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変化する日常

「お疲れ様です、空先輩」


「相変わらず早いんだな」


「先輩が遅いんですよ」



 遅いと言われたって、プールの簡易シャワーで汗を流してから来たんだ。

 優先的に先に入れる女子より時間が遅くなるのはしょうがないだろう。



「それよりも、早く隣に来てください」


「わかった」



 屋上で先に座っていた桜の隣に腰かけた。

 桜は何も話さないでじっとしている。



「そういえば、八橋は今日はいないようだな」



 テントの電機は消えているので、きっとどこかに行っているのだろう。



「そういえば、夕食で梓ちゃんの姿もありませんでした」


「そういえばそうだな」



 いつも俺のことをいじる梓もいなかった。



「今日の夕食が静かだったのはそのせいか」


「確かにいつもより静かに感じました」



 それっきり会話がなくなってしまう。

 再び俺と桜の間に沈黙がおとずれた。



「桜?」


「前から思っていましたけど、空先輩は女の子にモテモテなんですね」


「別にモテモテなわけじゃない」



 どこを見て桜はそう思ったんだろう。

 日向のことを言うならわかるけど、俺に限って女子にモテること等ありえない。



「でも、由姫ちゃんと腕を組んでました」


「あれは不可抗力だ」



 元々由姫が霧の中で誰かに引っ張られたからああなったわけで、それ以上でも以下でもない。

 由姫も言っていたが、あの出来事は仕方がないことだったんだ。



「でも、由姫ちゃんが男の人の手を握る所なんて見たことがありません」


「そうなの?」


「はい。腕を掴むなんてもっての他です。そういうことを由姫ちゃんは1番嫌がるので」



 桜の話を聞いている限り、由姫はよっぽど珍しい行動をしていたようだ。

 普段からそんな様子がないからびっくりしてしまう。



「よっぽど危なかったってことだな」


「本当にそれだけなんですかね?」



 まずい、せっかく話がまとまったのにまた話を拗らせたくない。

 これ以上この話に首をつっこむのはやめておこう。



「そういえばさっき桜は俺の方がモテモテって言っていたけど、俺は桜の方がモテモテだと思ってるよ」


「なんでですか?」


「だってここに来た時から杉田と楽しそうに話してるし、それを見ていて俺といる時より楽しそう話しているように見えた」



 しまったと思ったけどもう遅い。言いたくなかったことを桜に言ってしまった。

 隣の桜の様子を見ると首をかしげて俺のことを見ていた。



「杉田君ですか?」


「いや、何でもないから忘れてくれ」


「いやいや、言ってくださいよ。せっかくですから」



 楽しそうに笑う桜。だが、それでもいうわけにはいかない。

 何故ならそれは俺が桜に対して思っている嫉妬心からでた言葉だからだ。



「そう言われてもな」


「だったらあたしは言いますけど、すっごく由姫ちゃんがうらやましかったです」


「由姫のことが? なんで?」



 確かに由姫はきれいでスタイルもいいが、桜の方が可愛いし人気もある。

 そんな桜が由姫にどうして嫉妬しているのだろう。



「だって由姫ちゃん、先輩と同じグループで行動してました」


「確かに行動してたけど? それだけ?」



 それだけで桜が嫉妬するものなのか?

 動機としてはいささか弱いように感じた。



「違います。それだけではありません」


「他に何か理由があるの?」


「はい。だって由姫ちゃんはいつの間にか空先輩と打ち解けて、空先輩のいい所もいっぱい知って、いつの間にか先輩の剣になって、あたしにはできないことをいっぱいしていました」



 確かに由姫はそんなことを言っていた。自分は俺の剣となり盾となって先輩を助けたい。そのように言ってくれた



「由姫ちゃんからその話を聞いた時すごい嫉妬してました。だって、空先輩の隣で戦うのはずっとあたしの特権だと思ってましたから」


「桜」


「だからあの時空先輩が告白してくれてうれしかったです。もし言ってくれなかったら、あたしが先輩に告白していました」


「そうか」



 桜も桜で由姫に対して色々と思う所があったんだな。

 こんな可愛くて人望がある桜でもそんなことを思うのは意外だったけど。



「次は空先輩です」


「俺?」


「空先輩はどう思ってたんですか? ここであたしのことを見ていて」


「俺は‥‥‥」



 嫉妬は確かにしてた。ただそれ以上に考えさせられたこともある。



「正直、桜の側にいてもいいのかと思った」


「なんでですか?」


「だって杉田や宮園と一緒にいる桜があまりにも楽しそうだったから。俺といるよりも絶対そっちの方がいいって思ってた」


「たしかに杉田君達といるのは楽しかったですけど。先輩と一緒にいる方がその何百倍も楽しいです」


「そういってもらえるとありがたいが、正直桜から離れた方がいいんじゃないかと思ったこともある」



 それが正直な感想だ。今でも俺は桜の隣に立っていてもいいか悩むこともある。

 だけど桜の隣に立てる男になろうと思った。だから俺は昨日桜に告白したのだ。



「先輩は考えすぎです」


「考えすぎ?」


「そうです。だってあたしの方が空先輩の隣に立っていていいのか、不安に思うことだってあるんですよ」


「それは俺だって同じだ」



 俺達は顔を見合わせてクスッと笑ってしまう。

 桜も同じように俺を見て笑っている。

 どうやら俺達は同じことを思っていたみたいだ。



「あたし達って似たもの同士なんですかね?」


「かもな」



 どうやらここにきて、お互い同じようなことを思っていたらしい。



「何かこんな話をしているのが馬鹿らしくなってきた」


「あたしもです」


「俺、桜のことは信頼してる」


「あたしも空先輩だけは信頼してますよ」


「ありがとう、桜」



 こうして話していると、桜との絆が深まった気がする。

 ある意味俺達がこの学校で別行動をしていたのはよかったのかもしれない。



「あたし達の間では絶対に隠し事はなしですからね」


「わかってる」



 改めて桜との信頼を確認するのだった。



「せっかくですから、呼び方を変えてもいいですか?」


「呼び方?」


「そうです。恋人なのに、先輩呼びはどうかなって思うので」


「別にいいけど、なんて呼ぶんだ?」


「これからは、空さんって呼ばせてもらいます」


「空さんか」



 悪くないな。今まで由姫達が先輩呼びだったから、自分だけの特別な呼び方に変えたいのだろう。

 それぐらいなら別に構わない。



「嫌ですか?」


「俺は構わないよ」


「ありがとうございます。では‥‥‥」



 桜は目をつむって、唇をこちらに突き出す。



「桜?」



 何も言わず、俺のことを見あげる桜。

 目をつむりそじっと何かを待っているようだった。



「いいのか?」



 無言で首をコクコクと桜は動かす。ここまでされて、俺も気づかないはずがない。



「行くぞ」



 俺は緊張しながらも顔を近づけていく。

 心臓はバクバクと脈打っており、近くにいる桜にも聞こえるんではないかとさえ思う。



「(後数センチ)」



 あと数センチで桜の唇に触れられる。

 その瞬間が刻一刻と迫っていた。



『キーーーーーーーン』


「何だ!? この音は!?」



 学校全体に轟く金属音がはじける音。

 思わず俺は体をのけぞらせて音が鳴った方へと振り向いた。



「一体誰が邪魔をするんですか!! せっかくいい所だったのに」


「そんなこと言ってる場合じゃないだろ?」



 こんなはじけるような金属音、今まで聞いたことがない。

 今はどこでこの現象が起きているのか、確認する必要がある。



『キーーーーーーーン』


「校庭だ!!」



 屋上の柵から、校庭を眺める。正門前に誰かがいるのがわかる。



「あれは何ですか?」


「あれは‥‥‥騎士?」



 それもただの騎士じゃない。全身甲冑で身を包んだ騎士だ。



「あの甲冑騎士は何者ですか?」


「わからない」



 校門を攻撃しているところを見ると、俺達の敵だろう。



「空さん、あの甲冑騎士が変な構えをしています!!」


「何!?」



 甲冑騎士は細い剣を後ろに引き動きを止めた。



「何をしてるんですかね?」


「桜、耳を塞げ!!」


「えっ!?」



 桜の耳を無理やり抑えさせた。

 甲冑騎士はその独特の構えから剣を突き出す。その突き出された剣は正確に結界を捉えていた。



『キーーーーーーーン』


「ぐわっ!?」



 この近辺全体に響き渡るような金属音が校舎中に響く。

 耳をつんざくような金属の音。その音に思わず顔をしかめてしまう。



「空さん、大丈夫ですか?」


「あぁ」



 甲冑騎士が剣を突き出す瞬間耳を抑えられたから何とかなった。

 だが問題はまだたくさん残っている。



「あいつの目的はわからないが、結界を破壊しようとしているな」


「結界を破壊ですか?」


「そうだ」



 何故破壊しようとしているのかわからない。だけど、明確に俺達に対して敵対心を抱いていることだけは伝わってくる。



「あの甲冑騎士ってモンスターですか?」


「それはわからない。だが、1つだけわかるとしたら‥‥‥」



 あいつは俺達の敵ってことだ。



「桜、校門に行くぞ」


「はい」


「絶対に甲冑騎士(あいつ)を止めて見せる。何としても」



 絶対にこのコミュニティーは壊させない。どんなことがあろうと守って見せる。



「空さん!!」


「急ごう」



 桜を引き連れて屋上を飛び出し校門へと向かう。その間にも断続的に金属音が鳴り響くのだった。

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