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新たな出会い

「それじゃあ皆さん、準備ができましたので出発しましょう」



 桜の号令共に俺達は外へと出て、目的地に向かって歩き始めた。



「2人共、アイテムボックスの使い方はわかったか?」


「はい。あたしはばっちりです」


「桜が使えるのはわかってる」



 桜は以前パーティーを組んだ時、アイテムボックスの使い方について一通り説明した。

 だから使い方を理解しているのはわかる。問題は由姫だ。



「由姫はどうだ? 使い方はわかったか?」


「私も大丈夫だ」


「それならよかった」



 由姫が普通に使えていれば問題ない。せっかくこんな便利なスキルを共有できるんだ。

 使用方法がわからなくて使用しないのは非常にもったいない。



「それにしても、このアイテムボックスはパーティー全員で保管したものを共有できるんだな」


「そうだな。パーティー機能の共有スキルにすると、アイテムボックスのストレージを全員で共有できるみたいだ」



 これは俺と桜の2人でアイテムボックスを使用していてわかったことだ。

 俺や桜がそれぞれ保管したものが、ひとまとめにして取り出せるらしい。

 正直興味本位で試してみたが、使って見るとこれほど強力なスキルはない。

 むしろアイテムボックスというスキルはパーティー機能で使用する為のスキルみたいだ。



「このアイテムボックスのスキルって、凄く便利なスキルですね」


「そうだな」



 このスキルを使えば、遠距離で戦っていても町等の安全な場所に仲間がいれば、武器や回復薬を無限に補充できることになる。

 ただの荷物持ちのスキルかと思えば、使いようによってはチート級のスキルに化ける。それがこのスキルだ。



「それで先輩、これからどこに向かうつもりなのだ?」


「もちろんデパートだ」



 後で桜が話していたが、日向達は逃げる際にデパートに行くことにしたらしい。

 悠里が提案したらしいが懸命な判断だ。あそこなら須田のおっさんや悠里の母親もいるので、無条件でかくまってくれるだろう



「その場所はどういった場所なのだ?」


「元々は俺達が学校に来る前の拠点にしていた場所だ」


「あたし達はあそこで食料の調達をしながら、ゴブリン達を撃退したんです」



 撃退というよりはほぼ殲滅に近い形だけどな。

 正直一歩間違えれば、俺達の方がやられていた紙一重の戦いだ。



「さすがだな。先輩はそんな修羅場までくぐって来たのか」


「修羅場というか、俺はただ傍観していただけだぞ」



 結局止めを刺したのは日向だし、俺はそのアシストをしたにすぎない。

 倒すというのはおこがましい。あの戦いで勝てたのは全て日向のおかげだ。



「でも、空さんだって大きな爆発を起こしてゴブリンキングを追い詰めましたよ」


「その後全く動けなくなっただろ? もし俺が1人で戦ってたらよろよろのゴブリンキングに止めを刺されて死んでいたぞ」



 しかもゴブリンキングはあんなボロボロの状態だったのに軽快に動いていた。

 つくづく日向がいてくれてよかったと思う。



「ゴブリンキングとか甲冑騎士とか、先輩は私の想像もつかないような敵と戦っているのだな」


「想像もつかない敵というか、フランシスとは由姫も戦っていただろう」


「フランシス?」


「空さん、その人って誰ですか?」


「あぁ。あの甲冑騎士の名前だよ。魔王軍四天王の1人、閃光のフランシス」


「あの甲冑騎士は魔王軍の四天王だったのか!?」


「らしいな。言ってなかったっけ?」


「初耳ですよ‼︎」


「私もだ」



 どうやら怪我の回復に充てていた時間はバタバタしていたため桜達には伝え忘れていたらしい。



「もう少しその話、詳しく聞きたいです‼︎」


「詳しくも何も、俺はそれしか知らないからな」



 他にも色々な話をされたが、残念ながら俺にも教えてくれなかった。

 だから俺に聞かれても困る。



「それは本当か!? 先輩?」


「本当だ!! 信じてくれ!!」



 これ以上疑われたらたまったものではない。

 桜と由姫の追及をかわそうとした時、何かの気配を察知した。



 悠里達がいるとすれば、そこしかない。

 いつでも力になってくれるといったから、そこにいる可能性が高い。



「空さん!?」


「あぁ」



 弱い反応だが、誰かが俺達の方へと向かってくる。

 距離にして500m。俺達のすぐ近くだ。



「先輩。前方から何か来るぞ」


「あぁ。全員戦闘態勢を整えろ!!」


「はい!!」



 危機感知のスキルが働いていないことから、そこまで強くないモンスターだということはわかる

 だけどフランシスのような、危険感知に引っ掛からないモンスターの可能性も考えられる。油断は禁物だ。



「由姫、桜、絶対に油断するなよ」


「はい!!」


「来るぞ」



 俺のスキルでモンスターを補足した。だが、そのモンスターを見て驚いた。



「何だ? あれは?」



 茶色いモフモフとした動物が、俺達の方に向かって走ってくる。



「どうやらあれは子熊のようだな」


「子熊!? 何でこんな所にクマちゃんがいるんですか!?」


「そんなこと、俺に言われてもわからない」



 どういった事情で街に降りてきたかわからないが、警戒するに越したことはない。

 猛スピードで子熊は俺達に接近する。



「突進か? でもあれぐらいの攻撃なら、余裕でかわせるはずだ」


「空さん、ちょっと待ってください。クマちゃんの様子が、おかしくないですか?」


「おかしい? どこが?」



 俺には必死の形相で全力疾走で走っているようにしか見えない。



「なんか慌ててるような、そんな感じがします」


「慌ててる?」


「そうです。まるで何かを必死に探しているような、そんな感じがします」



 確かにあの子熊は何かを探しているように見えた。

 その姿は俺達と戦おうとしているようには見えない。



「とりあえず隠れて様子を見よう」


「そうですね」


「先輩の案に賛成だ」



 そういって曲がり角の電信柱の後ろに3人で隠れた。

 隠れても子熊は俺達のことを目ざとく見つけ、全力疾走でこっちに向かってくる。



「何で俺達の場所がわかるんだ?」


「わかりました。鼻をヒクヒクさせているので、匂いを辿って来ているんです」


「そういえばウォールベアーも俺の匂いを追ってきたな」



 そのせいで気配遮断のスキルを使用しても、逃げきれなかったのを思い出した。



「あの子熊も面倒くさい能力を持っているな」


「それよりどうする? あの子熊と戦うのか?」


「戦うって言われても‥‥‥」



 戦う意志のないやつと戦うことなんてできないだろ?

 何故だかわからないが、あの子熊は俺達を探しているように見えた。



「あっ!? 目が合いました」


「--マッ!!」


「なんだ? あの熊?」


「私達を見つけたら、やけにうれしそうな顔をしているな」



 由姫の言う通り子熊は目をキラキラと輝かせて笑っている。笑っているというよりは、俺達を見つけてほっとしているように見えた。



「クマッ、クマッ、クマッ」


「桜、質問なんだけど熊の鳴き声って『クマ』って言うの?」


「わかりません」



 いくら熊だからって、鳴き声がそのまますぎないか?

 今まで熊の鳴き声を聞いたことがないからわからないが、この子熊もモンスターだからだろう。



「クマーー」


「飛び掛かってきた!?」


「わっ!? 危ないですよ!!」



 俺達の目の前でジャンプした子熊はそのまま桜の胸に飛び込んできた。

 桜はその小熊を優しく胸で抱きとめた。



「桜!! 大丈夫か!?」


「あたしは大丈夫です。大丈夫ですけど‥‥‥」


「クマクマクマ」



 桜に抱きかかえられたまま、胸に顔をこすり付ける小熊。

 幸せそうな表情で、子熊は桜に抱かれていた。



「先輩、今子熊のことをうらやましいとか思ってないか?」


「思うはずないだろ!?」



 確かに桜の胸の中に抱かれていいなぁという気持ちがないわけでもない。

 だけど今はそれよりももっと考えることがあるだろ。



「それより俺この小熊なんだけど、どこかで見たことあるんだよな」


「私もだ」


「由姫も」


「あぁ、このつぶらな瞳にこのモフモフとした感じ。どこかで見たことがある」



 頭に靄がかかったみたいに思い出せない。

 一体俺はこの子熊をどこで見たんだ?



「わかりました」


「わかったのか? 桜?」


「はい。もしかしてこのクマちゃんって、あたし達が山で逃がしたクマちゃんですか?」


「クマクマ」



 子熊が首を縦に動かしているということは、そういうことだろう。

 山で八橋に襲われそうになった所を俺達に助けられたから、俺達を見た時、安心した顔をしていたのか。



「やっぱりそうみたいですね」


「この熊、人の言葉がわかるみたいだな」


「人間の言葉をわかる熊とは恐れ入ったな」



 俺も由姫も小熊の頭を優しく撫でても拒絶されることはない。

 むしろ撫でたら撫でただけ、小熊は気持ちよさそうにしていた。



「先輩、この子熊は可愛いな」


「可愛いのは別にいいが、なんでこの子熊はこんなところにいるんだ?」



 確かあの時は山の中にいただろ? それが何でこんな町中にいたんだ?



「それに2匹いたのに1匹しかいないのも気になるな」



 あの時逃げたのは2匹。もう1匹の子熊はどこに行ったのだろう。



「クマちゃん、こんな街中を歩いていて何かあったんですか?」


「クマッ!?」


「どうしたんだ?」


「この子熊、何か思い出したようだな」



 片手で桜の袖を引っ張りながら、もう片方の手で道を指している。

 それは先程まで子熊が全力疾走で走っていた道だった。



「もしかして、お前は助けを探していたのか?」


「クマクマクマ」



 何度も首を縦に振る小熊。どうやら子熊が指さすこの先の道で、誰かが助けを求めているらしい。



「空さん、行きましょう」


「待て桜」


「どうしたんですか?」


「よく考えてみろ。いきなりモンスターが助けを求めにくるなんてこと、本当にあるのか?」



 普通に考えてモンスターが助けに来るなんてこと、絶対にあるわけない。

 今までモンスターは俺達を一方的に襲ってきたんだ。それが急に助けを求めるなんておかしい話だ。



「でも、この先に誰かがいるかもしれないんですよ。助けに行かないと」


「それが罠だって言ってるんだよ」


「罠ですか?」



「そうだ。もしかするとモンスターがこの子熊を使って、俺達に罠を仕掛けようとしている可能性もある」



 それこそ目的地で待ち伏せをしており、奇襲してくるとか他にも色々な可能性が考えられる。

 そんな場所にうかつに飛び込むのは不用心というものだろう。



「先輩、さすがにそれはちょっと用心深すぎないか?」


「用心するに越したことはないだろう」



 フランシスみたいな魔王軍四天王と名乗る敵まで出て来たんだ。どんな敵が現れるかわからない以上、無理をすることはできない。



「それに俺達は病み上がりなんだ。そんなに無理をしなくても‥‥‥」


「空さん」


「何だよ?」


「ちょっとこれを見てください」


「何?」



 俺の前には桜が両手で持つ子熊がいた。その子熊は目をキラキラとさせ、純真無垢な表情で俺を見つめてくる。



「このクマちゃんの目をよく見てください」


「クマ!」


「こんな可愛らしいクマちゃんがあたし達のことを罠にはめると思いますか?」



 桜が持っている子熊がつぶらな瞳で俺のことを見ている。

 その目はまるで生まれたての赤子のような目をしていた。



「クマクマ!」


「こんな可愛いクマちゃんが、本当にあたし達のことを裏切ると思いますか?」


「クマ!」



 桜が徐々に子熊との距離を近づける。その迫力に思わず、俺は一歩後ずさってしまう。



「先輩、これは桜の作戦勝ちだな」


「由姫はいいのかよ。この先に何がいるかわからないんだぞ」


「別に構わない。だって私と先輩は同じチームなんだ。先輩と一緒なら、どんな敵でも負ける気がしない」


「由姫」



 どうやらこの前の戦闘で、由姫から絶大な信頼を得たらしい。

 俺のことを見る目が悠然と語っていた。



「こんな俺についてきてくれるなんて、由姫は本当に奇特な奴だな」


「そのセリフ、そっくりそのまま返す」



 全く、俺も厄介な奴を仲間にしたものだ。

 だがここまで俺のことを信頼してくれてるんだ。その信頼に答えないとな。



「空さん、あたしも空さんのことは信頼してますからね」


「わかってるよ」



 桜から寄せられる絶大な信頼は身をもって感じている。

 そうでなければ、あの場面でわざわざ学校に引き返してこないだろう。



「クマクマ!」


「クマちゃんも空さんのことを信頼しているみたいですよ」


「お前とちゃんとかかわったのは今日が初めてだろ!?」



 なんか話していて頭が痛くなってきた。

 まさかほぼ初対面の熊にまでツッこみを入れることになるとは思わなかった。



「わかった、わかった。降参だ。行けばいいんだろ? 行けば」


「さすが空さんです」


「それでこそ、先輩だな」



 桜と由姫が行く気満々なら行くしかないだろう。

 ものすごく嫌な予感がするが、こうなってしまった以上最低限の対策だけは考えておこう。



「先輩」


「何だ、由姫」


「相変わらず先輩は桜に弱いな」


「何!?」



 耳元でささやかれたその一言。言った後、由姫はいたずらが成功した少女のように笑った。



「空さん、早くいきましょう」


「クマクマクマ」


「そうだぞ。早く行こう」



 人の気もしらないで、好き放題言って。

 今度覚えてろよ。絶対に仕返ししてやるからな。



「先輩、早くこないと置いていくぞ」


「あぁ、今行くからちょっと待っててくれ」



 桜と由姫が待つ場所へと、俺は小走りで向かっていくのだった。

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