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霧の中でデート?

「どうやらここが境界線みたいだな」



 歩くこと1時間。苦労しながらも、俺達は目的地にたどり着いた。



「ここから先は霧が深いですね」


「気をつけろ。何が出てくるかわからないぞ」



 1歩踏み出せば体が見えなくなる程の濃霧が目の前には広がっていた。

 何が起こるかわからない手前、迂闊に踏み込むことができない。



「先輩、この霧なんだが昨日よりも広がってないか?」


「広がってるな」



 山頂だけでなく、山の中腹付近に広がる濃霧。

 どうやらこの霧は日に日に範囲が広がっているようだ。



「このままにしておくと、この山全てがのまれるぞ」



 山がのまれるだけならいい。だが、この霧が街にまできたらどうなる?

 学校までのまれたら、俺達の生活拠点までなくなってしまう。



「一刻も早く調査が必要ですね」


「だな」



 この霧を発生させている主がどんな奴かはわからない。

 だけどこの現象を一刻も早く止めないといけない。



「霧が深いですね」


「奥が全く見えない」



 由姫と桜の言う通り、霧が濃くて先が見えない。

 何も対策せずにいけば、痛い目を見るだろう。



「先輩、この霧やっぱり変ですよ」


「桜もそう思う?」


「はい。だってこの地点から急に霧が濃くなっているんですよ。他の場所には全く霧なんてないのに」



 桜の言っていることもわかる。霧の濃さがある地点から、常に一定で保たれている。

 俺達のいる地点は全く霧なんてないのに、1歩踏み出すと周りが見えないほどの霧で包まれていた。



「もしかすると、この霧は人工的に作られているのかもしれないな」


「由姫もそう思う?」


「あぁ。これだけの霧を発生させられるってことは、それだけ力があるモンスターがいる可能性がある」



 力があるだけでは済まされない。

 これだけの霧を生成できるんだ。俺達が戦ってもまともに勝てない程強大な力を持つものがいる可能性もある。



「それじゃあこの先にいるモンスターって‥‥‥」


「俺達が戦ってきた相手とは比較にもならないぐらい強いモンスターだろうな」



 山の一部を丸々覆うほどの霧を作り出せる相手だ。

 今の俺達じゃまともに戦って勝てるはずがない。



「でも、先輩は行くんだよな?」


「あぁ」



 強大な相手だからこそ、偵察をしておいた方がいい。

 もしかするとこの霧の主が俺達がいる町に降りてこないとも限らないからだ。



「ちゃんと安全を確保しつつ、しっかり様子を見て対策を立てよう」


「わかった」


「空先輩、行きましょう」


「あぁ。でも、その前に桜」


「えっ!? 先輩!?」



 問答無用で桜の手を取った。その指を絡ませるようにしっかりと握る。



「こんな昼間からそんな積極的に来られても‥‥‥でも、先輩がその気ならあたしもちゃんと覚悟します」


「別に覚悟しなくてもいい。はぐれないためだからな」



 もし霧の中で相手が何か仕掛けをしているとしたら、俺達が分断される可能性もある。

 だから俺は桜だけじゃなく、由姫の手も握っていた。



「先輩、何で私の手まで握るんだ⁉︎」


「空先輩!! 浮気だったら許しませんよ!!」


「浮気じゃなくて、はぐれないためだ!!」



 さっきから説明しているのに、桜も由姫も俺の話を聞いていなかったのかよ。



「さっきも言ったと思うけど、俺達3人が霧のせいでバラバラになるかもしれないんだ。それを防ぐ為に手を握っているんだ」


「要約すると、先輩は由姫ちゃんのすべすべの手を握りたかったってことですね?」


「どうしてそうなる!?」


「なるほど。だから私の手を積極的につかみにいっていたのか」


「由姫は曲解するな!!」



 なんで由姫は火に油を注ぐようなことを言うんだよ。

 ただでさえ桜は疑い深いのに、余計に桜が俺のことを疑うだろ?



「‥‥‥‥空先輩、本当に違いますよね?」


「違う!!」



 やっぱり疑われた。いぶかしげに俺のことを桜は見ている。



「俺は何かがあった時の為の対策として提案しているんだ」


「ふーーん」


「頼む、信じてくれ」



 発言が完全に浮気をした後の男のようだ。

 実際はしていないのだが、自分が浮気をした後の人間が言う言い訳をしているように思えた。



「空先輩の言っていることはわかりました」


「わかってくれたか?」


「つまり、空先輩とはぐれないようにすればいいんですよね?」


「あぁ、そうだ」


「それならあたしはこうします!」


「桜!?」



 桜は俺の腕にしがみついてきた。手を自分の指に絡めて、体全体で俺の腕に引っ付いてくる。



「別にはぐれない為ならどんな体勢でもいいんですよね?」


「確かにそうだけど、その態勢は動きづらくないか?」


「少し動き辛いですけど、そこは先輩がリードしてください」


「リードって‥‥‥」



 デートじゃないんだぞ。俺達はあくまで霧の中の偵察に行くんだ。

 遊園地やショッピングモールに行くのとわけが違う。



「先輩、そんなに私に見せつけなくてもいいんだぞ」


「別に見せつけてない!!」



 だからそんなあきれた目で見ないでくれ。全ての元凶は桜だ。



「あたし今すごく幸せです」


「俺は今混乱している」


「それならちょうどいいですね」


「どこが!?」



 全くちょうどよくないんだけど? むしろバカップルみたいで恥ずかしいから離れてほしい、



「さぁ行きましょう、霧の中へ」


「桜引っ張るな。俺は自分で歩けるから」



 桜からただよう甘い柑橘系の匂いと柔らかな感触で胸の鼓動が止まらない。

 こんなに心臓がバクバクするのは運動しても中々ないことだ。



「空先輩?」


「なんでもない。早く行くぞ」


「はい」



 結局嬉しそうに笑う桜にエスコートされる形で霧の中へ入ることになる。

 この態勢になれるまでしばらく時間がかかるのだった。

【御報告】

いつも拙作をご覧頂きありがとうございます。

今週末の投稿に関しまして、投稿が遅れるあるいはお休みさせていただきます。

理由と致しまして昨日私が使用しているパソコンが故障してしまい、それに関しての修理もしくは買い替えの必要が出てしまったからです。

幸いバックアップをしていた為、作品のプロット等は残っているので問題無いのですが、スマホのフリック操作に慣れていなく、投稿までいささか時間がかかると思います。

週明けには必ず通常更新できるようにしますので、しばらくの間お待ち下さい。


最後になりますが、いつも拙作をご覧いただきありがとうございます。

ブックマーク登録や評価、感想等をいただきましてそれを励みにしております。

この物語を楽しんでいただけるように今後も取り組みますので、これからも宜しくお願いします。

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