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ティナ・ラインハルト

「貴方達は一体何者なの?」


「そっちこそ、名を聞くなら先に名乗るのが筋だろ?」



 目の前にいる女性は見た目はどう見たって人間。しかも外見は俺達と同じ年のようにも見える。

 ただ耳が人間よりも長い。その妖精のような美しい見た目から、ゲーム等でよく見るエルフのように見えた。



「そうね。人様の名前を聞くよりも、まずは自分から名乗るべきね」



 目の前の女性は咳ばらいをした。

 俺の予想に反して、聞き分けが良く意外と礼儀正しい人のようである。



「私の名前はティナ・ラインハルト。ラインハルト一族の末裔よ」


「ラインハルト一族?」



 あの女性はどや顔で名乗るが、そんな一族なんて俺は知らないぞ

 やがて俺の反応が芳しくないのを察したのか、ティナは怪訝な視線を俺に向けてくる。



「何で驚かないの?」


「驚くも何も、そんな一族のことなんて知らないし」


「えっ!? 私の家系って、由緒ある所なのに!? 何で知らないの!?」


「そんなこと言われても、知らないものは知らないし‥‥‥」



 よっぽどそのラインハルト一族っていうのは有名なのか?

 俺はそんな名前、1度も聞いたことないけど。



「私達のことを知らないなんて‥‥‥それに貴方、よく見るとへんてこな服を着てるわね」


「へんてこな服は余計だ」



 へんてこっていうくくりをするなら、ティナの方がへんてこな服を着ているだろう。

 俺達の服とは全然違う服装をしていた。



「もしかして貴方、どこかの蛮族出身なの?」


「蛮族じゃない!! 俺達はれっきとした日本人だ。それに服装のことを話すなら、そっちの方変じゃないか!!」


「何を言ってるのよ!? これはれっきとした私達の民族衣装じゃない。人間達はこの服を凄く欲しがっていたのに、なんで貴方達は欲しがらないのよ!!」


「欲しがるも何も、そんな服別にいらないし」


「何ですって!!」



 どうも話がかみ合わない。いきなりの喧嘩ごしの姿勢といい、人間のものと思えない耳といい、やっぱり普通じゃない。

 もしかしてこの少女は人間じゃないんじゃないか?



「確かティナって言ったな」


「何?」


「こんなこと聞くのは失礼かもしれないが、君は人間なの?」


「私は人間じゃないわ。エルフよ」



 やっぱりそうか。このティナという女性は人間じゃなくてエルフだ。

 人間じゃないならあの長い耳も説明がつく。



「そういえば、貴方の名前はなんて言うの?」


「俺は山村空だ。空って呼んでくれ」


「わかったわ、空。それなら私もティナって呼んで」


「わかった」



 お互いの呼び名は決まった。後は、聞きたいことを聞くだけだな。



「いきなり質問なんだけど、貴方は日本人って言ってたっけ? それってどこの国の人間なの?」


「どこの国って、俺達は日本っていう国の人間なんだけど」


「日本って国なんて今まで聞いたことない‥‥‥はっ!? もしかして!?」



 どうやらティナもやっと気づいたみたいだ。

 俺達が自分達の世界の住人じゃないことに。



「貴方達って、もしかしてこの世界の人間?」


「あぁ、そうだ」



 この世界の人間って言ってることは、きっとティナが住んでいる世界は全く別の世界なのだろう。



「『この世界』ってことは、ティナは別の世界から来たってことだな?」


「えぇ、そうよ」


「やっと手がかりが見つかった」



 この世界の謎。その鍵を握ってそうな人物にようやく出会えた。

 モンスターやスキルのこと、何より魔王軍のフランシスの話等色々聞けそうだ。



「空さん!! さっき倒れていたもう1匹のクマちゃんも起きました」


「えっ!? 空って、仲間がいたの!!」


「そりゃいるよ」



 じゃなかったら、あのオーク達相手に無謀な戦いなんてしない。

 ティナはさっきの俺達の戦闘シーンを見ていなかったのだろうか?



「空さん、この美人のお姉さんは誰ですか? ずいぶんと親しい間柄のようですね」


「いや、俺とティナは今さっき会ったばかりで」


「ティナ? もうお互いを名前で呼び合っているなんて。もしかして空さん、また浮気しているんですか?」


「いや、浮気じゃなくて‥‥この人は‥‥‥」


「浮気じゃなければ、またナンパでもしていたんですか?」


「だからナンパじゃないって!!」



 どうすればいいんだ? 全く話がかみ合わない。ティナについて説明したいが、どうすれば桜は話を聞いてくれる?



「そういえば、ライトは無事なの?」


「ライト?」


「グマーー」


「よかった、ライト。無事だったのね」



 勢いよくティナの胸に飛び込む子熊のライト。

 どうやら先程の子熊はティナが連れてきたモンスターらしい。



「その子熊って、ティナが飼っているの?」


「そうよ。私の妹が山で拾ってきて、それから一緒に暮らしてるの」



 ライトはティナの胸の中に顔をうずめた。

 豊満な胸の中に顔をうずめるライトがとても幸せそうに見えた。



「空さん、どこを見てるんですか?」


「いや、誤解だ。桜」


「何が誤解何ですか? 詳しく聞きたいですね」



 まずい。墓穴を掘った。ティナの顔に胸をうずめるライトがうらやましかったなんて、死んでも口にできない。



「空さん」


「うっ!?」



 万事休す。そう思った時、ティナの胸に飛び込む1匹のクマの存在があった。



「クマーー」


「ムーンも無事だったのね、良かったわ」


「その子熊もティナと一緒に暮らしているの?」


「えぇ。この2匹と一緒に暮らしてるの」


「その子熊が俺達に助けを求めたんだよ。そうだよな、桜?」


「えぇ、そうですけど。そのクマちゃんは貴方と一緒に暮らしてるんですか?」


「えぇ、正確には2匹共私の妹が山で拾ったんだけど」



 どうやら警戒心はあるようだが、ティナと少しだけ打ち解けたようだ。

 これで俺の誤解も解けるはず。



「それにしても、俺にはどっちがどっちかよくわからない」


「それは後で説明するわ」


「そうしてくれると助かる」



 見た目だけでは、どっちがどっちか全くわからない。

 俺の目には両方が同じように見える。



「そういえば空さん、この人は一体誰なんですか?」


「そういえば、貴方には名乗っていなかったわね。私はティナ・ラインハルト。エルフ族族長の娘よ」


「エルフ!?」


「エルフ族族長の娘!?」


「「えっ!?」」



 どうやら俺も桜もそれぞれ別のことで驚いていたらしい。



「エルフって言ったら、あのエルフですよね?」


「族長の娘ってことは、結構いい所のお嬢様ってことだよな」



 だからあのオーク達もお姫様って呼んでいたのか。納得だ。

 てっきりその見た目から、そう言っていただけかと思った。



「それにしてもうらやましいです」


「何が?」


「だってティナさんの金髪の髪ってサラサラじゃないですか」


「そうだな」



 ついでにいうなら、腰まで伸びるその髪は金のシルクの糸って言われても違和感がない。



「それに体形だってスラットしていますし‥‥‥これは由姫ちゃんに続いて、またライバルが増えて‥‥‥」


「桜? 大丈夫?」



 何か1人でぶつぶつと言い始めてしまった。

 こうなると止められないので、桜は放っておこう。



「先輩、子熊がそっちに‥‥‥って、誰だ? 貴方は?」


「このシチュエーション。一体何回目?」


「さぁ?」



 俺とティナ、共通の認識として考えていること。それはこのままここで立ち話をしていてもしょうがないってことだ。



「一旦場所を移そうか」


「そうね」


「お前には聞きたいことが色々ある」


「私だって、貴方達に聞きたいことがあるわ」



 どうやらお互い積もる話があるみたいだ。

 そうなると落ち着いて話せる場所に行く必要があるな。



「せっかくだから、別の場所で話しましょう」


「わかったわ」


「それなら一旦私達がいたところに戻ろう」


「クマ!」


「グマ!」



 どうやら子熊達も賛成のようだ。相変わらずこの2匹の見分けがつかない。



「それじゃあ案内します」


「桜、頼む」



 桜の後ろに俺達はついていく。それから俺達は以前滞在していた空き家へと戻るのだった。

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