エルフの町 マリーナ
「ここがエルフの町、マリーナか」
「大きな町ですね」
中世ヨーロッパの町並みを思わせる外観に、町の周りには柵が張り巡らされている。
「先輩、なんで町の周りに柵が張り巡らされているんだ?」
「あれはきっと外敵から町を守る為だろう」
柵がそんなに高くないのは、土地を拡大したい時に取り外しが簡単にできるからだろう。
レンガの壁を作っていないということはそういう事だ。
「空は鋭いわね。おおむねその認識で合ってるわ」
「そうだろう」
「正直あんな柵じゃ、時間稼ぎにしかならないけどね」
「確かにな」
それでもあの柵を立ててるということは、時間稼ぎさえできれば自分達の力で何とかできるという自信があるのだろう。
どんな奥の手が飛び出すのかわからないが、今はそのことを考えるのはやめよう。
「町にある建物は全て木かレンガで作られているのか」
「そうね。基本的に私達が魔法を使って立てているの」
「魔法で家が建てられるんですか!?」
「魔法だけではもちろん建てられないわよ。ただ重いものを運んだり、重い柱を立たせたりする時に魔法を使うわ」
「なるほどな。効率のいい魔法の使い方をしているな」
「それほどでも」
魔法を上手く使っての建築技術か。もしこれが俺達の世界の建築技術を取り入れたら、とんでもないものだできるんじゃないか。
「どの建物もすごいですね」
「立派な家屋だ」
「町の外観を眺めているだけじゃなくて、早く町まで行きましょう。私の家に案内するわ」
「そうだな。ここで立ってるだけじゃ意味がない」
「それじゃあ出発しましょう!」
「クマ!」
「グマ!」
戦闘を歩くティナの後ろについていく。
町の中に入るとたくさんのエルフ達であふれている。
「皆楽しそうですね」
「そうだな」
町の至る所で笑顔があふれている。皆無理やり笑わされている感じもない、自然な笑顔だ。
「マリーナは元々他国との貿易で栄えている国だからね。だから特産品とか色々とあるのよ」
「へぇ~~」
「どんなものがあるんですか?」
「色々ね。海が近いから漁業もしていたし、農業ももちろんやってたわ。それに洋服とかも作って外国に売ってたわ」
「色々とやっているんだな」
「そうね。私のお父様が色々な事業を推進してくれたからその恩恵ね」
話を聞く限り、ティナの父親はこの町でかなりの影響力があるように見える。
それもそうか。エルフ族族長と言っているぐらいだから、かなり有能な人物なんだろう。
今から会うのが楽しみだ。
「先輩! 見てください。あそこに露天があります!」
「この町は露店が主流なのか?」
「半々って所ね。屋台もあればお店もちゃんとあるわよ」
「それにしては数が多いな」
俺達が今歩いている両サイドには様々な露店が並んでいる。
まるで夏祭りの道を歩いているみたいだ。
「ここはメイン通りだから露店が多いのよ」
「そうなのか?」
「うん。もう少し裏通りに行けば人も少なくなるし、色々なお店もあるわ」
メイン通りは露店中心で、裏通りが通常のお店があるってことか。
間違ってはないが、裏通りのお店は経営状況は大丈夫なのか心配になる。
「クマ!」
「グマ!」
「どうしたんですか? ムーンちゃん」
「ライトも。そんなに暴れると危ないぞ」
「一体どうしたんだ?」
「はぁ、わかったわ。桜に由姫、悪いけど2匹を離してあげて」
「本当にいいんですか?」
「まぁ、しょうがないわね」
ティナに言われて桜と由姫が子熊達を地面に降ろす。
降ろした瞬間、いきなりどこかへと走り出した。
「ちょっと、クマちゃん達どこへ行くんですか?」
「勝手に行動すると危ないぞ!!」
「クマ!!」
「グマ!!
子熊達は俺達を置いてどこかへと向かう。
4足歩行で走っている所を鑑みても、急いでるように見えた。
「桜、ライト達のことを追おう」
「大丈夫よ。子熊達は放っておいて」
「本当にいいんですか?」
「いいの。だってあの子熊達が行く場所はわかってるから」
「それは本当ですか!?」
「本当よ。ついてきて」
桜と由姫が驚愕する中、俺達はティナの後をついていく。
「なんかあの2匹の行き先が俺にもわかってきた」
「先輩、それは本当か!?」
「あぁ、俺の予想が外れてなければな」
あくまで予想だが、高確率でそこにいる気がする。
たくさんある露店とさっきまで桜と由姫の膝の上で寝ていた子熊達だ。
場所はわからないが、きっとそういうお店にいるはずだ。
「着いたわ。あそこを見て」
ティナが指差す先、その露店には2匹の子熊がいた。
店の前でジャンプをして、何とか自分達がいることを必死にアピールしているように見えた。
「ティナさん、ここの露店って」
「そうね。おいしいお肉とお魚が食べられるお店よ」
「やっぱりな」
俺の予想通りだ。たぶんあの子熊達は飲食店の前にいると思っていたが、予想通りだった。
「空さんはよくわかりましたね」
「少し考えればわかることだ」
オーク達相手に頑張って戦って、先程桜と由姫の膝の上で十分な睡眠をとったんだ。
このお気楽な子熊達のことだから、そろそろお腹が減ってる頃だと思った。
「こんなにいい匂いがすれば、お腹を空かせた子熊達のことだ。きっとその露店に全力で向かうだろう」
「たしかにそうですね」
「よく考えれば、もうお昼の時間なのだな」
子熊につられて、由姫のお腹も可愛くなる。
あんなに俺達がドン引きする程大食いなのに、こんな可愛くお腹を鳴らすなんて反則だろう。
「クマ!!」
「グマ!!」
「あら? この子熊達ってもしかして、ラインハルトさんの所の」
「すいません」
「あら? ティナちゃんじゃない。やっぱりこの子熊達ってティナちゃんの所の?」
「はい」
「そうだと思ったわ。相変わらず可愛らしい子熊達ね」
頑張って飛び跳ねる子熊達を見て、露天にいたエルフの女性は笑っていた。
2匹が頑張って飛び跳ねるのを、微笑ましく見ているようだった。
「こら、ライトもムーンも大人しくする」
「クマ!!」
「グマ!!」
「こら、逃げないの!!」
2匹とも抵抗して、捕まえようとするティナの手から上手く逃げている。
捕まえようとするりと手から落ちる。これじゃあイタチごっこだ。
「ティナ、もしかしてその子熊達はこれが食べたいんじゃないか?」
お店にある肉と魚が串刺しに刺されている商品を指差す。
指差した瞬間、2匹の子熊の目が光った気がした。
「クマ!」
「グマ!」
「やっぱり、腹が減ってるのか」
2体の小熊がそれぞれ肉と魚の両方を指差している。
どうやらそれを食べたいらしい。
「もう、しょうがないわね。おばさん、この肉と魚の丸焼きを1串ずつもらっていい?」
「もちろんよ。いつもありがとうね」
ティナが懐から銅貨を出し、露天のエルフに渡した。
「はい毎度あり」
「ほら、よく噛んで食べるのよ」
「クマ!」
「グマ!」
受け取った串を手に取り、おいしそうに食べ始める子熊達。
ライトは肉でムーンは魚をそれぞれおいしそうにほおばっていた。
「おいしそうに食べますね」
「よっぽどおなかが減ったのだろうな」
それと同時に、由姫のお腹が再びなる。どうやら腹ペコなのは子熊達じゃないらしい。
「しょうがないから、ここでお昼ご飯を食べてから行きましょうか」
「すまぬ」
由姫以外の全員がその場で笑う。ひとしきり笑った後、エルフのおばさんが戻ってきた。
「もしうちの店で食べてくなら、今テーブルを用意したからそこで食べて行って」
「ありがとうございます」
「せっかくだからこの店で食べて行こうか」
「はい」
その後俺達はこの店のテーブル席に座る。
ひとしきり昼食を楽しんだ後、ティナの家へと向かうのだった。
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