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市街地の様子 2

「何なの⁉︎ あのオーク?」


「他のオークの2、3倍はあるな」



 普通のオークが人と同じぐらいの高さなら、このオークの体長は3、4mって所か。

 今までテレビに映っていた個体とは違い、他のオークにはないオーラをまとっているようにも見える。

 現にテレビ越しでも、俺の危険探知のスキルがこいつと戦うなというように、頭の中で警告音が鳴り響いていた。



「それにオークにしては持っている剣が大きいわね」


「さっきのコボルト達が持っていた剣より倍ぐらいの大きさがあるんじゃないかな?」


「あの体長に大きな剣、オークの上位互換か」



 名前をつけるならハイオークといった所だろう。

 それならあの大振りな剣を持っている理由もわかる。



「あんなモンスターもいるのね」


「オークの上位種のモンスターもいるなら、ゴブリンやコボルトの上位互換もいるんじゃないかな?」


「そうだな。もしかしたら、ゴブリンやコボルトの上位種もいるかもしれない」



 考えたくはないがオークの上位互換がいるなら、他のモンスターの上位互換もいるだろう。

 考えるだけで気がめいる。願わくばそういうモンスターには出会いたくない。

 それよりも今は自衛隊の方だ。オークの上位互換が出てきたってことは、今までのようには行かないはずだ。

 スキルを使いこなせてないと、無駄死にするぞ。



「あのオークは、今までの雑魚とは違うな」


「でも、自衛隊の人達ならきっと何とかしてくれるよ」


「いや、そんな容易な相手なわけがない」



 ちゃんとした作戦を立てて、ようやく五分の戦いが出来るというところだろう。

 それぐらいテレビで見ていても、このオークが危険だということがわかった。



「あいつはかなりやばい。もしかしたらこの辺りのモンスターの中で、1番強いんじゃないか?」


「えっ、それじゃあ自衛隊の人達ってすごく危ないんじゃ‥‥‥‥」


「自衛隊だけじゃない。今取材している人達もさっさと逃げないと大変なことになる」


「えっ!?」



 三村が声を上げるのと同時に、カメラの方に向かって何かが飛んで来た。

 それは先程迄戦っていた自衛隊員の首。それがカメラの画面にぶつかって、その場に落ちたのだった。



「三村さん!」


「えっ、どうしたの日向君⁉︎ 何も見えないんだけど?」



 日向は三村に目隠しして、テレビを見せないようにした。

 その間もテレビの中継は続く。先程の首が離れた体の部分からは大量の赤い血が噴水のように吹き出し、雨のように地面をぬらす。血が噴き出し終わると、胴体はそのまま地面に倒れ、赤い水溜りを作るのだった。



『どうやら、さっきのオークが自衛隊に反撃したようです。現在自衛隊は必死に抵抗して‥‥‥‥ってこれまずくないですか⁉︎ ディレクター、私達も逃げないと』


『大丈夫だよ、神戸ちゃん。自衛隊の人達がいるじゃない。ちゃんと守ってくれるよ』


『でもでも、あれは絶対やばいですって』


『撃て、撃て、撃て! 怯まずに撃つんだ!!』



 アナウンサーとディレクターが口論している間も、自衛隊がマイクに入るような大声で叫び、ハイオークに向かっていく。

 だが、そんな勇敢な自衛隊の奮闘もむなしく、自衛隊員が1人、また1人殺されていった。

 あるものは首をはねられ、またあるものは体を貫かれ絶命していく。

 それはまるでどこかのスプラッター映画のワンシーンを見ているようだった。



「完全に放送事故だな」



 この状況になってもよく中継を切り替えないなと思う。いや、たぶん誰もが動けないのだろう。あまりの衝撃映像に。

 自衛隊員も必死に抵抗しているが、やがて現在相手にしているモンスターの強さがわかったのか、何もせずに逃げるもの現れる。

 ハイオークはそんな自衛隊も逃がさず、1人1人丁寧に殺していった。



「これって本当に現実なの?」


「そうだ、これは現実だ。もしかしたらこいつらは、いずれ俺達が相手にしないといけないかもな」


「ちょっと日向君! 何も見えないんだけど、どうなってるの⁉︎」



 日向は唖然としており、三村は日向に目を隠されているせいか、どんな状況になったのか把握できていないようだ。

 俺も普通なら凝視できないが、先程精神異常耐性スキルを取得したせいか、冷静に見ていられる。

 日向に関しても俺と同じだろう。口を開けたままだが、その目はしっかりとテレビに向いていた。



「あんなモンスター、僕達で倒せるの?」


「『倒せるの?』 じゃなくて倒すんだよ。ただ、今の俺達には荷が重い相手だけどな」



 あんな敵がいるなんて冗談じゃないが、倒さないとこっちがやられてしまう。

 テレビ画面では必死に逃げ惑うもの。ハイオークに対して命乞いをするもの。その自衛隊員に対して、無慈悲に1体1体殺していくハイオーク。

 俺は絶対こんな惨めな死に方はしたくない。そうならないためにもこの世界で絶対に生き延びてやる。

 そう思っているとあっけなく自衛隊が全滅したのだった。



『ちょっ、これ私達もやばいんじゃ‥‥‥‥って、逃げてるんじゃないわよ! あんた達!! それでも‥‥‥』



 その直後、カメラがガシャンとなる音と共に男の断末魔が聞こえ、テレビが砂嵐になる。

 次にテレビに出たのは、スタジオで今までの映像を見ていたと思われるアナウンサーのコンビ。

 静かに何も言わず、顔は青ざめ唖然としている姿を見て、俺はそっとテレビを消した。



「続きは見なくていいの? 空?」


「見ていても結果は変わらないだろ? それよりも、どうやらこの現象は俺達の周りで起きているだけじゃないみたいだな」



 それだけがわかっただけでもかなりの収穫だ。

 自衛隊でも敵わない、そんなモンスター達が巣食う世界。

 俺達が住んでいた平和な世界は、あの地震が起きた後変わってしまった

 死と恐怖が支配するモンスター達が闊歩する世界。命の価値が以前よりも軽くなった世界に変わったってことだ。



「山村君、やけに冷静ね」


「俺は三村が思っているほど、そんなに冷静じゃない」



 現にこれからもっと多くの敵と戦わないといけない。

 あのテレビに映っていたオークだけでない、もしかするともっと強い敵と戦うこともあるだろう。

 そうなることを考えるだけで今は憂鬱だ。



「これからどうすればいいんだろうな」


「そうだね。とりあえず今は皆の両親を探しながらレベルを上げて‥‥‥」



 日向が次の言葉を発しようとした時、お腹の音がなった。

 お腹を鳴らした日向はというと辺りを見回し、恥ずかしそうにしているのだった。



「とりあえず2人共、ご飯にしない?」


「そうだな。外も暗いし、今日は飯でも食べて寝るか」


「日向君、そろそろ目隠しをはずしてくれるとありがたいんだけど?」


「ごめん」



 慌てて日向は三村に対して目隠しをやめる。

 そしてそのまま三村は立ち上がり、キッチンへと行く。



「三村、お前料理できるのかよ?」


「もちろんよ。今日は私が腕を振るいましょう」


「お前料理作れたんだな?」


「バカにしないで。今日役にたたなかった分、とびっきりおいしいのを作ってあげるわ」



 どう考えたってフラグにしか見えない。

 こんな世界になって食事が唯一の楽しみなのだから、作るならちゃんとしたものがいい。



「三村、無理しなくても俺が後でちゃんと‥‥‥‥」


「山村君はいいから。リビングでテレビでも見てなさい」


「テレビって言ってもな」



 どうせろくなものがやってないだろ?

 番組が放送してても、どうせモンスター関連のことだろう。

 さっきのような放送を流されるぐらいなら、三村の手伝いをしていた方がましだ。



「山村君、返事は?」


「はいはい」


「はいは1回」


「はい」



 有無を言わせない三村の言葉に俺達はリビングに座らせられた。

 そして無事夕食を作った三村は俺達に手作りの晩御飯を振舞ってくれた。

 ちなみに三村の晩御飯は予想に反して美味しく作られており、人は見た目によらないなと思うのだった。

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