!?」
「はい。あたしはここで寝るつもりですよ」
「嘘!?」
「嘘じゃないですよ」
真剣な桜の顔を見て、本気で言っていることが伝わってきた。
「何で俺と一緒に寝たいんだよ?」
「これは空さんの為でもあります」
「俺の為?」
一緒に寝ることが何で俺の為になるんだろう。
桜と寝ることで俺に何のメリットがあるんだ?
「空さんって、最近夜うなされてますよね」
「何でそのことを知ってるんだよ?」
「だって空さんの部屋を朝覗いた時、いつもうなされてましたから」
どうやら俺が寝ている時、声を出してしまっていたみたいだ。
「あたしが一緒にいれば、ちゃんと寝れると思いますよ」
「でも、倫理的な問題が‥‥‥」
「倫理的な問題って何ですか? だってあたし達付き合ってるんですよ」
「くっ!!」
痛い所を突かれた。そこまで言われると反論できない。
「由姫は‥‥‥っていつの間にいなくなってるんだ!?」
いくら部屋を見回しても由姫の姿がない。
どうやらとっくにこの部屋から出て行ってしまったらしい。
「空さん」
「うっ!?」
「あたし達付き合ってるんですから、いいですよね?」
桜が迫ってくる。由姫がいない以上、俺には何もいう事ができない。
「わかった。今日は一緒に寝よう」
「やった!」
喜ぶ桜を横目に見て何もいう事ができない。
それに俺が桜に何もしなければいい話だ。別に一緒に寝て何も問題はない。
「それじゃあ一緒に寝ましょう」
「そうだな」
その後俺は桜と一緒にベッドに入る。
その日の夜はいつもとは別の意味で眠れないのだった。
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