ティナの本音
各々の部屋の場所を確認した後、全員で俺の部屋までやってきた。
俺と桜はベッドに腰かけ、由姫とティナは備え付けの椅子に腰かけるのだった。
「わざわざ時間を作ってくれてありがとう」
「いえいえ、ティナさんの為ならあたし達はちゃんと時間を作りますよ」
「別に聞きたいことがあれば、さっき聞いてもらえれば何でも答えたんだけど?」
「私個人の質問になるから、お父さん達に手間を取らせたくなかったの」
ティナの個人的な質問か。一体どんな質問が来るのだろう。
「それで、俺達に聞きたいことってなんだ?」
「私が聞きたいのは貴方達のことよ」
「俺達のこと?」
「そうよ。お父さん達といた時に貴方達の世界のことはわかったけど、貴方達のことを私は知らないの」
「つまりティナは俺達のことが知りたいってことか」
「そういうことよ」
俺達のことを知りたいか。そういう質問をしてくるのはティナらしいな。
「私達のことを知りたいか」
「まず何から話せばいいんですかね?」
「できれば、貴方達が私達と出会うまでの話が聞きたいわ」
「ティナと会うまでの経緯か」
そのことを話すと結構長くなるんだけどな。
長いだけならいいが、あまりいい話ではないのでティナが気分を害さないか心配になる。
「どうしたの、空? そんなに神妙な顔をして?」
「いや、何でもない」
「空さんはもしかして学校での話をするのを躊躇っているんですか?」
「まぁな」
聞いていても気分が良くなる話でもないし、俺自身もあの時のことを上手く話せる自身がない。
「別にいいんじゃないか?」
「由姫?」
「学校でのことを先輩の口からティナに話すことに意味があるように私は思うんだ」
「私もせっかくだから空の口から聞きたいわ」
「わかった」
そこまでいうなら仕方がないな。俺の口からでいいなら、そのことを話そう。
「まずどこから話そうか」
「学校の所でいいんじゃないですか? 由姫ちゃんと出会った」
「そうだな。まずはそこから話そうか」
学校は由姫と出会った場所だ。
それに俺とフランシスが戦った因縁の場所でもある。
「学校? それって学び舎のこと?」
「あぁ、そうだよ。学生達の学び舎が学校っていう所だ」
「そう言った施設は私達の町にもあるわ」
「エルフの町にも?」
「そうよ。まだ若いエルフ達が勉強するところとして開いてるの」
エルフの町にもそう言った施設があるのか。
その辺りはどの世界も同じみたいだな。
「その学び舎に空達はいたの?」
「そうだ。その学校から俺達は命からがら逃げだしたんだよ」
「どうして? 何があったの?」
「俺達のいる学校が、魔王軍四天王のフランシスに襲われたんだ」
あのことを俺はあまり思い出したくない。
意気揚々とフランシスに戦いを挑んだ人達が次々と倒れ、血の海に沈んでいった。
それだけではなく、校舎内までいた人達までやられていき最後は梓まで失ってしまった。
もうあんな経験は2度としたくない。
「その人って自分のことを本当にフランシスって名乗ってたの?」
「あぁ。自分は魔王軍の四天王、閃光のフランシスって言っていた」
「だから空はフランシスのことを知っていたのね?」
「そうだ」
「ティナさんはフランシスのことについて何か知りませんか?」
「そうね‥‥‥」
顎に手を当て、考えるしぐさを見せるティナ。
必死に何かを思い出そうとしているように見えた。
「私が知ってるのは史実だけだし、さっきのお父さんが言っていた通りフランシスは勇者に倒されたって言ってたわ」
「勇者に倒されたか」
「もっというと、魔王は倒されたし側近の四天王は壊滅したとも聞いてるけど」
「壊滅したのか」
だったらあそこにいたフランシスは一体誰だったのだろう。
「でも、本人は魔王軍四天王って言ってたんですよね
「そうだな。あいつが名乗った時に確か‥‥‥あっ!?」
「どうしたんですか? 空さん」
「いや、そういえばフランシスが名乗る時に何か言ってたな」
あの時フランシスが名乗りを上げた時、何か違和感があった。
それは一体なんだったっけ。思い出せ。これはきっと重要なことだぞ。
『我は元魔王軍四天王が1人、閃光のフランシスだ』
「あいつ‥‥‥自分で元魔王軍の四天王って言ってた」
「そうなんですか?」
「あぁ。きっと魔王軍が壊滅しているのを知っていたから、そう名乗ったんだ」
俺があの時感じた違和感はそれだったのか。だからフランシスはそう名乗ったのか。
「フランシスの目的は何でしょうか?」
「魔王軍の復活としか考えられないわね。きっとそのメンバーを探してるんじゃないかしら?」
「なるほどな。だからあいつは八橋を攫っていったのか」
もしフランシスが魔王軍を再考しようとしているなら、その計画を止めないといけない。
八橋もその計画に入っているなら、絶対に何とかしないと大変なことになる。
「でも、おかしいですね」
「どうした、桜?」
「もしフランシスが魔王軍の再考を考えているのなら、なんで空さんを攫わなかったんですか?」
「そうだな。先輩は魔王の後継者と呼ばれてるんだ。なぜ先輩を連れて行かなかったんだ?」
桜と由姫が言っていることは間違っていない。もし本当に魔王軍を作るなら、俺を連れて行くのが効率的だ。
「どういうことだ? フランシスは何を考えてる?」
あいつが何を考えているか全くわからないが、何かを企んでいることは間違いない。
「あいつの企みを防がないとな」
「そうですね」
「あぁ、私達であいつを止めよう」
俺達の目的は決まった。後はそれを実現するためにどう行動をするかだ。
「貴方達はこれからどうするつもりなの?」
「俺達はこれからデパートに行く」
「デパート? その建物がどういった所かわからないけど、何しに行くの?」
「俺達の仲間に会いに行こうと思ってる」
日向や悠里達がいると思われる場所。俺達が目指す次の場所はそこだ。
「貴方達の他に仲間はいるの?」
「もちろんいる。あいつ等は俺の大切な仲間達だ」
今まで一緒に行動してきた日向や悠里、それに桜の両親。
俺の大切な人達がそこにいるはずだ。
「空って仲間思いなのね」
「そんなことない。俺ほど薄情な人はいないだろう」
「私はそう思わないけど?」
「それはティナが俺の表面しか見ていないからだ」
俺の周りは皆俺のことを過大評価しすぎだ。
桜にしても由姫にしても、皆俺のことを評価しすぎている。
「本当に空はそう思ってるの?」
「当たり前だ」
「へぇ~~~」
「何だよ?」
「別に。貴方は自分のことを過小評価しているみたいだけど、そっちの2人はそう思っていないらしいわ」
ティナが視線を向ける先、その先には頬を膨らませて不満そうな姿の桜がいた。
「空さんは自分がどう思っていても、凄く優しい人だと思います」
「そうだぞ。先輩は誰よりも仲間思いだ」
「信頼されているじゃない、貴方」
桜も由姫も余計なことを言うなよ。ティナが俺の方を見て薄ら笑いを浮かべているだろう。
「私も決めたわ」
「何を決めたんだ?」
「私もあなた達と一緒に行動するわ」
「なんで!?」
「だって私は貴方達の街に行ったことないし、道案内役が必要なの」
「自分の頼りになる人と一緒に行けばいいだろ?」
「嫌よ。貴方達ほど信頼できる人はいないし何より‥‥‥」
「何より?」
「あなた達といると退屈しないからよ」
「そんな理由で!?」
そんなしょうもない理由で俺達についてくるのかよ。
もっと他にいい理由がなかったのか?
「私は魔法も使えるし、貴方達の足手まといにはならないはずよ」
「魔法!?」
「ティナさん、魔法が使えるんですか!?」
「えぇ。エルフ族だったら、普通に使えるわ」
確かに魔法があれば便利だ。今までよりも戦略の幅が広がり、戦いの幅も広がる。
「先輩、私はティナと一緒に行動した方がいいと思う」
「由姫」
「あたしも賛成です。魔法使いがいるのは心強いですから」
「桜まで」
「貴方はどうなの? 私と一緒に行動したくないの?」
ティナも含めて全員の真剣な視線が俺に向く。
そんな顔をされたら、俺の答えは1つだけだ。
「全員が同意してるんだ。俺に断る権限はない」
「「「やった!!」」」
桜達に押し切られる形で、俺達の旅の仲間になることを許可してしまう。
「さすが空さんですね」
「そうだな。先輩は器が広い」
別に器が広いわけではなく、全員に押し切られただけなんだけどな。
守るものは増えたが、桜や由姫と同様ティナのこともしっかりと守らないといけない。
「それじゃあ明日は皆で鍛冶屋に行きましょう」
「鍛冶屋!?」
「腕のいい人がいるから、その人に武器を見てもらいましょう。もしかしたら自分の武器を強化してもらえるかも」
「武器の強化って本当にできるのか?」
「もちろん。あの人に頼めば大丈夫よ」
もしそれが本当なら、願ってもないことだ。
俺の武器の火力が圧倒的に低いので、それを強化できるなら強化してほしい。
「空は武器の強化に興味があるの?」
「当たり前だ」
「それなら決まりね。まずは明日武器の強化に行きましょう」
ティナの思わぬ申し出だったが、俺にとっては千載一遇のチャンスだ。
これで俺の戦力が少しでも上がれば、桜や由姫の負担も軽減される。
「よかったですね、空さん」
「あぁ」
「あっ、もうそろそろ夕食の時間だからリビングに行きましょう」
「わかった」
「きっと今日はご馳走ね」
「ご馳走!?」
「由姫、はしたないぞ」
相変わらずご飯に対して人一倍の執着を見せるんだな。
こういう所でブレない所は由姫らしい。
「じゃあ行きましょうか」
「あぁ」
ティナに促され、俺達はリビングへと降りていく。
リビングではカレンさんが、たくさんの料理を作って俺達のことを待っていてくれるのだった。
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