勇者の従者
「まずは自己紹介からさせてもらおう。私はエルフ族族長のラックス・ラインハルトという。そこにいるティナの父親だ」
目の前にいるティナの父親、ラックスという男はそのように名乗った。
「それで、空さんのスキルはどんな効果があるんですか?」
「少女よ、そんなに焦らないでくれ。そのことを話す前に、まずは君達の名前を聞かせてほしい」
「すいません」
「確かにせっかくティナの父親が名前を教えてくれたんだ。次は俺達の番だな」
せっかくラックスさんが自己紹介をしたんだから、俺達も自己紹介をしないといけないな。
「俺の名前は空。山村空といいます」
「あたしは木内桜です」
「私は前野由姫だ」
「なるほど。名前はわかった。どうやら君達は3人パーティーなのだな」
「何故俺達がパーティーを組んでいることを知っている?」
「それは君達の様子を見ればわかる。君達の仲のいい様子を見れば、それぐらい簡単に察しがつく」
俺達の様子だけでそんなことがわかるのか。いや、そんなはずはないだろう。
パーティー機能はステータスを見ないとわからないはずだ。それを簡単に見抜くってことはこの人には何かがある。
「俺達がパーティーじゃないって言ったらどうしますか?」
「懲りないようだね。それならパーティを組んでいるという前提で話を続けるだけだ」
なるほど。つまりこの人は俺達がパーティーを組んでるって確信があるわけだ。
「ラックスさん凄いですね。あたし達のことなんて何でもお見通しです」
「そうだな。確かにラックスさんに俺達のステータスに関しては嘘はつけないみたいだ。
「どういうことですか?」
「ラックスさん、貴方はステータスの鑑定スキルを持ってますね?」
俺がかまをかけると一瞬だが眉毛がピクリと動いたのがわかった。
そのしぐさもほんの一瞬だが、ラックスさんの表情をよく見ていた俺だからわかったことだ。
「何のことだかわからないな」
「そしたらこっちはあなたがそのスキルを持っていることを前提にお話しさせていただきます」
「食えない人だ。まだ子供なのに、どうしてそんなに肝が据わっているんだろうな」
「色々な経験をしてきたので」
「どうやらここにくるまで大変だったようだな」
「はい」
学校やデパートでは自分の想定外の出来事が色々と起こった。
俺にとって思い出したくもない経験だが、そのおかげでどんな場所に立たされてもある程度なんとかできる度胸だけはついた。
「空君の言う通りだ。私は鑑定スキルを持っている」
「やっぱりそうですか」
そうでなければこうも簡単に俺達がパーティーを組んでいること等見破れることはないだろう。
ついでに言うとこの人には俺達が持っているスキルも見破っているのだろうな。
「このスキルは基本的に使わないようにしているが、今回は使わせてもらった。どうやら君達は特殊なスキルを持っているみたいだな」
一瞬ラックスさんが桜のことを見て、目を見開いた気がしたが気のせいだろう。
ラックスさんは桜がよほど気になるのか、しきりに桜の方に視線を向ける。
「あたしに何かあるんですか?」
「いや、別に何でもない」
何でもないわけがない。現に目が泳いでいる。
だけどそのことをここで追及しても話が進まないので、今はそっとしておこう。
「どうやら君達がここに来たことは偶然ではないようだ。聞きたいことがあれば何でも聞いてくれ」
「そう言ってもらえるとありがたい」
「その代わりに、私の方からも色々と質問させてもらう」
「わかった」
これである程度この人と腹を割って話すことができる。
ここからが本番だ。
「まずは、俺が持つ勇者の従者のスキルについて説明をしてほしい」
「勇者の従者のスキルか。私が知る限りだが、そのスキルはこの世界で入手できる最強のスキルの1つだ」
「最強のスキル」
この効果も何もわからないスキルが、この世界の最強スキルの1つだって。
本当にそんなことがあるのか?
「でも、空さんはこのスキルの恩恵を受けていません」
「そうだろうな」
「えっ?」
「だってそのスキルは君に対しての恩恵は殆どないのだから」
一体どういうことだ? 自分に恩恵のないスキルなんて、そんなスキルが存在しているのか?
「そんなスキルなんてあるんですか?」
「ある。現に空君が持っているスキルがそうだ」
ここまではっきり言われると驚いてしまう。
ラックスさんの目はいたって真剣。嘘を言っているようには見えなかった。
「一体このスキルにはどんな効果があるんだ?」
「自分に恩恵のないスキル。ここまで言えば、鋭い君ならわかるんじゃないか?」
ラックスさんが言ったことを頭の中でまとめてみる。
スキルの中でも最強ランクのスキル。それでいて自分には全く恩恵がない。
その情報をまとめるとある1つの答えにたどり着く。
「もしかしてこのスキルは仲間を強化するスキルなんじゃないか?」
「正解だ。色々な効果があるが、このスキルを保有する大きなメリットは、自分のパーティーメンバーに勇者スキルを付与することができる」
「何だって!?」
勇者スキルってことは日向と八橋と同じスキルじゃないか。
あのチートスキルをパーティーメンバー全員に付与できるなんて、凄いスキルだ。
「空さん、勇者スキルって日向先輩が持っていたスキルですよね?」
「そうだな」
「もしかして、空さんと一緒のパーティーになってからあたしが凄く調子がよかったのも」
「空君が持つ勇者の従者スキルのおかげだ」
だから山でウォールベアー2体と戦っていた時、桜があんなに強かったのか。
その謎が今やっと解けた。
「私がフランシスと戦ってる時、互角に戦えるようになったのもそのせいか」
「そのようだな」
確かにフランシスと戦っている最中、俺は由姫とパーティーになった。
あの後由姫がフランシスと互角以上に戦えたのも、それが原因だろう。
「話の途中で悪いが、そのスキルの凄いことはそれだけじゃない」
「他にも何かあるんですか?」
「そのスキルはスキルを持つものとの関係性で強くも弱くもなる」
「どういうことだ?」
「つまりそのスキルを持つものと親しければ親しいほど、スキルの力は強くなり勇者スキルの恩恵を受けやすい」
「逆に関係が悪ければ悪いほど‥‥」
「スキルの恩恵が受けられなくなるな」
「そんなスキルがあるなんて知らなかった」
今までのスキルは自分自身の能力を強くするものしかなかった。
それがまさか自分ではなく他人を強化するものがあるとは正直俺も驚いた。
「驚いている所悪いが、このスキルの効果はそれだけじゃない」
「まだあるんですが?」
「あぁ。その他にも、パーティー機能で使用できる共有スキルスロットの増加もあるらしい」
「スキルスロットの増加!?」
「眉唾ものの話だけどな。この話は私も他の人から聞いただけだから、本当かどうかわからない」
「もしこの話が本当なら‥‥‥」
以前杉田達が桜を自分のパーティーに勧誘した時、話していた内容に嘘がなかったってことだ。
俺が勇者の従者のスキルを持っているから、共有スキルスロットが多かっただけということになる。
「空さん、杉田君達の話は間違ってなかったんですね」
「そうだな」
「その様子だと、共有スキルスロットは通常より多いのだな?」
「ラックスさんの話を聞く限り、全て本当のようです」
その話が全て本当だとすると、俺はとんでもないスキルを保有していたことになる。
今まで全く使いどころもないスキルだと思っていたが、とんでもないスキルだったんだな。
「1つ質問してもいいか?」
「別にいいぞ。少女よ、君の名前は‥‥」
「由姫だ。今の話には1つ疑問が残る」
「何が疑問だ?」
「もし私達に勇者のスキルがあるなら、何故私達のステータスに表示されない」
「それは隠しスキルだからだ。鑑定スキルの中でも、特別な鑑定スキルを持つものしか鑑定できない」
「特別な鑑定スキル?」
「そうだ。例えば魔王軍の四天王レベルなら簡単に見破ることができるだろうな」
そうなるとフランシスが俺のスキルを看破したのも納得がいく。きっとあいつも桜や由姫の隠しスキルが見れたのだろう。
もしかするとそれを見て、俺のことを後継者と名指ししていたのかもしれない。
「もう1つ質問してもいいですか?」
「すまない。君の名前は確か‥‥‥」
「桜です。空さんのパーティー申請欄に全く人が出なかったのも、勇者の従者のスキルが原因なのですか?」
「たぶんそうだろうな。あのスキルは特定の条件を満たさないと、パーティー申請ができないらしい」
「特定の条件ですか?」
「その条件は何かわからないのか?」
「悪いが、私もその条件まではわからない。だけど、そのスキルを持つものがいるパーティーに入れるのは選ばれた者だけだ」
「選ばれた者?」
「そうだ。その限りある選ばれた者しか、パーティーメンバーに入れないと聞く」
どうやらこのぐらいしか情報がないようだな。さすがにこの物知りなエルフでもわからないことがあるらしい。
「ありがとう、ラックスさん。もう大丈夫だ」
「いいんですか、空さん?」
「あぁ。これだけ情報が揃っていれば充分だ」
今まで自分が知らなかったスキルの情報が知れた。
それが自分以外の仲間を守るスキルだったってことが俺にはうれしい。
「助けられてばかりだった俺でも、少しは皆の役に立てていたのか」
ラックスさんの話を聞いてそう思えた。
「別にそんなこと言わなくても、空さんは皆の役に立っていますよ」
「そうだぞ。先輩は私達にとっての司令塔、なくてはならない存在だからな」
「ありがとう、2人共。そう言ってもらえると俺も嬉しい」
俺のことを信頼してくれる2人の為にも今まで以上にがんばらないとな。
今までは頼りになる日向がいたが、今はその日向がいない。
日向がいない以上、その分俺が2人のことをしっかりと守らないといけない。
「俺がしっかりしないとな」
決意を新たにした。
「ちょっと、勝手に話を進めないでよ」
「別にいいだろ? ティナには関係ないんだから」
「確かに関係はないけど」
「もしかして、話に入れなくてちょっと拗ねてるのか?」
「そんなことあるはずないでしょ!!」
ティナがこんなに怒っているということは図星ということだ。
少しからかってみたが、ここまで過剰反応するなんて。ティナにも意外と可愛い一面があったんだな。
「クマーーー」
「グマーーー」
そして子熊達はというと話がつまらなかったのか、その場で寝ていた。
お腹が満たされたから昼寝をするなんて、相変わらずお気楽な熊達だ。
「そういえば空さんが持っている固有スキルですが、以前は誰が持っていたんですか?」
桜が何気なく質問したその一言。その何気ない一言でこんなことになるとは露にも思ってなかった。
「そのスキルを持っていた人の話を聞きたいのか?」
「はい」
「そうだな。せっかくだから聞きたい」
「それなら話そう。この能力を有するものは、私達の世界では後継者と呼ばれている」
「後継者?」
その呼び方聞いたことがある。
「先輩、その言葉は学校であのフランシスが言ってなかったか?」
「そうだな」
俺のことをしきりに見て、後継者と呼んでいたあいつの顔が思い出される。
「一体何なんだ。俺は何の後継者何だ?」
フランシスがしきりに俺に言っていた言葉。
それが何を意味するものなのか、凄く気になった。
「魔王」
「えっ?」
「君は‥‥‥魔王の後継者だ」
目の前にいるラックスさんは、真剣な目で俺にそう告げたのだった。
勇者の従者スキルの簡単な説明
①パーティーメンバーに特別スキル【勇者】を付与
②その人との信頼関係によって、【勇者】スキルの恩恵が変わる
③共有スキルスロットの追加(通常1つ、空は4つ)
④パーティー申請には制限がある
です。現時点では以上になりますが、これからの作中で明らかになるものもあります。
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