表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/316

甲冑騎士の本気

「ぐあっ!?」



 囲んでいた人達数人が吹き飛ばされる

 吹き飛ばされた人達は、数メートル先の校舎の壁の所に転がるようにして倒れている。



「日向、今あいつの剣筋見えたか?」


「かろうじて。だけど、ものすごいスピードだね」



 剣の振りが速すぎて、目が追い付かない。

 しかも今の剣筋は吹き飛ばされた人達に全く触れていない。



「何が起こったんだ?」


「たぶん、剣の風圧だけであの人達を吹き飛ばしたんだよ」


「剣の風圧だけって、そんなことできるのかよ?」


「普通はできないよ。でも、そうじゃないとあの攻撃の説明がつかない」



 剣が人体に触れてもないのに、あれだけの威力がある攻撃ができてしまう。

 あまりの衝撃に声が出ない。



「やれやれ、君達の実力はこの程度なのかい?」


「この野郎!!」


「なめた口を聞きやがって!!」


「ぶっ殺してやる!!」


「全く君達も懲りないね」



 先程の攻撃で無事だった残りの大人達が一斉に甲冑騎士に襲い掛かる。

 その表情には先程まであった油断は一ミリも存在しない。



「おらっ!!」


「ふふっ、どこを攻撃しているのかな?」



 大人達の攻撃は甲冑騎士に当たらない。

 余裕からなのか、甲冑騎士は剣を使わず体裁きだけでかわしている。



「攻撃が全く当たらないな」


「余分な動作が多すぎる。あれではあたるものも当たらないだろう」



 由姫の言う通りだ。だが、それは攻撃している人達もわかっているはずだ。



「それだけわかっていて修正しないのはなんでですか?」


「あれだけ頭に血が上ってるんだ。冷静な判断ができなくなっているに違いない」



 仲間がやられて、馬鹿にまでされたんだ。怒らないという方がおかしいだろう。

 だが、そのせいで通常よりも判断が鈍くなっている。



「これも甲冑騎士の狙いだろうな」



 あの甲冑騎士は戦い方を知っている。たぶん今まで様々な戦場を駆け抜けてきたのだろう。

 そうでなければ頭に血が上っている人達とはいえ、複数人が仕掛ける攻撃をあんなに簡単によけること等できるはずがない。



「1対7。人数だけで見れば、こっちが数的に有利だな」


「しかもここにいる人達って各グループの精鋭だから、きっとやってくれるよ」


「いや‥‥‥」



 あの甲冑騎士はまだ何かを隠している。きっと実力はあんなものじゃないはずだ。



「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


「威勢だけはいいようだな」



 剣を再び構え、軽くその剣を振る。今度は甲冑騎士の斬撃が大人達を襲った。



「ぐっ!!」



 野球ボールのように吹き飛ばされる大人達が、勢いそのまま校舎の方へと吹き飛ばされて行く。



「ぐはっ!!」


「がはっ!?」



 そしてそのまま壁に叩きつけられて、動かなくなってしまった。



「早く助けよう!!」


「待て、日向」


「どうして!?」


「あれを見てから物事はいえ」



 吹き飛ばされた人達は何事もなかったかのように立ち上がる。

 見た目のインパクトに反して、そんなにダメージがないように見えた。



「ちゃんと甲冑騎士の攻撃を防いでいたのだな」


「あぁ」



 あの瞬間、甲冑騎士の剣筋は確かに大人達を捉えていた。

 だが、持っている武器でしっかりと回避したのだろう。

 だから見た目とは裏腹にダメージがそんなにないのだ。、



「あの敵ですけど、あの人数を相手にしているのに全く苦にしていません」


「苦にしないどころか、こっちが遊ばれてる」



 あいつに生半可の攻撃は通用しない。一撃必殺の攻撃を叩き込まなければ勝つこと等不可能だ。



「まずはあいつの動きを止めるような動きをしないと」


「でも遠距離戦はあの衝撃破があるから、まともに近づくことさえできないよ」


「それでも近接戦闘に持ち込まなければ、勝つこと等到底無理だ」



 戦うなら顔が近づきあうほどの接近戦。相手の動きを止めるような動きをしないと敵の思うつぼだぞ。



「空、僕達も加勢しよう」


「ダメだ」


「何で!?」


「今の俺達じゃ歯が立たないからだ」



 赤子の手をひねるかのようかごとく、あいつは大人達と戦っている。

 今俺達が加勢したところで、結果は変わらない。むしろあの人達の足を引っ張るだけだ。



「そんなのやってみないとわからないよ!!」


「先輩、私も柴山先輩と同じ意見だ。いかせてほしい」


「ダメだ」



 何も策がないまま、突っ込んでいった所でむざむざ死にに行くだけだ。

 そんな戦いに自分の仲間を行かせることはできない。



「空!!」


「先輩!! ここで動かなければ、大変なことになるぞ!!」


「そんなこと‥‥‥俺が1番わかってる!!」



 わかってるからこそ、なおのこと俺は日向達を行かせるわけにはいかない。

 自分の仲間が死ぬ所なんてこの目で見たくはない。



「いつまでもグダグダ戦っていてもしょうがない。どうだ? ここは我と取り引きをしないか?」


「取り引きだと?」


「そうだ。この建物に潜む守護者と素質持ちを差し出せば、特別に他の者は逃がしてやろう」



 甲冑騎士は構えを解き、レイピアを鞘に入れた。



「守護者と素質持ち?」


「あの甲冑騎士は何を言ってるんですか?」


「わからないけど、この校舎内にいる誰かを指しているんだろうな」



 要するにあいつはその人達を求めてこの学校に来たわけだ。

 だからご丁寧にあんな壊すのも面倒くさい結界をわざわざ破ったのか。



「守護者と素質持ち?」


「こいつ、何を言ってやがる?」


「ふむ、どうやらこの人間達は何も知らないようだな。やはりこの世界は我がいた世界とは違うようだ」



 こいつ、今なんて言った?

 自分がいた世界とは違う。確かにそう言わなかったか?



「何を言ってるかわからないが、俺達はこれだけは言えるぜ」


「何だ?」


「お前みたいな極悪人は今ここで俺達が成敗するってな!!」


「ふむ、交渉決裂か」



 甲冑騎士が鞘からレイピアを取り出す。

 それと同時に10人の大人達が甲冑騎士に襲い掛かる。



「やったよ。さすがにこの人数を1人で相手にできるはずがない」


「いや、まだだ」


「えっ!?」


「遊びは終わりだ。そろそろ、私も本気を出させてもらおう」



 再び剣を構える甲冑騎士。その構えは今までとは違う。



「待て!! 全員下がれ!!」



 嫌な予感がする。危険感知スキルは発動しないが、今まで様々な強敵と戦ってきた俺の本能が近づくなと告げている。

 だがワンテンポ遅かった。俺の言葉が届いたのは、大人達全員が甲冑騎士に飛び掛かった後だった。



「一斉にかかればあいつを倒せるぞ!!」


「臆することはない!! 全員で飛び掛ろう!!」


「これであいつを殺す!!」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」



 。

 四方八方から甲冑騎士を襲う、剣や槍や斧。

 前後左右から襲い掛かっており、さすがの甲冑騎士でも防げないような人数だ。



「今度こそ」


「あいつを倒せたはずだ」


「まだです‥‥」


「えっ!?」


「まだ‥‥‥足りません」


「俺もそう思う」


「空まで!?」



 桜にも見えているのか。この戦いの結末が。



「だって、どう見たってこっちが優勢だよ!!」


「そうだ、先輩。あんな四方八方から攻撃を受けて無事なはずがない!!」


「2人の言っていることはわかる」


「なら‥‥‥」


「だけど俺は、これだけでこの戦いは終わらないように思う」



 日向や由姫には見えていないようだが、俺にはわかる。

 今まで様々な不利な戦場を駆け抜けてきたこそ、この戦いは一筋縄で終わるはずがない。



「愚かな人間共に‥‥‥鉄槌を」



 甲冑騎士は剣を構えた。その構えは剣を後ろに引く不思議な構えだ。



「何ですか!? あの構えは!?」


「私も見たことがない」



 俺達がその構えに見とれていた瞬間、無数の剣筋が大人達を襲った。



「ぐはっ!?」


「何だ!? これは!?」



 剣を前に突き刺す攻撃。まるで無数の隕石が降り注いでいるようだ。



「なんて速さだ!!」


「剣筋が全く見えない!!」



 剣術経験者の日向や由姫が驚く程の高速乱れ突き。

 それが絶え間なく飛び掛かった大人達を襲う。



「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「がはっ!?」


「ヴォエッ!?」



 あちこちで上がる悲鳴にも似た断末魔。

 その断末魔が校舎中轟く。



「これが、あいつが隠していた技か」



 あの剣捌きは俺達でもついていくことが出来ない。

 今まで手加減していたって話はどうやら嘘じゃなかったらしい。



「ぐはっ!?」


「何だよ‥‥‥これ」



 襲い掛かった10人全員がその場に倒れた。

 倒れただけじゃない。全員が体の至る所から血を噴き出し、体がピクリとも動かない。



「あっ‥‥‥」



 校舎内の誰が発したかわからない悲鳴。

 その間も校庭の中心が血の海で広がっていく。



「あっ‥‥‥‥‥‥あっ‥‥あっ」



 血の海にたたずむ甲冑騎士と血の海に沈む多くの人達。

 それはまるでスプラッター映画のワンシーンを見せられているようだ。



「成敗‥‥‥完了」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 校舎内のどこで叫んだがわからない悲鳴が学校中に響き渡る。

 そしてその悲鳴が叫び声に変わり、校舎の至る所で聞こえ校舎内は混乱の渦に陥った。



「まずいな」



 学校中が今混乱の渦中にいる。このまま混乱が続けば相手の思うつぼ。

 俺達含めたこの学校にいる全員が殺されてしまうぞ。



「ここにいたらまずい。ひとまず校舎内に避難するぞ」


「はい」


「わかった」


「日向、聞いているのか。おい!! 日向!!」



 口をパクパクさせたまま目を見開く日向。

 やがてその手には日向が持つ、聖剣が握られていた。



「よくも‥‥‥よくも皆を‥‥‥」


「お前、何を考えて‥‥‥」



 明らかに正気じゃない。この状態の日向は1度見たことがある。

 以前コポルト達と戦った時。あの時と同じ状態だ。



「落ち着け!! 今はあいつと戦うよりも、体制を整えるのが先決だ」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「日向!! むやみに突っ込むな!!」



 日向の奴、完全に理性が飛んでやがる。

 今のまま戦っても、あの甲冑騎士相手に勝てるわけがないのに。



「日向の奴め、無理しやがって」


「空さん!! どうしますか?」


「行くしかないだろう」



 日向1人に戦わせるわけにはいかない。

 1人で戦った所でどうあがいたって、あいつに勝てるわけがないからだ。



「2人共、行くぞ」


「「はい」」



 日向の後に続くように俺達も甲冑騎士に向かう。

 勝てる可能性の低い、絶望的な戦いに身を投じるのだった。

ブックマーク&評価をよろしくお願いします!


評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】を押して頂ければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ