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戦いの合図

「クマクマクマ」


「あっちです!!」



 俺達は子熊が指を差す方に向かって走っている。

 よほど焦っているのか、先程から子熊の口調が早口だ。



「どうやら、よっぽど切羽詰まっているようだな」


「さっきの様子が嘘みたいだ」



 先程桜の体を幸せな表情で堪能していた時とは違い、何やら焦っているように見える。

 どうやら状況は俺が思っていたよりも緊迫していたみたいだ。



「先輩、やっぱりさっきまでのことを根に持ってないか?」


「根に持ってない!!」



 うらやましく思うこともあるが、今はそんなこと言っている場合でもない。

 まずは子熊を助ける。さっきのことは助けた後に考えよう。



「空さん、もしかして焼いてくれているんですか?」


「別にそういうわけじゃない」


「しょうがないですね。後であたしがサービスしてあげましょう」


「サービスって、何をするつもりなの!?」


「それは秘密です」



 一気に話が不穏な状況へと進展していく。

 桜は一体俺に何をするつもりなのか、そこはかとなく不安だ。



「全く先輩は素直じゃないな」


「クマ!」


「子熊にまで同情される俺って‥‥‥」



 由姫がいうならまだわかるが、子熊よ。お前はもっと別のことを心配するべきだろ。



「俺に同情するのはいいけど、本当にこの道で合っているんだろうな?」


「クマ!!」


「どうやらこの道で合っているって言っています」



 子熊が首を縦に振っているということは、そういうことだろう。

 指をさしながら子熊は桜に道を教え続ける。



「クマ!」


「次の角を左ですね」


「クマ!」



 人間の言葉がわかる子熊もすごいが、それを理解する桜もすごい。

 まるで子熊と意思疎通を完璧に取れているかのようだ。



「そういえば桜はその子熊の言っていることがわかるのか?」


「全然わからないです」


「それでよく意思疎通が取れるな」


「このクマちゃんが行く道を指差してくれたり、うなずいてくれているおかげです。わかりやすく体を使ってくれているので、あたしもわかります」



「なるほどな」



 つまりはこの子熊のコミュニケーション能力が高いというわけか。

 俺達の所に来た時はただの子熊だと思ったが、意外と優秀な個体なのかもな。



「先輩!! あれを見てくれ!!」


「なっ!?」



 由姫が指差した場所、そこで1匹の小熊が倒れている。

 倒れているだけじゃない。10体のモンスターが子熊のことを囲んでいる。



「空さん!? あのモンスター達って‥‥‥」


「あれは‥‥‥オークだな」



 この世界が変化した際、桜達のことを襲ったオーク。

 そのオーク達が10匹、子達の周りを囲んでいる。



「桜はここで待っていてくれ」


「何でですか?」


「オークは桜にとって、トラウマな相手じゃないのか?」



 以前桜はデパート付近でオークに襲われたと言っていた。

 日向の家で出会った桜は表面上は元気な様子だったが、オークに襲われて心にトラウマを抱えていたはずだ。

 現にあの時桜は寝る前にこんなことを言っていた。



『明日なんて、あたし達にあるんでしょうか?』



 だからあの時、こんな言葉を言ったんだ。

 俺はあの言葉を聞いた時、絶対に桜のことだけは守ると誓った。その言葉に二言はない。



「苦手な相手なら無理をする必要はない。後は俺と由姫に任せておけ」


「大丈夫ですよ。もうオークは怖くありません」


「無理しなくてもいいんだぞ」


「無理なんてしていません。それにあたしは誓いましたから」


「誓った? 何を?」


「あたしは空さんに守られているばかりじゃ嫌なんです。空さんの隣で一緒に戦いたいんです」



 桜の決意に満ちた目。どうやらあの学校で起きた出来事が桜を変えたらしい。

 昔は俺の後ろをついてくるだけだったのに。人が成長するところをまざまざと見せつけられてしまう。



「桜も言うようになったな」


「そうですよ。あたしだって、少しずつ成長しています」


「全く頼もしくなったものだ」



 俺なんかより心も体も十分過ぎる程強い。

 こんな桜にふさわしい男になる為に、俺ももっと頑張らないとな。



「クマ!?」


「どうしたんですか!? クマちゃん!?」


「クマクマ!? クマクマ!?」



 子熊が指差す先、その先には1体のオークが子熊の前に立つ。

 そして鉈を取り出し、それを子熊に向けた。



「危ないです!!」



 子熊に向けた鉈を振り上げるオーク。その刃先は確実に子熊の方へ向いている。



「くそ!! ここからじゃ間に合わない!!」



 ここからオークのいる場所までまだ400m以上ある。この距離では桜や由姫が全力で走っても間に合わない。



「ここは俺のハンドガンで、あいつ等を威嚇するしかないな」



 大した威力はないが、オークをけん制することはできる。

 少しの時間稼ぎ、それができればいい。



「先輩!! ここは私に任せてくれ!!」


「由姫?」


「私のスキルに縮地という能力がある。それを使えば、あそこまですぐだ」


「それは本当か!?」


「あぁ、私を信用してくれ」



 確かに由姫の特別スキルにはその能力があった。

 だがそのスキルは未知数過ぎて、俺にどんなスキルかわからなかった。



「わかった。ここは由姫に任せる」


「ありがとう、先輩。それでは私は先に行くぞ」



 そういい残すと由姫の姿が見えなくなる。俺はその間ハンドガンを構え、戦う準備をする。



「桜も戦う準備をしておけ。相手は俺達の倍以上の人数だ。油断していると、すぐにやられるぞ」


「わかりました」



 桜も子熊を抱きか抱えながら、紫の槍を準備した。



「見てろよ、オーク達。散々俺達を怖がらせてきたことを後悔させてやる」



 桜やデパートの人達にトラウマを植え付けたオーク。

 そんなオーク達にも示さないといけない。人間が本気で戦ったら、怖い生き物だということを。



「行くぞ!!」



 直後、前方で鉄と鉄がぶつかる音が辺りに響き渡る。

 その音が俺達の戦いの合図だった。

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