信頼という力
「死ね!!」
気合の言葉と共に俺達に向かってくる甲冑騎士。
走ってくるというより飛び込んでくると言った方が正しいぐらいスピードが速い。
「くっ!!」
「由姫!!」
由姫の刀と甲冑騎士の剣がぶつかり合う。
力比べはほぼ互角。若干由姫が押し負けていた。
「強い」
甲冑騎士の動きは先程とは全く違う。
俺の目では完全に甲冑騎士の動きを追うことはできない。
「どうした? それでおしまいか?」
「くっ!!」
「自分のことで精一杯になってないか? 別に我の敵は貴様だけではない」
「何!?」
由姫の剣をはじくと、今度は俺の方に甲冑騎士は向かってきた。
「先輩!!」
「大丈夫だ」
その攻撃は予測していたよ。
俺は甲冑騎士に向かってハンドガンのトリガーを引く。
「そんな攻撃は当たらん!!」
迫りくる弾丸を甲冑騎士は避ける。
まるで俺が打った弾が見えているようだ。
「まだまだ!!」
「だからそんな攻撃は‥‥‥むっ!?」
よし、弾がかすったぞ。ほんの一瞬だが俺に向かってくる甲冑騎士がよろけた。
「貴様、何をした!?」
「別に何もしてない。ただ俺のスキルが仕事をしてくれただけだ」
俺のスキルにある予測打ち、それがあの甲冑騎士が次にどこに避けるのか教えてくれる。
「ウォールベアーと戦った時に覚えたスキルが、こんなところで役に立つとはな」
スキルばかり覚えて、肝心のjobはろくにレベルが上がらない器用貧乏だがそれが少しは役に立ったかな。
「こざかしい真似を!!」
いくら叫んだ所でもう遅い、俺が打った複数の弾丸は既にお前の体を捉えている。
「それならこうだ!!」
「嘘!?」
あいつ、俺が打った銃弾を持っていた剣で切りやがった。
銃弾は真っ二つに割れ、その勢いのまま俺の懐まで飛び込んできた。
「今度こそ死ね!!」
「くっ!!」
甲冑騎士の剣を間一髪ハンドガンで受けた。
だが勢いが止められず、そのまま校舎の方へと吹き飛ばされる。
「先輩!!」
「大丈夫だ!!」
俺が倒れた隙を甲冑騎士は見逃さない。
体勢を崩した俺に向かって、2撃目、3撃目と攻撃を加えてくる。
「どうした? お前達はその程度なのか?」
「くっ!!」
由姫とは違い、俺には固有スキルに対しての恩恵は全くない。
だからだろう、俺だけは先程と同じく防戦一方だ。
「口程にもないやつだな。それで本当に後継者が務まるのか?」
「後継者後継者って、うるさいやつだな」
「ふん。事実を言っているまでだ」
甲冑騎士の攻撃がやむことはない。
今はかろうじてハンドガンで防いではいるが、それもいつまで持つかわからない。
「我の攻撃がここまで防がれるとは。少年よ、褒めてやろう」
「ありがとよ。でもいいのか? 俺ばかりに集中していて?」
「何!?」
「はぁぁぁぁぁ!!」
振り向いた時にはもう遅い、後ろにいる由姫の存在にあいつは気づいていない。
「やった!!」
「甘いな」
「えっ!?」
俺のお腹を思いきり蹴飛ばすと、そのまま由姫の攻撃を避け背中を蹴り飛ばす。
そのまま俺と由姫は校庭の中央に仲良く吹き飛ばされるのだった。
「先輩、無事か?」
「なんとかな」
悠里が止血をしてくれた傷口が少し開いたが、まだまだ動くことはできる。
こんなところでへばっていられない。
「それより、あの甲冑騎士だけどさっきまでとは動きが全く違うぞ」
スピードやパワーは先程とはけた違いだ。
それにあの漆黒の剣を持ってから、剣の技能も格段に上達した気がする。
「まずはあいつのスピードをどうにかしないと」
「スピードを0にする方法なら簡単だ」
「それはどんな方法だ?」
「簡単な話だ。スピードが速くて捉えられないのなら、その動きを止めればいい」
「どういうことだ?」
「俺があいつの足を止めるから、由姫はその間にに切りかかってくれ」
今のあいつをどこまで止められるかはわからない。
だが、今の様子ならあいつの攻撃を受け続けることはできるはずだ。
「そんな捨て身の作戦を立てて、先輩は大丈夫なのか?」
「大丈夫だ」
正直俺だけだったら、今の甲冑騎士とまともに戦うことができなかっただろう。
だけど今は由姫が隣にいてくれる。由姫がいれば、あいつを倒すことも夢じゃない。
「行くぞ!!」
ハンドガンを左手に持ち替え空いた右手には鋼の剣に持つ。
いつもの片手剣とハンドガンの2刀流スタイルで甲冑騎士の所へと向かう。
「そんな飴細工のような武器で、俺の攻撃を受けるなんて笑止千万」
「やってみないとわからないだろ?」
ハンドガンのトリガーを弾きながら、甲冑騎士に向かって走っていく。
それを悠々と避ける甲冑騎士。避けられないものに関しては剣で銃弾を真っ二つに切っている。
「お前の力はそんなものなのか?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
剣と剣が激しくぶつかる。それと同時に大きな金属音がなった。
「さすがだな。ここまで骨のあるものと戦うことができたのは久しぶりだ」
「互角? 馬鹿言うな。お前の栄光も今日で終わりだ」
何故なら俺達がお前のことを倒すんだからな。
「よくもここまで大口が叩けるな少年」
「俺の言葉が大口じゃないって所を見せてやるよ。由姫!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
お前がここで俺と鍔迫り合いをすることは予想済みだったんだよ。
だから事前に由姫には隙をついて攻撃するように伝えておいた。
「何のこれしき!!」
剣で防げないと思ったのか、右手の鎧で由姫の剣を受ける甲冑騎士。
右手の鎧のひびが大きくなる。
「むっ!!」
「行け!! 由姫!!」
力比べは五分。それに右手で受けた甲冑騎士の鎧のひびが徐々に大きくなっていく。
「見事だ。我の足止めをして、その上ふいの攻撃までしてくるとは褒めてやろう」
「ありがとよ」
「私のスピードを封じる為の作戦だったのかもしれないが、それは見当違いだ」
「何!?」
「あいにく私の力はこんなものではない。行くぞ!!」
「うおっ!?」
ものすごい力で剣が押し返される。
もしかすると、デパートで戦ったゴブリンキングよりも力が強いかもしれない。
「うらぁ!!」
ものすごい力で押し返されて、由姫と一緒に吹き飛ばされてしまう。
「わっ!?」
そのまま2人まとめて吹き飛ばされ、校庭の地面に転がってしまうのだった。
「いいのか? そんな所でのんきに寝ていて」
「何!?」
いつの間にか甲冑騎士が目の前にいる。俺達の前で漆黒の剣を振り上げていた。
「狙いは由姫か!!」
受け身が取れていなくて、防御の体勢が取れない由姫の方を狙ったのか。
由姫は体を起こそうとするが間に合わない。
「うらぁ!!」
「くそ!! 間に合え!!」
叩きつけるような剣を間一髪ハンドガンで受け止めた。
力では勝てない為、立膝をついて必死に甲冑騎士の攻撃を押し返そうとする。
「仲間の危機に対して、自分の身を投げ出すか。見事だ」
「お前に褒められてもうれしくない」
ギリギリと鉄と鉄がこすれる音が聞こえる。
あいつの力の方が強い。このままじゃ押し負けるのも時間の問題だ。
「先輩!!」
「由姫!!」
「はぁぁぁぁ!!」
「くっ!!」
由姫が剣をはじき返すと、甲冑騎士は俺達から距離を空けた。
その隙に、俺達もその場から立ち上がった。
「見事だ。さすがは後継者といった所だろう」
「だから後継者後継者って、俺は何の後継者だ」
さっきからこいつが言う後継者の意味がわからない。
この戦いもまるで俺達の力を推し量っているようだ。
「先輩、ここからどう戦う?」
「正直手詰まりだな」
由姫の不意の一撃も甲冑騎士には通用しない。となると使える手は限られる。
「とりあえず、あの兜と鎧を何とかしないと」
甲冑騎士の甲冑を壊す方法。由姫の一撃をひび程度で防げてしまうあの甲冑を壊さないことには、あいつにダメージが通らない。
「私が甲冑を壊そう」
「いや、俺が壊すから由姫は間髪いれず甲冑が壊れた所に攻撃をしてくれ」
「先輩にあの甲冑は壊せるのか?」
「任せろ。それだけは何とかして見せる」
甲冑騎士の甲冑を壊す方法。正直今の俺の火力じゃ甲冑騎士が身に着けている兜や鎧を、壊すことはできない。
「それなら私はどうすればいい?」
「甲冑騎士に突撃して、あいつの体に刀を思いきりぶつけてくれ」
一見すると無謀な作戦。失敗すれば逆に自分が死んでしまう。
そんな作戦なのに、由姫は何も言わずうなずいた。
「怖くないのか?」
「怖くない。だって、先輩があの甲冑騎士を何とかしてくれるのだろう?」
「もちろんだ」
俺の中であの甲冑を無効化できる算段はついている。
後は由姫がそれを信じて、甲冑騎士と戦ってくれるかだ。
「私は先輩を信じている」
「あぁ」
「先輩なら不可能を可能に変えてくれると、私は信じている」
「俺もずいぶん信頼されるようになったな」
ここに来た当初から考えられない。だからこそ、その信頼を裏切るわけにはいかない。
「私は先に行く」
「あぁ、頼む」
「この一撃に全てを込める。行くぞ!! 甲冑騎士!!」
由姫が甲冑騎士に向かっていく。刀を構え、甲冑騎士をに向かって切りかかる。
その攻撃は由姫が持てる限りの力を尽くした全力の攻撃。防御のことなんて完全無視。俺のことを信じてるからこそできる攻撃だ。
「ぬるい!! そんな隙だらけの大振りの攻撃など当たるわけがない」
確かにこの攻撃だけじゃ決定打にはならない。だけどその前提条件が変わるとなればどうなる?
「銃弾をダムダム弾に変更」
予定通りハンドガンの弾を変更した。これであの部分を狙えば甲冑も壊れるはずだ。
「むっ!! 飛び道具か」
「悪く思うなよ」
こいつがさっきから俺の攻撃を避けていたのは、その甲冑が極端に銃による攻撃に弱いからだ。
「そんな攻撃、当たったところで我の体には傷一つつけることはできないぞ!!」
「そんなこと俺が1番よくわかってる」
俺の攻撃じゃ威力が弱すぎて、あの甲冑を壊すことができない。
現に甲冑騎士も由姫の攻撃にばかり目を奪われている。
「血迷ったか? その銃ではこの甲冑が壊れないのは確認済みだ」
「そうだな」
せいぜいその甲冑にヒビを入れるのが精一杯だ。
「そんなに距離もある場所から攻撃して、私の甲冑が壊れるはずがない」
「それはどうかな?」
確かに無傷の所に撃ってもその甲冑の中にある体まで届かないだろう。
だけど最初から傷が入っている所に打つとしたらどうなると思う? しかもそれを弾頭が炸裂するダムダム弾で打てば‥‥‥。
「甲冑は内部から爆発して、壊れるはずだ」
狙うは日向が傷をつけた胸の部位だ。
そこにある大きなヒビのところめがけて銃弾を放つ。
「当たれ!!」
銃弾は寸分たがわず、日向がつけた胸の傷の所に当たる。
ひび割れの1番大きい所に弾がめり込んでいく。
「ほら、見ろ。攻撃ではそんな我の甲冑は‥‥‥」
「いいか、甲冑騎士。よく覚えておけ‥‥‥」
一瞬の間を置き、甲冑騎士の胸の部分のひびが大きくなっていく。
「これがお前が過小評価した俺達仲間の力だ!!」
そしてそのひびは胸から全体に広がっていき、上半身の甲冑が爆発した。
「何!?」
「驚いている暇はないぞ。由姫!!」
先程まで甲冑騎士に向かって走っていった由姫がすぐ近くまで来ている。
上半身の鎧が壊れた甲冑騎士は爆発の反動でよろけてしまい、防御する体勢を取れていない。
「覚悟しろ!! 甲冑騎士!!」
「くっ!?」
「これが先輩と私の力だ!!」
ガードしようとした所でもう遅い。由姫の剣が既に振り下ろされているんだ。
今更防ごうとしたところで間に合うはずが無い。
「我が‥‥‥こんな所で‥‥‥」
「これで終わりだ!!」
甲冑騎士がさらけ出した胸の部分。
その部分に由姫が上段切りが炸裂したのだった。
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