部屋の中の少女
「どうやら私達は本当に空君達の世界に来てしまったようだな」
ラックスさんは深刻そうな表情で言う。
こうして改めてお互いの世界のことについて意見交換するにつれて、現状とんでもないことが俺達の身の回りで起こっていることがわかった。
「お父さん、それじゃあ私達は空達のいる世界に来たってこと?」
「そういうことになるな」
ティナは困惑しており、ラックスさんは何かを考えている。
その様子から察するに、今後の方針を考えているように見えた。
「私はこれから出かけてくるから、ティナはそちらの客人を部屋に連れて行ってくれ」
「わかったわ」
「カレン。私はこれから会議をするので、帰りは遅くなる。だから夕食はいらない」
「わかりました。気をつけていってらっしゃい」
「あぁ、行ってくる」
それだけ言い残しティナの父親は部屋を出て行ってしまう。
「妙に慌てた様子だったな」
「俺達が話したことをいち早く周りと共有したいんだろう」
俺がラックスさんの立場だったら、絶対にそうする。
結界が張ってあるとはいえ、不測の事態が起こった時できるだけ早く物事を対処しておかないと後々大変なことになるからだ。
「ティナさんのお父さんはどこに行ったんですか?」
「町の商工会議場に行ったんだと思う」
「商工会議場?」
「そうよ。そこでエルフの代表達が話し合いを行って、これからどうやって動くか決めていくの」
「つまり俺達の世界でいう所の議会制度みたいなものか」
「それって偉い人達が集まって話し合いをするってことですよね?」
「そうよ。お父さんはきっと貴方達の話を聞いて、これから私達エルフがどのように動くか対策をたてにいったんだと思う」
そのことは予想できた。となるとその決定に対して、俺達もどのように動いていくか考えないとな。
「一旦この話は置いておきましょう。まずは貴方達を部屋に案内するわ」
「ありがとうございます」
「それじゃあついてきて」
「はい」
「あっ、そうだわ」
「どうしたの? お母さん?」
「ごめん、ティナちゃん。ついでにクルルちゃんの様子も見てきてくれない? あの子、朝ごはんを食べてから1度も顔を見せてなくて」
「しょうがない子ね。わかったわ。様子を見て来ればいいのね」
「ありがとう、ティナちゃん。クルルちゃんのことをよろしくね」
カレンさんに見送られ、俺達は部屋を出た。
部屋を出たが、俺の頭の中にはある疑問が浮かんでいた。
「ティナ、さっきカレンさんと話していたクルルって誰のことだ?」
「クルルは私の妹よ。まだ生まれて間もないんだけど、部屋に引きこもって殆ど出てこないのよ」
いわゆる引きこもりというやつか。部屋からもでてこないということは、よっぽど酷い部類に入るのだろう。
「クルルちゃんは何歳ですか?」
「今年4歳になったばかりね」
「4歳ってまだ子供じゃん」
「そうなの。凄い人見知りってこともあるけど、本が好きだから基本部屋でずっと本を読んでるか、勉強をしてるのよね」
「部屋の外に出ることは全くないんですか?」
「基本食事の時ぐらいかな。後はライトとムーンの散歩の時しか部屋から出てこないの」
その話を聞いていると、あんまり引きこもりでもない気がしてならない。
人見知りということは本当っぽいけどな。
「さて着いたわよ」
ティナに連れてこられたのは2階の部屋だった。
その部屋の前に立つと、ティナは何度かノックをする。
「クルル、クルル起きてるの?」
部屋を何度もノックするが出てこない。
出てこないどころか、返事が全くない。
「本当にこの部屋にいるんですか?」
「えぇ、クルルは大抵部屋にいるからたぶんこの中にいると思う」
「でも、その割には反応がないな」
由姫の言う通りだ。これだけ反応がないと死んでるんじゃないかとさえ思う。
「クマクマクマ」
「グマグマグマ」
「ガタっ」
音がなったと思ったら扉が少しだけ開く。その間から子熊達が中へと入っていく
「おい」
「いいのよ」
2匹の小熊が中に入ったかと思うと、その扉は閉まってしまう。
まるで子熊達を中に迎える為に、扉を開けたかのようだった。
「前にも話したと思うけどあの子熊達は、元々クルルが見つけてきたのよ」
「そういえばそんなこと言ってたな」
「そうなの。この前私が無理やり外に出したんだけど、その時に拾ってきたの。それからあの子熊達はクルルに懐いちゃってね。クルルもあの子熊達だけは気に入ってるの」
「なるほどな」
だからにあの小熊達だけすんなり中に入れたのか。
「それよりも、もう少しあなた達と話したいんだけどこの後いいかしら?」
「大丈夫だけど、先に部屋に案内してほしい」
「わかったわ。それじゃあ部屋に案内するから、その後に話しましょう」
俺達はティナにそれぞれ部屋を案内される。
その後、俺の部屋に集まり話し合いを始めるのだった。
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