和やかな日常
桜に連れられてリビングに行くと、テーブルには既にたくさんの料理が並んでいた。
「いつもながら量が多いな」
「由姫ちゃんがよく食べますから」
「確かにな」
由姫の食欲は天井知らずだからな。怪我をしている時もよく食べていたし、本当に怪我をしているのかと疑ったレベルだ。
「それにしても相変わらず桜は料理上手だな。どの料理もおいしそうだ」
「そういってもらえると嬉しいです」
ご飯やみそ汁だけでなく、主菜や副菜等ラインナップが充実している。
桜曰くアイテムボックスの中にある食材を使っているということだが、そんなにアイテムボックスに食材を入れていたっけ?
「先輩、遅いぞ」
「ごめん、遅くなった」
「そうだぞ。早く食べないとせっかくのご飯が冷めてしまう」
俺達のことよりもまず心配するのはご飯のことなのかよ!!
ご飯の心配をするなんて、由姫らしいと言えば由姫らしいけどな。
「先輩、早く座ろう」
「わかった」
既に由姫がテーブルに座って俺達のことを待っている。
テーブルに座る前に、目の前に座る由姫のご飯が目に付いた。
「相変わらず由姫のご飯の量は多いな」
「しょうがないだろう。私は育ち盛りなのだから」
「育ち盛りね」
確かに体の一部の発育はいいが、それを抜いてもさすがに食べすぎじゃないか?
どうしてあれだけの量のご飯を食べていて、あれだけスレンダーな(一部を除いた)体形できるのか不思議だった。
「先輩!! どこを見ている!!」
「別にどこも見てないぞ!!」
「桜のことを差し置いて、また私のことを見て破廉恥なことを考えてるんじゃないだろうな!?」
「誤解だ!! そんなこと考えるはずないだろう!!」
俺には桜がいるのに、由姫を見てよこしまなことなんて考えるわけがない。
だから自分の胸を両手で隠すのはやめてくれ。桜が誤解する。
「空さん‥‥‥由姫ちゃん相手に変なことを考えているんじゃないでしょうね?」
「そんなこと考えているわけがないだろ!!」
だから頼む。目のハイライトがなくなったような表情で、俺のことを睨まないでくれ。
「怪しいな」
「怪しいですね」
「とりあえず朝ごはんを食べよう。由姫もお腹が減ってるだろ」
「そうだな。腹が減っては戦ができないし、早く食べよう」
戦なんてする気はないんだけど、ここは話をそらせたのでつっこまないようにしよう。
2人のやり取りを遮るように椅子に座る。桜も頬を膨らませながらも、俺の隣に座った。
「それでは全員揃った所で、いただきます」
「「いただきます」」
挨拶と共にご飯を食べ始める。
今日の献立はご飯やみそ汁の他に鮭の塩焼きやホウレン草のお浸しがある。
「そういえば先輩、お腹の傷は大丈夫なのか?」
「大丈夫だ。もう問題ない」
数日前は体を動かしたくない程痛かったが、その痛みはもうない。
ほぼ万全の状態といってもいいだろう。
「由姫の方はどうなんだ? 体の怪我は?」
「私も問題ない」
腕を回して回復をアピールする由姫。
その様子を見ると、体には問題ないように見えた。
「それだけ動ければ、もう平気だな」
桜も由姫も怪我が治ってよかった。
ここについた時は俺も含めてどうなるかと思ったが、全員が無事でよかった。
「桜、お代わりを頼む」
「由姫ちゃんはいっぱい食べるから気持ちがいいですね。大盛でいいですか?」
「あぁ。ありがとう」
桜と由姫が嬉しそうに笑っている。
その和やかな雰囲気に思わずほっこりしている自分がいた。
「よかった」
学校では多くの人達がフランシスの犠牲になってしまったが、桜と由姫だけは守ることができた。
「正直俺は自分の周りの人達しか守れない」
日向みたいに、大勢の人達を守るような力は残念ながら俺にはない。
それを歯がゆく思ってしまうが、ないものねだりをしても始まらない。
「だからこそ、自分の周りの人達だけでも大切にしていかないとな」
それでも守れないものがあった。梓は犠牲になり、八橋はどこかへ連れていかれてしまった。
だけど桜と由姫だけは守ることができた。
梓のことは背負っていかないといけないが、死んでしまった梓の分までこの2人のことを大事にしていこうと思う。
「空さん、何を考えているんですか?」
「そうだぞ、先輩。食欲がないなら、その塩鮭は私がもらう」
「いや、十分に食欲はあるから‥‥‥って、由姫は塩鮭を取るな!!」
何気ない食事風景。本当にどこにでもあるこの風景が愛おしく思うのだった。
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