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正義と悪

 正門に向かう途中、教室から人影が飛び出して来た。

 それをギリギリのところで俺はかわす。



「わっ!? 危ない!?」



 ギリギリのところでよけたからいいものを。ちゃんと周りを見てから出て来てくれよ。



「大丈夫か?」


「すいません!! 今急いでいて‥‥‥って、空!? それに桜ちゃんまで!?」


「日向」


「無事でよかったです」



 どうやら日向は無事だったようだ。特に敵とも交戦していないようである。



「一体何が起こってるの!? それにこの音は何?」


「校門に敵が来た」


「敵!?」


「そいつが学校全体を包んでいる結界を壊そうとしている」


「嘘!?」


「嘘じゃありません。現にあたし達は正門前に敵がいるのを確認しています」



 敵の姿は桜と一緒に見ていたんだ。見間違えるはずがない。



「今はあいつを撃退することが先決だ。日向も手を貸してくれ」


「わかった」



 ここで日向と出会えてよかった。正直俺と桜だけじゃ心もとなかったので、日向がいてくれるのは心強い。



「行くぞ。目指すのは正門だ」


「はい」



 途中合流した日向を引き連れて、昇降口へと向かう。



『キーーーーーン』


「金属音はじける音がさっきより高くなった気がします」


「確かにな」



 断続的に聞こえるこの音が徐々に大きくなっていく。



『ガキン、バリン』


「なんだ、この音は!?」



 何かの金属が割れる音。その音が校内に響き渡った。



「まさか‥‥‥結界が壊れたんですか!?」


「そんなことないよ。だって学校の結界は無敵の結界だよ」



 確かにこの結界は無敵に見える。だけど三葉校長が作り出す結界は本当に無敵なのか?



「違う」


「何が?」


「この結界は無敵じゃない」


「何でそう思うの?」


「考えてみろよ。この結界は元々外部から内部が見えないようにするものだ」



 いうならば認識阻害の効果。外部から気づかれないようにするための結界。

 決して耐久性にすぐれた結界ではないってことだ。



「空さんはこの結界に耐久性はないと思っているんですか?」


「あぁ。意外と攻撃を続けていれば簡単に壊れるものなのかもしれない」



 だから俺達がここにたどり着いた時、三葉校長はわざわざ結界を解いて俺達を出迎えたんじゃないか?

 結界を壊されないために。そう考えると色々と辻褄があう。



「そんなことってあるんですか?」


「今言ったのはあくまで仮説にすぎない。結果は正門に行ってみればわかることだ」



 俺達は急いで正門に向かう。昇降口をかけ抜け校庭へと出た。



「あの金属音が聞こえなくなりましたね」


「空!! あれを見て!!」



 日向が指差す先、その先には甲冑騎士が正門を突破して中に入ってくる所だった。



「まずいですよ!! 結界が破られました」


「早くあいつを止めないと!!」


「焦る理由もわかるけど、俺達はここでいったん待機しよう」


「えっ!?」



 2人が驚く理由もわかる。だが、それでもここはいったんここで様子を見た方がいい。



「正気ですか!? 空さん」


「行かなくていいの? あの甲冑を来た敵がどんどんこっちに向かってくるけど」


「それは大丈夫だ」


「大丈夫? 何で!?」


「そこにいる奴、止まれ!!」



 騒ぎを聞きつけたのか、既に校庭の中央には複数の大人が甲冑騎士の前に立つ。

 合計人数が10人前後。それだけの大人が甲冑騎士と睨みあう。



「既に校庭に待機していた人達がいたんですね」


「そうだ。だからここはあの人達に任せよう」



 10対1なんだ。そう簡単に負けるはずがない。



「本当にあたし達が行かなくてもいいんですか?」


「考えてみろ。人数が多すぎて逆に仕留めきれなかったらそれこそ問題だ」



 10人以上で攻撃をして、連携が上手くいかなくて甲冑騎士を取り逃がす。

 それは最悪の結末である。

 たからどんなことがあっても絶対にそれだけは避けたかった。



「おい!! お前は何をしてるんだ!!」


「ここは俺達の家だ!! 余所者は出て行け!!」



 大人達の叫び声が聞こえる。

 だがこれだけ言われても甲冑騎士は引かない。その場に立ち尽くしたまま動く気配すらない。



「あの甲冑騎士、不気味ですね」


「そうだな」


「でも、危険感知のスキルは何も反応しないよ」



 確かにそうだ。俺の危険感知のスキルは何も反応しない。

 だが、反応しないからこそ甲冑騎士(あいつ)は不気味なんだ



「もしかして、あの甲冑騎士ってすごく弱かったりして」


「そんなことはないはずだ」


「空はどうしてそう思うの?」


「学校全体を包んでいた結界を1人で壊したんだぞ。そんな奴が弱いはずないだろう」



 認識阻害されている結界を見破り、単独でその結界を壊したんだ。

 ただものであるはずがない。



「おい!! 何とか言ったらどうなんだ!!」


「黙ってたらわからないだろ!!」



 甲冑騎士は何も言わずレイピアを持って、その場にたたずんでいる。

 その姿が余計に不気味に感じた。



「あそこにいる人達、梓ちゃんのグループの人です」


「そうなの?」


「はい、学校の中でもかなりの強さを持っている人達です」



 梓のグループも食料調達率だけで言えば、トップ3に入っていたはずだ。

 そのグループということは、学校の中でもかなりの強さを持つのだろう。



「それに僕のグループの人達も何人かいる」


「そうなの?」


「うん。皆僕と同じぐらい強くて、頼れる人達だよ」



 日向と同等の強さを持つ人達か。その話が本当ならこの戦いは俺達が出る幕はないな。



「空さん」


「何だ?」


「あの甲冑騎士、本当に弱いと思いますか?」


「いや、思わない」



 むしろまだ実力を隠しているように思える。



「でも、危険感知のスキルに反応がないんだよ」


「俺もそこが引っ掛かっている」



 危険感知のスキルに反応しないモンスター。いくら発動しても、何も反応がない。

 反応がないということは、考えられることは1つだけだ。



「もしかして、あいつは自分の実力を隠すことができるんじゃないか?」


「そんなことできるんですか!?」


「それはわからない」



 わからないけど、そうでなければ説明がつかない。

 認識阻害の結界を見破り、その結界を壊す腕を持つモンスター。

 そんなモンスターが弱いはずがない。



「もしかして俺達はとんでもないモンスターを相手にしてるんじゃないか?」


「えっ!?」


「先輩!!」


「由姫」


「やっぱり先輩達もここに来ていたのだな」



 昇降口から息を切らした由姫が姿を現す。

 額から汗がにじみ出ており、急いでここに来た様子が伝わってくる。



「なんなのだ!? あの甲冑騎士は!?」


「俺もわからない」


「由姫ちゃん、中の様子はどうなってますか?」


「今春斗先生達がグループの人達を集めて作戦会議をしている。残りの人達はそれぞれの部屋で待機だ」


「いい判断だ」



 おおかた三葉校長がそのように指示したに違いない。



「あそこにいる人達は?」


「あの人達は敵の様子を見るために出てきた人達だ」


「だから大人達だけなのか」



 危険な戦いになる可能性を考えて大人の、しかも学校内でも手練れの人達を向かわせたってことか。



「おい、こいつをそろそろ倒さないか?」


「そうだそうだ!! こいつはきっとモンスターなんだから殺そうぜ!!」



 10人前後の大人が甲冑騎士を取り囲む。

 いつの間にか甲冑騎士は逃げ場がなくなっていた。



「今なら泣いて命乞いするなら、助けてやらないこともないぜ」


「我が‥‥‥命乞いだと?」


「しゃっ、しゃべった!?」



 直後甲冑騎士が高笑いをする。この近辺全体にに聞こえるような甲高い笑い声が辺りに響く。



「いや、すまない。君達があまりにもおかしなことをいうから、つい笑ってしまったよ」


「何だ!? お前は!! モンスターじゃないのか!?」


「我が‥‥‥モンスター? あんな低俗な生き物と我を一緒にしないでくれ」



 その瞬間、大人達が武器を構える。

 先程の馬鹿にした態度はなくなり、一変して真剣な表情に変わっていた。



「なるほどな」


「何がおかしい?」


「やっぱり、ここにいるもの達は悪なのだな」


「悪?」


「悪はお前だろ!! 勝手に学校に入ってきて、俺達の場所を荒すような真似なんかしやがって」


「ただじゃおかないぞ‼︎」


「ふっふっふっ」


「何が面白い?」


「そうだな。貴様等にとって、我は悪者なのかもしれない」


「何を言ってるんだ? こいつ」



 甲冑騎士は鞘にしまっていた剣を抜く。剣を抜いて切っ先を大人達に向ける。



「だが我からすれば貴様らが悪者なのだ」


「何を言ってるんだ、こいつは?」


「覚えておくといい」



 レイピアを構え直す甲冑騎士。その構えは屋上で見た正門を壊す時の構えに見えた。




「戦いの数だけ正義があり、正義と正義がぶつかり合って、その勝負の敗者が悪になるということを、身をもって知れ!!」



 次の瞬間、甲冑騎士が持っていたレイピアを振るうのだった。

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