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ティナ達の世界

「私達は元々いた所は住んでいた土地はイスカ大陸と呼ばれていたわ」


「イスカ大陸?」


「そう。イスカはエルドラン皇国っていう国が支配していて、私達エルフはマリーナ半島っていう小さな島に住んでたの」



 どうやら話を聞く限り、俺達の世界とは全く別の世界みたいだ。

 エルドラン皇国やマリーナ半島なんて土地、聞いたことない。



「そこにティナさん達の町があったんですか?」


「そうね。そこにエルフ族の人々が住んでいて、周りからはエルフの町って言われていた場所よ」



 言われていた場所ってことは、今その町はマリーナ半島にはないってことなのか。



「エルフの皆が何でこの世界に飛ばされたのかわからないか?」


「全くわからないわ。朝起きたら、よくわからない森に町ごと移動していたの」



 町ごと移動していたということは、建物まで全部別の場所に移動したのだろう。

 もしティナが話していた町がかなり大きいものであれば、この世界を統合した犯人は相当大掛かりな力を持っていることになる。



「他の魔族はどうしているかわからないんですか?」


「わからないわ。この世界に来てるのか、来てたとしてもどこで何をしているかわからない。オークを除いてはね」


「つまりはエルフの他の魔族もこの世界に来ている可能性があるってことだな」


「どちらかといえばその可能性が高いと思う」



 その話が本当だとすると、魔族によっては既に拠点を作っているだろう。

 あの時デパートを襲った後、オーク達が街に現れなくなったのはもしかすると街からかなり距離がある所に拠点があったのかもしれない。



「そういえば、ティナさんはどうしてこの街まで降りて来たんですか?」


「そうだ。ずっと自分の町にいた方が、今回みたいに危険な思いもしなかったんじゃないか?」


「それは私もずっといたかったけど、あそこでずっと引きこもっているわけには行かないでしょ」


「そうなのか?」


「そうよ。そもそも、私達は全く知らない別の土地にいるのよ。周りにどんなものがあるのか確認をするのが普通でしょ?」


「確かにティナの言う通りだな」



 見知らぬ土地に来て、探索をするのは普通のことだ。

 そうしないといつ誰から攻撃を受けるかわからないし、もしかするとその土地に住んでいる人が自分達と友好的な関係を築いてくれる可能性もある。



「だけど、1人で行くのは関心しないな」


「1人じゃないわよ。ちゃんとライトとムーンも一緒にいたわ」


「実際子熊が2匹いても、何にもならなかっただろ? 俺達が来なければ、オークに連れ去られていたんだぞ」



 実際あそこでライトは殺され、ティナはオーク達の奴隷にされていたはずだ。

 奴隷だったらまだいい。ティナは女だ。オーク達の慰み者になっていた可能性もある。



「でも結果的には、ムーンが貴方達を連れてきてくれたから‥‥‥」


「それは偶然そうなっただけで、運が良かっただけだ。ティナはもう少し考えて行動した方がいい」


「わかったわ」


「別に怒ってないからな。反省してくれればそれでいい」



 実際ティナも反省している様子だし、いい注意喚起になっただろう。

 これで次からは他のエルフと共に探索をするに違いない。



「由姫ちゃん、空さんお説教に見せかけてティナさんを口説いてます」


「あれがツンデレというものか。さすが先輩だ。女たらしの名は伊達ではないな」


「聞こえてるからな」



 桜と由姫の間で、また1つ誤解が生まれたらしい。

 別に俺は口説いてないし、ただ1人で探索するのをやめた方がいいって言っただけだ。



「俺はティナのことが心配だから、注意喚起しただけだからな」


「それを口説いているっていうんです」


「ナンパと一緒だな」



 酷い言われようだ。俺の彼女と後輩は、どうしても俺を軽薄な男認定したいみたいだ。



「でも、空さんのいい所を知る人が多いのはあたしも嬉しいです」


「確かにな」


「桜達が何を考えているのかわからない」



 下げてから上げる。桜も由姫も一体どういう考えで発言しているのかわからない。2人の方がツンデレじゃないか。

 それにそんないい笑顔で言われたら、憎まれ口の一つも言うことができないだろう。



「本当に貴方達がうらやましいわ」


「うらやましい?」


「いや、なんでもないわ。忘れて頂戴」



 慌てた様子のティナ。その表情はまるで照れ隠しをしているように見えた。



「でも、まさかあんなところにオークがいるとは思わなかったわ」


「ティナさん達の世界にオークはいなかったんですか?」


「いるのは知っていたわ。だけど、普段は私達とは別の所に拠点を置いてるからここにいないと思ったの。油断したわ」


「油断か」


「そうよ。オークは自分達以外の種族を奴隷にする風習があるの」


「それはオーク以外の全ての種族が対象になるのか」


「そうよ。実際私達エルフ族は希少価値が高いってことで、オーク以外にも人間の奴隷にさせられることもあるみたい」


「酷い話だな」



 確かにひどい話だ。だけどティナ達が住む世界では、それが普通だったのだろう。

 もしかしたらデパートでオークが人間を攫ったのも、その習性のせいかもしれない。



「人間やエルフを奴隷にする世界ってゲームや漫画の中だけだと思いましたけど、本当にそんな世界ってあるんですね」


「そうだな。俺達も気をつけないといけないな」



 学校を襲ったのがフランシスだったからいいものを、もしオークが襲ってきたらどうだっただろう。

 フランシス程強くないと思われるので、いい勝負になるかもしれない。だが、何人か奴隷にされて人質を取られた可能性も否定はできないが。



「でも、これでオーク達がデパートを襲ったことも説明がついたな」


「どういうことですか?」


「きっとオーク達もこちらに飛ばされてきたのはいいが、拠点に自分の種族しかいなかったんじゃないか?」



 もしかしたら他の種族は自分の種族いた拠点、もしくは別の所に飛ばされたのかもしれない。



「そんなことあるんですか?」


「あくまで過程だ。つまり奴隷不足に陥ったオークは新しい奴隷を作るために、この町を襲ったんだ」



 そして奴隷が充分に補充されたから、それから町を襲わなくなった。

 そう考えるのが妥当な考えだろう。



「それじゃあ、何であのオーク達は私達の町にいたのだ?」


「拠点が大きくなって奴隷が不足したか、それとも連れてきた奴隷が死んだからだろうな」



 そうでなきゃオークがここに来る理由もない。

 つまり連れていかれた人達は最悪死んでしまった可能性もある。



「もし、空さんの言っていることが本当なら悲しいですね」


「だな」



 もし悠里の母親がオークに連れていかれていたら、死んでしまっている可能性もあっただろう。

 そう考えると、本当に運が良かったんだな。



「次の質問をしてもいいか?」


「構わないわ」


「スキルについて聞きたい。これは一体どんな能力なんだ? 何故こんな力がある。ティナがわかる範囲でいいから教えてほしい」


「ごめん。スキルについては、私もわからないわ」


「わからない?」


「そうよ。これは私達の世界で、生まれた時から持っていたものだから」



 つまり生まれた時から、スキルというものがあったという事か。

 待てよ? そう考えると腑に落ちない点があるぞ。



「俺達はモンスターを倒して、スキルを取得したんだ。ティナの話だと生まれた時からついてるものだと聞こえるぞ」


「スキルは生まれた時から自分の中に潜在的に眠ってるものなの。それがモンスター等を倒すことによって覚醒するわ」



 そういうことなのか。つまり世界が変わった時、潜在的にスキルを取得したんだな。

 それでモンスターを倒したと同時に開花。今に至るわけか。



「スキルの能力についてはわかった。そしたら勇者の従者っていうスキルの能力はわからないか?」


「勇者の従者? ‥‥‥聞いたことがあるような、ないような」


「知っているのか?」


「う~~ん、どこで聞いたんだっけ?」



 くそ!! 思い出せないのか。重要なことなのに。

 学校でフランシスが言っていた言葉。桜と由姫が急に強くなった理由。

 それは俺が持つこのスキルに起因するというのに。



「お願いします。そのスキルは空さんが持っている謎が多いスキルなんです」


「私からも頼む。どんな些細なことでもいいから、教えてほしい」


「謎の多いスキルね」



 ティナは考え込むそぶりを見せ、やがて何かひらめいたように手を叩く。



「いいこと考えたわ」


「いいこと?


「もしかすると貴方達の質問に答えられるいい人を紹介できるかもしれない」


「本当か!?」


「その人はどこにいるんですか!!」


「落ち着いて。紹介できるって言っても、ここにはいないわ」


「ここにはいない?」



 一体どういうことなんだ? ティナは一体誰を紹介しようとしている?



「そうよ。私のお父さんに聞けば、もしかしたら貴方達の謎もわかるかもしれない」


「ティナのお父さん?」


「そうよ。あの人は600年ぐらい前から生きてるから、空達の疑問もきっと解消できるわ」



 本人はいいアイディアが浮かんだようだが、俺は唖然としていた。

 だって600年も生きているんだぞ。俺には600年後のことなんて想像できない。



「つかぬ事お聞きしますが、ティナさんって何歳ですか?」


「私? 私は251歳ね」


「251!?」


「俺達よりも年上だったのか」



 見た目は俺達と同じなのに、年齢は俺達のはるかに上だったらしい。



「本当に251歳なんですか? あたしや由姫ちゃんと同じぐらいに見えます」


「エルフはある一定の年齢になると、見た目は殆ど変わらなくなるから」



 なんだよそれ。不老不死と同じようなものじゃないか。

 永遠の命を手に入れたい人が聞けば、驚愕の表情を浮かべるんじゃないか?



「それよりも、貴方達は私達の町に行くの? 行かないの?」


「行く」


「即決ね」


「当たり前だろ?」



 少しでも自分のスキルのことがわかるなら、構わずに行くべきだろう。

 たとえどんな罠が待っていようと、ここに行くべきだ。



「いいんですか?」


「少しでもスキルのことがわかるなら行くべきだ」


「そうだな。何かあっても、私が2人を必ず守ろう」


「由姫も頼もしいことを言ってくれるな」


「先輩程じゃない」



 さっきのオークとの戦いといい、どうやら由姫は精神的にも一皮むけたように思えた。



「空さん!! あたしだって何があっても空さんを守りますからね」


「わかった。わかったからこっちを向くな。膝の上にいるクマが落ちるぞ!!」


「クマーー」



 さっきからやけに大人しいと思っていたら、この子熊達桜と由姫の膝の上で寝てやがる。

 リラックスした表情をして鼻提燈を膨らませながら寝るなんて、全くお気楽な奴等だ。



「そうと決まったら、ティナ。お父さんのいる所へ案内してくれ」


「えぇ、わかったわ」


「そうと決まれば出発だな」


「皆でエルフの町に行きましょう」


「クマ!?」


「グマ!?」



 こうして俺達はエルフの町へと行くことになる。

 俺達の大声に、子熊達が飛び起きて鼻提燈が割れるのだった。


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