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仮初の勝利

「無茶だ。今の梓じゃフランシスに勝てない」



 そもそもの実力が違いすぎる。

 スキルで強化された桜と由姫をもってしても勝てなかったんだ。

 八橋と協力して戦ったとしても、勝てる可能性は限りなく低い。



「何かいい方法はないのか?」



 このままこの戦いを指を加えてみているだけじゃ駄目だ。

 梓達を見殺しにするわけにはいかない



「体は‥‥‥動かない」



 フランシスの言う通り、全く体が動かない。

 このままじゃ梓達が死んでしまう。



「そんな結末に‥‥‥絶対させない!!」



 体が動かなくても何かできることはあるはずだ。

 考えろ、少しでも梓と八橋が有利になる為の方法を考えるんだ。



「先輩」


「由姫!! よかった無事で」


「あぁ、命に支障はないが体が全く動かない」



 どうやら壁にぶつかった衝撃で、由姫も体がまともに動かないようだ。

 俺の横で肩を並べ、由姫は俺に寄り掛かっている。



「先輩こそお腹の傷は大丈夫なのか?」


「お腹ならもう大丈夫だ」


「えっ!?」



 まだお腹がズキズキと痛むが、出血は止まっている。

 このままおとなしくしていれば、傷も治るだろう。



「あんな大怪我をどうやって治しだんだ?」


「さぁな」



 正直フランシスが何を思って俺を助けたのかわからない。

 ただあいつも俺に対して何か思うことがあって、俺のことを助けたのだろう。

 それはどういった理由かはわからないけどな。



「先輩の怪我もそうだが、この状況は一体どうなっている? 何で梓と八橋があの甲冑騎士と戦っているんだ?」


「見ての通りだ。梓はあいつと戦うことを選んだんだ」


「もしかして、私達を助ける為に」


「それはわからないな」



 元々フランシスからは俺達のことは逃がしてくれると言っていた。

 ということは、梓のことは逃がすつもりがなかったんじゃないか?



「ほぅ、先程の少年達以外にもこれほどの剣の使い手がいるとはな」


「ありがとうございます。でも、こんなところで負ける気はありませんよ」



 目の前で梓と八橋がフランシス追い回す。

 2人の尋常ならないスピードにフランシスが翻弄されているように見えた。



「梓と八橋のスピードは群を抜いてるな」


「八橋は勇者のスキルがあるから、あのスピードも理解できる」



 日向のパワーやスピードは圧倒的だった。あの源は勇者スキルの恩恵に違いない。



「それなら何で梓はあのスピードについていけるのだ?」


「それは梓が持っている剣のおかげだろう」


「剣?」


「梓が持っている剣は細剣レイピアだ。通常より軽い剣を使っているからこそ、あれだけのスピードで動けるんだ」



 ここに来た時のフランシスもそうだった。力がない女子の梓だからこそ、この武器を選択したのだろう。



「俊之は側面からあいつを追い込んで」


「了解。梓も気をつけてくれ」


「私の心配は大丈夫よ」



 全力で走る八橋はフランシスの側面に走りこむ。

 その動きに敵はついていけない。



「はぁ!!」


「やったか?」



 その攻撃をフランシスは難なく受ける。

 俺達の時とは違い余裕すら感じられた。



「そんな攻撃、我には効かない!!」


「梓!!」


「ナイスだよ。俊之」



 尋常ならないスピードでフランシスに肉薄する梓。

 そのスピードは俺の目でも追えない。



「後ろか!!」


「やぁ!!」



 八橋を吹き飛ばし、梓の攻撃を剣で防ぐフランシス。

 その後梓の腹部を蹴り飛ばし、2人から距離を取った。



「中々やるではないか」


「どうも」


「だが、まだ我の敵ではないな」


「そんなことを言ってられるのも今のうちですよ」



 梓がフランシスに向かって走っていく。

 その剣を楽々フランシスは防ぐ。



「先輩、何故梓はなぜ逃げないのだ?」


「理由は俺もわからない。だけど、これは梓と八橋にとって重要な戦いだってことは確かだ」



 きっとあの2人も何かをかけて戦っているのだろう。

 だからフランシスもあの2人の相手をしているんだ。



「はぁ!!」


「ふっ、やはり素質持ちは違うな」



 八橋の剣をはじきながら、フランシスは笑い声をあげる。

 その様子は純粋に戦いを楽しんでいるように見えた。



「私の剣捌きについてくるなんて」


「少女よ、我の実力はこの程度ではないぞ」


「えっ!?」


「今までは我の攻撃をよく防いだな。なら、これはどうだ?」



 甲冑騎士は漆黒の剣から細剣レイピアに武器を変更して構えを見せる。あの構えは乱れ突きの時の構えだ。



「梓!! 気をつけろ!! 乱れ突きがくるぞ!!」


「大丈夫です」


「行くぞ!! 心してかかれ、少女よ!!」



 直後無数の乱れ突きが梓を襲う。見たところ逃げられる体勢ではない。



「梓!!」


「この!!」



 防ぐことができない体勢のように思えた。ただそこで梓は終わらない。

 乱れ突きの中、体をひねりながら攻撃をかわすとそのまま乱れ突きの中に飛び込んでいく。



「危ない!!」


「だから大丈夫ですって」



 剣を上手く使い、最小限の動きでフランシスに肉薄する梓。

 一歩間違えれば串刺しになっていてもおかしくないのに、それでも梓は突き進む。



「凄い」



 まさか梓がこんなに強いとは思わなかった。。

 あのスピードと度胸だけでいえば、俺達の誰よりも強いんじゃないか?



「こしゃくな!!」


「隙だらけですね」



 レイピアをフランシスが持つ剣にぶつける梓。

 その瞬間、フランシスの剣がはじかれた。



「何!?」


「奥の手は最後まで残しておくものですよ」



 剣をひたすら梓は振る。甲冑騎士はそれを間髪いれず避け続ける。



「先輩、なんで梓が力負けしなかったのだ?」


「わからない」



 先程までパワー勝負は梓が全く勝てていなかった。

 それなのに勝ったってことは、何かカラクリがあるに違いない。



「貴様!! その能力は!!」


「そうです。私は武器を強化する能力を持っています」



 武器の強化? そんな能力があるのか?



「この能力があれば、どんな武器でも強化できる」


「武器の性能差を埋める為、何より自分のウイークポイントをなくすための特殊能力ということか」


「そういうことです」



 ここでそんなスキルを使うなんて。梓は心理戦において、ここにいる誰よりも上手だ。



「梓。俺はどうすればいい?」


「俊之も攻撃に参加して。一緒にあいつを倒そう」


「わかった」



 状況は梓が優勢だ。時折八橋も攻撃に加わり、フランシスを追い込んでいる。



「これなら、甲冑騎士も倒せるのではないか?」


「いや、まだだ」



 あいつの力はこんなものではない。

 現に、あいつは俺達と戦った時のような黒い霧を纏っていない。



「どうしたの? 貴方の力はこんなもの?」


「まさか。だが、あの少年達に見せるにはいい余興だった」


「何!?」


「これで終わりだ、少女よ。貴様との戦い、楽しかったぞ」


「避けろ!!」



 瞬間高速の剣が梓の首を捕らえた。首を一刀両断された梓の頭部は、校庭を越えてどこかへ飛んでいく。

 残された梓の体はゆっくりと校庭に倒れ、血の海の中に沈むのだった。



「梓!!」


「えっ!?」



 何が起こったかわからない。だがそれでも唯一わかることは、梓の体は校庭を埋め尽くす血の海に沈んだってことだ。



「嘘だ‥‥‥」



 梓が死んだ? そんなはずはない。



「さて、これで残りは素質持ちを回収するだけだ」


「うっ」



 残された八橋は、その場で立ち尽くす。そのまま手をプルプルと震わせていた。



「よくも‥‥‥よくも梓を」


「さぁ、来るんだ。素質持ちよ。お前の本気を見せてみろ」


「あぁぁぁぁ!!」



 もうスピードでフランシスに迫る八橋。そのスピードは先程よりも早い。



「八橋、落ち着け!! 怒りに身を任せるな!!



 今の攻撃は真っ直ぐで単調すぎる。このままじゃ桜の二の舞になる。



「スピードよし、思い切りのよさよし、思考はもう少し改善が必要みたいだが、それ以外は問題ないようだな」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「悪いな、少し眠っていてくれ」



 次の瞬間、八橋の腹部に剣の柄が入ってそのまま意識を失ってしまう。

 そしてフランシスはそんな八橋を肩に背負い、どこかへ行こうとする。



「待て!! どこへ行くんだよ!!」


「帰るんだよ」


「帰る?」


「そうだ。我が城にな」



 それだけ言い残し、フランシスは去っていく。

 去り際にフランシスは校門前で立ち止った。



「山村よ、悔しいか?」


「えっ!?」


「この結末は貴様にとっては悔しくないのかって聞いている」



 そんなことを言われたら、答える内容なんて1つだ。



「悔しいに決まってるだろ」



 俺達は結局フランシスのことを倒せなかった。それどころかたくさんの犠牲者まで出たんだ。

 自分の無力感だけを感じたこの戦い。悔しくないわけがない。



「その悔しさを忘れるな」


「どういうことだ?」


「次に我と相まみえる時は、成長した貴様と会えることを願っている」



 どうやら、フランシスは俺との再戦を希望しているらしい。

 それは俺にとっては願ったりかなったりだ。



「あぁ、次こそお前を倒す」


「そうだな。だが忘れるな。貴様を殺すのは我の役目だ。つまらない所で勝手に死んでくれるなよ」



 そういうとフランシスは八橋を連れて学校を去った。

 残されたのは俺達3人と大量の死体だけだ。



「くそ!!」


「先輩!?」


「くそ!! くそ!!」


「何でそんなに悔しがっているんだ? 私達は役目を果たしたのだぞ」


「それが何だって言うんだ!!」



 確かに俺達は役目を果たしたのかもしれない。

 だけどそれは多大な犠牲の上に成り立った、仮初の勝利だ。



「梓を殺されて、八橋まで連れていかれた。これが勝ったって言えるのかよ!!」



 俺達はただ生かされた。フランシスの気まぐれで、逃がしてもらっただけだ。



「結局俺達はあいつに舐められたまま終わったんだ。何もできなくて、何も守れないまま戦いが終わったんだ」



 結局俺は大事な人を守ることが出来なかった。

 自分の周りの人だけでも、大切にしようと思っていたがその人達を守ることができなかった。



「先輩、悔しいのはわかるが、まずは早くここを脱出しよう」


「わかってる」



 梓が死んだからといって、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかない。

 桜と由姫はまだ生きているんだ。せめてこの2人だけでも安全な所に送り届けなければ死んでいった仲間達に顔向けできない。



「先輩は立てるか?」


「あぁ。まだ体のあちこちが痛いがな」



 ずっと休んでいたおかげで、最低限動けるようにはなった。

 少し動くぐらいなら大丈夫だろう。



「先輩の気持ちは私もよくわかる」


「由姫も?」


「あぁ。私もあいつに自分の友人を殺された。だから今は殺したいほどあいつが憎い」



 由姫が指しているのは五月という少女だろう。俺達の目の前で胸を貫かれた少女のことが頭に浮かんだ。



「だが、今は我慢して逃げよう。またあの甲冑騎士を倒すチャンスもやってくる」


「わかった」



 唇をかみ締めながら、由姫と一緒に桜の両肩を持つ。

 気絶している桜を連れて、俺達は学校を後にしたのだった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。これにて2章は終了になります。

3章につきましては、明日から投稿を始めます。少しだけ内容に触れますと、2章で出てきた謎について言及していく章になります。

もちろん魅力的な新キャラクターも多数出てきますので、ご期待ください。



最後になりますが、たくさんのブックマーク登録や評価ありがとうございます。

これからも完結に向けて頑張りますので、ブックマーク&評価の方をよろしくお願いします!


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