死者への懺悔
真っ暗な空間に俺はいる。周りには誰もいない光のない空間だ。
「これは夢か」
直感でそう感じてしまう。だって、こんな空間存在するはずがない。
「これで何度目だ?」
最近夜は寝るたびにこの夢を見続けている。この後起こることはきっと‥‥‥。
「先輩」
暗闇の中から俺を呼ぶ声。そこにはここにいるはずもない人物が姿を現した。
「梓」
暗闇の中で立っているのは梓だ。梓が俺に笑顔を振りまいている。
「もう、どこへ行ってたんですか?」
「何処って?」
「皆待ってますから、早くこっちに来て下さい」
梓に引っ張られて連れていかれたところには、他にも大勢の人がいた。
「五月に田宮さん、それに他の人達も‥‥‥」
あの学校での戦いで死んだ人達がそこにはいた。
俺の前に立って、手招きをしている。
「山村君、遅いよ」
「そうですよ。皆さん山村先輩のことを待っています」
俺とはあまり関係無い人達までもが俺のことを呼んでいる。
何人かは俺の気心しれた仲の人達だ。
「先輩、皆が呼んでますよ。早くこっちに来てください」
「悪いが、俺はそっちには行けない」
「何でですか?」
「俺にはまだやることがあるんだ。だからそっちにいくことはできない」
俺にはまだ桜や由姫がいるんだ。あいつ等の為にもまだここで消えるわけにはいかない。
「そうなんですか。私達のことは見殺しにしたくせに、桜ちゃん達のことは大事にするんですね」
「あぁ」
「私達がどんな思いで貴方を助けようとしたか、貴方はわかってないんですね!!」
そこまで言われると、俺も何も言うことができない。
「何か申し開きはないんですか?」
「ないな」
これは俺が責められないといけないことだ。だから反論なんてない。
「何で私達が死なないとといけなかったんですか!! 何で私達だけがこんな目に合うんですか!!」
「それは悪かった」
「謝らないでください!!」
それっきり、言葉はなくなる。この夢も終盤に差し掛かっているのだろう。
「‥‥‥‥よかったのに」
「えっ!?」
「こんなことになるなら、空先輩が死ねばよかったのに!!」
その言葉と共に視界が暗転する。どうやらこの夢も終わりのようだ。
「返してよ!! 私達の平和な世界を返して!!」
梓の怒号が聞こえる。その言葉は俺の胸に刻まないといけない言葉でもある。
「何とか言ってくださいよ。空先輩、空さん!!」
「起きてください!! 朝ですよ!! ご飯の時間です!!」
「はっ!! ここは‥‥‥」
「やっと目が覚めましたか。もうすぐ朝ごはんですよ。起きてください」
見慣れぬ一室。そこのベッドの上に俺は寝ていた。
部屋の中はきれいに整頓されていて、物は殆どない。
「ここは‥‥‥どこだ?」
「まだ寝ぼけているんですか?」
「悪い」
桜の表情はあきれているように見えた。確かに桜の言う通り、俺はまだ寝ぼけている。
「ここは学校近くの空き家じゃないですか。空さんが気絶しているあたしをこの部屋のベッドに寝かせてくれた所でしょ?」
「そうだったな」
確か学校から避難する際に、俺達の怪我ではデパートまで歩くのが無理だと判断して鍵の開いていたこの空き家に逃げ込んだんだ。
「それから体中全身傷だらけの空さんの復活を待ってデパートに向かうって話をしたじゃないですか」
「そうか」
あの学校での出来事から既に3日が立っているのか。
空き家に入った俺達は由姫と共に玄関に倒れこんでしまったらしい。
その後先に起きた桜が俺と由姫をベッドに寝かせてくれて、ずっと看病してくれたみたいだ。
「それよりも怪我の具合はどうですか?」
「もう大丈夫だ」
ベッドから起き上がり、腕をまわすがなんともない。
腹部の傷も全快していて、走ったりするのも支障がないように思えた。
「心配かけて悪かったな」
「本当ですよ。玄関で目が覚めた時は何が何だかわからなかったんですから」
「確かにな」
学校で魔王軍の幹部と激闘を繰り広げていたと思ったら、知らない民家の玄関で寝ていたんだもんな。
驚かない方に無理がある。
「由姫はどうしてる?」
「由姫ちゃんはもうテーブルについています。朝ごはんが待ち遠しいって言ってました」
「相変わらず食い意地だけはあるんだな」
いつも通り過ぎて、思わず苦笑いがこぼれてしまう。
「由姫ちゃんは意外と軽傷でしたからね」
「確かにな」
あれだけ痛めつけられても軽い打撲で済んでいる所が恐ろしい。
由姫の回復スピードの速さに驚いてしまう。
「結局1番治りが遅かったのは俺だってことか」
「でも、空さんの怪我は死んでいてもおかしくなかったんですよ。むしろここまで治りが早いのが驚きです」
それはきっとフランシスが飲ませてくれたエリクサーのおかげだろう。
あのい伝説の万能薬のおかげで、俺はこうして生きてられるんだ。
「空さん、そしたら今日出発ですか?」
「そうだな。早くデパートに向かおう」
きっと日向達はデパートにたどり着いている。
俺達がいつまでも戻ってこないことに心配しているに違いない。
「桜に先輩、どうしたのだ? 朝ごはんの時間だぞ」
「わかりました。もう少しで降りますので待っていてください」
部屋の外から由姫の声が聞こえる。よっぽどお腹が減っているのか、俺達のことを呼んでいた。
「由姫ちゃんが呼んでいますので行きましょうか」
「そうだな」
ベッドから起き上がり、桜と共に部屋を出る。
部屋を出た俺達は由姫が待つ1階のリビングに向かうのだった。
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