VS オーク
「はぁぁぁぁ!!」
「うぉっ!?」
由姫がオークの鉈をはじき、その右手を切った。
右手が切れた部分からは大量の血が流れ、ふらふらと後ろへと下がっていく。
「人間風情がぁ。我等オークにたてついて‥‥‥ただで済むと思うなよ!!」
「悪いな。他の人間はわからないが、私はお前達等怖くない」
「ぐぉ!!」
何か言いかけたオークの首を刀で横なぎに切り、オークの首が飛んでいく。
胴体はそのまま崩れ落ちるように倒れ、アスファルトに血の池となる。
「こいつ等はスキル持ちだ!! ただの人間だと思って油断していると痛い目を見るぞ!!」
「全員陣形を組んで、慎重に戦え!!」
「相手は1人だ!! 落ち着いて戦えば、我々が負けるはずがない」
どうやらあのオーク達もスキルのことを知っているらしい。
つまり俺達の知らない世界を知る相手だってことだ。
「ふっ、どこかの正義のヒーローを気取っているようだが、お前はもうおしまいだ」
「1人で来たのが運の付きだったな。この人数を相手に勝てるはずがない」
確かに由姫は1体のオークを倒したが、まだ周りには9体のオークがいる。
見かけ上は由姫が絶対的に不利だろう。
「1人? 私が?」
「お前以外誰がいる?」
「お前達は、こんな数を相手に何の策もなく私が1人で飛び込んでくると思ってるのか?」
「何!?」
由姫がオーク達の注意を引いてくれたおかげで、この距離になってもオーク達は俺と桜に気づいていない。
「いつの間に!?」
オーク達が俺と桜に気づいた時にはもう遅い。距離は30m。充分攻撃できる範囲だ。
「おい、俺達を忘れないでくれよ」
持っていたハンドガンはオーク達の方へと向いている。トリガーを引けばいつでも銃を引くことができる。
『クリエートバレット ダムダム弾』
銃弾も変更した。これでオークの体に貫通しなくても、大きなダメージを与えることができるだろう。
「これでもくらえ!!」
ダムダム弾でオークの体めがけてハンドガンのトリガーを引く。
その弾はオークの体に当たった。
「このぐらいの攻撃!! 我には効かん!!」
「どうかな?」
「ぐぉっ!?」
弾が当たって数秒後、うめき声を上げながらオークがその場に膝まづいた。
苦しそうに弾が当たったところを抑えている。他のオークはその様子に驚いている。
「一体どうしたんだ?」
「わからない。なんだ、この攻撃は!? 貫通してないのに、体が動かない!!」
当たり前だ。その弾は体内で炸裂する仕様になってるんだ。
今頃あいつの内臓はぐちゃぐちゃなはず。いくら体は鍛えられても、内臓までは鍛えられない。
「まだまだ!!」
ハンドガンをオークに向け、トリガーを連続して引く。
俺が撃った弾はオークの体に当たり、数秒後先程のオークのようにうめき声をあげた。
「お前達は‥‥‥一体‥‥‥」
「やぁ!!」
後ろから小熊を抱えた桜が、残りのオークを倒しにかかる。
オークの胸に槍を突き、時には横なぎに振るって首を飛ばし残りのオーク達を倒していく。
「はぁ!!」
「やぁ!!」
2人の活躍のおかげで殆どのオークが倒された。
残るは1体。隊長と呼ばれていたオークだけだ。
「バカなさっきまで我々が優勢だったのに」
「そのおごりが、全ての元凶だよ」
「くっ!! ここは一旦撤退だ」
「あっ!?」
オークが後ろを振り向き全力で走っていく。徐々にその姿が遠くなっていく。
「空さん!! あのオークが逃げていきます」
「大丈夫だ!!」
ハンドガンの代わりに取り出したのはスナイパーライフル。
武器を構え、逃げるオークの頭部に狙いを定めた。
「悪いが、この場所から誰1人として逃がすつもりはない」
1匹の子熊達を取り囲んで襲うような奴等のことを俺は逃がすつもりはない。
「残念だったな。俺達に出会ったのが運のつきだ」
最後の1匹に対して、スナイパーライフルのトリガーを引く。
乾いた音と共に弾丸は飛んでいく。その弾丸はオークの後頭部に命中し、やがてその体をアスファルトに沈めるのだった。。
「ふぅ、これで全員か」
全部で10体のオーク。その全員を倒すことに成功した。
「空さん!! 大丈夫ですか!!」
「俺は大丈夫だ。桜は大丈夫か?」
「はい! クマちゃん共々元気です!」
「クマ!」
どうやら桜も無事のようだ。抱えられている子熊も傷一つない。
「それにしても、子熊を抱きかかえたままよく戦えたな」
「あのぐらいの敵ならこのクマちゃんを抱えながら戦っても余裕です」
「クマクマ!」
息一つ切らしていない桜は元気にそう答える。
桜が余裕というのもうなずける。今まで桜が戦った相手は、ゴブリンキングやウォールベアー、それにフランシスといった化け物級の強さを持つ相手だ。
そいつ等に比べれば、オークの10体程度赤子の手をひねるぐらい弱かったに違いない。
「先輩」
「由姫、ありがとう。助かった!!」
刀を鞘にしまった由姫が俺達の所へと歩いてくる。
「私は大したことはしていないぞ」
「そんなことはない。由姫が先陣を切ってくれたから、オーク達の目を盗んで接近することができた」
あれだけ大きな声でオーク達の注意を引き付けてくれたんだ。
それがなければ乱戦になり、負傷者が出ていてもおかしくはない。
「あれがなければ子熊もやられていた。そうならなかったのは由姫のおかげだ」
「そう言われると照れるな」
頬を朱色に染め、人差し指で頬をかく由姫。
その様子は俺に褒められて恥ずかしがっているように見えた。
「空さんに由姫ちゃん!! あのクマちゃんは大丈夫なんですか?」
「あのクマちゃん?」
「クマクマクマ!!」
桜の腕から子熊は降りると、そのまま電信柱に寄り掛かる子熊の元へと行く。
「そうだ。あの子熊は無事なのか!?」
「私達も行こう」
先についた子熊が、電信柱によりかかる子熊をゆすっていた。
「クマクマ!! クマクマ!!」
「グマ‥‥‥」
「大丈夫です。まだ息はあります」
「よかった」
この子熊を助けに来たのに、死んでしまっていたら本末転倒だ。
桜はアイテムボックスから緑の回復薬を出して、小熊に飲ませる。
「これを飲んでください」
「グマ‥‥‥グマッ!?」
どうやらあの子熊もあの薬のまずさに悶絶しているみたいだ。
俺達だけでなく、モンスターにとってもあの回復薬はまずいらしい。
「桜、その薬は本当に飲ませて大丈夫なのか?」
「大丈夫です。とっても良く効くお薬なので」
「よく効く‥‥‥ね」
「グマッ!? グマッ!?」
むしろ回復薬がとどめになっている気がするけど。
子熊の顔が青くなってるし、俺の気のせいなのだろうか。
「クマクマクマ」
「大丈夫だ。きっとこの子熊も復活するはずだ」
「そうですよ。由姫ちゃんの言うとおりです」
2人と1匹がそういっているから大丈夫だろう。
電信柱の子熊よ。頑張ってくれ。
「でも、なんでオーク達はこの子熊を襲っていたのだろう」
あんな立派な装備も持っていて、わざわざ子熊を襲う必要があったのか?
「そもそも何でこの子熊達は俺達の街にいる?」
もしこの子熊の話が本当なら、今頃あの山にいるはずだ。
それがこんな街のど真ん中にいる。その理由がわからない。
「貴方達」
「えっ!?」
後ろを振り向くと金髪の1人の女性が立っている。
見目麗しい女性で、まるで神話に出てくる妖精のようだった。
「助けてくれてありがとう」
だが、その女性は人間の身体的特徴と違う所がある。
耳が普通の人間より長いのだ。
「エルフ?」
この世界にいないであろうエルフの少女。人間以外の種族のモンスターと初めて対話するのだった。
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